2023年5月8日月曜日

フリーランス取引適正化法 成立 保護 出発点 労基法対象外

<span style="color:#990000">「事業者」「働き手」のフリーランスを正面から保護 労働法による権利保障拡大を</span>

 

<span style="color:#000066"><i><span style="font-size:x-small;">

しんぶん赤旗 202358()

主張:フリーランス保護 労働法による権利保障拡大を

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-05-08/2023050801_05_0.html

----フリーランス取引適正化法が4月28日の参院本会議で全会一致によって可決・成立しました。“権利ゼロ”の働き方に苦しめられているフリーランスの就業環境に一定のルールを設けました。フリーランスの多くは労働者と変わらない働き方をしています。さらに労働法の中に位置づけて権利を保障する必要があります。

 

 

朝日新聞デジタル 2023427 2100

フリーランス新法への期待と課題 ほぼ社員?でも労基法対象外の人も

https://digital.asahi.com/articles/ASR4W65ZQR4LULFA01W.html

----取引先に対する立場が弱いフリーランスが、安心して働けるようにするための法案が成立する見通しになった。不利な取引の是正と、育児・介護との両立など働く環境の整備の二本柱だ。ただ、残された課題も多い。

・・・・新法の大きな意義は、「事業者」であり「働き手」でもあるフリーランスを正面から保護の対象とした点にある。

 このため、発注者に対して取引条件の明示を求める下請法と、育児・介護への配慮やハラスメント対策を求める労働法の要素を組み合わせたものになっている。監督官庁も公正取引委員会・中小企業庁と厚生労働省に分かれている。

 課題は多く残っている。長時間働くことによる健康障害などをどう防ぐかは、厚生労働省の検討会で議論が続く。社会保障を充実する必要性も指摘されながら、議論は進んでいない。新法はフリーランスのセーフティーネット(安全網)を整える出発点でしかない。

</span></i>

</span>

 

<hr size="1" /><span style="font-size:x-small;">以下参考</span>

 

<span style="color:#333333">

しんぶん赤旗 202358()

主張:フリーランス保護 労働法による権利保障拡大を

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-05-08/2023050801_05_0.html

 フリーランス取引適正化法が4月28日の参院本会議で全会一致によって可決・成立しました。“権利ゼロ”の働き方に苦しめられているフリーランスの就業環境に一定のルールを設けました。フリーランスの多くは労働者と変わらない働き方をしています。さらに労働法の中に位置づけて権利を保障する必要があります。

適正化法の規制守らせよ

 フリーランスは、仕事を発注する企業と事業の契約を結んで働きます。フリーランスが多い分野はデータ入力作業、デザイン・ウェブサイトの作成、配送、塾講師と多岐にわたります。2020年の内閣官房による調査で462万人と推計されます。

 発注者が仕事を指示して働かせるやり方は、雇用主・労働者の関係と違いがありませんが、個人事業主と扱われます。

 労働者の権利は憲法、労働基準法、労働組合法などに定められています。雇用主は労働時間、均等待遇、最低賃金といった、さまざまな規定を守る義務を負っています。しかしフリーランスは「雇用によらない働き方」とされています。これを理由に、労働法規による規制を逃れていることが無権利の働き方を横行させています。

 フリーランス有志が実態を告発し、日本共産党議員が国会で繰り返し質問したことに押されて政府が対策に動きだしました。

 フリーランス取引適正化法は、契約にあたって書面や電子メールの交付を義務づけ、報酬の支払期日を納品から60日以内としました。一方的な報酬カットを禁じ、契約を中途解除する場合は30日前までに予告すると定めました。ハラスメント防止も盛り込みました。実効ある規制として守らせていく必要があります。

 これらは公正な経済活動を確保するための規定です。労働者としての権利を保障するものではありません。労働法で保護を広げることが不可欠です。

 正確な労働時間の管理、雇用・労災保険の加入、報酬の最低基準の設定、労働組合を結成して団体交渉・ストライキを行う権利がフリーランスにも保障されるべきです。実態が労働者と変わらないのに、いつでも首を切れる安上がりの働き手を確保するためにフリーランスを偽装することは取り締まらなければなりません。

 国際労働機関(ILO)は06年に採択した勧告第198号で、自営業の形を偽装した雇用関係によって労働者の権利が侵されないよう、誰が労働者にあたるのかを、社会の変化に応じて定期的に見直すよう各国政府に求めました。

「労働者性」認める欧州

 欧州ではフリーランスに「労働者性」を認めて労働法で権利を保障する動きが強まっています。

 スペインでは商品の配達員に労働者の地位を認めた法律が21年に制定されました。

 欧州議会では「プラットフォーム労働の労働条件改善に関する指令案」(法案)が審議中です。インターネットで個人事業主に仕事を発注する「プラットフォーム企業」が報酬を決定したり、仕事の進め方を決めたりした場合、労働者と「推定」されるとして、労働法で保護する対象とします。

 フリーランスが安心して働けるよう規制逃れを許さない法制度を日本も作らなければなりません。

 

 

しんぶん赤旗 2023430()

フリーランス取引適正化法成立 標準契約書の普及を 参院内閣委で井上氏が主張

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik23/2023-04-30/2023043002_02_0.html

 フリーランスの取引を適正化し就業環境を整備する「フリーランス取引適正化法案」が28日の参院本会議で全会一致で可決・成立しました。

 日本共産党の井上哲士議員は27日の参院内閣委員会での採決に先立つ法案質疑で、契約時の条件明示義務が規定されていない同法案では▽報酬が変わらないのに業務が追加される▽解約したくても多額の違約金を求められるなど「フリーランスが現に直面している問題を解決できない」と指摘。法案が成立すれば、「政府は契約書の作成や契約時の条件明示は推奨しないということか」とただしました。

 後藤茂之経済再生担当相は「契約内容が共有されることは望ましい」と答えました。

 井上氏は、文化庁が芸能従事者向けに作成したガイドラインに、発注側、受注側双方が参加して作成した契約書のサンプルが掲載されていると紹介し、「現場の関係者と各業種を所管する省庁が一体に、業種ごとの標準契約書をつくり普及を図るべきだ」と主張。後藤担当相は「文化庁の取り組みは参考になる。各業界の実態を踏まえ対応したい」と述べました。

 井上氏は、これまでハラスメント防止法の対象外だったフリーランスへの対応がこの法案に盛り込まれたことを踏まえ、ハラスメント被害が極めて深刻な芸能従事者を対象とした独自の相談機関の設置を求めました。

 

 

朝日新聞デジタル 2023427 2100

フリーランス新法への期待と課題 ほぼ社員?でも労基法対象外の人も

https://digital.asahi.com/articles/ASR4W65ZQR4LULFA01W.html

写真・図版会見を開いたプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉・代表理事(左)と第二東京弁護士会の堀田陽平弁護士=2023427日午後18分、東京都千代田区

写真・図版

 取引先に対する立場が弱いフリーランスが、安心して働けるようにするための法案が成立する見通しになった。不利な取引の是正と、育児・介護との両立など働く環境の整備の二本柱だ。ただ、残された課題も多い。(上地兼太郎、三浦惇平、片田貴也)

 「ウェブデザイナーが契約書を交わさないまま仕事を引き受け、50万円近い報酬を未払いにされた」

 「漫画家が、発注元から一方的に契約を打ち切られた。半年先まで別の仕事を入れないようにしていたので、収入が減った」

 「学習塾の事務職が体調不良でやめると伝えたところ、育成費用などとして500万円近い損害賠償を求められた」

 政府から委託された「フリーランス・トラブル110番」で相談を受ける堀田陽平弁護士は、27日の記者会見でこうした事例を紹介した。「取引条件があいまいだから、フリーランスも(発注元に)反論しにくい。(新法で)取引条件が明示されることで、トラブルの未然防止や早期解決が期待される」と話した。

 会見は、新法の制定を政府に求めてきた「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」が開いた。平田麻莉・代表理事は「(当事者の)多くの声を届けてきた結果として、フリーランスが勝ち取った法律だ」と評価した。

禁止行為の要件と保護の対象者は

 ただ、新法の問題点も指摘した。一方的な報酬の減額や取引の打ち切りが禁止されるのは、取引を一定期間続けた発注元に限られる。平田氏は、単発の取引の方がトラブルに発展する可能性が高いとして、「今後の実態を見つつ、単発でも(規制が)必要だとなれば、法改正などで改善してほしい」と述べた。

 新法の対象になる「フリーランス」とは、企業などから仕事の発注(業務委託)を受けている従業員を雇っていない、という条件を満たす人だ。本業か副業かは関係なく、会社を作っている人も対象になる。

 政府は3年前の調査で、自ら事業を営む従業員を雇っていない実店舗を持たない、などの条件を満たす人をフリーランスと定義し、国内に推計462万人いるとした。このうち、例えば自ら雑貨などを作ってネット販売している人などは新法の対象外になる。

 発注元が新法に違反する取引をするか、ハラスメントや育児・介護との両立に配慮しなかった場合、政府による指導や命令などの対象になる。フリーランスはまず「110番」に相談し、そこから必要に応じて関係する役所につなげる仕組みが検討されている。

常駐フリー、ギグワーク課題は山積

 新法ができても、フリーランスの働き方をめぐる課題は多く残る。

 企業などと雇用契約を結ぶ「労働者」に比べ、フリーランスは医療や年金などの社会保障が手薄だ。育児休業給付も受け取れない。

 フリーランスには労働基準法の保護も原則及ばないため、労働時間の規制がなく、最低賃金は適用されない。

 日本労働弁護団は19日に東京都内で開いた集会で、「長時間労働に起因する生命・健康に対する危険はフリーランスにも及びうる問題。過労死を防止すべく、作業時間、休憩・休日に関する規制を設けるべきだ」と主張した。

 労働基準法は、使用者に対して立場が弱い労働者を守ることが目的。業務委託で働くフリーランスは「事業者」とみなされ、対象外になる形だ。実際、フリーランスの中には、1人で会社を作るなどして自由度の高い働き方をする人もいる。

 一方、フリーランスといっても働く場所や時間を決められ、労働者に近い働き方をする人も増えている。

 フリーの編集者らでつくる「ユニオン出版ネットワーク」の杉村和美・副執行委員長は25日の参院内閣委員会で、業務委託なのに毎日出社して社員と同じように働く「常駐フリー」と呼ばれる人が多いと説明した。「有給休暇がなく、産前・産後の休業もない。労働保険や職場の健康保険、厚生年金保険にも入れない。これらの保険に入りたいというニーズは非常に高い」と要望。労働基準監督署にうったえても、契約などの形式的な面から「労働者でない」と判断されることが多いとした。

 業務委託であっても、実際の働き方が労働者とみなされれば労働基準法が適用される。判断基準は38年前につくられ、仕事の発注者から「指揮命令を受けているか」などがポイントだ。だがウーバーやアマゾンといったプラットフォーム企業を介した「ギグワーク」など新しい働き方も広がる中、判断基準の見直しを求める声が強い。

【視点】安全網を整える出発点に

 国会審議で様々な課題が指摘されながらも与野党の賛成で新法が成立することになったのは、「ないよりは、あった方がいい」という点で一致したからだ。

 政府はこれまで、多様な働き方の一つとしてフリーランスを推奨してきた。働きやすい環境を整備する必要性も強調し、2年前にはそのためのガイドラインを作ったが、従来の法律の考え方を整理したものでしかなかった。

 新法の大きな意義は、「事業者」であり「働き手」でもあるフリーランスを正面から保護の対象とした点にある。

 このため、発注者に対して取引条件の明示を求める下請法と、育児・介護への配慮やハラスメント対策を求める労働法の要素を組み合わせたものになっている。監督官庁も公正取引委員会・中小企業庁と厚生労働省に分かれている。

 課題は多く残っている。長時間働くことによる健康障害などをどう防ぐかは、厚生労働省の検討会で議論が続く。社会保障を充実する必要性も指摘されながら、議論は進んでいない。新法はフリーランスのセーフティーネット(安全網)を整える出発点でしかない。

 フリーランスを取り巻く環境は業界によっても大きく違う。新法を生かしながら、それぞれの実態に応じた具体策を関係団体で詰めていく努力が必要だろう。(編集委員・沢路毅彦)

 

 

 

弁護士ドットコム 20230427 1831

「フリーランス新法」成立後も残る課題 育休給付金ゼロ、偽装請負フリーランス協会が法案の意義を説明

https://www.bengo4.com/c_1015/n_15954/

国分瑠衣子

フリーランスの取引を適正化するための「フリーランス新法」について、国会で法案審議が進んでいる。427日に参院内閣委員会で全会一致で可決され、28日の参院本会議で成立する見通しだ。

フリーランスの環境整備に取り組んできた「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」は427日、都内で記者会見を開き、フリーランス新法のポイントや社会保障をめぐる課題、フリーランスのトラブルについて説明した。平田麻莉代表理事は「新法の内容についてフリーランス一人一人が『自分ごと』と理解し、自己防衛に役立ててほしい」と話した。

新法は取引適正化と働く環境整備のため

同協会は、フリーランスに新法の内容と課題について広く知ってもらうために会見を開いた。

フリーランス新法は、フリーランスの取引の適正化と就業環境を整備するための法律だ。フリーランスはこれまで取引先から報酬が支払われなくても泣き寝入りするケースが少なくなかった。契約書を交わさずに、口頭のみで発注というケースもある。同協会が2017年に行った実態調査では、報酬トラブルがあったと回答した人は全体の約7割で、このうち約4割が「泣き寝入りをした」と答えた。

こうしたトラブルを防ぐため、新法では、企業などがフリーランスに仕事を発注する時に、業務内容や報酬額を書面やメールなどで明記することを義務付けている。受けた仕事を再委託するケースなどを想定し、フリーランス同士の取引も対象にしている。フリーランスが成果物など役務を提供した日から60日以内に企業が報酬を支払うことも定めた。

働く環境の整備については、事業者に対しハラスメントの防止体制の整備や、育児や介護と両立して働けるようにフリーランスの申し出に応じ、必要な配慮をするよう求めている。

出産、育児の経済的支援 会社員と大きな格差

平田代表理事は新法の内容を概ね評価した上で、新法成立後に取り組むべき課題を2つ挙げた。

1つは、社会保障に関することだ。現状では会社員とフリーランスでは出産と育児の経済的な支援に差がある。雇用契約に基づき働く会社員は、育休中に育児休業給付金を受けることができる。一方、雇用契約のないフリーランスはゼロだ。つまり育休中で稼働しない期間は、入るお金がないということになる。

会社員が加入する健保組合などから出産前後に受け取る出産手当金も同様だ。フリーランスの多くが加入する国民健康保険は、出産手当金は「任意給付」のため、給付する自治体はない。

平田代表理事は「財源の問題はありますが、国民健康保険の法律を任意給付から給付義務に変える方法もあると思います」と話す。このほか2024年からフリーランスは産前産後期間は国民健康保険料が免除となる見込みだが、会社員との格差は依然として大きい。

2つ目の課題は偽装フリーランス(偽装請負)対策だ。偽装フリーランスとは、契約上はフリーランスで、業務委託契約などを結ぶが、働き方の実態は会社に雇用される社員と同じで会社から指示を受けて働くというものだ。

同協会によると、出版社や放送業界、専門学校・スクール、軽貨物業界などに多いとされる働き方だ。法律上の「労働者」とほとんど同じ働き方をしているのに、法律で守られない不条理さがある。

フリーランス側も責任を持って仕事の受注を

会見では、フリーランスのトラブル相談に乗る「フリーランス・トラブル110番」の堀田陽平弁護士が、トラブルの実態と新法について話した。

堀田弁護士は「あくまで私個人の考え」と前置きした上で、フリーランス新法で解決できる法的トラブルについて資本金の要件などで下請法が適用されない取引にも禁止行為が適用される取引条件の明示義務がフリーランス同士など広い範囲で適用されるハラスメントの防止措置義務や、契約解除の予告義務――などを挙げた。

課題もある。仕事のマッチングの場を提供する仲介事業者は今回の新法の適用外だ。プラットフォーマーを介し、仕事を受けるフリーランスも多いため、今後の課題となってくるとみられる。

事業者だけではなく、フリーランスも注意しなければいけない点がある。堀田弁護士によると、フリーランス・トラブル110番には「仕事を受注したが、解除したい」という相談も多いという。しかし、業務委託が「請負契約」と性質決定される場合には、受注者側からの任意解除権はない。仕事を受けるフリーランス側も安易に仕事を受けず、責任を持って受注しなければならない。  (ライター・国分瑠衣子)

 

 

フリーランス協会 20230428

【速報解説】フリーランス新法が成立しました

https://blog.freelance-jp.org/20230428-18420/

政策提言

428日の参議院本会議で、フリーランス新法案(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案)が全会一致で可決され、無事に法律が成立しました。

成立に向けてご尽力くださったすべての政府関係者、議員の皆さま、後押しくださったメディア関係者の皆さま、そして誰より、フリーランスで働く中で生じるトラブルの実態について声を届けてくださったフリーランスの皆さまに、感謝申し上げます。

法律成立といっても、ようやく骨組みができたような段階で、まだこれから詳細を詰めていく部分もありますが、フリーランスにとっては、自分を守る「印籠」であり「盾」になってくれる心強い法律。今後の動きも含めて、しっかりチェックしていきましょう!

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣官房HP

 概要
 https://www.cas.go.jp/jp/houan/230224/siryou1.pdf
 条文
 https://www.cas.go.jp/jp/houan/230224/siryou3.pdf

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案の概要

概要資料に沿って、簡単に説明します。

事業者であるフリーランスの取引適正化就業環境整備のための法律です。

 

この法律が対象としているのは、フリーランスの中でも企業相手にBtoBで仕事をしている「特定受託事業者」の取引です。発注者である企業(特定委託事業者)に対してさまざまな義務や禁止行為を課す内容の法律であるため、取引先が個人消費者である場合は、この法律は適用されません。

特定受託事業者には、個人事業主はもちろん、法人成りしているフリーランスも含まれます。では、法人成りしているフリーランスと、法律を遵守すべき立場となる発注企業をどう区別するのかといえば、従業員の有無(国会答弁によると契約時点で判断)です。

ざっくり言えば、他者を雇わず1人で仕事をしている事業者は特定受託事業者(フリーランス)、他者を継続的に雇って仕事をしている事業者は特定委託事業者(法人であっても個人事業主であっても)です。但し、繁忙期にヘルプでアシスタントを雇うなど、社会保険の適用対象とならないような短時間・短期間の一時的雇用であれば、特定受託事業者とみなされます。

なお、自らが発注者として業務委託(再委託)の実態が認められる場合、仲介事業者も規制対象となります。たとえばウーバーイーツは、配達員と再委託関係にあるので、規制対象です。

 

契約条件明示

この法律の一番のポイントは、契約条件の明示が義務化されることです。

「こういう仕事なんだけど、やってくれない?」「いいですよ!」と言う時に、発注者は、「こういう仕事」の中身を双方が記録として参照できる形(契約書、発注書、メール、チャットなど)で残すことが求められます。

この法律の中で、この契約条件明示だけは、フリーランス(特定受託事業者)同士の取引でも必要になります。つまり、自分がフリーランスで、他のフリーランスに仕事を頼むときにも、契約条件はしっかり伝えておきましょうということです。ちょっと大変に思えるかもしれませんが、契約条件をはっきりさせておくというのは、「言った言わない」や「思ってたんと違う」を防いでお互いを守ることになるので、「ちゃんと伝えていたはずなのに」と自分が嫌な思いをしないためにも大切ですね。

明示すべき「給付の内容」として何を示さなければならないのかというのは、今後、指針づくりで詰めていくことになっているので、まだ詳細は決まっていません。

フリーランス協会としては、例えば下記のような条件について契約時点で確認、合意しておけると良いと考えています。もちろん業務を進める中で変更はあり得ますが、一方的に変更されるというのではなく、あくまで最初の合意をベースとした変更交渉・再合意というプロセスが大事だと思います。

最低限必要

業務内容、成果物、報酬額、諸経費の扱い、納期(契約期間)、納品・検収方法、支払い期日、契約変更・解除条件、秘密保持

あった方が良い

著作権の帰属、契約不適合責任(損害賠償、やり直し範囲)、再委託可否

 

明示した方が良いと考えられる契約条件の例

支払い期日

また、発注者は、フリーランスが業務を完了・納品してから60日以内に報酬を支払う必要があります。(ここから先の話はすべて、フリーランス同士の取引は対象ではなく、義務が課せられるのは特定委託事業者のみ)

資金繰りだなんだと理由を付けてダラダラと支払いを先延ばしする、みたいなことは法令違反になります。

再委託の場合は、上流の発注元からの入金が無いからキャッシュが無いということもあり得るので、特定委託事業者が発注元から支払いを受けた日から30日以内に支払えばOKです。

禁止行為

概要に書いてあるままですが、一方的な受領拒否、一方的な報酬減額、一方的な返品、買いたたき、一方的な押し売り、金銭・役務などの利益提供の強要、不当な変更・やり直しの強要が禁止行為となります。

但し、禁止行為の対象となる取引は「(政令で定める期間以上の)継続的業務委託」に限られています。単発契約も一定期間以上にわたって繰り返されていれば継続的業務委託とみなされるようです。いずれにしてもどのくらいの期間以上が対象になの?というのは、1年程度が目安という国会答弁もありましたが、具体的にはこれから定めることになります。なるべく短い取引でも対象にしてもらいたいですね。

 

正確かつ最新の内容での募集

クラウドソーシングのようなマッチングプラットフォームや掲示板などにフリーランスの求人を出す時は、虚偽の表示はダメですよ、変更があれば正しい情報に直しておいてくださいね、という話です。

育児介護等への配慮

フリーランスは妊娠出産によって母体保護のリスクがあったり、介護が必要になっても、会社員みたいに休業取得して他の同僚にリカバーしてもらうということが難しい(かつ経済的なセーフティネットもない)という問題があります。

フリーランス新法では、発注者は、フリーランスからの申し出に応じて、納期やスケジュールを調整したり、リモートワークをOKにするなど、ちゃんと配慮してくださいね、となっています。これも、先述の禁止行為と同様に、「(政令で定める期間以上の)継続的業務委託」の場合が対象になります。

ハラスメント対策

フリーランス新法では、発注者は、ハラスメント相談窓口をフリーランスも使えるように周知するなどの取り組みが求められます。

フリーランス新法では、発注者はフリーランスに対しても、ハラスメント相談窓口を使えるように周知するなどの措置が求められます。通報による契約解除など、望ましくない行為も指針で明確化するとのことです。

契約の中途解除の事前予告

契約期間内に発注者から中途解除する場合は、原則として、30日前までの事前予告が必要になります。

「もう明日から来なくていいよ」というのは基本的にダメになります。(但し、不法行為や契約違反など、即日契約解除となる禁止行為を予め契約条件に定めて合意しておくケースはあり得ます)

 

フリーランス新法が成立すれば、法律を「印籠」や「盾」とした自己防衛がしやすくなります。当事者同士の任意交渉でトラブル防止・解決できる余地も大きいでしょうし、弁護士に相談して助言を受けたり、内容証明送付や支払督促、訴訟提起などの手段で司法的に解決できる範囲もグッと増えます。

既にフリーランスの心強い味方として認知が拡がり、相談件数を伸ばしているフリーランス・トラブル110番ですが、フリーランス新法の施行後も、法令違反と思われるトラブルが生じたときは、まずはフリーランス・トラブル110に相談しましょう(完全匿名で相談できます)。

当事者間の交渉では解決できないケースや悪質性の高いケース、労働者性が疑われるケースは、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の中から適切な省庁に対応が割り振られ、必要に応じて発注者に対する助言、指導、報告徴収・立ち入り検査、勧告、公表、命令が行われます。命令違反や検査拒否等に対しては、50万円以下の罰金もあります。

新法施行前の現在でも、フリーランス・トラブル110番の弁護士のアドバイスに従って行動したら解決したという話は多々あります。任意交渉だけでは解決が難しそうな場合は、和解あっせん手続きも無料で行ってもらえます。トラブルで困ったときは、ぜひ利用してみてください。

 

 

フリーランス協会 20230428

フリーランス新法に関する記者会見を行いました

https://blog.freelance-jp.org/20230428-18408/

おはようございます。ヒラマリです。

本日の参議院本会議で、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が成立する見通しです。

それを踏まえて昨日の午後、厚生労働省記者クラブで、記者会見を行いました。早速いくつか記事も出ています(文末に貼っておきます)。 

間もなく成立が期待されるフリーランス新法は、私たちフリーランスみんなで勝ち取った法律です。

フリーランス協会としても、あらためて記者会見資料を作りながら振り返ってみれば、まだ設立した直後でn数が超少なかったものの「編集者に対するアンケート」(2017年)、「未払い報酬に関するアンケート」(2018年)、「フリーランスの契約トラブル実態調査(フリーランス白書2020掲載)」(2019年)、「コロナ禍でのフリーランス・会社員の意識変容調査」(2020年)、「コロナ禍による影響調査(フリーランス白書2021掲載)」(2020年)と、さまざまな角度からフリーランスのトラブル実態の調査を重ね、機会あるごとに政府やメディアに皆さまの声を届けてまいりました。

政府からのヒアリングにも、これまで本当にたくさんの、さまざまな職種の会員の方にご協力いただきました。他のアニメ業界や出版業界、俳優業界、フードデリバリー業務等の団体の皆さんも同様にヒアリング対応されてこられたと思います。

多くのフリーランスが声をあげて、その小さな声が集まり大きな声となって届いた結果、こうして新たな法律が実現したのです。あらためて、声を届けてくださった皆さまに感謝申し上げます。 

フリーランス新法ができると、これまで「フリーランスあるある」と言われていたトラブルも、泣き寝入りが当たり前ではなくなります。

契約条件を教えてもらえないとか、未払い・支払い遅延に対しても、「法律で決まっていることなので」と言えるようになるのは大きいですよね。(契約条件明示や、納品後60日以内の支払、契約解除1か月前の事前告知などが義務化されます。一方的な減額や買いたたきなども禁止されます。)

「聞いてた内容と違うんだけど」といったトラブルも、契約条件の合意の記録さえあれば、弁護士に相談して早期解決できる余地がかなり広がります。(加えて、行政指導や勧告、罰則等のオプションもあるのも心強いです。)

 ただ、法律が成立すれば良いというものでは決してなく、この法律もフリーランス・トラブル110番も、私たちフリーランス一人ひとりが自己防衛のための「印籠」や「盾」として使っていかなければ意味がありません。

つまり、「これは自分に関わる法律だ」と自分ごととして認識し、アンテナを張ってしっかり理解しておくことが大切です。

フリーランス協会ではこれからも、なるべく分かりやすく情報発信していくことに努めますので、ぜひメルマガ・SNSにご注目くださいね。

また、フリーランス新法はまだ骨組みができただけで、具体的な指針はこれから定めていく段階に入ります。ディテールが重要な部分がたくさんあるので、引き続き当協会としても率直な声を上げ続けたいと思います。

 まぁ、本当は禁止行為を単発取引にも適用するとか、食い下がったけど叶わなかったこともいくつかありますが、過度な規制で「発注控え」が起こったら本末転倒なので、そういう意味では絶妙なバランスが取られているのでしょう。まず一旦はこれで着実に法令遵守されていくことを目指したいなと思います。

(さんざん言いたいことは言わせてもらって、立法のプロたちが喧々諤々の議論をしてくれた結果、落ち着いたのがこの形なので、ベストではないかもしれないけどきっとこれが今できる最良のベターなんだろうと受け止めています。とりあえずここを起点として、前進あるのみ!)

他にも社会保障とか偽装フリーランスとか仲介事業者とかいろんなテーマはありますが、そもそも「会社員」と同じくらい多様な課題や職種を含む「フリーランス」の問題をたった一つの法律だけで解決しようというのも、大雑把すぎる気もします。

取引適正化についてはまずは大きな第一歩ということで、当協会としては大いに歓迎し、分かりやすく説明していくことに努めてまいりたいと思います。

記者会見の内容

私からは、立法の背景となったフリーランスの契約トラブルの実態、フリーランス協会が政府に立法を働きかけてきた経緯やその中で特に心を砕いたポイント、法案の概要、フリーランス新法成立後も当協会として引き続き取り組んでいきたい課題について、お話ししました。

また、2018年から2020年まで経産省の人材政策室(当時)に出向してフリーランス関連政策を担当されていた頃からお世話になっており、現在はフリーランス・トラブル110番で相談対応に当たっている第二東京弁護士会の堀田陽平弁護士にもご同席いただき、フリーランス・トラブル110番に寄せられる相談事例と、新法の影響について解説いただきました。

会見資料:フリーランス新法への期待と課題(フリーランス協会 平田)

20230427_記者会見資料(フリーランス協会)final_1ダウンロード

https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2023/05/20230427_%E8%A8%98%E8%80%85%E4%BC%9A%E8%A6%8B%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%88%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%8D%94%E4%BC%9A%EF%BC%89final_1.pdf

会見資料:フリーランスの取引トラブルの実状とフリーランス新法の影響(堀田弁護士)

20230427_記者会見資料(堀田弁護士)ダウンロード

https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2023/04/20230427_%E8%A8%98%E8%80%85%E4%BC%9A%E8%A6%8B%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%88%E5%A0%80%E7%94%B0%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%EF%BC%89.pdf

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣官房HP
 概要
 https://www.cas.go.jp/jp/houan/230224/siryou1.pdf
 条文
 https://www.cas.go.jp/jp/houan/230224/siryou3.pdf

掲載記事

フリーランス新法への期待と課題 ほぼ社員?でも労基法対象外の人も(朝日新聞デジタル)

https://digital.asahi.com/articles/ASR4W65ZQR4LULFA01W.html

「フリーランス新法」成立後も残る課題 育休給付金ゼロ、偽装請負フリーランス協会が法案の意義を説明(弁護士ドットコム)

https://www.bengo4.com/c_1015/n_15954/

 

 

企業法務ナビ 2023/05/02

フリーランス・事業者間取引適正化法が可決、成立
https://www.corporate-legal.jp/news/5256

はじめに

428日、フリーランス・事業者間取引適正化法(以下「フリーランス保護法」)が参院本会議で可決、成立しました。フリーランスを保護する目的で制定されるこの法律の成立により、フリーランスに業務を委託する企業に様々な義務が発生することとなります。また、違反した場合、罰金が科されるケースもあります。本記事では、フリーランス保護法の概要をご紹介します。

 

フリーランス保護法制定の背景は?

フリーランスとは、自らの能力やスキルを活かして、会社などに所属せずに個人で仕事を行う人のことを指します。職種も幅広く、デザイナーやプログラマー、ライター、コンサルタント、イラストレーターなどと多岐に渡ります。

フリーランスとして働くメリットは、主に、①自分自身で仕事を選ぶことができる点、②働く場所や時間に制約されない点などです。その反面、安定した収入を得ることに苦戦しているフリーランスも相当数いるとされています。

日本におけるフリーランスの人数は正確には把握されていませんが、内閣府の発表によると、2020年時点で450万人前後いるとされています。そして、働き方が多様化する中で、その数は今後も増加していくとみられています。

今回のフリーランス保護法は、こうしたフリーランス増加の状況を受け、フリーランスが受託した仕事を安定して続けられる労働環境を整備するべく、制定された形になります。

 

企業が負うフリーランス保護法上の義務

フリーランス保護法では、業務を受託する人のうち従業員を使用しないものを「特定受託事業者」と呼び、保護の対象としています。企業(特定業務委託事業者)が、特定受託事業者に対して業務を委託をした場合、

・仕事の内容や報酬額などを書面や電子データで示すこと

・フリーランスが納品など仕事の成果物を受け取った日から60日以内(再委託の場合には、発注元から支払いを受ける期日から30日以内)に報酬支払期日を設定し支払うこと

などが義務付けられます。

また、特定業務委託事業者は、以下の行為が禁止されます。

①特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること

②特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること

③特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと

④通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること

⑤正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること

さらに、特定業務委託事業者は⑥・⑦の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないと明記されています。

⑥自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること

⑦特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させることこの他にも、

・広告などで仕事を募る場合に、虚偽の表示せず、その内容を正確で最新の内容に保つこと

・フリーランスと一定期間契約がある場合(継続的業務委託)に、育児や介護などを両立して業務ができるよう、フリーランス側からの申出に応じて必要な配慮をすること

・ハラスメント行為に関する相談体制を整えること

・継続的業務委託を中途解除する場合などには、原則、30日前までにフリーランス側に事前に予告すること

などが定められています。

なお、これらに違反した場合、公正取引委員会・中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるとされています。さらに、命令違反及び検査拒否等に対しては50万円以下の罰金に処され、加えて、法人両罰規定も設けられています。

 

フリーランスの実状

業務委託に関し、取引先とトラブルとなるフリーランスは少なくないとされています。中小企業庁が発表した中小企業・小規模事業者の実態調査の結果によると、取引先とのトラブルを経験したことがあるフリーランスの割合は4割にのぼるといいます。

取引先とのトラブル内容に目を向けると、契約内容に関し、そもそも書面・電子メールが交付されていないケース、交付されていても取引条件が十分に明記されていないケースが合わせて6割となりました。

加えて、「発注の時点で、報酬や業務の内容などが明示されなかった」、「報酬の支払が遅れた・期日に支払われなかった」と回答したフリーランスが多くいたということです。

また、トラブルに見舞われたフリーランスのうち、約半数が取引先と直接交渉をしている一方、交渉することなく泣き寝入りしたフリーランスが2割、交渉せず自分から取引を中止したフリーランスは1割にのぼったといいます。

泣き寝入りした理由については、「受け入れないと、今後、取引が打ち切られたり、減らされたりすることとなり、フリーランスの活動に大きな支障を来すため」、「受け入れないと、その取引が成立しなくなり、フリーランスの活動に大きな支障を来すため」との回答が寄せられています。

中小企業・小規模事業者の実態~多様な中小企業・小規模事業者~(中小企業庁)

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/shokibo/b1_2_1.html

コメント

働き方が多様化する中で、大手企業においても、フリーランスを活用する動きが活発化しています。会社から独立してフリーランスとして前職から仕事を受託するケース、豊富な経験を買われコンサルタントという立場でプロジェクトに参画するケース、IT分野など専門技術の高さを買われて仕事の受注を受けるケースなどが見られます。

フリーランスに対しては、原則、労働法の適用がありませんが、その分、今後、フリーランス保護法を厳格に遵守して行く必要があります。フリーランス保護法は、1年半以内の施行が予定されています。現在既にフリーランスを利用している企業においては、特に、規制内容の把握と現場への十分な周知が必要になってきます。

</span>

 

<span style="color:#00CC00">//////////////////////////////////////////////////////////////////</span>