2010年1月30日土曜日

「小沢依存」から脱却急げ 国民の声こそ聞くべし

民主党への不信が広がっている。

「国民生活第一」などスローガンをかかげ、自公政権を退場させた。
その最大の功労者が、小沢氏だろう。

しかし、国民は小沢氏に政権を託したのでも、小沢チルドレンでもない。
国民生活第一に考えてくれると信じたからだ。

いつまでも「小沢依存」症を抜け出せないなら、手痛いしっぺ返しが待っている。








毎日新聞 2010年1月27日 0時05分

記者の目:民主党、「小沢依存」から脱却急げ 平田崇浩

 民主党の小沢一郎幹事長の政治資金をめぐる事件で、鳩山政権が大きく揺らいでいる。政権への逆風は強まる一方なのに、小沢氏とは「一蓮托生(いちれんたくしょう)」と言わんばかりに検察やメディア批判を展開する民主党議員たちの姿には落胆した。自覚してほしいのは、これ以上国民の信頼を失うと、民主党の背負う歴史的使命を果たせなくなることだ。今こそ、「小沢依存」から脱却すべきだ。

 「民主党は、8年間で国の財政のプライマリーバランス(基礎的な収支)を回復することを目標に、税金のムダづかいを徹底的に無くし、税を最も必要としているところに配分します」。これは岡田克也外相が党代表だった05年衆院選時のマニフェスト(政権公約)に書かれた一文だ。

 国の財政はアジアの金融危機を受けた98年度以降、一般会計の5~6割しか税収のない状況が続いていた。需給ギャップを埋めるのに、国が毎年30兆円以上の借金をして歳出規模を拡大させてきた。

 自民党は今、鳩山政権の10年度予算案を「ばらまき」と批判しているが、05年の郵政選挙で大勝した後も「借金してばらまく」財政構造の転換を図れなかったのは、既得権益に縛られた自民党だ。

 政権交代を果たした民主党に課せられたのは、万年与党と官僚組織が握ってきた「カネ」と「情報」をオープンにし、この国を立て直すことだ。政府や地方自治体が使える公的なカネは限られている。社会保障費や医療費が急速に膨らむ中、これまでの配分(既得権益)を維持すれば破綻(はたん)する。政策決定過程の情報を開示し、カネの使い道に納税者が納得できる優先順位を付けることが必要になる。昨年、行政刷新会議が行った事業仕分けが評価されたのは、政権交代の意義を実感させたからだろう。

 小沢氏は「選挙至上主義者」として知られる。実際、07年参院選は党代表として、09年衆院選は代表代行として選挙対策を取り仕切り、民主党を大勝に導いた。選挙に勝たなければ政権交代できないのは確かだが、何のための政権交代かという原点を見失ってはならない。その点を最も分かっているのも小沢氏ではないかと思う。

 昨年12月16日、10年度予算編成の財源確保に苦しんでいた鳩山内閣に対し、自動車関連の暫定税率廃止を断念するよう求めたのが小沢氏だ。もともと、ガソリン使用量の増大につながるため評判も悪く、2兆円を超える財源を確保できる「助け舟」だった。このとき、鳩山内閣の閣僚を前に、小沢氏は言い放った。

 「『官から民へ』を訴えて政権ができたが、3カ月が経過して、本当に政治主導だったか疑問がある。政府高官には、研さんを積んで自ら決断して実行してほしい」

 10年度予算案の財源を思うように捻出(ねんしゅつ)できなかった政務三役への苦言であるとともに、11年度予算案の編成で官僚組織の既得権益に切り込む覚悟を求めたわけだ。さらに12月26日には「独立行政法人や公益法人やいろんな無駄な補助金はまだまだある。公務員制度改革、行政改革を大胆に実行しないと本当の無駄を省くことはできない」と発言している。

 独立行政法人や公益法人が国から受託した事業を下請けに丸投げしたり、過大な事業費を受け取り、天下りした官僚OBの人件費などを「中抜き」する例は、事業仕分けでも明らかになった。民主党は独立行政法人・公益法人改革で数兆円の「無駄」が削減できると考えているが、こうした補助金や委託をやめれば、多くの天下り法人が倒れ、官僚OBを含む職員が路頭に迷いかねない。天下りの道を閉ざすからには、官僚が定年まで勤められるよう公務員制度を改革する必要もある。「公務員一家」との本格的な対決はこれからであり、今夏の参院選前に相当の結果を出さなければならないというのが小沢氏の認識だ。

 選挙でも政策面でも「小沢依存」を深めてきた民主党。今回の事件で小沢氏が失脚してしまうことへの党内の不安が強いのは分かる。しかし、小沢氏の権力の源は何かを考えるときにきている。選挙の公認権を一手に握り、党の選挙経費の配分を恣意(しい)的に行ってきたのが小沢氏だ。年間数億円以上が使途不明の組織対策費に拠出される慣行は、自民党にはあっても、小沢氏が代表に就く前の民主党にはなかった。小沢氏の政治手法は、「カネ」と「情報」の透明化という政権交代の歴史的使命からかけ離れていると思う。

 今回の事件がなくても、民主党は「小沢依存」から脱すべき時が近づいていたのではないか。鳩山由紀夫首相は今年を「正念場」と位置づけた。国民の信頼を回復し、11年度予算案を本当の政治主導で編成できるか。政権交代そのものの成否がかかった正念場だと自覚してほしい。

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