2012年4月21日土曜日

対「北」安保理議長声明 核実験を止めよ


朝日)北朝鮮ミサイル―騒動の本質を見失うな(4/21)

朝日)北朝鮮―安保理声明にこたえよ(4/18)
読売)対「北」議長声明 これで核実験阻止できるのか(4/18)
毎日)対北朝鮮議長声明 粘り強く変化うながせ(4/18)
日経)議長声明を生かし強固な対北包囲網を (4/18)
産経)対北議長声明 核実験封じる制裁にせよ(4/18)
東京)対「北」議長声明 連携し核実験を止めよ(4/18)








朝日新聞  2012年4月21日(土)付
社説:北朝鮮ミサイル―騒動の本質を見失うな
 北朝鮮の事実上のミサイル発射失敗をめぐって、政府の対応が混乱した。野党に追及され、政府は検証を進めている。
 一方で、お粗末な事態の再発を防ぐため、発射を探知した米軍の早期警戒衛星を、日本も持つべきだとの声が政府内から出ている。
 一連の議論は、どうにも筋違いだと言わざるをえない。
 今回のミサイル騒動の本質は、日常的な外交の問題であると認識すべきだ。
 確かに、政府の初動はぶざまだった。韓国国防省が発表し、米韓両国のメディアが速報しているのに、首相官邸の第一報は「発射を確認していない」。緊張感に欠け、誤解も招いた。
 米軍から発射情報を伝えられたが、日本のレーダー網でとらえる前に落下したため、うまく対処できなかったという。
 何のことはない。システムの不備というより、情報を扱う人間の問題なのだ。経緯を検証するのは当然だ。
 だが、これをもって開発費を含めて数千億円規模とされる早期警戒衛星を持つべしと唱えるのは、どうみても論理の飛躍だ。北朝鮮への対応を口実にした、過剰な要求でしかない。
 むしろ、韓国との情報交換を円滑に進めるなど、できる対策から進めることこそ必要だし、効果的だ。
 日韓両国はいまだに、やりとりした軍事情報を保護する協定を結んでいない。今回、韓国から発射情報が提供されなかったのはこのためだ。昨年1月の日韓防衛相会談で、協定の必要性を確認しあったのに、慰安婦問題などで足踏みしてしまった。
 つまり、ふだんの外交努力で日韓関係をもっと緊密にできていれば、今回の混乱は防げたかもしれなかった。
 もうひとつ、自衛隊の身構え方も気になった。
 ミサイル防衛の地上部隊を首都圏と沖縄県に、イージス艦を日本海と東シナ海に配備した。ミサイルの上空通過が見込まれた宮古・八重山地区には数百人の自衛隊員が展開した。
 政府が万全の態勢をとるのは自然なことだが、地元などからは「落ちてくるミサイルを本当に防げるのか」という、システムへの不信の声も上がった。
 中国をにらんだ南西諸島の防衛力強化のための布石だ、との批判も出ていた。
 ミサイル防衛には約1兆円が投じられてきた。それに見合う国民の理解も、生かすための周辺国との関係強化もまだまだだ。この現実こそ、政府は今回の騒動の教訓とすべきだ。

朝日新聞 2012年4月18日(水)付
社説:北朝鮮―安保理声明にこたえよ
 北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」と称して、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験に踏み切ったことに対し、国連安全保障理事会が「強く非難する」という議長声明を出した。
 声明は、発射を過去の安保理決議に違反すると認定した。
 北朝鮮がさらに発射や核実験をした場合には、安保理として相応の行動をとると予告し、北朝鮮に圧力をかけた。
 発射から間を置かずに、北朝鮮の後ろ盾になってきた中国の賛成も得て、中身のある声明をまとめたことを評価する。
 国際社会の一致した声を、北朝鮮は重く受け止めるべきだ。
 日本には、より重みのある決議にすべきだとの声もあった。
 だが北朝鮮を追いつめたくない中国が決議に慎重で、議長国の米国は、形式で譲るかわりに強い内容にすることを選んだ。
 これまでの安保理決議で、北朝鮮はすでに、武器やぜいたく品の禁輸など広い制裁を科されている。新たに決議をしても、実際の効果は限られるという事情もあった。
 米政府は一方で、2月に米朝間で合意した食糧支援の中止を決めた。オバマ大統領は「悪行にほうびは与えない」と語っており、予想された対応だ。
 オバマ氏は「挑発や脅しを受けて譲歩する、という過去のやり方を変える」との方針で、北朝鮮に向き合ってきた。
 2月の合意で米朝関係の改善が進むかと思われたが、北朝鮮は自らその機会を手放した。
 北朝鮮は声明を米国の敵対的行動と非難し、合意に「これ以上、拘束されない」とした。だが声明は自身の振る舞いがもたらした結果であり、筋違いだ。
 北朝鮮が、また核実験をして揺さぶりをかける、との見方もある。瀬戸際外交は通用しないという教訓を学び、無用な挑発を控えるよう強く求める。
 米国は11月に大統領選を控える。北朝鮮に譲歩すると「弱腰だ」と批判されるため、オバマ氏は動きにくくなった。
 北朝鮮は、ウラン濃縮による核開発にひそかに取り組んでいたが、米朝合意にはこの活動の中止も含まれていた。まずは北朝鮮が濃縮をやめ、国際社会との共存に向けた姿勢を示すべきだ。合意通りに国際原子力機関(IAEA)の監視要員を受け入れることも必要だ。
 中国にも改めて注文したい。
 中国が一番恐れるのは地域の不安定化だが、不安定にしているのは北朝鮮だ。これ以上の混迷を招かぬように、中国はあらゆる手段を使って北朝鮮に働きかけるべきだ。


(2012年4月17日01時49分  読売新聞)
対「北」議長声明 これで核実験阻止できるのか(4月17日付・読売社説)
 北朝鮮の長距離弾道ミサイルを巡る国連安全保障理事会の協議は、発射の強行を強く非難し、安保理決議への「重大な違反」と認定する議長声明の採択で決着した。
 議長声明は、北朝鮮に、新たな弾道ミサイル発射や核実験の実施をしないよう要求し、違反した場合は「安保理が相応の行動を取る」と警告した。各国にも、既存の安保理決議の制裁措置を徹底するよう求めている。
 3年前、北朝鮮が今回と同じく「衛星」打ち上げと称して長距離弾道ミサイルを発射した時も、安保理は議長声明で非難した。今回は、より強いメッセージとなったとは言え、拘束力のある決議でなかったことは物足りない。
 常任理事国の中国は、北朝鮮へ強い圧力をかけることに慎重姿勢を崩していない。自国の安定が損なわれることも警戒している。
 米国との間で、内容は強めても形式は拘束力のない議長声明にする妥協が図られたのだろう。
 これで、北朝鮮の3回目の核実験やさらなるミサイル発射を阻止できるのか。大いに疑問だ。
 安保理は、北朝鮮がミサイル発射や核実験を行うたびに、議長声明や決議で、非難と中止要求を繰り返してきた。だが、軍事的措置や本格的な経済制裁に踏み込んだことはない。北朝鮮が痛痒を感じるはずもない。
 今回も、北朝鮮は決議を無視して、ミサイル発射を強行した。既存の制裁決議に実効性がなかったことを示している。
 日本にとって、北朝鮮の核とミサイルによる脅威は、日に日に増すばかりである。
 問題は、北朝鮮と国境を接し、同盟関係にもある最大の貿易相手国、中国だ。その責任を自覚し、既存の決議に基づく核・ミサイル関連物資や贅沢品の禁輸と、禁輸品の貨物検査を徹底すべきだ。
 「衛星」発射には失敗したが、金正恩・朝鮮労働党第1書記は、新設の国防委員会第1委員長にも就任し、最高権力者となった。
 15日の軍閲兵式には、日本に届く中距離弾道ミサイル・ノドンなど多くの兵器が登場した。
 金氏は演説で、軍事最優先の「先軍革命」路線の継承を表明し、経済建設に平和は大切だが、それ以上に「民族の尊厳と国の自主権が貴重だ」と強調した。核とミサイルの開発継続宣言だろう。
 核とミサイルの開発と、経済立て直しは両立しない。そのことを、国際社会は、金正恩氏に認識させる必要がある。


毎日新聞 2012年04月18日 02時32分
社説:対北朝鮮議長声明 粘り強く変化うながせ
 北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射問題で、国連安全保障理事会はこれを強く非難する議長声明を全会一致で採択した。北朝鮮の挑発外交をやめさせ、3度目の核実験に踏み切らせないためには何をすべきか。日本は各国と協調し、実のある外交を展開していく必要がある。
 今回の議長声明は、09年のミサイル発射後に採択された議長声明に比べて発射を非難するトーンが強くなり、核実験をすれば安保理が「相応の行動」をとるとの警告も新たに盛り込まれた。前回は米国と中国、ロシアの対立で文言調整が難航、発射9日後の採択だったのに対して、今回は3日後の採択となった。
 北朝鮮のミサイル発射は「いかなる核実験または弾道ミサイル技術を使用した発射」も行わないよう定めた09年の安保理決議に違反することは明白であり、私たちは安保理の厳正な対応を求めてきた。議長声明にとどまり、拘束力のある安保理決議にならなかったのは残念だったが、迅速な対応は評価していい。
 国連は主要国の外交上の利害が複雑にからみあう駆け引きの場だ。拘束力のある決議にこだわれば中国が反対し、安保理は具体的な対応を示せない恐れがあった。国際社会の結束の乱れを露呈し、北朝鮮につけこむスキを見せることだけは避けなければならない。安保理のメンバーではない日本と韓国が議長国の米国と連携し、形式は拘束力のない議長声明にとどめる一方、前回より厳しい内容にすることで妥協を図ったのはやむを得なかった面がある。
 対北朝鮮外交の最大の目的は、若い金正恩(キムジョンウン)氏を最高指導者とした北朝鮮に、核開発による強硬路線ではなく経済開放と民主化で世界と協調する路線を選択させることだ。
 そのためには米中露と日韓が足並みをそろえ、ミサイル発射や新たな核実験は国際社会で孤立化の道を歩むだけだという自覚を金正恩氏に持たせるしかない。迂遠(うえん)であっても6カ国協議の枠組みを生かし、対話と圧力の組み合わせで粘り強く北朝鮮の変化をうながす以外にない。
 軍事関連物資の禁輸など、過去の安保理決議に基づく制裁の抜け穴がないかどうかを洗い直すことも必要だ。とりわけ中国の役割が重要だが、周辺各国の一致した対応がいかに欠かせないかを、改めて確認したい。
 北朝鮮の核に最も脅威を受けるのは日本である。米国との間で脅威感に温度差がある状況を作ってはならない。中国にとっても北朝鮮の核保有は望ましいことではないだろう。これは東アジアだけでなく世界全体の安全にかかわる問題だとの認識を国際社会が共有するよう、日本は先頭に立ち外交努力すべきだ。


日経新聞 2012/4/18付
社説:議長声明を生かし強固な対北包囲網を
 北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイルの発射を受けて、国連安全保障理事会がその行動を非難する議長声明を採択した。北朝鮮によるさらなる挑発行為を阻むには、日米韓中ロなど関係国がこの声明を最大限に生かし、圧力を強めることが肝心だ。
 安保理の文書としてより重みがある決議とは違い、議長声明には拘束力はない。本来であれば、北朝鮮には制裁の強化を含めた決議を突きつけるべきだった。
 北朝鮮の行動は2009年の決議を明らかに踏みにじっている。この決議は弾道ミサイルはもちろん、その技術を使ったあらゆる打ち上げを禁じていた。
 だが、安保理の対応は結局、拒否権をもつ米英仏中ロの常任理事国の意向が左右する。
 今回、中国やロシアは発射に強い不快感を示しながらも、北朝鮮を追い詰める決議の採択には慎重だった。安保理議長国の米国はこのため、決議にこだわらない代わりに、厳しい議長声明への理解を中ロから取りつけることにした。
 こうした米中ロの駆け引きの末に採択された議長声明は、やむを得ない産物だったといえよう。
 それなりに厳しい文言が議長声明に入ったことは評価できる。発射は決議への重大な違反であると明記し、北朝鮮がミサイルの発射や核実験を強行すれば、安保理として行動をとると警告した。
 この文言に賛成した以上、北朝鮮が今度、核実験などに踏み切った場合には、中ロといえども制裁の強化をうたった決議に反対できないはずだ。この声明を厳格に適用すれば、北朝鮮の外堀は大きく埋められることになる。
 新たな挑発を抑えるには、まず北朝鮮にこの点を分からせなければならない。日米韓による圧力が欠かせないのはもちろんだが、北朝鮮の後ろ盾である中国による説得がいちばん重要だ。
 北朝鮮はそう簡単には、外部の説得には応じないだろう。最高ポストに就いた金正恩氏は、初めての公の場での演説で、軍事優先の統治を継承する立場を誇示した。軍事パレードでは、新型とみられるミサイルも登場した。
 北朝鮮の新体制がミサイル発射の失敗を取り返すため、核実験に突き進む危険はぬぐえない。韓国と並び、最も深刻な脅威にさらされる日本は、米国と連携し、新たな挑発にも即応できる危機管理体制も整えてほしい。


産経新聞 2012.4.18 03:12
【主張】対北議長声明 核実験封じる制裁にせよ
 国連安全保障理事会は北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を既存の安保理決議の「重大な違反」と強く非難し、核実験などさらなる挑発に「安保理として行動する」と厳しく警告した議長声明を全会一致で採択した。
 日本政府が当初描いた制裁決議に至らなかったのは残念だったが、対北制裁の拡大強化と徹底を求める強い内容となった。過去の発射時と比べ最短で国際社会の対抗意志を明示したことは評価できる。
 問題は、北の金正恩新体制が今後も無謀な行動を重ねる恐れが強いことだ。野田佳彦政権は米韓とも結束して挑発を封じる包囲網を一層強化し、中国などの説得も含めて制裁の実効性を高める措置に全力を挙げてもらいたい。
 安保理議長国の米国のライス国連大使が発表した議長声明は、今回の発射が対北制裁を発動した2006年の1718、09年の1874両決議に違反し、「地域に深刻な懸念を与えた」と断じた。
 その懲罰として、(1)制裁対象団体と品目の追加(2)個人や団体の情報更新-など制裁逃れを防ぐための拡大強化策を15日以内にまとめるよう下部機構の対北制裁委員会に指示した。全加盟国に「制裁履行義務を完全に果たす」よう改めて要請したのも当然の措置だ。
 北の新たな挑発に安保理が「行動する決意」を、中露も取り込んで明記したことにも留意したい。議長声明に決議のような拘束力はないが、全会一致の採択記録は残り、新たな決議採択の際に中国などが抵抗しにくくなった。
 とはいえ、最高権力者となった金正恩氏は、金日成生誕100年演説(15日)で遺訓統治や「先軍政治」の遂行を繰り返した。国際原子力機関(IAEA)要員の受け入れ協議も停止するなど、行動を改める兆候はみられない。
 北の暴発に備え、抑止するにはとりわけ米中の行動が重要だ。
 エネルギーや食糧など北の生命線を握る中国には、北に行動を改めるよう説得し、国連制裁を完全に履行する責務がある。米国には北への金融制裁再発動や拉致問題と絡めて、「テロ支援国指定」復活も検討するよう求めたい。
 そのためにも、今回の国連外交や対米折衝などで日本の存在感が希薄だったのは極めて遺憾だ。野田首相はこの反省も含め、月末の訪米へ向けて日米同盟関係をしっかりと立て直すことが急務だ。


東京新聞  2012年4月18日
【社説】対「北」議長声明 連携し核実験を止めよ
 国連安全保障理事会は北朝鮮のミサイル発射を非難する議長声明を採択した。懸念されるのは、北朝鮮が反発して核実験に踏み切ることだ。国際社会は次の危機に備えなくてはならない。
 安保理の議長声明は発射から三日で採択され、北朝鮮の友好国・中国も賛成した。決議より弱く理事国の妥協の産物との見方もあるが、安保理が迅速に一致して警告を発した点は評価できる。
 三年前のミサイル発射時にも議長声明が採択されたが、今回は追加制裁の可能性にも言及して、より踏み込んだ内容になっている。
 北朝鮮が人工衛星と主張した長距離弾道ミサイルの発射は失敗したが、警戒を緩めてはならない。
 二〇〇六、〇九年にはミサイルを発射してから三カ月以内に地下核実験をした。最近、北東部・豊渓里の基地で新たな坑道が掘削されるなど兆候もある。
 北朝鮮が一貫して主張するのは、人工衛星による宇宙開発技術と核抑止力の保有である。本当の目的は、米本土まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)に小型化した核弾頭を搭載する技術を獲得することではないか。米国と対等に交渉して、体制の保証を取り付けるのが狙いだろう。
 もし核実験を強行すれば、六カ国協議は崩壊の危機に直面する。北朝鮮と米国、さらに韓国、日本との関係は当面修復できない状況になろう。周辺国は連携して阻止したい。新しい指導者、金正恩第一書記に対して、核実験をすれば支援は望めず経済破綻は一層進むと警告せねばならない。特に中国の役割が大きい。
 中国は発足間もない金正恩体制を支えようとしているが、権力継承の「祝典」が終わったいま、国際社会の厳しい見方を北朝鮮に伝えるべきだ。軍事優先を続けるなら経済支援を大幅に減らすと、強い圧力をかけるよう望む。
 米国は北朝鮮に対する食糧支援の中止を決めた。独自の制裁も準備し、北朝鮮が核活動の一時停止に応じる米朝合意は「風前のともしび」である。
 日本政府は発射直後に米軍からの情報を得たが、確認に手間取り公表が遅れた。北朝鮮のミサイルは数分で日本領空に飛来するから、まず第一報を発表しなければ何の意味もない。防衛省から官邸への通知時刻にも不明な点がある。危機管理体制は大丈夫なのか、発足した対応検証チームによる詳細な報告が必要だ。


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