2015年6月15日月曜日

普天間騒音判決 基地撤廃こそ解決策だ 違法状態を放置するな 被害の防止は国の責務だ 


沖縄県の米軍普天間飛行場周辺に住む人々に総額約七億五千四百万円を支払うよう那覇地裁沖縄支部が命じた。米軍機の騒音で精神的苦痛などを受けたためだ。基地撤廃こそ最終的な解決策である。

東京新聞)【社説】普天間騒音判決 基地撤廃こそ解決策だ(6/12
信濃毎日新聞)社説:普天間判決 民意に沿う解決を早く(6/12
神戸新聞)社説:普天間騒音訴訟/被害の防止は国の責務だ(6/12
中国新聞)社説:普天間騒音で賠償命令 「違法」放置は許されぬ(6/13
琉球新報)<社説>普天間騒音訴訟 法治国家と言えるのか(6/12
沖縄タイムス)社説:[普天間騒音訴訟]違法状態を放置するな(6/12



東京新聞 2015612
【社説】普天間騒音判決 基地撤廃こそ解決策だ
 沖縄県の米軍普天間飛行場周辺に住む人々に総額約七億五千四百万円を支払うよう那覇地裁沖縄支部が命じた。米軍機の騒音で精神的苦痛などを受けたためだ。基地撤廃こそ最終的な解決策である。
 密集した住宅地をかすめるように巨大な軍用機が飛んでいく。すさまじいごう音で授業や会議などを中断せざるを得ない。フェンスをはさんで、飛行場と住宅や小学校が隣接している。
 訴えた約二千二百人もの人々は二〇〇九年以降、「うるささ指数(W値)」が七五以上の地域に居住歴がある。「家ががたがたと音を立てるほどのひどさだ」という人もいるし、「夜に跳び起きるほどだ」という人もいる。
 米軍の戦闘機や対潜哨戒機などが離着陸するときは、爆音そのものだ。垂直離着陸輸送機「オスプレイ」は日常的に飛んでいる。「恐怖を感じる」と住民たちは訴えている。世界一危険な基地だとも言われるほどだ。実際に〇四年には飛行場近くの沖縄国際大学に米軍のヘリコプターが墜落する事故も起きている。
 「騒音被害は深刻かつ広範にわたる。受忍しなければならない程度と評価できない」と同支部が判断したのは当然といえる。騒音による日常生活の妨害やイライラ、不快感もあるし、軍用機の墜落という不安や恐怖による精神的な苦痛もある。
 「公共性があるからといって被害を受忍すべきだとは言えない。飛行場の供用は原告らの権利を侵害している」-。極めて明快な司法判断と評価する。
 問題なのは、普天間飛行場という米軍基地がいつまでも使用され続けていることだ。早期の返還が強く望まれる。危ない基地が撤廃されない限り、住民の平穏な生活は戻りはしない。
 米軍基地の騒音問題は、嘉手納(沖縄)や厚木(神奈川)、横田(東京)などでも存在する。厚木基地の訴訟では、司法は自衛隊機の夜間の飛行差し止めを命じたものの、米軍機に対しては認めなかった。「国の支配が及ばない第三者の行為」という理屈だからだ。日米地位協定で米軍基地内には日本の法律の規制が適用されない。
 だが、基地周辺に住む人々にとって、爆音の最大原因はやはり米軍機である。騒音と危険に脅かされる住民たちの生活を放置していいはずがない。さまざまな不備がある同協定を改めることに政府は力を注ぐべきである。


信濃毎日新聞 20150612日(金)
社説:普天間判決 民意に沿う解決を早く
 沖縄県の米軍普天間飛行場の騒音をめぐる訴訟で那覇地裁沖縄支部はきのう、国に7億5千万円余の損害賠償を命じた。
 騒音は基地周辺の住民の我慢の限界を超えている。判決はそう指摘した。国は十分な対策を取らなかった責任を再度、司法に突きつけられたことを真摯(しんし)に受け止めなければならない。
 飛行場は宜野湾市の中心部にあり、市の面積の約4分の1を占める。ヘリコプター部隊が中心で、海外での事故が相次ぐ新型輸送機MV22オスプレイも常駐する。
 巨大な軍用機が住宅密集地をかすめるように通過する。ごう音で会議や授業はたびたび中断し、睡眠も妨げられる。2004年には飛行場近くの大学にヘリが墜落する事故も起きた。
 この現実を見れば、当然の判決といえる。「公共性があるからといって被害を受忍(我慢)すべきだとは言えない。飛行場の供用(使用)は原告(住民)らの権利を侵害している」と判示した。
 ただ、訴えた住民約2200人のうち約80人は請求を退けられた。一定の「うるささ指数」に達しない地域に住むことなどが理由だ。騒音の程度に違いはあっても、墜落への不安や恐怖は変わらない。判決は疑問も残した。
 普天間飛行場の騒音訴訟の判決は、約390人の第1次訴訟の福岡高裁判決(2010年)以来だ。この時も国に賠償を命じた。夜間や早朝の飛行差し止め請求は退け、確定した。今回は、原告の大半が高齢者で裁判を長引かせないために賠償だけを求めていた。
 問題は、いくら賠償されても騒音や危険性は残ることだ。
 1996年に結んだ日米の騒音防止協定は、夜10時から翌朝6時までの飛行は必要最小限にすることなどを定めている。いっこうに守られず、福岡高裁判決が「協定は形骸化している」と批判したほどだ。オスプレイの人口密集地上空や夜間の飛行などを制限した日米合意も違反が常態化している。政府がまずやるべきは合意の徹底を米側に促すことだ。
 今回の判決は、第1次訴訟以降、国が何ら根本的解決を図っていないことを厳しく指摘した。基地を抱える沖縄の苦しみにしっかり向き合わなければならない。
 政府は「名護市辺野古への移設が唯一の解決策」と繰り返すが、それを不作為の言い訳にできない。同じ県内への移設に反対する民意は沖縄県知事選や衆院選などで示されている。民意に沿った解決策を早急に進めるのが筋だ。


神戸新聞 2015/06/12
社説:普天間騒音訴訟/被害の防止は国の責務だ
 飛行機のエンジン近くに身を置けば、騒音の激しさは両手で耳を押さえても我慢しづらい。
 それと同レベルの騒音が、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場周辺では観測されることがある。県が確認した最高値の121デシベルは人間の鼓膜が耐えられる限界に近いという。
 那覇地裁沖縄支部はきのう、米軍機の騒音で精神的苦痛を受けたとする住民約2200人に対して約7億5400万円を支払うよう、国に命じる判決を言い渡した。
 日常生活の平穏を害された精神的苦痛への損害賠償で、住民の訴えをほぼ認めた内容だ。被害の深刻さを思えば当然と言える。
 普天間の騒音問題では、別の住民らが提訴し、福岡高裁那覇支部が国に約3億6900万円の賠償を命じた判決が5年前に確定した。
 今回の判決は、その後に提訴した住民の訴えに対するものだ。米軍機が墜落することへの不安も精神的苦痛として認定するなど、前回の判決を踏襲している。状況はいまだに改善されておらず、司法があらためて警鐘を鳴らした形である。
 これ以上、問題を放置することは許されない。国は米軍に飛行場運用の見直しを強く求め、騒音被害の防止に取り組まねばならない。
 市街地にある普天間は「世界一危険な飛行場」と言われる。離発着時の騒音だけでなく、過去に米軍機が墜落する事故も起き、住民は不安を抱えて暮らしている。
 国は名護市辺野古沿岸部への飛行場移設を「唯一の解決策」とする。沖縄県などの反対を押し切って埋め立て予定地の地質調査を進めるが、対立は深まるばかりだ。
 このままでは「2019年2月までに普天間を運用停止」とした政府の約束が空手形になりかねない。普天間の固定化は絶対に避けねばならず、政府は民意をくんで計画の仕切り直しをする必要がある。
 ただ、騒音対策は切り離して考えるべきだ。判決も基地に一定の「公共性」があることは認めたが、「だからといって被害を受忍すべきとは言えない」と指摘した。
 判決は「うるささ指数」75以上を賠償の対象とした。少なくとも騒音がそれを下回るよう手だてを尽くすのが、国の責務だ。住民の被害を放置した言葉だけの「基地負担軽減」は、決して理解を得られない。


中国新聞 2015/6/13
社説:普天間騒音で賠償命令 「違法」放置は許されぬ
 米軍基地の負担を、住民はどこまで耐え忍ばなくてはならないのか。沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の騒音をめぐる訴訟で、またも重い判決が出た。
 おととい那覇地裁沖縄支部は周辺住民の訴えを一定に認め、合わせて約7億5千万円を賠償するよう国に命じた。賠償命令が確定した普天間の第1次訴訟を踏襲した格好だ。
 騒音の目安となる「うるささ指数(W値)」で75以上の地域には騒音の違法性を認めて賠償する―。あちこちの騒音訴訟で定着する流れも踏まえている。まずは妥当な司法判断だろう。
 住宅地に囲まれ、学校も目の前にある普天間。事故の危険性を日米政府とも認めている。さらに米軍機の騒音も放置できない状況であることが、あらためて鮮明になったといえる。
 今回は第1次訴訟と違い、原告が求めない飛行差し止めは争点とならなかった。とはいえ基地騒音を考える上で重要な指摘が判決には含まれていよう。
 「国民全体の利益につながる公共性を有する」と基地の存在自体は認める一方、その公共性だけで被害を受忍すべきものとはならない、とした。その上でW値75以上なら「違法な権利侵害」「法益侵害」と断罪した意味は重い。それに加えて、国による防音工事も違法性を減らさないとした点も目を引く。
 国は厳しく受け止めるべきである。まず早急かつ目に見える負担軽減を考えなければならない。政府と沖縄県が激しく対立する名護市辺野古沖への移設計画は、対応に手をこまねく大義名分とはならない。このまま埋め立て工事を強行したとしても実際の基地移転は相当先になるからだ。それまでの騒音や危険を放置するのは許されない。
 安倍政権が沖縄側にいったん約束したはずの「2019年2月までの普天間の運用停止」にしても、実際には日米間で棚上げされた状況だ。もし沖縄の住民に理解と協力を求めたいのなら、米軍側に厳しい飛行制限と騒音の抑制をすぐにも要求するのが筋ではなかろうか。
 事は沖縄だけの問題ではない。各地の米軍基地の騒音についても同じことはいえよう。
 頭に浮かぶのは米海兵隊岩国基地のことだ。神奈川県の厚木基地からの空母艦載機部隊の移転に向け、米軍住宅などの工事が本格化しつつある。
 5年前に岩国基地の滑走路は沖合に1キロ移設された。それまでの騒音が一定に軽減された側面は確かにあろう。しかし厚木周辺の住民を長年苦しめる艦載機の激しい騒音が、現実の住民生活にどれほど影響をもたらすのかは必ずしも見通せない。
 そもそも忘れてならないのは他の基地なら違法かつ賠償の対象とされてきたW値75以上というエリアが、現在もこれからも岩国に存在することだ。騒音被害の損害賠償などを国に求めた初の住民訴訟も既に結審し、判決を待つ段階である。
 各地で相次ぐ基地騒音訴訟での厳しい司法判断に対し、国は「賠償金で済むなら」と安易に考えてきたのではないか。
 違法だから賠償せよと裁判所から命令されたのに、現状を漫然と放置する。そんな姿勢なら本質的にいえば法治国家の体をなさない。日米同盟の強化の陰で、その矛盾にどこまで見て見ぬふりをするのだろう。


琉球新報 2015612 6:02 
<社説>普天間騒音訴訟 法治国家と言えるのか
 米軍普天間飛行場騒音訴訟の判決で那覇地裁沖縄支部は国に約7億5400万円の支払いを命じた。「騒音被害は深刻かつ広範だ。受忍しなければならない程度とは評価できない」と明言している。
 国の防音対策も飛行場の違法性軽減に影響しないと一蹴した。違法性は明確だ。法治国家であるなら国は飛行停止を求めるべきだ。
 普天間飛行場をめぐっては2002年に第1次爆音訴訟が始まった。08年には一審で国に賠償を命じ、10年の控訴審で賠償は増額された。賠償を命じるのは今回で3回目となる。
 嘉手納基地でも3次にわたり爆音訴訟があり、1次、2次では一審と控訴審でそれぞれ賠償が命じられた。1県だけで爆音をめぐる国への賠償命令が7回も下ったのだ。こんな県がどこにあるか。
 裁判所が賠償を命じるというのは、沖縄の現状が合法の範囲を逸脱すると認めたに等しい。賠償命令が繰り返され、一向に改善されないのなら、違法は常態化するということになる。
 では、違法状態の原因者である米軍基地を国が撤去しようとせず、違法な飛行を止めようともしない沖縄は、国が違法状態の永続を住民に強制しているということだ。一地域に永続的違法を強制する国が、法治国家と言えるのか。
 安倍晋三首相は4月、米議会で、中国の海洋進出をけん制して「広い海を法の支配が貫徹する海に」と演説した。自国で法治を貫徹せずして、よく演説できたものだ。
 在日米軍基地は日米地位協定で米軍の排他的管理権を定めている。基地の使い方について日本政府は一切口出しできないとする、イタリアやドイツならあり得ない屈辱的規定だ。このため国内法は適用されないから、航空法に反する低空飛行が平然と繰り返される。
 それだけではない。地位協定は賠償金の分担を定めているが、爆音訴訟の賠償は米側が拒否している。特権的で不平等な地位協定すら守らせられずして、「法の支配」もあるまい。
 安倍首相は米国で「自由、民主主義、人権などの基本的価値」も強調した。沖縄の自由も民主主義も人権もないがしろにしておいて、矛盾を感じないのだろうか。
 安倍政権は前知事に対し19年2月までの普天間の運用停止を約束した。だが日米首脳会談では交渉どころか、言及すらしていない。無責任国家ここに極まれりである。


沖縄タイムス 2015612 05:30
社説:[普天間騒音訴訟]違法状態を放置するな
住宅密集地にある米軍普天間飛行場の騒音被害の状況は「違法な権利侵害」だと、那覇地裁沖縄支部が認定した。2010年7月に示された第1次普天間爆音訴訟の控訴審判決に続き、司法が再び、騒音状況の違法性を認めたことになる。
 米軍機の騒音によって静かな暮らしを妨害され精神的な苦痛を受けたとして周辺住民約2200人が、国に約10億1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、那覇地裁沖縄支部であった。
 判決は「騒音被害は深刻かつ広範にわたる」「公共性があるからといって被害を受忍すべきだとは言えない」と指摘し、「うるささ指数(W値)」75以上の地域の原告に総額約7億5400万円を支払うよう国に命じた。
 ヘリの低周波音による苦痛は、裏付ける証拠がないとして認めなかったものの、騒音による睡眠・学習・テレビ視聴などの妨害や騒音のイライラ感、不快感、墜落の不安などの精神的苦痛を認めた。
 政府の騒音対策の不十分さや根本的解決に向けた取り組みの弱さが、司法によって厳しく指弾されたのである。
 今回の訴訟が第1次、第2次(係争中)普天間爆音訴訟と異なるのは、夜間・早朝の飛行差し止めを求めず、損害賠償だけにとどめた点だ。原告の中には高齢者も多く、訴訟の早期解決を図るために賠償請求訴訟にしたという。
 訴えの内容は異なっても、両訴訟の原告の思いは一つ。普天間飛行場の一日も早い返還である。政府は本気になって違法性解消に取り組まなければならない。
    ■    ■
 政府の決まり文句は「辺野古移設が唯一の選択肢」だという恫(どう)喝にも似た一方的断言と「辺野古移設が実現しなければ普天間が固定化する」という脅し文句である。だが、その主張はすでに破たんしている。
 普天間が固定化するということは、司法が認定した違法状態を放置するということであり、政府がその言葉を口にすること自体、自覚のなさを白状するようなものだ。
 安倍晋三首相は、仲井真弘多前知事に普天間飛行場の「5年以内の運用停止」に努力することを約束した。だが、米軍は終始、「5年以内の運用停止」を否定し、政府も正式な場での要請を行っていない。
 辺野古に新基地を建設し、普天間の機能を移設したあと、普天間を返還するとすれば、完成までの工期からして、もはや「一日も早い危険性除去」を放棄した、と見なさざるを得ない。
    ■    ■
 この問題のそもそもの原点は「沖縄の負担軽減」であり、「地元の頭越しには進めない」というものだった。それが米軍再編によって大きく変わってしまった。
 今や辺野古移設は、米軍にとって、事故のリスクや訓練の制約を解消し、北部への拠点集約化によって「沖縄における米軍のプレゼンスの長期的な持続可能性を強化する」ための措置になった。
 選挙で「辺野古ノー」の圧倒的な民意が示されたことを受けて、一日も早い普天間返還の方策を探るべきだ。


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