2011年8月2日火曜日

米債務危機 上限合意 危機は去っても米財政のリスクは残る

<各紙社説>
読売)米債務上限 薄氷の妥協でデフォルト回避 (8/2)
日経)危機は去っても米財政のリスクは残る (8/2)
産経)米債務上限合意 課題を残した「危機回避」 (8/2)
東京)米債務危機 米欧の政治主導に学べ (8/2)
朝日)米債務問題―妥協こそ世界への責任(7/31)
日経)世界の危機回避へ米債務問題の決着を (7/29)
読売)米財政危機 世界の混乱回避へ歩み寄れ(7/28)
毎日)米債務上限交渉 世界を道連れにするな(7/27)





(2011年8月2日01時39分  読売新聞)
米債務上限 薄氷の妥協でデフォルト回避(8月2日付・読売社説)
オバマ米大統領は、米国政府の借金枠である債務上限を引き上げることで与野党と合意した。
米国政府の債務は、法定上限の14・3兆ドル(約1100兆円)に達し、引き上げ期限が2日に迫っていた。
期限切れ寸前に、ようやく妥協が成立し、国債の償還資金がなくなる債務不履行(デフォルト)という最悪の事態を回避できたことを歓迎したい。
デフォルトに陥れば、基軸通貨ドルの信認が急落し、主要国や世界の金融機関が保有する米国債の価格が暴落して、金融市場の混乱を招いただろう。
外国為替市場では、安堵感からドル売り圧力が弱まり、急激な円高・ドル安にいったん歯止めがかかった。日本やアジアなどの株価も軒並み上昇に転じた。金融市場の一層の安定が望まれる。
大統領によると、合意内容は、10年間で2・4兆ドルの財政赤字削減と、同規模の債務上限引き上げを2段階で実施する。
まず、0・9兆ドルの歳出削減とセットで、債務上限を同額ただちに引き上げる。
さらに議会に設置する超党派委員会が年内に1・5兆ドルの財政赤字削減策をまとめ、債務上限を同じく引き上げるというものだ。
上下両院は合意に基づいた法案を速やかに可決し、大統領の署名を経て成立させるべきだ。
今後の焦点は、超党派委員会が協議する赤字削減策である。
昨年の中間選挙で躍進した野党共和党保守系の「茶会党」は、増税に反対している。歳出カットと増税などを組み合わせた財政再建を目指したい大統領や、民主党の主張との隔たりは大きい。
来秋の大統領選への駆け引きが絡み、実効性のある赤字削減策で合意できるかどうか。増税の是非が争点になろう。
与野党の攻防で協議が難航し、赤字削減が不十分に終わると、格付け会社が米国債の格下げに踏み切る可能性もある。世界の市場に及ぼす影響が懸念される。
財政健全化へ、大統領は指導力を発揮しなければならない。議会の責任も極めて重い。
一方、円高圧力は続いており、1ドル=76円台の歴史的な円高水準は日本にとって厳しい。
円高は輸出企業の収益を圧迫し、景気回復の足を引っ張る。円高対策で海外生産が加速すると、産業空洞化も招く。各企業は国内生産を維持しながら、超円高に対応できる戦略を練ってほしい。政府も支援を拡充すべきだ。


日経新聞  2011/8/2付
社説:危機は去っても米財政のリスクは残る
米国の与野党幹部が連邦債務の上限引き上げで大筋合意した。米国債の債務不履行(デフォルト)を避けるため、議会での手続きを直ちに完了してほしい。ただ、本格的な財政再建のメドは立たないままだ。米財政問題が世界経済や金融市場のリスクであり続けるのは間違いない。
米連邦債務は5月中旬に法定上限の14.3兆ドル(約1110兆円)に到達し、国債を増発できない状態が続いてきた。議会が2日の期限までに上限の引き上げを認めないと、デフォルトの危険があった。
与野党幹部は今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減する代わりに、上限を2.1兆ドル引き上げる内容で折り合った。世界的な危機の回避を優先し、事態の収拾に動いたことをひとまず歓迎したい。
上限引き上げの権限はオバマ大統領に与える。2.1兆ドルの引き上げに踏み切れば、来年秋の大統領選までの財政運営に支障が生じることはなさそうだ。下院共和党の出方にまだ不透明な点が残るが、一刻も早く実現してもらいたい。
今後10年間の財政赤字削減には課題が残った。上限の引き上げと併せて先行的に決定するのは1兆ドルにとどまる。残りの1.5兆ドルについては、超党派の特別委員会が11月までに詰めることになった。本格的な対応を先送りしたのは残念だ。
与党の民主党は高齢者向け医療保険の削減に消極的である。野党の共和党は富裕層向けの増税に難色を示す。こうした党派の対立が解けず、具体策が決まらないようでは困る。保守系の草の根運動「茶会党」が安易な妥協を阻もうと、共和党議員に圧力をかけ続けるならば、大きな成果が望めなくなる。
2011会計年度(10年10月~11年9月)の米財政赤字は過去最大の1.6兆ドルに膨らむ見通しだ。12~21年度の累積赤字は7.2兆ドルにも達する。2.5兆ドルの削減でも巨額の赤字が残るだけに、実行できなかったではすまされない。
デフォルトを回避できても赤字削減が不十分なら、米国債格下げの可能性が残る。ドルの急落や長期金利の高騰というリスクを排除できるわけではない。与野党には財政再建の努力を続ける責務がある。
今回の合意を受けて、世界的なドル安にはいったん歯止めがかかった。しかし米景気の減速懸念もあって、円相場は最高値(1ドル=76円25銭)に迫った。政府・日銀は引き続き市場の動向を注視する必要がある。円高が止まらない場合には、市場介入をためらうべきではない。


産経新聞 2011.8.2 03:45
【主張】米債務上限合意 課題を残した「危機回避」
米連邦債務の上限引き上げ問題で与野党がようやく合意に達し、米国債の債務不履行は回避される見通しになった。
合意が2日までにできなければ円高ドル安や株安が加速し、世界経済が大混乱に陥る懸念が強まっていた。ひとまず危機が回避されたのは歓迎したいが、世界経済の主導国である米国としてなすべきことは多い。その場しのぎの危機回避に終わってはならない。
今回の合意では債務上限を引き上げ、財政赤字の総枠を決めた。だが赤字削減策の具体化は今後の与野党協議に先送りされ、完全にメドがついたとは言い難い。
米国の債務問題が世界から注目された理由は、ギリシャに代表される欧州の債務危機がくすぶっているからだ。しかも、米景気回復の遅れから失業率は9%台に高止まりし、個人消費は低迷している。オバマ政権は追加の経済政策を打ち出したいところだが、「小さな政府」を求める共和党は財政支出拡大に強く反発、両者の深い溝はそのままだ。
米国の現状は、財政再建とともに景気対策にも目配りしなければならない苦境にある。財政赤字削減に目を奪われて、経済を強くする政策がおろそかになれば、政治・外交も含めて米国全体が内向きになりかねない。
中国が台頭する中でアジア太平洋の安全保障を確保し、日米同盟を強化していく上でも米国の役割は欠かせない。オバマ大統領には外向きで「強いアメリカ」の再生を何としてもめざしてほしい。
米国が直面する問題は、日本にとっても「対岸の火事」ではない。国内総生産(GDP)の倍に迫る債務残高を抱えている中で、東日本大震災からの復旧・復興もやり遂げなければならない。オバマ氏が「ワシントンの政争が米国民を巻き添えにするのは許されない」と表現したのと同様の状況が日本でも続いている。
特に、赤字国債発行に必要な特例公債法案の成立に向けた与野党協議が一向にまとまる気配を見せない。このままでは今年度の予算執行ができなくなり、国民生活や景気への悪影響は必至だ。
成立の遅れは、日本の債務問題に対する懸念を強める。特例公債法案は、菅直人首相が退陣の条件とした一つでもある。与党はばらまき政策を見直し、野党との合意を急がなければならない。


東京新聞 2011年8月2日
【社説】米債務危機 米欧の政治主導に学べ
米国の債務上限引き上げをめぐって民主、共和両党が合意した。ひとまず危機を回避した形だが、財政赤字はなお続く。欧州の財政危機も予断を許さない。問われているのは政治の指導力だ。
米国では連邦政府の国債発行や借入金など債務の上限が法律で決められている。債務は十四兆ドル余の上限に達し、二日までに引き上げられないと債務不履行(デフォルト)になる懸念があった。
国際金融取引でもっとも安全とみられ流通度も高い米国国債が償還不能という前代未聞の事態になれば、金融市場が大混乱に陥りかねない状況だった。米国の信用をぎりぎりで守った点で合意を評価したい。
今回の合意は二段構えだ。債務上限を引き上げる条件として、まず十年間で九千百七十億ドルの歳出を削減する。そのうえで超党派の特別委員会をつくり、一兆五千億ドルの追加削減をめざす。いずれも上下両院で法案可決が必要だ。
民主党は社会保障費など歳出削減はできるだけ抑える一方、高所得者の増税をしたい。逆に増税には強く反対し、大幅な歳出削減をめざす共和党という対立の基本構図は今後も続く。
とはいえ、妥協が成立しなければ、金融不安の悪影響は米国にとどまらず世界経済全体に及ぶ。両党には党利党略を超えた大局的判断を望みたい。
財政危機は欧州でも深刻になっている。ギリシャ危機がアイルランドやポルトガルに飛び火し、一時は欧州の大国であるイタリア、スペインの国債も売られた。
欧州は国際通貨基金(IMF)と合同で追加支援策を決定し、国債借り換えで民間金融機関にも負担を求める異例の対応をしたが、こちらも、とりあえず小康状態を取り戻しているにすぎない。危機の芽は残っている。
財政危機は日本も同じである。ただ菅直人政権は増税策に傾斜しているのに対して、米欧が歳出削減にも同時に取り組む姿勢を見せているのは大きな違いだ。官僚主導でなく政治主導である点もおおいに学ぶ必要がある。
金融市場では、一時一ドル=七六円台まで円高が進んだ。だが、円高は米欧危機の反動というより東日本大震災後の財政支出拡大と金融引き締めが基本的原因だ。実際にマネタリーベースの増加率は五月に減少している。
日銀には、見せかけの緩和策ではなく、通貨供給を拡大する真の緩和策を望む。


朝日新聞 2011年7月31日(日)付
社説:米債務問題―妥協こそ世界への責任
米国債は債務不履行(デフォルト)に陥るのか。
世界経済の要である米政府の信用が、国内の深刻な政治対立で危機に直面している。米政府の債務が14兆2940億ドルの上限いっぱいになり、議会に引き上げを認めてもらう問題がこじれにこじれているのだ。
政府の資金繰りが限界を迎えるのは8月2日。新たな借金ができずに、米国債がデフォルトや格下げとなれば「世界の金融システムへの衝撃」(バーナンキ米連邦準備制度理事会議長)は避けられない。米議会は早急に妥協する必要がある。
米国は史上最悪の累積赤字を抱え、債務上限の引き上げは向こう10年間の財政再建策とセットで議論されている。
だが、昨秋の中間選挙の結果、上院で与党の民主党が、下院で野党共和党が、それぞれ多数を握る「ねじれ」構造となったことで協議が難航している。
今月21日には赤字3兆ドル削減で合意寸前までいったが、増税の是非や来年の大統領選をにらんだ駆け引きもあって決裂。その後、上院民主党と下院共和党で別々の案をまとめるなど、状況は一段と混迷している。
赤字削減では両案に大差はない。違いは、民主党案がオバマ大統領の任期をほぼカバーする2.4兆ドルの上限引き上げを認めるのに対し、共和党は年内分の9千億ドルを引き上げ、年明けに再協議をする「二段構え」である点だ。大統領選挙に向け、上限問題を再び政治的な駆け引き材料に使うもくろみなのだ。
妥協への最大の障害は、「小さな政府」を旗印に、共和党内で上限引き上げに反対する茶会(ティーパーティー)の勢力だ。下院共和党の茶会議員連盟は約60人おり、離反すれば共和党は過半数が取れない。議員連盟の会長が大統領選の有力候補に浮上していることも、強硬路線の背景にある。
金融市場はしびれを切らし、ニューヨーク株の下落、ドル安など米国売りが進み始めている。円相場は1ドル=76円台に突入し、戦後最高値寸前まで上昇している。米議会は2008年にリーマン危機の対策法案を否決し、史上最大の株価暴落を招いたことを思い起こすべきだ。
放漫な財政に対して納税者の論理を叫ぶことは大事だろう。しかし、それが世界経済を窮地に追いやるなら本末転倒だ。
欧州の危機が象徴するように、政府債務への信用は世界的に動揺しつつある。米議会は肝試しまがいの狭量な政争から早く脱し、良識とバランス感覚を取り戻してほしい。


日経新聞 2011/7/29付
社説:世界の危機回避へ米債務問題の決着を
米連邦債務の上限引き上げを巡る協議が暗礁に乗り上げている。このままでは米国債の債務不履行(デフォルト)に発展し、世界経済や金融市場が危機的状況に陥りかねない。与野党は党派の対立を乗り越え、債務問題の決着を急ぐべきだ。
米連邦債務は5月中旬に法定上限の14.3兆ドル(約1110兆円)に到達した。8月2日の期限までに上限を引き上げないと、国債を増発できない。高齢者の年金や公務員の給与を支給できず、発行済みの国債の利払いにも支障が生じる。
この問題を放置してきた与野党の罪は重い。市場ではデフォルトへの懸念が強まり、米国発のドル安・株安が世界中に波及した。そのあおりで円相場は1ドル=77円台まで上昇し、東日本大震災後につけた最高値の76円25銭も視野に入りつつある。国内景気の持ち直しを妨げる急激な円高は看過できない。
だが、期限まで1週間を切っても着地点は見えない。与党の民主党は10年間で2.7兆ドルの財政赤字を削減する代わりに、これと同程度の法定上限引き上げを一括して実施したい考えだ。野党の共和党は0.9兆ドル程度の赤字削減と上限引き上げを認め、本格的な追加措置を半年後に検討するよう求める。
来年秋の大統領選を乗り切れるだけの引き上げ幅を確保しておきたい民主党と、2段階の引き上げで歳出カットの上積みを迫る共和党の対立は根深い。昨年秋の中間選挙で旋風を巻き起こした保守系の草の根運動「茶会党」が共和党の若手議員らに圧力をかけ、民主党との妥協を阻んでいるのも問題である。
もはや党利党略に明け暮れている場合ではない。米国債のデフォルトが現実になれば、ドルの急落や長期金利の高騰を招く恐れがある。与野党は危機の回避を最優先し、法定上限を直ちに引き上げるべきだ。
2011会計年度(10年10月~11年9月)の米財政赤字は過去最大の1.6兆ドルに膨らむ。赤字削減の道筋を示さず、法定上限だけを引き上げれば、米国債のデフォルトを避けられても格下げのリスクは残る。こうした不安にも応えられる合意点を探るのが望ましい。
日本も手をこまぬいてはいられない。主要国とも緊密に連携し、危機管理に万全を期す必要がある。民間企業は電力不足だけでなく、円高加速にも悲鳴を上げている。円高に歯止めがかからないようなら、円売り介入をためらうべきではない。当局がその備えを怠り「状況を注視する」と繰り返すだけでは困る。


(2011年7月28日01時14分  読売新聞)
米財政危機 世界の混乱回避へ歩み寄れ(7月28日付・読売社説)
米国政府の債務上限の引き上げを巡って、オバマ大統領と与野党の協議が難航している。
世界経済や市場の混乱を回避するために、歩み寄ることが求められよう。
米国政府の借金枠である連邦債務は、法律で定められた上限の14・3兆ドル(約1115兆円)に達している。
政府は8月2日の期限までに、議会から上限引き上げの同意を得ないと、新たに国債を発行できず財政資金が底をつく。公務員への給与支払いや、年金などの給付が滞る見通しだ。
時間切れが迫る中、警戒感が高まり、外国為替市場ではドルが売られ、円相場は約4か月ぶりに1ドル=77円台まで急騰した。
ドルリスクに伴う円急騰が日本の輸出企業の収益に打撃を与え、景気回復や震災復興に水を差す。憂慮すべき事態と言えよう。
米国の財政協議の焦点は、債務上限の引き上げ幅と過去最悪に膨らんだ財政赤字の削減である。
野党共和党は、ひとまず上限を1兆ドル引き上げ、年末までに赤字削減策を検討したうえで、上限をさらに引き上げる案を提示した。来年秋の大統領選に向け、揺さぶりをかける狙いだろう。
一方、与党の民主党案は、2・5兆ドルの大幅な上限引き上げだ。選挙前に問題を再燃させたくないという思惑がうかがえる。
事態が緊迫するのは、大詰めの協議が不調に終わった場合だ。
米国債の償還に必要な資金が賄えない債務不履行(デフォルト)に陥ったり、国債の格付けを引き下げられたりする恐れがある。
中国や日本政府のほか、世界の金融機関が米国債を大量に保有している。米国債の信認低下で価格が急落して損失が生じ、世界の株価が軒並み値下がりするような混乱が起きかねない。
危機を防ぐ責任は米国にある。大統領が指導力を発揮し、債務上限引き上げを実現することが期待される。与野党も政治ゲームを過熱させず、世界経済や市場の厳しい現実を直視すべきだ。
財政赤字の削減も課題だが、増税などの抜本的な財政再建策については、切り離して協議することが現実的な選択肢ではないか。
欧州では、財政危機が再燃したギリシャが欧州連合(EU)などに追加支援を仰いだが、危機封じ込めの展望は不透明だ。
先進国で最悪の財政赤字を抱える日本は、欧米の混乱を警鐘と受け止める必要がある。日本も財政健全化を急がねばならない。


毎日新聞 2011年7月27日 東京朝刊
社説:米債務上限交渉 世界を道連れにするな
「ありえない」と思われてきた事態が、日一日と現実に近づいている。世界で最も信用力が高い米国債の債務不履行(デフォルト)だ。
期限は8月2日。それまでに米議会が現行14・3兆ドル(約1130兆円)の連邦債務の法定上限を引き上げられなければ、政府の現金は底をつき、公務員への給料支払いや社会保障の給付が止まり、行政サービスが深刻な停滞を余儀なくされる。
だが最も心配なのはデフォルトによる金融市場の混乱や世界経済への打撃だ。市場はまだ「ありえない」と土壇場での決着を信じようとしているが、円相場が一時、1ドル=77円台に突入するなど、次第に緊迫の度合いが高まってきた。
米格付け会社、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが初めてトリプルAという最高位の格付けを与えた1917年以来、1世紀近く最もデフォルトから遠い位置にあった米国債である。想定外の事態に陥った時の影響は極めて予測しがたい。
ところが市場や世界の不安をよそに、ワシントンでは今なお、内向きの政治ゲームが続く。与野党の溝は狭まるどころか、むしろ修復し難いほど開きつつあるようだ。
債務の上限引き上げを今年、来年の2段階で行い、本格的な財政赤字削減策の協議を2段階目の引き上げと絡めたい共和党。来年秋の選挙前に相手を揺さぶる狙いがある。これに対し民主党は今回1回で来年末までの必要分を引き上げたい考えだ。
政治家が次の選挙を意識するのはどこの国でも同じだろう。特に全議席が2年ごとに改選となる米下院では、議員が常に選挙区受けを狙った言動を取りがちだ。その下院で過半数を握るのが昨年の中間選挙で躍進した共和党だが、勝利を支えた保守系草の根運動「ティーパーティー」から、上限引き上げに断固反対するよう強い圧力がかかっている。
しかし、ここはドルの信用を守るという、はるかに大きな国益を優先させるべきだ。債務の上限引き上げで早急に合意することはもちろん、実効性のある抜本的な財政赤字削減策も不可欠である。中途半端な妥結では、結局、格下げを招き、短期的にせよ、ドルの急落(円の急騰)や長期金利の急上昇、世界的株安など負の連鎖が起きる恐れがある。
「ワシントンの政争が米国民を巻き添えにするようなことは許されない」--。事態打開の道が見えない中、オバマ大統領は国民向けに演説し妥協を呼びかけた。しかし巻き添えになりそうなのは米国民だけではない。リーマン・ショックからまだ3年もたたないのに、世界が再度、米国発の金融危機に巻き込まれることなど、到底、受け入れがたい。

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