辺野古移設は白紙に戻せ 重い「移設ノー」の民意 民意の無視は許されない
<各紙社説・論説>
琉球新報)新知事に翁長氏 辺野古移設阻止を 尊厳回復に歴史的意義(11/17)
朝日新聞)沖縄県知事選―辺野古移設は白紙に戻せ(11/17)
毎日新聞)辺野古移設に審判 白紙に戻して再交渉を(11/17)
東京新聞)新基地拒否の重い選択 沖縄県知事に翁長氏(11/17)
北海道新聞)沖縄県知事選 辺野古案拒む固い民意(11/17)
信濃毎日新聞)沖縄県知事選 辺野古移設は中止を(11/17)
福井新聞)沖縄県知事選 安倍政権は民意尊重せよ(11/17)
京都新聞)沖縄新知事 重い「移設ノー」の民意(11/17)
中国新聞)沖縄県知事に翁長氏 政府は重く受け止めよ(11/17)
徳島新聞)沖縄知事に翁長氏 辺野古反対の民意は重い (11/17)
高知新聞)【沖縄知事選】反対の民意は極めて重い(11/17)
西日本新聞)沖縄県知事選 民意の無視は許されない(11/17)
熊本日日新聞)沖縄知事選 辺野古「ノー」明確に示す(11/17)
毎日新聞 2014年11月17日 01時32分
: 氏が当選 辺野古反対派、移設計画に影響
初当選を決めた 氏は「私が当選したことで基地を造らせないという県民の民意がはっきり出た。それを日米両政府に伝え、辺野古の埋め立て承認の撤回に向けて県民の心に寄り添ってやっていく」と述べた。
選挙戦は、仲井真氏が知事選の候補として初めて移設推進を掲げたことで、移設の是非を巡る戦いとなった。自民党を除名された那覇市議のほか、共産、生活、社民、地域政党沖縄社会大衆が支援し、知事選では初めて保革共闘態勢で臨んだ 氏と、自民、次世代が推薦し、首長の多くが支援する仲井真氏の2人を軸に展開した。
氏は戦後69年たっても変わらない基地負担の中での を「沖縄への構造的差別」と位置付け、「基地は経済発展の最大の阻害要因」と主張。前回知事選で「県外移設」を訴えながら、昨年末に に向けた政府の埋め立て申請を承認した仲井真氏に対する県民の反発を追い風に保革を問わず支持を得た。
仲井真氏は「普天間飛行場の一日も早い危険性除去には が現実的で具体的な解決方法」として移設推進を訴え、2期8年の実績や政権とのパイプをアピールした。しかし、保守層の支持を固めきれず、県政与党の公明が自主投票で臨んだのも響いた。
移設を県民投票に問うとした元郵政担当相の下地幹郎(しもじ・みきお)氏(53)、埋め立て承認の取り消し・撤回を訴えた元参院議員の喜納昌吉(きな・しょうきち)氏(66)は浸透しなかった。
投票率は64.13%で前回(60.88%)を上回った。【佐藤敬一】
沖縄県知事選確定得票数
当360,820 雄志<1>無新
261,076仲井真弘多(2)無現=[自][次]
69,447下地 幹郎 無新
7,821喜納 昌吉 無新
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<社説>新知事に翁長氏 阻止を に
新たな基地は造らせないとの民意は揺るがない。県知事選で、そのことがあらためて証明された。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を掲げた前那覇市長の翁長雄志氏(64)が、政府と共に移設を進める現職の仲井真弘多氏(75)らを破り初当選した。
約10万票の大差は、県民が「沖縄のことは沖縄が決める」との自己決定権を行使し、 拒否を政府に突き付けたことを意味する。
翁長氏には、政府の強硬姿勢を突き崩して移設問題など基地問題に終止符を打つことに全力で取り組むことを期待したい。
民意尊重は当然
在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄に新たな米軍基地の強権的な押し付けを認めることは、県民自ら尊厳を否定するに等しい。今知事選は1968年の主席公選を勝ち取った住民運動同様に、沖縄の尊厳と誇りを回復できるかも問われた。
仲井真知事の 工事埋め立て承認で、沖縄の尊厳と誇りを傷つけられたと感じた県民は少なくない。保守分裂選挙となったことがそれを物語っている。失われかけた尊厳を県民自らの意志で取り戻した選択は歴史的にも大きな意義を持つ。
一方、政府は選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進めると明言しているが、民主主義国家として許されない。埋め立て承認で地元の了解が得られたと受け止めているようだが、それも間違いだ。
仲井真知事は前回知事選で県外移設を訴えて当選した。県民は辺野古移設推進にその後転じた仲井真知事を支持したわけではない。つまり地元の大半は了解などしていないのである。
政府は辺野古移設の是非を最大の争点とした知事選で示された民意を真摯(しんし)に受け止め、辺野古移設を断念すべきだ。それこそが安倍政権の言う「沖縄に寄り添う」ことを具現化することになる。
米政府も民主主義に立脚すれば、民意の重みを無視できないはずだ。
ことし1月の名護市長選では移設阻止を掲げた稲嶺進市長が再選された。にもかかわらず、政府は移設工事を強行着手した。新基地建設工事を既成事実化し、県民に無力感を植え付けることを狙ったことは明らかである。
だが、県民がなえることはなかった。新基地建設反対の意志をさらに強固なものにするきっかけにもなった。多くの県民が基地の県内たらい回し拒否に票を投じたことが何よりの証しだ。
県民支援が必要
東村高江では住民の反対を無視し、新たな米軍ヘリパッドの建設計画が進められている。翁長氏はオスプレイ配備に反対する立場からヘリパッド建設に反対している。建設断念に追い込んでほしい。県内全41市町村長が署名した「建白書」の求めるオスプレイ配備撤回の実現にも知事として力を注いでもらいたい。
基地問題の解決はこれからが正念場である。辺野古移設など米軍基地の過重負担を強いる政府の厚い壁を突き破るためには、県民世論の後押しが欠かせない。「建白書」の精神に立ち返り、さらに幅広いオール沖縄で基地問題解決を訴え、翁長氏を支援する態勢の再構築も求められる。
基地問題以外にも解決しなければならない課題は多い。
翁長氏はアジア経済戦略構想の策定による自立経済の発展や正規雇用の拡大、4年後までの認可保育所の待機児童ゼロ、子ども医療費の無償化などさまざまな施策を通して県民生活を豊かにすることを打ち出している。
那覇市長を14年務めた翁長氏の行政手腕、さらには那覇市議と県議で培った政治力、行動力を生かし、公約を実現するよう期待したい。県民は平和と豊かさの実感を望んでいる。県民の負託に応え、沖縄の将来も見据え、リーダーシップを発揮してほしい。
社説:沖縄県知事選―辺野古移設は白紙に戻せ
沖縄県知事選で、新顔の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏(75)らを大差で破り当選した。「これ以上の基地負担には耐えられない」という県民の声が翁長氏を押し上げた。
最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。1月の名護市長選、9月の同市議選に続き、知事選も移設反対派が制したことで、地元の民意は定まったと言える。
「沖縄に寄り添う」と繰り返してきた安倍政権である。辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない。
■「保革」超えた動き
政権側は辺野古移設を「過去の問題」として、知事選での争点化を避けようとした。
だが、翁長氏は「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地をつくらせない」と主張。仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が具体的で現実的な方策」と応じた。民意は翁長氏についた。
県民にとって、今回の知事選には特別な意味があった。
普天間飛行場の海兵隊は、山梨県や岐阜県の基地から、米軍政下の沖縄に移ってきた。米軍は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強権的手段で住民の土地を奪い、基地を建設した。
そして、国土の0・6%の沖縄に、全国の米軍専用施設の74%が集中する不公平。
「基地は県民が認めてできたわけではない。今回、辺野古移設を受け入れれば、初めて自ら基地建設を認めることになる。それでいいのか」。県内にはそんな問題意識が渦巻く。
それは「本土」への抜きがたい不信であるとともに、「自己決定権」の問題でもある。自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのか、決める権利は本来、我々にこそある、と。
前那覇市長で保守系の翁長氏は「イデオロギーでなく沖縄のアイデンティティーを大切に」と訴え、保守の一部と革新との大同団結を実現した。とかく「保革」という対立構図でとらえられがちだった沖縄の政治に起きた新しい動きだ。
■公約違反に「ノー」
96年に日米両政府が普天間返還に合意し、移設先として辺野古が浮上して18年。この間ずっと沖縄では、辺野古移設が政治対立の焦点となってきた。
転機は2009年、「最低でも県外」と訴えた民主党の鳩山政権の登場だった。迷走の末、辺野古移設に逆戻りしたものの、「県外移設」に傾いた県民感情は収まらない。
辺野古容認派の仲井真氏も、前回10年の知事選では「県外」を求め、再選された。
以来、自民、公明を含めた沖縄の主要政党が辺野古移設反対で一致。「オール沖縄」と呼ばれる状況が生まれた。
ところが、自民が政権に復帰すると、激しい巻き返しが始まる。党本部の圧力で、党国会議員団、党県連が、辺野古容認に再転換。仲井真氏も昨年末、埋め立てを承認した。
今回有権者が突きつけたのは、本土の政権に屈して公約を覆した地元政治家に対する「ノー」だったとも言える。
政府がこの夏、ものものしい警備のなか、辺野古のボーリング調査を強行したことも、県民の怒りを増幅させた。
政府が打ち出す基地負担軽減策も、県民には「選挙対策か」と空々しく映っただろう。
■唯一の選択肢か
なぜ、日本政府は沖縄に基地負担を強い続けるのか。
最近は、中国の海洋進出や尖閣諸島の問題があるからだと言われる。だがそれは、米海兵隊の恒久的な基地を沖縄につくる理由になるのだろうか。
尖閣周辺の対応は海上保安庁が基本だ。万が一の場合でも、少なくとも海兵隊が沖縄の基地に張り付いている必要はない。
日米両政府は「辺野古が唯一の選択肢」と強調するが、米国の専門家の間では代替策も模索されている。フィリピンや豪州に海兵隊を巡回配備し、ハワイやグアム、日本本土も含め地域全体で抑止力を保つ考え方だ。
米ハーバード大のジョセフ・ナイ教授は「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)になった」と指摘する。沖縄だけに基地を集める発想はかえって危ういという意見だ。
「辺野古移設か、普天間の固定化か」。第三の道となる代替策を無視して二者択一を迫る政府の手法は、適切ではない。
しかし、政権内に辺野古移設を見直す気配はない。新知事となる翁長氏に、沖縄への一括交付金の削減で対抗するという声すら聞こえてくる。
明白になった沖縄の民意をないがしろにすれば、本土との亀裂はさらに深まる。地元の理解を失って、安定した安全保障政策が成り立つはずもない。
知事選を経て、普天間問題は新たな段階に入った。二者択一の思考停止から抜け出す好機だろう。政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ。
社説:辺野古移設に審判 白紙に戻して再交渉を
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する地元の民意はもう後戻りしないだろう。沖縄県知事選で、翁長雄志(おなが・たけし)前那覇市長が3選を目指す仲井真弘多(ひろかず)知事らを破り初当選した。1月の名護市長選に引き続き、またも移設反対派が、安倍政権の全面支援を受けた推進派を退けたことになる。
辺野古移設を最大の争点にした選挙でこれだけ明確な民意が示された以上、政府が移設を推進することは、政治的にも道義的にも不可能だろう。政府は移設計画を白紙に戻し、米政府と再交渉すべきだ。
◇本土と沖縄に深刻な溝
翁長氏の勝利は、過去の知事選に比べてもとりわけ重い意味を持つ。
沖縄の知事選で初めて保革対決が崩れ、翁長氏が「沖縄対本土」という対立構図を強調する中で勝利したからだ。翁長氏は沖縄保守政界の重鎮だ。保守系地方議員の一部や共産、社民両党など革新政党が支援して保革共闘ができ、自民党などの推薦を受けた仲井真氏に勝った。
翁長氏の公約「新基地建設反対」の合言葉は、「オール沖縄」「イデオロギーよりアイデンティティー」だった。そこには次のような意味が込められている。
<日米安保体制は理解するが、日本の安全保障は日本全体で負担してほしい。国土面積の0.6%しかない沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中しているのは理不尽で、沖縄への構造的差別ではないか。
沖縄は基地経済がないと立ちゆかないという見方は誤りで、基地関連収入が県経済に占める割合は現在では5%に減った。基地は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因だ。
基地をはさんで左右や保革に分かれたり、基地か経済かの二者択一を迫ったりするのは、旧態依然の古い発想だ。基地問題はもうイデオロギーではない。沖縄のアイデンティティーの問題であり、沖縄の将来は自分たちの手で決める>
翁長氏の勝利は、日本政府と本土の一人一人に根本的な疑問を突きつける。なぜ沖縄の現状に無理解で無関心なのか。なぜ沖縄の民意に真剣に向き合わないのか。それは民主主義にもとるのではないか、と。
政府が今回の選挙結果を無視し、移設を強行すれば、本土と沖縄の溝はますます深まり、亀裂が決定的になりかねない。沖縄が不当に差別されているという感情を抱えたまま、過重な基地負担を引き受けられるものではない。この矛盾は日米安保体制を確実に不安定化させるだろう。
安全保障は国の専管事項だが、それは地元の意向を勘案しなくていいという意味ではない。地元をはじめ国民全体の理解がなければ安全保障政策など成り立たない。今回のように国の方針と地元の民意が対立した場合、政府は両者の溝を埋める努力をすべきだが、責任を十分に果たしてこなかった。
それどころか翁長氏の勝利を後押ししたのは、安倍政権の普天間問題の進め方に対する沖縄の人々の激しい怒りだった。仲井真氏は前回知事選では県外移設を公約して再選された。だが昨年末、仲井真氏は政府の経済振興策などを評価し公約に反する形で辺野古埋め立てを承認した。この過程で振興策というカネさえ積めば沖縄を懐柔できると考えているかのような政府のやり方に、沖縄の人々は誇りを傷つけられた。
◇米国内にも計画に異論
ここまで問題がこじれた以上、現行の移設計画に固執するのは現実的ではない。政府は今夏、辺野古沿岸部の埋め立てに向けた海底ボーリング調査を開始し、選挙結果にかかわらず移設を推進する方針を示しているが、調査を中止すべきだ。
ただし、辺野古の白紙化を普天間の固定化につなげてはならない。この問題の原点は、「世界一危険な基地」といわれる普天間の一日も早い危険性除去にある。安倍政権は今後も沖縄と約束した「普天間の5年以内の運用停止」をはじめとする基地負担軽減策を進めるべきだ。沖縄振興策も毎年3000億円台の予算を確保するという約束を違えて減額することがあってはならない。
普天間返還合意から18年。日本と合意を重ねてきた米国との再交渉に持ち込むのは容易ではなかろう。それでも沖縄の民意がもたらす深刻な影響を日米両政府が共有すれば、おのずと協議は新たな段階に移っていくはずだ。
日米両政府の合意は辺野古移設を「唯一の解決策」としているが、米議会には辺野古は非現実的だとして異なる意見があり、マケイン上院議員らが米軍嘉手納基地に統合する案を提案したこともある。
ジョセフ・ナイ元米国防次官補は今夏、沖縄の米軍基地の脆弱(ぜいじゃく)性を指摘し、在日米軍の配備見直しを求めた。米国でも異論が出ているのだ。
日米安保体制が日本とアジア地域の安定に果たす役割は大きい。中国の軍備拡張や海洋進出、北朝鮮情勢を考えれば、在日米軍の抑止力は維持する必要がある。
日米安保体制を安定的に運用していくという大きな目的のためにも、日本政府は沖縄との摩擦を放置せず、米政府に再交渉を求めて問題解決を図るべきだ。
【社説】新基地拒否の重い選択 沖縄県知事に翁長氏
沖縄県の新しい知事に翁長雄志(おながたけし)前那覇市長が選ばれた。これ以上の米軍基地建設を拒否する県民の重い選択だ。安倍内閣は真摯(しんし)に受け止めるべきである。
仲井真弘多(なかいまひろかず)知事(75)の任期満了に伴う今回の知事選は三選を目指す自民党など推薦の仲井真氏に、翁長氏(64)、下地幹郎(しもじみきお)元郵政民営化担当相(53)、喜納昌吉(きなしょうきち)元参院議員(66)が挑む構図で、事実上、仲井真、翁長両氏の一騎打ちだ。
沖縄県知事選は「保守」対「革新」の対決構図が続いてきたが、今回は、四年前の前回知事選で仲井真陣営の選挙対策本部長だった翁長氏が仲井真氏と袂(たもと)を分かつ、初の「保守分裂」選挙となった。
◆「基地依存」は死語に
最大の争点は、世界一危険とされる米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)を日本側に返還するため、その代替施設を名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に建設する、いわゆる「県内移設」の是非である。
沖縄県には在日米軍基地の約74%が集中する。その存在は、騒音や事故、米兵らの犯罪、戦争への加担という精神的重圧など、県民に重い負担を強いてきた。
基地の存在は経済発展の阻害要因でもある。返還された跡地がショッピングセンターなどになり、雇用を生んで経済的繁栄の場となる多数の例を見れば、明らかだろう。
一九七二年の本土復帰時に15%を超えていた県民総所得における米軍基地関係収入の割合は年々減少し、今や5%台にすぎない。もはや「基地依存経済」は死語だ。
日米安全保障条約上、米軍への基地提供は日本政府の義務だとしても、一地域に過重に負担を押し付けるのはやはり不平等である。
普天間返還のためとはいえ、米軍基地をこれ以上、沖縄県内に造るのはやめてほしい、というのは県民の素直な思いと理解する。
◆安倍内閣も「不信任」
もともと県内移設を条件付きで認める立場だった仲井真氏は、前回知事選で県外移設を求める姿勢に転換し、再選された。その後も県民の反対が強い県内移設は「事実上不可能」と繰り返していた。
しかし、仲井真氏は昨年暮れ、政府が申請した辺野古沿岸部の埋め立てを承認してしまう。県内移設容認への転換であり、公約違反は明らかだった。
仲井真氏は今回の選挙戦で「サイズが(普天間の)四割になり、民家の上も飛行させない。安全性は雲泥の差だ」と辺野古移設の妥当性を訴えたが、仲井真氏の「変節」を批判し、県内移設阻止を掲げた翁長氏を県民は支持した。
県民の思いを顧みず、公約違反でもある県内移設を進めようとした県政リーダーへの、県民による痛烈なる不信任の意思表示だ。
同時に、今回の選挙結果は「アメとムチ」によって県内移設を強行してきた安倍内閣に対する「不信任」でもある。
県本部が県内移設に反対する公明党は仲井真氏を支援せず、自主投票で臨んだ。二〇〇二年以来続いていた知事選での協力態勢が崩れ、安倍内閣の基地政策の正当性に疑問符を投げかけている。
選挙期間中、多くの自民党議員に加え、菅義偉官房長官も異例の選挙応援に入った。そこで訴えたのは、那覇空港第二滑走路の早期完成や米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の沖縄誘致支援だ。
経済振興策は必要だとしても、県内移設受け入れを前提とした露骨な手法である。基地押し付けに「構造的差別」を感じ始めた沖縄県民には、もはや通用しまい。
翁長氏の陣営には自民党を離党した県議ら「保守系」に加え、共産、社民両党など「革新系」も加わった。
仲井真陣営は「共産党主導の県政にするな」などと保革対決構図に持ち込もうとしたが、翁長陣営の「イデオロギーよりアイデンティティー」「オール沖縄で基地問題の大きな壁をこじ開ける」との訴えの前では、説得力を欠いた。
対立してきた革新陣営と「県内移設拒否」で結束し、支持を集めた背景にある沖縄保守勢力の「政治的目覚め」を、安倍内閣と仲井真陣営は完全に読み違えた。
◆「過去の問題」でない
菅氏はかつて「県内移設」の是非をめぐる議論は「過去の問題」と言い放った。知事選で仲井真氏が敗れても県内移設を進めるために、予防線を張ったのだろう。
しかし、安倍内閣が全面支援する仲井真氏に突き付けられた拒否の意味は重い。県民の選択を無視して、海底掘削調査や工事入札など本格着工に向けた作業を続けることなど、あってはならない。
在日米軍基地の適正な規模や配置、沖縄県民の負担軽減は引き続き、すべての日本国民が考えるべき課題である。決して過去の問題などではない。
北海道新聞 (2014/11/17)
社説:沖縄県知事選 辺野古案拒む固い民意沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題で明確な民意が示された。
きのう投開票された沖縄県知事選で、名護市辺野古への移設に反対の翁長雄志(おながたけし)前那覇市長が、推進派現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏を破った。
移設を強引に進めてきた政府に対する強い拒絶反応である。安倍晋三首相はじめ政府・与党は重く受け止めなければならない。
辺野古での移設作業をこれ以上進めてはならない。地元の反対意見を無視する姿勢を改め、対話の道を模索することが不可欠だ。
県民の多数は県外、国外への移設を求めている。その民意に沿った具体策を講じる必要がある。
仲井真氏は前回知事選で県外移設を訴えながら、昨年末に辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。知事選では変節への怒りがそのまま表れたと言える。
さらに政府の強引な態度が反発を増幅させた。
1月の名護市長選で反対派の現職が当選したにもかかわらず、移設作業を進めた。知事選まで待つよう求める意見も退け、8月には海底ボーリング調査を強行した。
当選した翁長氏は「辺野古への移設案実現は不可能だ」として、仲井真氏が行った埋め立て承認を取り消す可能性も示唆している。
政府が独断でこれ以上前に進むことができる状況ではない。これまでの態度を改め、県民の意思を潔く受け入れるべきだ。
海底ボーリング調査は即時中止すべきだ。来年には埋め立て本体工事を目指してきたが、県の理解が得られない限り難しいだろう。
一方で政府は、普天間飛行場の運用停止を2019年までに実現する方針を表明している。米国は同意していないが、責任を持って説得し、実行してもらいたい。
政府は米国に言うべきことを言わず、沖縄にばかり負担を押しつけてきた。新型輸送機オスプレイの配備も同じだ。一方で経済政策を厚くして理解を得ようとするアメとムチの発想で臨んできた。
知事選の結果はこうした政策遂行の手法の見直しを迫っている。
与党は一枚岩とならなかった。自民党は仲井真氏を推薦したが、一部の地元議員らが元県連幹事長の翁長氏の支援に回り保守勢力が分裂した。公明党も地元の意向を尊重して自主投票となった。
辺野古移設への反対は党派を超えた沖縄の大多数の意見だと理解すべきだろう。
選挙で示された民意を否定しては民主主義が根本から問われる。国には謙虚な対応が求められる。
社説:沖縄県知事選 辺野古移設は中止を
沖縄県知事選は、前那覇市長の翁長雄志氏が初当選した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対している。県民の意思があらためて示された。
1月の名護市長選で、移設反対の現職が再選された。9月の名護市議選でも反対派が過半数を維持している。政府は地元の民意を受け止めなくてはならない。移設は中止し、普天間返還の新たな方策を探るよう求める。
仲井真弘多知事が辺野古沿岸部の埋め立てを承認してから初の知事選だ。ほかに、移設推進の仲井真氏、県民投票を唱える元郵政民営化担当相の下地幹郎氏、承認取り消しを掲げる元参院議員の喜納昌吉氏が立候補していた。
政府、自民党は仲井真氏の3選に力を注いできた。応援で那覇市を訪れた菅義偉官房長官は、2019年2月までの普天間の運用停止を強調した。沖縄県による米映画テーマパークの誘致を政府が応援することも表明している。
10月には日米両政府が新たな協定の「実質合意」を発表した。環境調査のため自治体職員が米軍基地内に立ち入ることを可能にするもので、沖縄県が求めていた。
さまざまな後押しにもかかわらず、及ばなかった。前回の知事選で県外移設を掲げながら、辺野古容認に転じた仲井真氏に対する強い反発を感じさせる。
政府は8月、海底ボーリング調査を始めた。反対派の抗議活動を阻むため、米軍や工事用の船以外の航行を禁じる区域を設けての作業だ。こうしたごり押しへの異議申し立てとも受け取れる。
普天間の5年以内の運用停止を米政府が「空想のような見通し」としているのも見過ごせない。
共同通信社が今月上旬に行った電話世論調査では、政府の姿勢を「支持しない」との回答が7割を超えていた。このうち6割超が翁長氏に投票すると答えた。
翁長氏は「あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地は造らせない」とする。埋め立て承認手続きに問題がないか検証した上で撤回する意向も示している。
普天間飛行場は宜野湾市の市街地にある。住宅地に近接し、危険性が高い。返還は一日も早く実現しなければならない課題だ。とはいえ、県内での移設は沖縄の負担軽減にならない。普天間の固定化か辺野古移設か―の二者択一を迫るのが、そもそもおかしい。
移設を強行すれば、地元との溝はますます深まる。政府は県外移設など県民が納得できる負担軽減策を真剣に検討すべきだ。
論説:沖縄県知事選 安倍政権は民意尊重せよ
沖縄県知事選で、米軍基地に対する県民の意思が明確になった。普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沿岸への移設に反対する前那覇市長翁長雄志(おながたけし)氏が、移設推進の現職仲井真弘多(なかいまひろかず)氏らを破り初当選した。基地問題は沖縄に押しつけているだけでは何も解決しない。沖縄が抱える厳しい現状を直視し政府、国民全体で「負担の解消」を考えていくべきではないか。
長く基地問題に翻弄(ほんろう)され続けてきた沖縄県民だ。住宅が密集し「世界一危険」とされる普天間飛行場を固定化させたい県民はいないだろう。また移設すれば解決するものでもなく、県民は米軍基地そのものに強い拒絶感を示したのだ。この日、那覇市長選でも移設反対の候補が当選した。
日本全体の0・6%にすぎない県土に米軍専用施設全体の約74%が集中。米兵による女性暴行事件や傷害事件などが相次ぎ、普天間隣接地でヘリ墜落事故も起きた。事故や事件が発生するたびに捜査は不平等な日米地位協定の厚い壁に阻まれてきた。県内移設や基地面積の縮小だけでは「基地負担軽減」には程遠い。
1996年、日米両政府が移設で合意して以降、県知事選は「保守と革新」の対決だったが、今回は保守分裂という異例の構図。それだけ基地問題は深刻化しているということだ。
これまで基地の県外移設を強調してきた仲井真氏が昨年末、辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。政府にとって、頼みの綱の敗北は大きな痛手である。
県民の感情を逆なでするような菅義偉官房長官の発言も無視できない。選挙戦に入る前「(移設問題は)争点にならない。もう過去の問題だ」と言い放った。争点化を避ける狙いだろうが、政府は2021年度まで毎年3千億円台の沖縄振興予算を約束し、「もう手打ちは終わっている」と言わんばかりだった。
政府は常にカネで基地問題の解決を図ろうとしてきた。沖縄県は1人当たりの県民所得や失業率を見ても厳しい状況にあり、産業経済の振興は喫緊の課題だ。だが県民の民意は明確になった。事故リスクに加え、利害が絡む県内移設は「県民の分断」を生むだけだ。
日米同盟強化を図る安倍政権は抑止力の観点から普天間移設が「唯一の選択肢」と位置づけるが、そうだろうか。国際政治学者の森本敏元防衛相は「軍事的には沖縄でなくてもいいが、政治的に考えると沖縄が最適だ」と述べている。基地のあり方を再考するべきだ。
政府は日米合意に基づく「既定方針」として辺野古移設へ向け正面突破を図る構え。反対の公約を「ぶれずに実行する」と明言する翁長氏側の切り崩しにかかるだろう。しかし、県民の政治不信は根深く、強権を振りかざす安倍政権の政治手法に対する反発は強まる一方だ。「沖縄の心」にどう向き合うのか。
社説:沖縄新知事 重い「移設ノー」の民意
きのう投開票された沖縄県知事選で、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏が現職の仲井間弘多(なかいまひろかず)氏を破った。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)を名護市辺野古に移設する計画の是非が最大の争点となる中、移設反対を前面に打ち出した翁長氏が、政府方針に沿って移設容認に転じた仲井間氏の3選を阻んだことは県民の極めて重い審判だ。この沖縄の意思を、国民全体が真剣に受け止めねばならない。
元はといえば、安倍政権が強引に移設手続きを進めたツケが回った結果とも言える。辺野古移設を「過去の問題」(菅義偉官房長官)とし、選挙結果にかかわらず方針を変えないというが、地元の民意に背を向けたままでは安全保障政策の土台が揺らぎかねない。
安倍晋三首相は誠実に新知事と向き合い、米国や国内他府県との協議であらゆる選択肢を探ることも含め、重い基地負担に苦しむ沖縄の現実をどうするのかをあらためて議論するべきだ。
1995年の米兵による少女暴行事件を受け、日米両政府が移設で合意して以降、「保守対革新」の対決が続いてきた知事選は今回「保守分裂」の要素が加わった。
自民党が推薦した仲井間氏に対し、自民県連幹事長を務め、前回知事選では仲井間選対の本部長だった翁長氏が県内移設に異議を唱えた。共産、社民両党に加え、自民を含む保守系地方議員・団体の一部が翁長氏支援に回り、政権与党の公明党は自主投票を決めた。
選挙中盤に行われた共同通信社の世論調査では、無党派層も半数以上が翁長氏を支持し、前回選で仲井間氏に投票した人の3割超が今回は翁長氏に投じるとした。最大の争点として辺野古移設を上げる人が6割を超え、移設賛成派は3割にとどまった。
市街地にある危険な普天間飛行場の固定化は許されないが、移設先が県内では、在日米軍施設の74%が集中する沖縄の「基地負担軽減」とは言えない。
安倍政権は普天間配備のオスプレイの県外訓練拡大などに取り組むが、普天間での飛行回数は逆に増えている。2019年2月までに普天間を運用停止するとした方針も、米政府が拒否していることが明らかになっている。形だけの「負担軽減」に、県民の怒りが知事選で噴出したと言えよう。
安倍首相は今週中に衆院を解散する構えだが、知事選敗北から目をそらすなら沖縄の不信感は高まるばかりだ。事態の打開策を明示してもらいたい。
社説:沖縄県知事に翁長氏 政府は重く受け止めよ
政府の方針にノーを突き付けたといえよう。保守分裂となった沖縄県知事選はきのう投開票され、新たな知事に前那覇市長の翁長雄志(おなが・たけし)氏が選ばれた。
最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。反対を唱えた翁長氏の当選は、県内移設は認められないとの民意にほかならない。
政府は、今回示された沖縄の民意を重く受け止めなければならない。
辺野古移設の推進を主張し、自民党が推薦した現職の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏は、前回の知事選では県外移設を公約していた。県外移設を掲げる民主党政権の誕生をきっかけに、同調する民意が高まったからだ。
しかし自民党への政権交代を境に仲井真氏は姿勢を再び転換し、昨年12月に辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。かつて自民党県連の幹事長を務めた翁長氏は、この決定を公約違反だとして反発し、知事選への立候補を決めた。
仲井真氏に裏切られた思いは、保革を超えて県民の間に広がっていた。そうした声を翁長氏がすくい取ったといえる。
辺野古移設を進めたい安倍政権は、基地負担と引き換えに沖縄振興策に力を入れる姿勢を打ち出している。国の予算として2021年度まで毎年度、3千億円台を確保するという。
知事選の期間中には菅義偉官房長官が現地入りし、沖縄県が目指す映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」の誘致活動を政府として支援する意向を表明した。なりふり構わぬ振興策で、県民の理解を得たいという思惑だろう。
だが選挙結果を踏まえれば、県民は経済対策よりも基地問題を重んじたと受け取れよう。ことし1月の名護市長選で、普天間飛行場の辺野古移設に反対した現職が当選した時と同じ構図である。
県民の多くは、市街地の真ん中にある危険な普天間飛行場を固定化してはならないと考えていよう。それでも米軍基地が集中する県内に代替の基地を造ることには納得いかないという思いは十分に理解できる。
今回の選挙戦では「自己決定権」という言葉が目に付いた。「地元のことを住民抜きで決めるな」といった自治の根本だろう。最大限、尊重されなければなるまい。
これまで政府は選挙結果を問わず、普天間飛行場の辺野古移設を進める方針を示してきた。埋め立て工事に向けた海底調査に入っており、年明け以降には着工する構えだ。
翁長氏の辞職に伴う那覇市長選でもきのう、移設反対の新人が制した。これほど明確になった民意を本当に無視し続けることができるだろうか。
一方で選挙中、翁長氏は「あらゆる手段を駆使して、辺野古に新基地は造らせない」と強調したものの、具体的な道筋は提示しきれなかった。
埋め立てを承認した手続きに不備や法的欠陥がないか、まずは検証するという。可能性は低いとみられるが、承認の取り消しや撤回につながるからだ。
いばらの道になるのは間違いなかろう。とはいえ、民意を形にするのは県政トップの責任である。果たせるかどうか、手腕が問われる。
徳島新聞 2014年11月17日付
社説:沖縄知事に翁長氏 辺野古反対の民意は重い沖縄県民の意思は「ノー」である。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非が最大の争点となった沖縄県知事選が投開票され、移設に反対する翁長雄志前那覇市長が初当選した。
翁長氏は、普天間の県外移設を主張し「あらゆる手段を駆使して辺野古に新基地を造らせない」と繰り返し訴えてきた。3選を目指し、移設を推進した現職仲井真弘多氏を退けての勝利である。
1月には、同じく移設計画が問われた辺野古の地元・名護市長選で、反対を掲げた現職が再選している。
安倍政権は、知事選の結果にかかわらず移設作業を粛々と進める方針を示しているが、突き付けられた県民の意思を無視することは許されない。選挙の結果を厳しく受け止めるべきだ。
翁長氏は、もともとは自民党県連幹事長も務めた「保守中の保守」の人である。2010年の前回知事選では仲井真氏の選対本部長に就き、共に県外移設を主張。激しく競り合っていた革新系の新人候補を破った。
それが今回、政府・自民党の全面支援を受けた現職とたもとを分かち、対決することになったのは、仲井真氏が昨年末に辺野古沿岸部の埋め立てを承認したからだ。
翁長氏は移設反対で一致した共産、生活、社民、沖縄社会大衆の各党と共闘態勢を組み、革新票をまとめたのに加えて、保守票を取り込んだ。
最大の勝因は、移設を推し進める政府と仲井真氏の姿勢に対する県民の怒りが、強い後押しになったことである。
政府は8月、反対派の抗議活動を排除して、埋め立てに備えた海底ボーリング調査を開始した。知事選を前に、少しでも工事を進めて既成事実にしようとの狙いがあったようだが、あまりに強引な手法である。
これに対し、共同通信社が選挙中に行った県内世論調査では、7割超が政府の姿勢を「支持しない」と回答。6割超が知事選の最大の争点を移設問題とし、「反対」「どちらかといえば反対」が6割を超えていた。
一方で、政府の地域振興や経済活性化策に「期待する」人は「どちらかといえば」を含めて4割しかなく、「期待しない」「どちらかといえば期待しない」が6割弱にも上った。
21年度まで毎年度3千億円台の沖縄振興予算を確保すると、政府が約束したのは、仲井真氏が埋め立てを承認する直前だった。カネと引き換えに基地を造るようなやり方に、県民が不快感を抱いたのは当然といえよう。
仲井真氏は辺野古移設が「現実的で具体的な解決方法だ」と訴えたが、受け入れられなかった。「地元の理解が得られない移設を実現することは事実上、不可能だ」と翁長氏が主張したように、辺野古はもはや「現実的」な選択肢といえなくなったのではないか。
ただ、住宅密集地に囲まれ、世界で最も危険とされる普天間飛行場を固定化していいはずがない。
沖縄県には在日米軍専用施設の約74%が集中している。過重な基地負担の軽減は、保革の枠を超えた県民の願いである。政府は、その声にしっかりと耳を傾けなければならない。
社説:【 】反対の民意は極めて重い
沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を争点とした県知事選で、反対を訴えた前那覇市長、翁長雄志氏が推進派の現職、仲井真弘多氏らを破り初当選を果たした。
仲井真氏は4年前の知事選では「県外移設」を掲げて当選した。ところが昨年末、政府が申請した辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。
公約を翻す形となった仲井真氏に対する県民の不信は、やはり根強かったと言わざるを得ない。
同氏を支援した政府、自民党は選挙結果にかかわらず埋め立てを進める構えだ。しかし、1月の名護市長選、9月の同市議選に続いて示された反対多数の民意は極めて重い。
政府はいま一度、沖縄の強固な意志に真摯(しんし)に向き合うべきだ。
安倍政権は沖縄振興予算として、2021年度まで毎年度3千億円台を確保すると約束している。それでも県民の理解は得られなかった。
基地負担と引き換えにふんだんに「アメ」を与えるといった常とう手段は、もはや通用しないことを肝に銘じるべきだろう。
普天間飛行場について、政府は19年2月までの運用停止を目指すことを閣議決定した。仲井真陣営への「援護射撃」とも受け取れるが、米側は「空想のような見通し」と厳しく批判している。これでは本当に沖縄のために真剣に交渉しているのか、姿勢を疑われても仕方ない。
米軍には普天間の代替施設を辺野古内陸部まで拡張する構想もあるが、国はそれを開示せず説明責任も果たしていない。新型輸送機オスプレイの沖縄配備を公表してこなかった経緯もある。こうした「秘密主義」も県民の不信と不満を強めたのは明らかだ。
安倍首相は常々、「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」と述べている。それが本心なら翁長氏勝利の結果を謙虚に受け止め、民意を尊重する姿勢に方向転換するべきではないか。
そうでなければ、米軍基地の一極集中や不平等な日米地位協定に苦しめられてきた県民の、「沖縄は差別されている」という意識を一層強めるだけである。
国はボーリング調査を経て年明け以降、辺野古埋め立てに着工する方針だ。だが強硬姿勢で臨めば政府と沖縄の亀裂が深まり、不測の事態も起こりかねない。慎重な判断が求められる。
社説:沖縄県知事選 民意の無視は許されない
2014年11月17日(最終更新 2014年11月17日 10時40分)
これほど明確に示された沖縄の民意を、政権は無視できるのか。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題が最大の争点となった沖縄県知事選で、前那覇市長の翁長雄志(おながたけし)氏が勝利した。
翁長氏は政府の進める普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対を表明、「県内移設阻止」を掲げて、大きな支持を得た。
一方、現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏は敗北した。前回知事選で「県外移設」を訴えて当選しながら、「辺野古移設容認」へ転じた仲井真氏に有権者は厳しい審判を下した。
沖縄県民は普天間飛行場の辺野古移設について、端的に「ノー」の意思表示をしたといえる。
沖縄では、今年1月に名護市長選が行われ、移設反対派の現職が勝利した。9月の同市議選でも、反対派が過半数を占めた。
それでも安倍晋三政権は辺野古移設の方針を変えようとしない。昨年12月に仲井真知事が辺野古沿岸の埋め立てを承認したことを根拠に、飛行場建設に向けたボーリング調査を開始している。
今回の知事選の結果を受けても、政権は「安全保障は国の専権事項」「法的手続きは完了済み」などの論法で、辺野古移設のプロセスを続行すると予想される。
しかし、それが本当に政治的に賢明な道だろうか。
今回の知事選で特徴的なのは、従来の「保守対革新」の構図が崩れ、保守政治家の翁長氏が自民党政権の政策に反旗を翻して、それを県民が支持したことだ。「基地負担を押し付ける本土」対「これ以上の基地負担を拒否する沖縄」という「本土対沖縄」の構図ができつつあることを示している。
もし、政権がこの状況を軽視し「国家の論理」を沖縄に押し付け続ければ、沖縄の心はますます本土から離れてしまう。沖縄と本土との一体感さえ揺らぎかねない。
安倍政権は、沖縄の民意を正面から受け止め、あらためて米国と協議して「辺野古」以外の選択肢を検討してほしい。一地域の犠牲の上に成り立つ安全保障政策など、もう限界だと悟るべきだ。
熊本日日新聞 2014年11月17日
社説: 辺野古「ノー」明確に示す
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非が最大の争点となった沖縄県知事選は16日投開票され、移設反対を訴えた前那覇市長の翁長雄志[おながたけし]氏(64)が、3選を目指した現職の仲井真弘多[なかいまひろかず]氏(75)ら3人を破り初当選を果たした。
翁長氏の勝利で、沖縄県民は県内移設に「反対」という意思を明確に示した。安倍晋三政権は知事選の結果にかかわらず辺野古沿岸部の埋め立てを「粛々と進める」とするが、民意を無視してまで強行できるのか。
安倍首相は、沖縄県民が一票に込めた思いに謙虚に向き合わなければならない。首相は今臨時国会冒頭の所信表明演説で、「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」と述べた。その言葉をあらためてかみしめてもらいたい。
同知事選は、ほかに元郵政民営化担当相の下地幹郎[しもじみきお]氏(53)、元参院議員の喜納昌吉[きなしょうきち]氏(66)が出馬していた。
2010年の前回知事選で、仲井真氏は普天間の県外移設を掲げ再選。選対本部長として支えたのが翁長氏だった。しかし、昨年12月、仲井真氏は辺野古沿岸部の埋め立てを承認。ことし8月にはボーリング調査が始まった。
翁長氏は「沖縄の振興と引き換えに公約を破棄した」と仲井真氏を批判し、出馬。異例の保守分裂選挙となった。翁長氏は公約に「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地は造らせない」と明記。埋め立て承認の取り消し、撤回も選択肢の一つ、としている。
安倍首相は辺野古移設について、「法治国家として関係法令にのっとり、既に判断が示された」と国会で答弁。政府は、仮に新知事が埋め立てを撤回しても行政訴訟で対抗する構えだ。しかし、地元の名護市長が反対を掲げ、同市議会も反対派が過半数。さらに、知事選も反対派が制した。政府が強硬姿勢を続ければ、沖縄との溝は修復不可能になりかねない。
米政府は普天間飛行場の大規模改修に乗り出し、永続的な使用も視野に入れる。翁長氏は普天間の固定化を食い止めるための具体策を早急に示す必要があろう。国は知事選で示された民意を尊重し、新知事と胸襟を開いて話し合うことから始めるべきだ。
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