2014年8月10日日曜日

佐賀にオスプレイ 「共用空港」許されるか 「負担軽減」を政治利用するな


-----政府は自衛隊に導入する新型輸送機MV22オスプレイ17機を
佐賀空港に配備したいとして、地元自治体に受け入れを要請した。

沖縄の米軍普天間飛行場の米海兵隊オスプレイが暫定利用する可能性も示した。
 
地元の意向を考慮しない、一方的な申し入れである。
しかも、来月中に理解を得たいという。
あまりに高圧的な態度ではないか。
 
開発段階から事故が相次ぎ、危険が指摘されている。
不安を全国に拡散させることは許されない。

-----11月の沖縄県知事選を有利に戦いたい思惑が露骨である。
オスプレイの数を一時的に減らすことで、名護市辺野古への移設を推進する候補に支持を得たい考えだ。
 
政府は在日米軍再編で基地負担が増える都道府県に交付金を支給する新制度を検討している。
このような「アメとムチ」の使い分けは、地元の反発を受けるだろう。
 
米国への説明はこれからだという。
佐賀への暫定配備に米側が同意するかはわからない。
政府の対応は拙速と言わざるを得ない。
 
そもそも政府が米国に求めるべきは、普天間のオスプレイ配備の見直しである。
米国には物言わず、地方に負担を押しつける姿勢を改めてもらいたい。
(北海道新聞より)

<各紙社説・論説>
佐賀新聞)佐賀空港軍事共用要請(8/10
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朝日新聞)オスプレイ移転―選挙目当てで済ますな(7/26
毎日新聞)佐賀にオスプレイ 丁寧な説明欠かせない(7/27
北海道新聞)オスプレイ拡散 政府の態度は一方的だ(7/24
京都新聞)オスプレイ  佐賀配備に理はあるか(7/24
神戸新聞)オスプレイ配備/拙速は不信と混乱を招く(7/25
中国新聞)佐賀にオスプレイ 「共用空港」許されるか(7/24
愛媛新聞)オスプレイ配備要請 「負担軽減」を政治利用するな(7/25
徳島新聞)佐賀へオスプレイ  地元の理解が欠かせない(7/29
高知新聞)【オスプレイ配備】ごり押しは許されない(7/25
西日本新聞)オスプレイ配備 なぜ佐賀か説明を尽くせ(7/24
佐賀新聞)佐賀空港のオスプレイ配備(7/23
熊本日日新聞)佐賀にオスプレイ 選挙目当ての負担軽減か(7/24
南日本新聞) [オスプレイ配備] なぜ佐賀か説明尽くせ(7/24
佐賀新聞 20140810 1314
社説:佐賀空港軍事共用要請
 政府が陸上自衛隊に導入する新型輸送機オスプレイを佐賀空港に配備することを佐賀県に要請し、波紋が広がっている。米軍の空港使用も伝えている。問題の本質は「民間専用の佐賀空港の軍事共用化」だ。政府に詳細で丁寧な説明を求め、視点を広げて考えたい。
 7月22日に政府が要請した佐賀空港の軍事共用に関する主な内容は(1)自衛隊に導入するオスプレイ17機を2019年度から配備する(2)米軍普天間飛行場の米海兵隊オスプレイの訓練地とし、普天間の辺野古移設実現まで暫定移駐する(3)陸上自衛隊目達原駐屯地のヘリ50機を移駐する-だった。
 ただ、普天間移設実現までの暫定移駐については米国が難色を示しため、見送る方針という。これほど重要な問題で米の意向を図れていなかったのか。佐賀県民はいきなり振り回された格好で、政府の信用は早くも失墜だ。
 佐賀空港の軍事共用についてこの間、多くの意見が出ている。まず「自衛隊にオスプレイが必要か」と問う声がある。政府は、尖閣諸島を中心とした離島防衛強化のため佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に「水陸機動団」を新設し、その隊員を輸送するオスプレイを配備する-とする。しかし、今が軍備対応の時期か。対話の道は閉ざされたのか。軍備増強がさらに緊張を高めないか。多くの疑問がある。中国には軍備ではなく、同様のトラブルを持つ国と連携して国際社会で対応すべきではないか。
 「なぜ佐賀空港か」という疑問も当然上がっている。政府は水陸機動団を置く佐世保から約60キロという近さなど「地理的、環境的、運用面的要素を総合的に判断した」と説明した。ただ、九州には多くの自衛隊基地がある。普天間移設先として大村基地、築城基地なども騒がれたことがある。配備先として当然検討されたはずで、わざわざ民間空港を使うことになった経緯や協議の内容を聞きたい。
 「沖縄の負担軽減」という政府の説明には、沖縄から懐疑的な見方が出ている。辺野古移設までの暫定移駐は「結局は戻ってくる。基地がなくならなければ負担軽減と言えない」と冷ややか。訓練地分散に関しては「新たに自衛隊のオスプレイが沖縄で訓練するようになれば同じこと」とする。
 今回の政府方針の背景には、11月の沖縄知事選があるとみられている。辺野古移設を容認し、普天間の5年内の運用停止を求める現職を後押しするため、政権が具体策を急いだという見方だ。だが、その知事選で移設反対派が当選すれば、辺野古移設は迷走しかねない。佐賀は再び振り回されることになる。知事選結果とその後の動向を見極める必要がある。
 今後政府は自衛隊オスプレイの配備の話を先行し、その後に米軍オスプレイ関連-と考えているようだが、二つの問題は表裏一体。「自衛隊は使うが米軍は使わない」ということは考えにくい。沖縄で繰り返されているルール逸脱の夜間訓練など、米軍が使用した場合の問題を含めた説明は不可欠だ。
 対岸のことのように感じていた基地問題が、いきなり目の前にやってきた。当事者としてまず安全、騒音、治安が気になるが、集団的自衛権を含めた日本の防衛と外交、沖縄を含めた地方と基地の問題など、多面的な視点も加えてじっくり向き合いたい。(小野靖久)
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朝日新聞 2014726日(土)付
社説:オスプレイ移転―選挙目当てで済ますな
 安倍政権が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備中の新型輸送機オスプレイを、佐賀空港(佐賀市)に移転させる計画を明らかにした。
 沖縄では米軍統治下、強制的に基地がつくられ、本土の基地が移ってきた。復帰42年の今も、全国土の0・6%の沖縄に米軍基地の74%が集中する。
 軍用機の事故や騒音、米軍兵士らによる事件、事故に脅かされ続ける沖縄県民に、これ以上過重な負担は強いられない。
 これまで政権は、地理的な条件などを理由に、沖縄県内への移設を唯一の選択肢としてきた。一時的とはいえ、県外への移転も可能だという認識を自ら示した意味は重い。
 しかし、今回の計画には数々の疑問が浮かぶ。
 まず背後に、11月の沖縄県知事選対策という政権の意向が透けて見える。
 知事選では、普天間飛行場の県内移設を容認する現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏と、反対する那覇市長、翁長雄志(おながたけし)氏の立候補が見込まれる。
 容認派の仲井真氏が敗れれば、政府が進める名護市辺野古への県内移設は頓挫しかねない。県民の反発を和らげるために、政権は基地負担軽減を必死でアピールしている。
 空中給油機15機の普天間から岩国基地(山口県)への移駐や、都道府県を対象にした米軍再編交付金の浮上も、知事選を見据えた動きの一環だろう。
 一方、今回の計画は沖縄の負担軽減につながるものではない。辺野古に基地が完成すれば、オスプレイは沖縄に舞い戻ってしまう。
 もともと陸上自衛隊は、2015年から17機のオスプレイを佐賀空港に配備する検討をしていた。今回の移転案は、そのプランに便乗した、その場しのぎの計画と言わざるをえない。
 佐賀空港建設前、県が地元漁協と交わした公害防止協定の関連文書で、空港を自衛隊と共同使用しないとしており、陸自の計画も簡単に進む保証はない。
 事故を繰り返したオスプレイの安全性への疑問も、消えていない。低周波騒音も心配され、住民の反発は根強い。
 さらに、これまで県外移設に強い難色を示してきた米軍に対し、説得できる見通しを日本政府は持ち合わせているのか。
 政権が本気で沖縄の負担軽減に取り組むのなら、辺野古に新たな基地はいらない。選挙向けのパフォーマンスで終わらせないよう、計画を県外移設への一歩と表明し、佐賀県や米国との真剣な交渉に臨むべきだ。


毎日新聞 20140727日 0235
社説:佐賀にオスプレイ 丁寧な説明欠かせない
 突然降ってわいたような提案に佐賀県の人たちは驚き、戸惑ったのではないか。政府は陸上自衛隊が導入する垂直離着陸輸送機オスプレイ17機を、2019年度から佐賀空港(佐賀市)に配備する方針を示し、県に協力を要請した。
 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備されている米海兵隊のオスプレイも、同県名護市辺野古への移設が完了するまでの間、暫定的に佐賀空港を利用する可能性があることを伝え、理解を求めた。
 市街地にある陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター50機も移駐する計画だ。
 地元では賛否両論が巻き起こっている。なぜ佐賀なのか。これまでの政府の説明は極めて不十分だ。
 政府は、佐賀空港を選んだ理由として、離島防衛や奪還作戦を担うため長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦(あいのうら)駐屯地を中心に新設する「水陸機動団」との一体運用を目指す方針を示した。佐賀空港から佐世保まではわずかに約60キロ。佐賀空港配備のオスプレイで、佐世保の水陸機動団を輸送し、沖縄県・尖閣諸島などの南西諸島防衛にあたる計画だ。
 佐賀空港が2000メートルの滑走路を持ち、駐機場や格納庫を整備するための十分な用地があることや、有明海に面していて騒音の影響が抑えやすいことなども大きな理由だ。
 しかし、空港を管理する県は開港前に漁協と「自衛隊との共用はしない」と約束した経緯がある。なぜほかの既存の自衛隊施設の利用ではいけないのか。民間航空機に影響はないのか。騒音や事故の危険はないのか。政府はこうした県側の疑問や不安にきちんと答える責任がある。
 この問題が難しいのは、沖縄の負担軽減が関わっていることだ。
 佐賀県庁には、25日夕までに電話やメールで約110件の意見が寄せられた。過半数は騒音、墜落の危険、米軍基地になりかねない懸念などからの反対意見だったが、賛成も国防や沖縄の負担軽減のためを理由に3割にのぼったという。
 オスプレイの普天間飛行場への配備にあたっては、日米両政府が夜間飛行制限などのルールで合意したが、沖縄では必ずしも守られていない事例が報告されている。安全面への不安は払拭(ふっしょく)されていない。
 沖縄の過重な基地負担は本土がもっと分かち合うべきだ。ただ、危険が全国にまき散らされては困る。米軍はルールを徹底してほしい。
 武田良太副防衛相は、来年度予算案の概算要求に用地取得費を計上するため、8月末までに地元の理解を得たい考えを示した。期限ありきのやり方ではなく、まず政府の丁寧な説明が不可欠だ。


北海道新聞(2014/07/24
社説:オスプレイ拡散 政府の態度は一方的だ
 政府は自衛隊に導入する新型輸送機MV22オスプレイ17機を佐賀空港に配備したいとして、地元自治体に受け入れを要請した。
 沖縄の米軍普天間飛行場の米海兵隊オスプレイが暫定利用する可能性も示した。
 地元の意向を考慮しない、一方的な申し入れである。しかも、来月中に理解を得たいという。あまりに高圧的な態度ではないか。
 開発段階から事故が相次ぎ、危険が指摘されている。不安を全国に拡散させることは許されない。
 県民にとっては降って湧いたような話だ。小野寺五典防衛相が20日に要請の意向を明らかにし、その2日後には武田良太副大臣が地元を訪れ、古川康知事や秀島敏行佐賀市長らに受け入れを求めた。
 小野寺氏は「防衛省側の一方的なお願いだ」と語った。佐賀空港は開港の際、自衛隊との共用はしない方針を県が地元漁協などに示している。にもかかわらず、なぜあえて白羽の矢を立てたのか。
 わずか1カ月余りで決着させようというのも強引な進め方だ。来年度予算編成に間に合わせたいという国の都合を優先した。地方軽視であり、納得がいかない。
 古川知事は「なぜ佐賀空港か」と疑問を示している。8月末までの結論についても「白紙」を強調した。県庁前に市民が集まり、抗議したのも当然といえる。
 米軍のオスプレイを移すのは沖縄の負担軽減のためだという。沖縄県知事が求めた普天間飛行場の5年以内の運用停止を実現させ、代替施設が完成するまでの間、佐賀に配備する想定のようだ。
 11月の沖縄県知事選を有利に戦いたい思惑が露骨である。オスプレイの数を一時的に減らすことで、名護市辺野古への移設を推進する候補に支持を得たい考えだ。
 政府は在日米軍再編で基地負担が増える都道府県に交付金を支給する新制度を検討している。このような「アメとムチ」の使い分けは、地元の反発を受けるだろう。
 米国への説明はこれからだという。佐賀への暫定配備に米側が同意するかはわからない。政府の対応は拙速と言わざるを得ない。
 そもそも政府が米国に求めるべきは、普天間のオスプレイ配備の見直しである。米国には物言わず、地方に負担を押しつける姿勢を改めてもらいたい。
 オスプレイは札幌にも初飛来したばかりだ。住民の不安を顧みず活動範囲を全国に広げて既成事実化するのは問題である。地方の声に謙虚に耳を傾けてほしい。


[京都新聞 20140724日掲載]
社説:オスプレイ  佐賀配備に理はあるか
 政府は来年度から自衛隊に導入する新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港に配備する方針を決め、佐賀県の古川康知事に要請した。中国を念頭に離島の防衛力強化が狙いという。
 併せて沖縄県・米軍普天間飛行場の移設が実現するまでの間、米海兵隊オスプレイの暫定的な受け入れも求めているが、むしろ沖縄知事選をにらみ、沖縄の負担軽減を図るのが真の狙いとの見方が強い。
 オスプレイは開発段階で事故が相次いだため安全性への懸念を払拭(ふっしょく)できずにいる。海兵隊のオスプレイ24機が配備されている沖縄では、米軍との飛行に関する協定がなし崩しになっていることもあり今も不安や反発が渦巻いている。
 地元から、「なぜ佐賀空港か」「オスプレイは安全か、騒音は」などの声があがるのは当然だ。
 本当に沖縄の負担軽減につながるのかも疑わしい。
 オスプレイは2018年度までの中期防衛力整備計画で17機の調達が明記されている。19年度から順次、佐賀空港に配備し、長崎県佐世保市に南西諸島防衛強化のために創設する「水陸機動団」の輸送手段として活用する計画だ。
 だが、離島での有事はどこまで現実的なのか、離島防衛にオスプレイは不可欠かという疑問ばかりか、中国を刺激し、緊張を高めるだけとの指摘さえある。
 在日米軍基地の74%が集中する沖縄の負担軽減は急務だが、海兵隊のオスプレイの受け入れが長期化すれば、新たな基地を増やす結果となりかねない。
 沖縄県の仲井真弘多知事が求めるように普天間の運用を5年以内に停止させたとする。整備した佐賀空港で暫定使用した後、辺野古に新しい基地が完成したら、再び沖縄に戻すことが果たして可能かどうか。辺野古への移設が5年で終わる保証もない。
 突然とも見える不透明な提案は11月の沖縄知事選がらみと見て間違いない。沖縄の負担軽減の「目に見える結果」が知事選への出馬を表明した仲井真知事の後押しになるとの計算で、米軍再編交付金対象の都道府県への拡大方針が急浮上したのも同じ理由からだろう。
 政府は8月末までに地元の理解を得たいとしているが、あまりにも性急すぎる。
 オスプレイは安全か、離島防衛に不可欠か、沖縄の負担軽減につながるか、佐賀空港への配備に理はあるか-政府には、佐賀県民はもとより、国民の納得がいくよう説明する責任がある。


神戸新聞 2014/07/25
社説:オスプレイ配備/拙速は不信と混乱を招く
 政府は、自衛隊に導入する新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港に配備する計画を佐賀県などに示した。沖縄県の普天間飛行場を拠点とする米海兵隊のオスプレイの暫定配備も想定した内容だ。
 2015年度予算の概算要求がまとまる8月末までに地元の理解を得たいとする。しかし、多くの県民には寝耳に水だろう。「なぜ佐賀なのか」「事故の危険はないのか」など不安や戸惑いの声が上がる。
 安全保障は国が責任を持つ分野だが、地元を度外視しては前に進まない。オスプレイを佐賀に配備する理由は何か、疑問に丁寧に答えることが政府の務めだ。
 安倍政権は、集団的自衛権の行使容認の閣議決定など前のめりの姿勢が目立つが、拙速は不信と混乱を招く。古川康知事は「賛否は白紙」と話しており、時間をかけて説明を尽くすのが筋である。
 佐賀空港は干拓地に造られた県営空港だ。県は「自衛隊と共有するような考えを持っていない」という文書を地元漁協と交わし、もともと自衛隊の利用はハードルが高い。
 政府の計画は、その佐賀空港を自衛隊との共同使用に変えるものだ。オスプレイの配備には、30ヘクタールほどの敷地に駐機場や格納庫などの関連施設を整備する必要があるという。
 さらに、同県内の自衛隊駐屯地からヘリコプター50機も佐賀空港に移す。自衛隊は全体で700~800人規模になるといい、地元の佐賀新聞が「空港の軍事拠点化計画」と論評するほどの集中的な配備だ。
 政府が米軍オスプレイの一部配備の可能性に言及したことも、波紋を広げている。名護市辺野古への移転完了までの暫定措置とされるが、長期化する懸念はぬぐえない。
 在日米軍専用施設の74%が沖縄に集中する。そうした偏在を解消するため、本土も含め日本全体で負担の在り方を議論する必要がある。
 ただ、今回の動きには11月の沖縄県知事選に向けて基地負担の軽減をアピールしたいとの政権の思惑がにじむ。十分な議論もないまま一部の地域に負担を強いる結果になれば、政府への不信が広がり、かえって問題解決が遠のくだろう。
 基地負担をどう軽減するか、まず全体像と道筋を示して国民の理解を得る努力をすべきだ。場当たり的な対応は信頼を損なうだけである。


中国新聞 2014/7/24
社説:佐賀にオスプレイ 「共用空港」許されるか
 民間専用空港の佐賀空港(佐賀市)を拡張し、垂直離着陸輸送機オスプレイを配備する計画が浮上した。自衛隊による導入に加え、米海兵隊のオスプレイも「暫定使用」するという。
 人口密集地の上空や夜間に飛ぶなど、海兵隊オスプレイの沖縄でのルール逸脱は日常茶飯事である。本土への移駐は容易には受け入れられないだろう。まして民間空港をわざわざ自衛隊と米軍に提供させようとする意図は、到底理解できない。
 なぜ九州一円の既存の自衛隊施設を活用しないのか。理由を防衛省は説明すべきだろう。
 佐賀県議会と佐賀市議会はかねて、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の部隊の佐賀空港移転には反対を決議している。候補地として取り沙汰されたことから、先手を打った。
 ところが、その意思表示がこのたびは無視された格好である。防衛省の要請に対し、地元が憤るのは当然だろう。
 しかも同省は来年度予算に必要な事業費を盛り込むため、概算要求が締め切られる8月末までに県の理解を得たいという。一方的に期限を切るなど、高飛車としかいいようがない。
 事を性急に運ぶ背景の一つには、11月の沖縄県知事選があるのだろう。普天間の移設先となる名護市辺野古の埋め立てを承認した現職、仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)氏は3選へ立候補する決意を固めたものの、劣勢も予想される。
 そこで既に始まった空中給油機部隊の米海兵隊岩国基地(岩国市)への移駐と併せて、オスプレイの移駐を一気に進めようという腹だろう。これによって普天間の5年以内の運用停止が実現に近づき、現職に有利に働くのかもしれない。
 同時に長崎県佐世保市に新設する陸上自衛隊「水陸機動団」と佐賀空港の一体的運用もにらんでいる。日本の南西方面の「離島奪還作戦」を担う部隊で、その輸送手段を陸自が導入するオスプレイが担うのだ。
 しかし、民間専用空港が、そうした「作戦」に組み込まれるとは全く筋違いではないか。
 そもそも佐賀空港は1998年の開港に先立つ90年に、管理する県と地元漁協との間で自衛隊と共用しないことを確認している。地域振興に寄与する空港と認め、周辺住民も騒音問題などでは折り合ったに違いない。現在の収支はかんばしくないものの、中国や韓国の格安航空会社の誘致にも努めてきた。
 自衛隊や米軍との共用はその努力に水を差す。さらに民間機の運航に及ぼす支障や危険性が全くないとは言い切れない。
 政府・与党は在日米軍再編で負担が増える都道府県を対象に新たな交付金制度も検討するという。佐賀空港と同じように収支悪化に苦しむ地方の空港を、自衛隊や米軍と共用する際のアメとして用意するのだろう。
 また、オスプレイ配備にとどまらず、地方の空港が米空母艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)に使われる恐れもある。いったん運用を認めれば、今度は既存の基地の負担軽減の名の下に、恒久的に押し付けられることも想像に難くない。
 佐賀県の古川康知事は「(共用で)財務面が強化されるという認識は全くない」と、財政支援の側面があることは否定した。ならば県民の不安が募ることのない道を選ぶべきだろう。


愛媛新聞 20140725日(金)
オスプレイ配備要請 「負担軽減」を政治利用するな
 唐突感が否めない。政府は今週、自衛隊に導入予定の新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港に配備したいと、古川康佐賀県知事に要請した。
 注目したいのは、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の米海兵隊オスプレイの一時的な配備も想定した点だ。沖縄の基地負担軽減の「目に見える成果」こそ真の狙い。そう断じざるを得ない。
 11月に迫った沖縄県知事選を見据えているのは容易に想像できる。普天間飛行場の名護市辺野古への移設が最大の争点になるのは疑いようがない。移設を進めたい政府は、負担軽減の実績を沖縄県民や国民に広くアピールして、移設を容認する候補への追い風にしたいともくろむ。
 沖縄の負担軽減への思いは全ての国民が共有しているはずだ。全国知事会議は「具体的提案には真摯しんしに対応する」との見解をまとめており、古川知事が「賛否は白紙」としながら、要請を拒否しなかったのもうなずける。それだけに、選挙をにらんで国民の思いを政治的に利用するやり方は到底容認できない。仕切り直しを求めたい。
 そもそも、なぜ佐賀空港なのか。政府は、長崎県佐世保市に配置する新設部隊「水陸機動団」の輸送手段としてオスプレイを一体運用することを理由に、地理的条件を強調する。それならば、長崎県内には自衛隊が日常的に利用する大村飛行場がある。
 実際、防衛省は既存の自衛隊施設に絞って検討し、一般の空港は対象外だった。省幹部の一人は「政治マター」と述べ、官邸サイドの意向が強く働いたことを示唆する。
 有明海に面した佐賀空港は騒音問題が生じにくく、土地に余裕があるため県内の自衛隊ヘリコプター部隊の移駐も可能とされる。あえて民間空港を利用し、オスプレイの安全性を強調したい狙いも見える。が、県と地元漁協が空港建設前に交わした文書で、自衛隊との共同使用が明確に否定されている事実は重く受け止めなければなるまい。
 忘れてならないのは、自衛隊のオスプレイ導入は2014~18年度の中期防衛力整備計画に盛り込んだにすぎないということだ。防衛省は来年度に5機を購入したいとしているが、現時点では概算要求への計上に至っていない。
 政府が導入根拠とする「水陸機動団」は離島奪還作戦を担う部隊であり、沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との対立を重視したのは言うまでもない。防衛力強化にまい進する前に、まずは外交解決の努力を尽くすよう強く求める。
 オスプレイの安全性に対する国民の懸念は、依然として根強いものがある。日本が導入する必要があるのか否か。入り口の議論から丁寧にやり直さなければならない。


徳島新聞 2,014729日付
社説:佐賀へオスプレイ  地元の理解が欠かせない
 突然の政府の提案に、地元から戸惑いや不安の声が上がるのも無理はない。
 政府は、自衛隊が導入する新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港に配備したいと、佐賀県に申し入れた。
 沖縄県の基地負担軽減策として、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の米海兵隊オスプレイが暫定的に佐賀空港を利用する可能性もあるという。
 武田良太防衛副大臣が佐賀県を訪れて、空港の自衛隊との共同使用を要請した。古川康知事は協議を継続する考えを示したが「賛否は白紙」の立場だ。
 何より、地元住民の意思が尊重されるべき問題である。県は政府の案を詳しく検討し、県民に情報や問題点を明らかにしなければならない。
 垂直離着陸ができるオスプレイの配備は、沖縄県・尖閣諸島をめぐって対立する中国をにらんだ動きの一環だ。
 佐賀空港に近い長崎県佐世保市に「水陸機動団」を新設し、オスプレイを輸送手段として一体運用する方針だ。
 空港の隣接地には、駐機場や格納庫を整備する。市街化が進む陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター50機も移設する。駐屯する隊員は700~800人に上る。
 この計画が実現すれば、佐賀空港の機能は大きく変わるだろう。
 武田氏は、2015年度予算の概算要求が締め切られる来月末までに、地元の理解を得たい考えを示した。
 だが、過去に墜落事故を起こしたことがあるオスプレイは安全面の懸念が拭えず、市民団体からは反対の声が上がっている。住民の理解を得るのは容易ではない。
 佐賀県が過去に地元漁協と交わした文書で、佐賀空港を自衛隊と共同使用しないと表明した経緯もある。
 安倍政権がこの時期に計画を示したのは、11月の沖縄県知事選を前に、米軍基地の負担軽減をアピールする狙いがあるのは間違いあるまい。知事選の最大の争点は普天間飛行場の辺野古移設の是非とみられるからだ。
 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄の基地負担軽減は、長年の課題である。
 ところが武田氏は、米海兵隊オスプレイの佐賀空港の暫定利用は、普天間飛行場の移設が実現するまでの間だと説明した。移設が完了すれば、オスプレイが沖縄に帰るという一時しのぎの措置で、沖縄県民は納得するまい。
 13年3月に、米軍のオスプレイが四国で初めて低空飛行訓練を行った際、徳島県民にも不安が広がった。普天間飛行場など米軍基地と隣り合わせで生活する沖縄県民の気持ちを思うと胸が痛む。
 安倍晋三首相は「沖縄の負担軽減のため、政府としてできることは全て行う」と強調する。
 それならば、臨時の措置ではなく、長期的な視点で実効性ある施策を展開すべきだ。
 政府は、在日米軍再編で基地負担が増える都道府県を対象に交付金を支給する制度を創設する方針だ。米軍オスプレイの訓練移転先となる自治体も新たに交付対象に加える可能性がある。
 沖縄の基地負担を分担するにしても、オスプレイが飛行するたびに国民を不安に陥れることがあってはならない。結論を急がず、安全性の検証も含めて議論を尽くしたい。


高知新聞 201407250808
社説:【オスプレイ配備】ごり押しは許されない
 政府は2015年度から自衛隊に導入する新型輸送機オスプレイを佐賀空港(佐賀市)に配備する方針を決め、佐賀県に正式に要請した。
 併せて、沖縄県・米軍普天間飛行場の米海兵隊のオスプレイが暫定的に同空港を利用する可能性も示している。いずれも地元の理解抜きのごり押しは許されない。
 昨年決定した18年度までの中期防衛力整備計画はオスプレイ17機の調達を明記している。受け入れ態勢を整えた佐賀空港に順次配備し、長崎県佐世保市に配置する離島奪還作戦を担う新設部隊「水陸機動団」の輸送手段として一体的に運用するという。
 だが、オスプレイは開発段階で事故が相次ぎ、安全性に対する懸念は根強い。政府の配備方針に佐賀県民からは怒りや不安の声が上がっている。
 加えて、佐賀空港の建設前の1990年、佐賀県は地元漁協と交わした文書で、空港を自衛隊と共同使用しないと表明している。政府がそれを知らなかったとは思えない。
 配備先として木更津(千葉県)や大村(長崎県)の両飛行場など既存の自衛隊施設が浮上していたとされる中、なぜ佐賀空港を選んだのか。日米が共同で使える基地を増やすとともに、全国的な「オスプレイ・アレルギー」を払拭(ふっしょく)する狙いがみてとれよう。
 海兵隊オスプレイの暫定使用について、政府は沖縄の基地負担を軽減するためとしている。重い負担の軽減は急務だが、果たして軽減につながるのかどうか。
 沖縄県民の根強い反対にもかかわらず、政府は普天間飛行場の辺野古移設を強引に進めている。暫定使用できるように佐賀空港を整備し、その後、辺野古が完成すれば再び沖縄に戻すとでもいうのだろうか。いまのところ、政府の説明はない。
 唐突ともいえる今回の要請は、11月の沖縄県知事選をにらんでいよう。負担軽減を目に見える形で示し、出馬を表明した仲井真知事を後押しする狙いだ。米軍再編で負担が増える都道府県を対象にした新たな交付金制度の検討にも同じ意図がうかがえる。
 中国をにらんだ島しょ防衛力の強化は、日中間の緊張をさらに高めかねないとの見方もある。政府は佐賀県と協議を進めていくが、県民はむろん、国民に向けて丁寧に説明しなければならない。拙速は禁物だ。


2014/07/24付 西日本新聞朝刊=
社説:オスプレイ配備 なぜ佐賀か説明を尽くせ
20140724日(最終更新 20140724 1037分)
 唐突かつ重たい要請である。政府はまず地元に、筋の通った分かりやすい説明を尽くすべきだ。
 政府は、自衛隊が導入予定の新型輸送機オスプレイ17機を佐賀空港(佐賀市)に配備する計画の受け入れを佐賀県に求めた。陸自目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)のヘリコプター50機も移す計画で、事実上の軍民共用化である。
 さらに政府は、沖縄県の基地負担を軽減するため米軍普天間飛行場の同県名護市への移設実現まで米海兵隊オスプレイ部隊の訓練や拠点の移転も想定している。実現すれば、佐賀空港は日米同盟に基づく重要な最前線基地の一つと位置付けられよう。政府は8月末までに地元理解を得たいというが、そう簡単な話ではないはずだ。
 古川康佐賀県知事は、県民が抱く疑問や不安を政府にただしていく姿勢を示した。当然の判断だ。
 オスプレイは開発段階から事故やトラブルがあり、実戦配備後も安全性が懸念されている。この解消を政府は最優先にすべきだ。
 次に、なぜ佐賀空港なのか。政府は長崎県佐世保市に新設される陸自の水陸機動団と佐賀空港配備のオスプレイとの一体運用を目指すという。だが、それだけで「佐賀空港がベスト」と断言できるのか。赤字が続く県営空港の活用策として浮かんだ側面はないのか。
 佐賀県・市が軍事利用に否定的な見解を表明してきた経緯も見逃せない。地元に方針転換を迫るのなら、政府は空港の将来像をもっと具体的に語るべきだろう。
 一方、気になるのが沖縄との関係だ。突然の政府要請と11月の沖縄県知事選を結び付ける見方もある。もし選挙絡みで沖縄の基地負担軽減に努力する姿をアピールする狙いが政府にあるとすれば、浅慮との批判は免れまい。過重な沖縄の負担軽減は確かに本土側が検討すべき課題だが、かといって一方的な押し付けは許されない。
 九州は、軍事大国化する中国をにらみ、防衛の最前線として戦略上の重みを増しつつある。今回の政府要請も佐賀県だけでなく、九州全体の問題と受け止めたい。


佐賀新聞 20140723 0736
社説:佐賀空港のオスプレイ配備
 戸惑い、そして頭を抱える話だ。佐賀空港の軍事拠点化計画が突然出てきた。できることなら軍事施設はないほうがいい。だが「沖縄の基地負担軽減」と言われてむげに断ることもできない。
 自衛隊が2015年度から導入予定の新型輸送機オスプレイ17機を配備したい-。22日に武田良太防衛副大臣が県庁などを訪ね、古川康知事らに要請した。民生利用の県営空港という空港の性格だけでなく、玄関口でもあり、県の印象を変えてしまう構想である。
 要請内容は、空港を共同使用し、空港西側の用地に駐機場20~30ヘクタール、格納庫や給油施設、誘導路を整備する。オスプレイだけでなく、神埼郡吉野ケ里町の陸上自衛隊目達原駐屯地のヘリコプター50機も移駐する。部隊は700~800人規模というものだ。
 選定理由として、(1)長崎県佐世保市に配置する離島奪還作戦を担う新設部隊「水陸機動団」の輸送手段として地理的に一体運用しやすい(2)空港が有明海に面し、騒音などの問題が生じにくい-を挙げている。
 沖縄県尖閣諸島をめぐる中国との対立を踏まえ、南西諸島地域の有事を想定した陸上自衛隊の改編の中で出てきた構想である。安全保障はあらゆる活動の土台であり、重要なのは理解する。
 それでも「有事の想定や対処法は現実的なのか」「本当に佐賀空港がベストなのか」「共同使用の中身は」など疑問が浮かぶ。オスプレイは当初事故が多く、米軍が沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に配備した際に反対運動が起きた機体で、安全性や騒音といった不安ももちろんある。詳しい中身が示されなければ、疑問や不安は消えない。
 自衛隊との共同利用だけでも大問題だが、軍事利用はそれだけではない。沖縄の米海兵隊の利用も視野に入れるという。真の狙いはこちらにありそうだ。
 普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設が実現するまで、暫定的に佐賀空港を米海兵隊オスプレイにも利用させてほしいと求めてきた。昨年末、普天間の「県外移設」を訴えていた仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が、苦渋の決断で辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。その時に政府が示した基地負担軽減策の一つに「普天間飛行場の5年以内の運用停止」がある。
 しかし、沖縄県民は県内移設への反対が強く、5年以内に辺野古移設が終わることはない。「10年はかかる」(仲井真知事)との見方もあり、その間は佐賀空港にとの要請だ。本当に暫定的なのか、副大臣は否定したが、気づけば米軍基地になっていたとならないか、疑念は消えない。
 一方で沖縄の痛みも無視できない。埋め立てを承認した時、仲井真知事は訴えている。「国際情勢は県民の意思に関係なく緊張している。沖縄は一定の役割を果たさないといけない。しかし過重負担は不公平。全国で軽減すべきだ」
 願っていないことであっても米軍の駐留を認めておきながら、基地の負担は引き受けたくないというのでは都合が良すぎる。県内では遠い話だった安全保障や日米安保について、身近な問題として捉える時が来た。この計画をできるだけ自前で検証し、是非を探る努力がいる。ただそれには時間がかかる。(宮崎勝)


熊本日日新聞 20140724
社説:佐賀にオスプレイ 選挙目当ての負担軽減か
 あまりにも唐突だ。なぜ佐賀なのかもよく分からない。地元が困惑するのは当然だろう。
 来年度から自衛隊に導入予定の新型輸送機オスプレイについて、政府は佐賀空港(佐賀市)への配備を目指す方針を表明した。22日には武田良太防衛副大臣が佐賀県庁を訪ね、古川康知事に正式に要請した。
 防衛省は尖閣諸島をめぐる中国との対立をにらみ、南西諸島の防衛態勢を強化する計画だ。オスプレイ配備はそのためで、2018年度までの中期防衛力整備計画(中期防)に17機の調達を明記した。オスプレイは15年度から順次購入し、19年度から配備していく方針。佐賀空港への配備に際して、武田副大臣は古川知事に対し、隣接地に駐機場や格納庫などを整備し、空港を自衛隊と共同使用したい意向を伝えた。
 オスプレイは、長崎県佐世保市に配置する離島奪還作戦を担う新設部隊「水陸機動団」の輸送手段として使い、一体運用する考えだ。陸上自衛隊目達原[めたばる]駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機を佐賀空港に移す計画もあり、配置される部隊は約700~800人規模になる見通し。
 隣接地の取得費は15年度予算の概算要求に計上する方針。武田副大臣は古川知事との会談後、概算要求締め切りの8月末までに「地元の理解を得たい」としたが、いかにも急な提案であり、そう簡単に事が運ぶとは考えにくい。
 オスプレイはヘリコプターと比べて航続距離や速度で優れ、垂直離着陸ができるため離島への部隊展開のほか災害対応も可能。だが、米軍で墜落事故が相次いだこともあって安全性を懸念する声は依然根強い。佐賀県が空港建設前に地元漁協と結んだ公害防止協定の覚書付属資料には、自衛隊と共同使用しないと明記している。
 防衛省は、選定理由に水陸機動団と地理的に近いことや有明海に面し騒音などの問題が生じにくいことを挙げた。だが、なぜ既存の自衛隊施設ではなく、一般の空港なのか。武田副大臣は「総合的判断」とし、明確な説明をしなかった。これでは説得力に欠ける。
 さらに、武田副大臣は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の米海兵隊オスプレイが佐賀空港を利用する可能性にも言及した。
 沖縄県の基地負担軽減が狙いとしているが、安倍政権が今年11月の同県知事選をにらんでいることは明らかではないか。同飛行場の県内移設を実現するためには知事選に勝利する必要がある。佐賀への一時移転が容認されれば「目に見える成果」となり、基地負担軽減を進める姿勢をアピールできる。3選を狙う仲井真弘多[なかいまひろかず]知事を後押しできるとの計算が働いても不思議ではない。
 安倍政権は、米軍再編で負担が増える都道府県を対象にした、新たな交付金制度の創設を検討しているという。だが、こうした選挙目当ての負担軽減策で沖縄県民が納得するとは思えない。もっと本質的な議論が必要だ。


南日本新聞 ( 2014/7/24 )
社説: [オスプレイ配備] なぜ佐賀か説明尽くせ
 政府は自衛隊に導入する新型輸送機オスプレイを2019年度から、佐賀空港に順次配備したいと佐賀県の古川康知事に要請した。
 併せて米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設が実現するまでの間、米海兵隊のオスプレイが暫定的に同空港を利用する可能性があることを伝えた。
 知事は「政府が責任を持って県民に説明し理解を得るとともに、安全を確保してもらうことが必要だ」と述べ、協議を続けることで一致した。
 安全性に対する懸念が根強いオスプレイである。12年秋の普天間初配備は沖縄県民の反対を押し切って強行され、今も配備撤回を求める抗議行動が続いている。
 佐賀空港がなぜ配備先に挙がったのか、県民が疑問に思うのは当然だ。政府は地元への説明を尽くす必要がある。
 自衛隊のオスプレイ導入は昨年末決定の18年度までの中期防衛力整備計画に盛り込まれた。離島奪還作戦を担う部隊として長崎県佐世保市に新設する「水陸機動団」の輸送手段に使う想定で17機を調達する予定だ。
 機動団とオスプレイとの一体運用は、尖閣諸島をめぐって対立する中国をけん制する狙いがある。
ただ、長崎県内には海上自衛隊の大村飛行場がある。わざわざ隣県にある県管理の佐賀空港を使う理由は明確でない。
 有明海に面して田園に囲まれているため、騒音被害や危険物が少なく運用に適しているとの指摘もあるが、自衛隊との共同使用になれば地元は不安だろう。
 さらに米海兵隊オスプレイの暫定利用だ。政府側が訓練使用だけでなく一時配備の可能性に言及したのは、沖縄の基地負担軽減策を強調する思惑に違いない。
 政府は在日米軍再編で基地負担が増える都道府県に交付金を支給する新制度の創設を検討するなど、沖縄の基地負担軽減策を相次いで打ち出している。負担軽減に取り組む姿勢をアピールして、11月に迫った沖縄県知事選の勝利につなげたい考えだろう。
 菅義偉官房長官は「本土でも沖縄の負担軽減のためにやるべきことはやるべきだ」と述べ、全国各地にオスプレイ訓練の拠点を確保するため関係自治体との調整を急ぐ考えを示した。
 普天間にはオスプレイ24機が常駐し、住民は日常的に騒音や事故の不安にさらされている。負担を本土でも分かち合おうという姿勢は理解できる。
 だが、それは受け入れ側の理解が前提だ。拙速にことを進めて新たな摩擦を生んではならない。


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