2015年9月17日木曜日

辺野古 埋め立て承認 取り消し表明 手続き開始 (2)  150915-16

承認取り消し」尊重せよ 民意顧みない政府の責任は重い沖縄の「片務性」解消せよ

<各紙社説・主張>
北海道新聞)辺野古移設 作業止め米国と協議を(9/16)
秋田魁新報)「辺野古」協議決裂 対話での打開諦めるな(9/15)
新潟日報)辺野古埋め立て 「承認取り消し」尊重せよ(9/15)
福井新聞)辺野古承認取り消し 権力振りかざす国に問題(9/15)
京都新聞)翁長知事の決断  政府は沖縄に歩み寄れ(9/15)

神戸新聞)辺野古埋め立て/沖縄の決意受け止めねば(9/15)
中国新聞)辺野古「取り消し」 作業止めて再び協議を(9/15)
愛媛新聞)辺野古承認取り消しへ 民意顧みない政府の責任は重い (9/15)
徳島新聞)辺野古取り消しへ 泥沼化防ぐ方策を探れ (9/15) 
高知新聞)【辺野古取り消し】沖縄ともっと対話続けよ(9/15)

佐賀新聞)「辺野古」取り消し 泥沼化回避へ協議続けよ(9/16)
熊本日日新聞)辺野古取り消しへ 沖縄の「片務性」解消せよ(9/15)
南日本新聞)[辺野古取り消し] 政府は民意を直視せよ(9/15)




以下引用



北海道新聞 2015/09/16 08:55
社説:辺野古移設 作業止め米国と協議を


 政府が米軍普天間飛行場の辺野古への移設作業を再開したことを受け、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は移設阻止のため、埋め立て承認取り消し手続きを開始した。
 しかし政府は取り消しを認めず係争中も作業を続ける構えだ。
 このままでは、事態は来月にも法廷闘争に発展し、政府と県の異例の対立が長期化しかねない。
 その責任は、日米合意を理由に「普天間か辺野古か」の二者択一を強いてきた政府の側にある。
 辺野古移設に反対する沖縄の民意は一連の選挙を通じて明確だ。
 政府は作業を中止し、沖縄そして米国と、計画の撤回も視野に入れた抜本協議を急ぐべきだ。
 翁長知事は承認取り消しの記者会見で、移設阻止へ「あらゆる手段を講じる」との姿勢を示した。
 これに対し安倍晋三首相は参院特別委で「移設作業は政府一体となって進めていく」と作業強行を表明した。溝は深まるばかりだ。
 市街地に位置する普天間飛行場の危険性を早期に除去する必要性では、政府と県が一致している。
 しかし移設先の選択肢は、本当に辺野古しかないのか。
 米国は在沖海兵隊のハワイやグアムへの移転を進めている。普天間についてもオスプレイの基地機能の国外への分散など、検討すべき方法はまだ残されている。
 ラムズフェルド元米国防長官はかつて米議会で「歓迎されない場所に基地は置かない」と述べた。
 ナイ元米国防次官補も辺野古移設について「住民の支持が得られないなら再検討しなければならない」と沖縄の地元紙に語った。
 政府は日米合意を振りかざすのではなく、地元の意向を米側に説明して再検討を求めるべきだ。
 現行の日米安全保障条約は、日本が米国に基地を提供する見返りに、米国が日本に対して防衛義務を負う構図となっている。
 石破茂地方創生担当相は、集団的自衛権の行使容認を訴えた著書で、代わりに在日米軍基地は縮小の可能性が高まると主張した。
 ところが安倍政権は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した上で、さらに辺野古に新たな基地を誕生させようとしている。住民にとって納得できるものではない。
 作業再開を受け辺野古では抗議の座り込みが続く。国会前では先週末、主催者発表で2万2千人が沖縄県民と連帯して声を上げた。
 政府は来月にも、埋め立てに向けた海中での工事を本格化させる構えだが、民意を無視した既成事実化を認めるわけにはいかない。
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秋田魁新報 (2015/09/15 付)
社説:「辺野古」協議決裂 対話での打開諦めるな


 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は、名護市辺野古(へのこ)沿岸部の埋め立て承認を取り消すと表明し、必要な手続きを始めた。埋め立ては、辺野古を米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先とするため政府が申請し、前知事が承認していた。
 取り消しとなれば、辺野古での新基地建設はできなくなるが、政府は取り消しの無効を求めて裁判に訴える構えで、政府と沖縄県の全面対決は避けられない情勢だ。
 政府と沖縄県は1カ月の期間を設け、移設について集中協議を行ってきた。この間、政府は辺野古での工事を中断していたが、協議決裂を受けて再開した。翁長氏の取り消し表明はそれへの対抗措置であり、移設を断固阻止しようという決意の表れでもある。
 計5回開かれた集中協議は最後まで平行線をたどった。翁長氏は沖縄県以外にも米軍基地を分散させて日本全体で安全保障を考えるべきだと主張。これに対し菅義偉(よしひで)官房長官は、市街地にある普天間飛行場の危険性を取り除くには「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返した。
 安全保障関連法案などで安倍内閣の支持率が下落する中、一層の人気低下を招かないように、政府が沖縄県との対話ムードを演出したとみていいが、溝は埋まるどころか、かえって深まった印象が強い。
 翁長氏は埋め立て承認した前知事の手続きに法的な瑕疵(かし)があるとしており、今後は辺野古移設の賛否を問う住民投票の実施を検討する。さらに今月下旬にスイスで開かれる国連人権理事会で「土地や海洋資源に関する沖縄の自己決定権が侵害される」と主張する予定で、国際世論に訴えて政府に移設撤回を迫る考えだ。
 政府は翁長氏が承認を取り消した場合、所管する国土交通相に不服審査を請求する可能性が高い。翁長氏が主張するような承認手続きの瑕疵はないとみており、法廷闘争になっても移設工事は続行できるとの認識だ。
 集中協議は物別れに終わったものの、政府と沖縄県は基地負担軽減や振興策について話し合う協議会を設置することで大筋合意している。
 事態をこれ以上悪化させないために、まずはこの協議会を最大限活用すべきだ。政府、沖縄県代表はもちろん、必要に応じて有識者や住民代表、さらに米軍や米政府関係者も加え、沖縄県の歴史から日米安保体制の在り方まで広い視野で議論するよう求めたい。
 同時に政府はもっと地元の声に真剣に向き合うべきだ。沖縄県民の理解が得られないまま辺野古移設を強行すれば、反基地感情がさらに高まり、政府への不信感は強まるばかりだろう。
 辺野古以外の選択肢を含めて米政府とあらためて協議するなど、政府は対立を泥沼化させないために、粘り強く打開策を探るべきだ。
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新潟日報 2015/09/15
社説:辺野古埋め立て 「承認取り消し」尊重せよ


 裁判で県に勝てばいいという問題ではない。政府は作業を中止するべきだ。
 沖縄県の翁長雄志知事は宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しに向けた手続き開始を表明した。
 政府は対抗措置を取る構えだが、県と法廷で対峙(たいじ)する異常な事態は避けねばならない。沖縄県民の民意を尊重して、米国と問題解決に向けた協議に入るべきだ。
 話し合いを初めから拒否するかのような政府のかたくなな姿勢は理解できない。謙虚に沖縄の声に耳を傾け、新しい一歩を踏み出すことが求められる。
 昨年11月の知事選で辺野古埋め立て反対を公約した翁長知事が当選した。12月の衆院選小選挙区では、いずれも反対を訴えた候補が当選した。しかし政府は前知事による承認を盾に移設を推進した。
 県の有識者委員会が出した「埋め立て承認手続きには法律的な瑕疵(かし)が認められる」との報告書は、真っ向から否定した。
 1カ月間の集中協議では、「なぜ辺野古が唯一の移設先となるのか」との県の問いに正面から答えず、終了直後に作業を再開した。
 政府は、安全保障関連法案の国会審議で支持率の下落に神経をとがらせていた。集中協議が支持率を意識したポーズだったことは、今となっては明らかであろう。
 菅義偉官房長官は、翁長知事を「普天間の危険性除去に関する政府や沖縄のさまざまな努力を無視した」と批判した。県民の気持ちを無視してきた政府の姿勢を棚上げした発言は挑戦的である。
 政府が強気の姿勢を取り続けるのは、法廷闘争になった場合でも県に負けることはないとの自信があるからであろう。
 しかし、仮に裁判で勝ったとしても、県民が移設工事に納得し、工事が順調に進むようになるとは到底考えられない。
 反対運動は、移設予定地に近い米軍基地の周辺や海上だけではなく、東京・国会前でも行われるようになっている。全国的な広がりを見せつつあるのだ。
 米国は、日本国内の世論の高まりが在沖縄米軍全体の部隊運用の障害になりかねないとの懸念を深めている。
 政府と沖縄県の対立は、結果的に日米関係にもマイナスとなる可能性があるといえる。
 翁長知事は今月下旬の国連人権理事会で「土地や海洋資源に関する沖縄の自己決定権が侵害される」と訴える方針だ。
 日米両国が沖縄の声を尊重しなければ、国際社会から厳しい視線が注がれ、民主主義国家としての資質が問われかねない。
 両国は、ヘリコプター部隊の県内移転を条件とした1996年の普天間返還合意に固執するのをやめるべきだ。
 19年間で普天間をめぐる環境は大きく変化した。柔軟に対応するのは当然である。
 普天間の危険性を取り除くための、辺野古以外の選択肢を探る必要がある。早急に協議を始めてもらいたい。
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福井新聞 (2015年9月15日午前7時30分) 
論説:辺野古承認取り消し 権力振りかざす国に問題


 米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設をめぐり、翁長雄志知事は仲井真弘多前知事による埋め立て承認の取り消しに向けた手続き開始を表明した。10月中にも正式に取り消す考えだ。政府と県の集中協議が決裂し、沖縄防衛局は既に移設関連工事を再開した。相互理解がないまま、法廷闘争に持ち込まれるのは必至の状況にある。
 これを国と地方の対立という単純な構図でみては問題の本質を見失う。在日米軍専用施設の約74%が集中し、長く住民の生活が脅かされている。翁長氏が「魂の飢餓感」と表現する異常な状況をいかに理解するかだ。非は沖縄にはない。
 埋め立て承認は防衛局が進めている海底ボーリング調査に続く本体工事の法的根拠となる。菅義偉官房長官は「承認に法的瑕疵(かし)はない」と正当性を主張。地方自治法に基づき、知事による取り消し処分の是正を県に指示するとみられる。たとえ法廷闘争になっても勝てると強気の姿勢だ。
 翁長氏は「前知事による埋め立て承認には瑕疵がある」として「あらゆる手段を講じて辺野古に基地を造らせないための第一歩となる」と強調する。
 今月下旬には国連人権理事会で「土地や海洋資源に関する沖縄の自己決定権が侵害される」と訴え、日米両政府を批判する国際世論の喚起を狙う。つまり、権力による辺野古移設は地方自治への侵害であり、米軍基地の危険性と隣り合わせで暮らす県民への人権侵害ということであろう。
 政府側は「沖縄の基地負担軽減」を繰り返し、普天間飛行場の危険性除去には「辺野古移設が唯一の解決策」と強調する。
 しかし、翁長氏は普天間問題の原点を、戦後の米軍による強制収用と位置付けている。政府は1996年の普天間返還の日米合意を基本にする。だが基地を県内移設したところで、何ら負担の軽減にはならない。それどころか、一段と要塞(ようさい)化する可能性もある。米海兵隊の戦力的な抑止力が強調されるが、むしろ基地が標的になるリスク増大も指摘されている。
 政府との集中協議を振り返った翁長氏は「県民に寄り添う姿勢はほとんど感じられなかった。政府の姿勢は日本全体で安全保障を考える気概も何もない。残念至極だ」と述べた。
 県と国の間にできた「不信感」という深い溝は、政府の形式な対話で埋まるはずもない。知事選や国政選挙などの結果が示すように、反基地は県民の「民意」である。地元メディアの調査でも新基地建設反対が8割を超え、共同通信の全国世論調査でも移設作業反対の方が多数を占める。
 日米同盟の強化を背景に国家権力を振りかざす政府は、先の大戦で本土の盾になった小さな島の切実な声に聞く耳を持たない。地方自治の危機といっても言い過ぎにはならないだろう。
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[京都新聞 2015年09月15日掲載]
社説:翁長知事の決断  政府は沖縄に歩み寄れ


 知事一人の決断ではなく、沖縄の民意として、政府は重く受け止めるべきだ。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題で、翁長雄志知事はきのう、前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認には「瑕疵(かし)がある」とし、取り消しに向けた手続きの開始を表明した。工事主体の沖縄防衛局からの意見聴取などを経て、10月中にも正式に取り消す考えだ。
 埋め立て承認は、海底ボーリング調査に続く本体工事の法的根拠で、取り消しは移設阻止への「最大の知事権限行使」となる。これに対し、政府は法的措置で対抗し、工事を続行する方針だ。法廷闘争に発展すれば、双方の対立は決定的となろう。
 工事を中断して臨んだ集中協議は、政府が「(普天間の危険性除去は)辺野古移設が唯一の解決策」との方針を譲らず、在日米軍基地の74%が集中する負担の重さなどを訴える県との溝が埋まらないまま決裂した。しかも中断期間が終わるや、何事もなかったかのように工事を再開した。
 翁長氏は会見で、沖縄と歩み寄ろうとしない政府を批判し、「あらゆる手段を講じて辺野古に基地を造らせないための第一歩となる」と述べたが、苦渋の決断だったことは想像に難くない。後押ししているのは、翁長氏自ら「魂の飢餓感がある」と表現する県民の心情に他ならない。
 政府は「法的瑕疵はない」と反論し、承認が取り消されれば地方自治法に基づき知事の取り消し処分の是正を県に指示する構えだ。防衛局が国土交通相に審査請求と一時的な効力停止を申し立てることも検討する。法廷闘争では有利とみているようだ。
 だが、このまま工事を続ければ県民の反発がさらに強まるのは避けられない。日本の安全保障は多くの米軍基地を抱える沖縄の理解と協力なしに機能しない。政府は工事を止め、沖縄はもとより、米国とも協議を尽くす姿勢で、事態の打開にあたるべきだ。
 県側は、辺野古移設計画の撤回には幅広い世論の支持が欠かせないとみる。翁長氏は今月下旬の国連人権理事会で移設反対を訴え、日米両政府の姿勢を国際社会に問う予定だ。
 会見で、翁長氏は政府に対し「日本全体で安全保障を考える気概も何もない。残念至極だ」と語った。その言葉を受け止めなければならないのは、私たち国民一人一人でもある。
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神戸新聞 2015/09/15
社説:辺野古埋め立て/沖縄の決意受け止めねば


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、翁長(おなが)雄志知事がこれまで温存してきたカードをついに切った。
 昨日の記者会見で、新基地建設が計画される、名護市辺野古沿岸部の埋め立ての承認取り消しに向け、手続きを始めると表明した。
 1カ月にわたる政府との集中協議が決裂したのを受け、あらためて「辺野古に基地を造らせない」との強い意志を示したと言える。取り消し手続きは「その第一歩」という。
 政府だけでなく、沖縄に過酷な基地負担を強いている、県外に暮らす私たちも、この決意を重く受け止めねばならない。
 県は今後、工事主体の沖縄防衛局に対する意見聴取を経て、10月中にも前知事による埋め立て承認を正式に取り消す考えという。
 これに対し、政府が行政不服審査法に基づく審査請求などの措置を講じるのは必至だ。法廷闘争は避けられないだろう。
 埋め立て承認については県の有識者委員会が7月、「手続きに法的瑕疵(かし)がある」などとした報告書を翁長知事に提出していた。
 その上で県が政府との集中協議に応じたのは、対立の先鋭化をできれば回避したいと思いもあったのではないか。だが、その願いは届かなかった。協議は平行線のまま終わり、中断されていた関連工事がすぐさま再開された。
 知事選をはじめ複数の選挙で示された「辺野古ノー」という民意を背負ったリーダーとしては、たとえ政府との対立が激化しても一歩も譲るわけにはいかなったのだろう。国内外の世論を喚起したいとの意図もうかがえる。
 ただ、争いが泥沼化するのは双方にとって不幸であり、解決も遠のくばかりだ。ひいては安全保障面に深刻な事態を招きかねない。
 ハードルは高いかもしれないが、全面対決を避けるために再度、協議のテーブルにつけないか。その際、もう一方の当事者である米側も加え解決策を探るべきではないか。
 翁長知事は今月下旬、スイス・ジュネーブで開かれる国連人権理事会で演説し、沖縄の現状を国際世論に訴える方針だ。
 国際的に理解が広がれば、移設反対を「内政問題」としてきた米政府も無視できなくなるはずだ。
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中国新聞2015/9/15
社説:辺野古「取り消し」 作業止めて再び協議を


 法廷闘争も辞さない覚悟なのだろう。沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事がついに決断した。
 米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て許可の取り消しに向けた手続きを始めると表明した。おととし前知事が承認した決定を全面的に覆すことになる。
 防衛省が約1カ月の中断を経て先週末、現地での作業を再開したのが直接の引き金になった。その間、県と政府は5回の集中協議を重ねたが、平行線のまま物別れに終わった。
 それを受けての沖縄側の一手である。「ありとあらゆる手段を講じて辺野古に基地を造らせないということの第一歩」と知事は記者会見で覚悟のほどを示したが、心中は複雑だろう。政府との関係が完全に抜き差しならなくなるからだ。
 今後の展開も見通せない。沖縄防衛局への意見聴取などを経て、10月にも正式に取り消す考えでいる。対する政府は対抗措置を取る構えで、地方自治法に基づく知事への是正指示や沖縄防衛局が国土交通省に一時的な効力停止の申し立てをすることなどが念頭にあるようだ。
 対抗措置の応酬の末に司法の場にもつれ込むのは避けられそうもない。ただ沖縄の側にはっきりと勝算があるわけでもなさそうだ。知事は移設が止められるかについて「現時点で言及するのは差し控えたい。全くの白紙だ」とも述べた。
 最大のポイントは前知事の決定について「法的な瑕疵(かし)があった」とする現在の主張が認められるかどうかだ。基地問題の現実というより行政の連続性や手続き論などの方が裁判の争点となる可能性もある。
 過去に県は法廷闘争の難しさを経験している。1995年の少女暴行事件を踏まえ、当時の知事は基地用地の強制使用に必要な代理署名を拒否し、国が職務執行命令を求めて提訴した。結果は1年足らずで知事側の敗訴が確定し、さらに米軍用地特別措置法の改正につながった。
 それでもなお沖縄県が埋め立て反対を貫くのは、選挙で示された「民意」の支えがあるからである。知事が辺野古への移設の是非を問う県民投票にまで言及するのもまさにそのためだ。
 こうまで沖縄を追い込んだ責任は当然、政府の側にある。作業を再び中断し、話し合いを続けるべきだ。まずは先の集中協議で明らかになった課題を整理する必要があろう。
 例えば前知事が埋め立てを許可する際に求めた普天間の「5年以内の運用停止」はどうなったのか。努力を誓ったはずの安倍政権は米国と本格的に交渉する姿勢すら見せない。要するに方便だったということだ。
 普天間周辺はいまだ危険な状況が続くのは政府側も認める通りだ。だが米軍に飛行制限などの申し入れをまともにしているとは思えない。辺野古移設を県民にお願いするにしても、目の前の危険を取り除く努力をしてからの話ではないか。ならば知事側も工事を当面、見合わせることを条件に「取り消し」の矛を収めることもできよう。
 国際情勢も米軍のアジア戦略も変わりつつある。これまで繰り返されてきた「辺野古移設が普天間問題の唯一の解決策」は本当か。そこから解きほぐし、米政府ともあらためて協議するのも必要な段階だろう。
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愛媛新聞 2015年09月15日(火)
社説:辺野古承認取り消しへ 民意顧みない政府の責任は重い


 「あらゆる手段を講じて辺野古に基地を造らせないための第一歩」(翁長雄志沖縄県知事)が、ついに踏み出された。 
 翁長知事はきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の、埋め立て承認の取り消しに向けた手続きの開始を表明。10月中にも正式に取り消す方針を明示した。「国対沖縄」の対立は決定的で、今後は法廷闘争に発展する可能性が高まろう。 
 ここまで沖縄を追い詰め、説得も事態打開もできなかった責任は、ひとえに政府側にある。「移設ありき」で沖縄の民意を一顧だにせず、踏みにじろうとしてきた強権的な姿勢と無策を猛省し、沖縄の基地負担軽減のために政府方針の転換、撤回を本気で検討すべきだ。 
 翁長氏は昨年12月の知事就任以降、「辺野古移設反対」の明確な民意を受け、移設拒否を訴え続けてきた。だが政府は「辺野古移設が唯一の解決策」との方針を一つ覚えのように繰り返すだけで、譲歩はおろか、意を尽くして理解を求める姿勢さえ示そうとしなかった。目に余る不遜な態度というほかはない。 
 政府が呼びかけた1カ月間の集中協議も、安全保障関連法案審議への影響などを考えた「自己都合の時間稼ぎ」だったことは明らか。翁長氏は最終会合で「工事を再開するか」と聞くと「そのつもりです」と言われ、その時点で「取り消しの決意を固めた」と吐露した。実際、協議が終わるや直ちに、移設に向けた関連作業を「粛々と」再開した政府の態度はあまりに威圧的で、強い憤りを覚える。 
 「残念至極。県民に寄り添う姿勢はほとんど政府に感じられず、日本全体で安全保障を考える気概も何もない」。翁長氏の痛切な訴えを、政府は真剣に受け止めねばならない。知事の埋め立て承認は本体工事の法的根拠であり、前知事による手続きの瑕疵(かし)を精査するのは当然の権限行使。政府は法的措置の応酬に躍起になるのではなく、対立が長引かぬよう、移設の再考や代替案の検討などによって誠実に手を尽くす責務があろう。 
 普天間飛行場の危険性除去はむろん、喫緊の課題には違いない。しかし、なぜそれが「唯一の解決策」として辺野古移設との二者択一になるのか、必然性は説明できない。終戦後27年も米軍占領下に取り残され、土地の強制収用で基地を押しつけられた沖縄の苦難の歴史を忘れ、民意に耳をふさいで移設を強行することは許されない。 
 同じ県内で負担と危険をたらい回しにしたところで、沖縄に在日米軍専用施設の約74%が集中する抜本的な問題は解消も軽減もされない。政治がなすべきはまず自国民の民意を尊重し、対米追従一辺倒の姿勢を改めて真摯しんしに米国との交渉を始めることである。 
 「魂の飢餓感がある」―。翁長氏がそう表現した、沖縄県民の心情をくみ、踏みとどまる英断を政府に強く求めたい。
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徳島新聞 2015年9月15日付
社説:辺野古取り消しへ 泥沼化防ぐ方策を探れ


 政府と沖縄県が法廷で全面対決するような異常事態は、避けなければならない。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題で、翁長雄志知事が沿岸部埋め立て承認の取り消し手続きを始めると表明した。来月中にも正式に取り消す。
 中断していた移設関連作業を政府が再開したことに反発したものだ。政府も対抗措置を取るとみられ、法廷闘争に発展する可能性が高まった。
 両者は、先日までの集中協議で、新たな対話の枠組みを設けることで合意している。これを生かし、問題が泥沼化することを防ぐ方策を探るべきだ。
 会見で翁長氏は「日本全体で安全保障を考える気概も何もない。残念至極だ」と国を厳しく批判した。辺野古移設反対を訴え続けているにもかかわらず、代替案を検討しないことへのいらだちの表れだろう。
 それは沖縄県民の怒りでもある。思いをくみ取ろうとせず、自らの主張を繰り返す政府の姿勢は残念だ。
 取り消し手続きの開始は、県の有識者委員会が7月に翁長氏に提出した報告書に基づく。報告書は、仲井真弘多前知事の承認手続きに「法律的な瑕疵が認められる」と指摘している。
 承認が取り消されれば、政府は埋め立ての法的根拠を失う。県は、対抗策の「切り札」を出したといえる。
 これに対し、沖縄防衛局は国土交通相に不服申し立てを行うとみられ、取り消しを「無効」として、作業の続行を図る。作業が止まらなければ、県が訴訟を起こすことも考えられる。
 「法廷闘争やむなし」との認識は双方に広がりつつある。こうした事態を招いたことを、政府は重く受け止めなければならない。
 先月10日からの1カ月間、両者は集中協議を行ってきた。収穫は、対話の枠組みを新設し、米軍基地の負担軽減策や振興策の協議を継続するという合意だった。
 協議期間が終わり、県の潜水調査が終了した翌日、政府は作業を再開した。
 「協議継続」なら、作業を止めたまま行うのが筋だろう。強権的な国のやり方は、集中協議や合意は演出にすぎず、世論を意識したポーズだったと言わざるを得ない。
 県は、政府を翻意させるには「世論に頼るしかない」とみている。当初、承認取り消しを今月末の県議会で表明することを検討していたが、前倒ししたのはそのためだ。工事再開後すぐに対抗策を打ち出すことで「強行する国に立ち向かう沖縄」を広くアピールできると考えた。
 翁長氏は今月下旬、国連人権委員会に出席して辺野古移設反対を訴える。国際社会で注目を集め、日米両政府にプレッシャーをかける狙いだ。
 これ以上の混迷は、一層の政権不信を招くだけである。政府は、沖縄の思いに寄り添う努力をすべきだ。
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高知新聞 2015年09月15日08時08分
社説:【辺野古取り消し】沖縄ともっと対話続けよ


 沖縄県の翁長知事が米軍普天間飛行場の移設先とされている、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを表明した。 
 政府と同県との1カ月間の集中協議が決裂した後、移設関連作業が再開されたことを受けた対応だ。知事は手続きを経て10月中にも正式に取り消す考えだが、政府が対抗措置を取るのは確実だ。法廷闘争が必至となるほど、対立が先鋭化することを憂える。 
 承認取り消し表明に対し、菅官房長官は「政府や沖縄のさまざまな努力を無視しており、非常に残念だ」と突き放した。安倍首相も「住民生活や環境に配慮しながら(移設を)進めていく」と対抗する方針を示した。こうした「問答無用」の姿勢がある限り、もつれた糸はほどけない。 
 政府は「法廷闘争となった場合でも負けない」と考えている。根拠は仲井真前知事が2013年末に埋め立てを承認したことだ。しかし前知事も県外移設を訴えていた。一転、県内容認になった背景には政府が約束した巨額の沖縄振興策があろう。 
 前知事の「豹変(ひょうへん)」に県民がいかに驚き、反発したか。それは14年11月の知事選で翁長氏が前知事を大差で破ったことで明らかだ。政府が固執する「前知事の承認」は、民意から遠いものだった。 
 翁長氏は会見で昨年の知事選に関して、普天間飛行場のある宜野湾市でも自らの得票数が前知事より多かった点を挙げている。市民は普天間の固定化を拒んでいるが、県内移設にも苦しい思いがあることが分かる。 
 政府が強調する「辺野古移設による普天間の危険性除去」に、沖縄県民を説得する力はない。 
 普天間返還の契機は1995年の米兵らによる少女暴行事件だ。反基地の世論を背に当時の大田知事は、国による米軍用地の強制使用に関する公告・縦覧手続きの代行などを拒否する。だが国が起こした職務執行命令訴訟で敗訴し、代行に応じた経緯もある。 
 国が特定の県を相手に訴訟を繰り返す事態は異常と言うほかない。「沖縄は差別されている」との県民感情もさらに強まろう。 
 仮に法廷闘争で勝ったとしても、それによって民意が離反すれば損失ははるかに大きい。政府は強硬手段に訴えるのではなく、沖縄との対話に力を注ぐよう重ねて求める。
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佐賀新聞 2015年09月16日 05時00分
論説:「辺野古」取り消し 泥沼化回避へ協議続けよ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しに向けた手続きに入った。10月中にも手続き終了になる見通しで、政府も対抗措置をとる構えだ。争いが泥沼化すればますます解決は遠のく。政府は工事を中断し、再度協議の場を持つべきだ。
 7月中旬から約1カ月にわたった国と沖縄県の集中協議は、最後まで平行線をたどった。政府は、市街地にある普天間飛行場の危険性除去を辺野古移設によって進める必要性を強調、「辺野古が唯一の解決策」と繰り返した。
 一方、翁長知事は米軍に強制的に土地を収用され続けた沖縄の戦後を取り上げ、「県民の魂の飢餓をどう思うか」と問いかけた。在日米軍専用施設の約74%が沖縄に集中し、沖縄県民に負担を強いる現状への疑問を突きつけている。「日本全体で安全保障を考える気概も何もない」という言葉にもその思いが凝縮されている。政府のみならず、私たち一人一人も重く受け止めなければならない。
 集中協議の最終会合で、翁長知事は「工事を再開するか」という問いに政府側が「そのつもりです」と答えた時点で「最大の知事権限の行使」と位置づける承認取り消しを決意したという。
 前知事の承認手続きに「法的瑕疵(かし)はない」と主張する政府は、地方自治法に基づく沖縄県への是正指示や、沖縄防衛局による国土交通相への一時的な効力停止の申し立てなどの対抗措置をとるとみられる。県が応じなければ法廷闘争に発展する可能性が高まる。
 県は法廷闘争で苦い経験を持つ。1995年の米兵による少女暴行事件で、当時の知事が基地用地の強制使用に必要な代理署名を拒否し、国が職務執行命令を求め提訴。裁判は1年足らずで知事敗訴が確定した。県には法廷闘争にためらいがあったというが、それでも承認取り消しというカードを繰り出したのは、世論がカギを握るとみているからだ。
 工事再開を機に承認取り消しの意向を表明したのは、県として明確な姿勢をアピールする狙いがある。翁長知事は今月下旬に国連人権理事会に出席して辺野古移設反対を訴えるほか、辺野古移設の賛否を問う県民投票も検討している。国内外に世論を巻き起こして日米両政府に圧力をかけたいとの意図が透けて見える。
 ただ双方の対立が続けば、沖縄県民の反基地感情も高まる。基地の地元が不安定になれば日米の安全保障体制に影を落とすことになる。協議継続でしか深刻な対立回避の道筋は見えない。集中協議で、米軍基地の負担軽減や振興策を話し合う協議の場設置で双方が大筋合意している。まずは合意履行へ話し合いを進めるべきだ。
 リチャード・アーミテージ元国務副長官は、辺野古移設に関し「日本政府が別のアイデアを持ってくるのであれば、間違いなく米国は耳を傾ける」と琉球新報(沖縄県)の取材に答えている。普天間返還の合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補も「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」と述べている。辺野古以外の選択肢はないのか、政府は米国と協議する道も探ってほしい。(梶原幸司)
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熊本日日新聞 2015年09月15日
社説:辺野古取り消しへ 沖縄の「片務性」解消せよ


沖縄県の翁長雄志[おながたけし]知事はきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しに向けた手続き開始を表明した。
 政府との1カ月間の集中協議が決裂し、政府が移設関連作業を12日に再開したことで、温存してきた「最大の知事権限行使」のカードを切った形だ。工事主体の沖縄防衛局からの意見聴取を経て10月中にも正式に取り消す考えだが、「辺野古が唯一の解決策」とする政府が対抗措置を取るのは確実で、法廷闘争に発展する可能性が高まった。
 集中協議とは一体何だったのか。普天間問題の原点を1996年の日米合意とする政府と、戦後の米軍による土地の強制接収にあると位置付ける沖縄との溝が、わずか5回の協議で埋まるはずもない。安倍晋三政権としては、作業を中断して協議を行ったことで「沖縄の声は聞いた」とアピールする狙いがあったろう。支持率に目配りしながらの単なるセレモニー、と批判されてもやむを得まい。
 協議決裂を受けて、政府が直ちに作業を再開させたことも問題だ。県民感情を逆なでし、反対行動がエスカレートして無用の混乱、衝突を招く恐れもある。「有無を言わせず」という強権的な姿勢は、県民の反発を招くだけで何の解決にもつながらない。
 安倍首相は、安全保障関連法案が成立すれば米国だけが日本防衛の義務を負う日米安保条約の片務性を解消し、対等な同盟関係になると主張する。それならば、安保条約によって過重な米軍基地負担を背負わされ続ける沖縄の「片務性」はどうなるのか。なぜ「基地の中に沖縄がある」といわれる状況が続くのか、政府は明確に説明するべきだ。
 翁長氏は、埋め立て承認の取り消しを表明した会見で、政府の姿勢を「日本全体で安全保障を考える気概もない。残念至極だ」と批判した。この言葉は、政府にだけ向けられているのではあるまい。
 政府は移設作業を再び中止するべきだ。そして、沖縄とだけでなく、有識者や米政府、米軍関係者を交えた公開の協議の場を設けてもらいたい。そこで辺野古以外の道を探ることこそ、沖縄の「片務性」解消につながるはずだ。
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南日本新聞 ( 2015/9/15 付 )
社説:[辺野古取り消し] 政府は民意を直視せよ


 沖縄県の翁長雄志知事が米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消す手続きを開始すると表明した。
 政府が沖縄県との集中協議のため、1カ月間にわたり中断していた移設関連工事を先週末に再開させたことを受けたものだ。
 政府は対抗措置をとって「法廷闘争」に発展する公算が大きい。だが、対立が法廷に持ち込まれれば混迷が深まるだけだ。決定的な亀裂が入ることは何としても避けなければならない。
 政府は「沖縄の民意」にもっと真剣に向き合い、打開の道を探る努力を続けるべきだ。
 沖縄県側は承認取り消しを「最大の知事権限行使」と位置づけてきた。翁長氏は会見で「辺野古に基地を造らせないための第一歩となる」と強調した。
 これに対し、菅義偉官房長官は「既に行政の判断は示されている。手続きに法的瑕疵(かし)はない」と工事を進める考えだ。海底ボーリング調査を今月下旬にも再開するとみられる。
 承認が取り消された場合、政府は地方自治法に基づき知事の取り消し処分の是正を県に指示する構えだ。防衛局が国土交通相に一時的な効力停止などを申し立てることも考えられる。
 いずれも法的措置の応酬が続き、訴訟に至る展開が予想される。ただ、政府は法廷闘争にもつれ込んでも移設作業は続けられると認識しているようだ。
 だが、それではこじれた基地問題の解決にはつながらず、一層泥沼化するのは明らかだ。
 翁長氏はあらゆる手だてを使って移設を阻止することを明言している。
 今月下旬にはスイスで開かれる国連人権理事会に出席し、「沖縄の自己決定権の侵害」を訴える予定だ。移設反対の民意をあらためて示すため、県民投票も検討している。世論に訴えて日米両政府に計画撤回を迫る戦略である。
 政府が今なすべきは、民意を直視することである。昨年末の知事選や名護市長選などで移設反対の民意ははっきりと示されている。
 集中協議は5回にわたって行われたが、双方の主張は平行線をたどり決裂した。政府は沖縄の声や歩んできた歴史に向き合おうとしなかった。
 工事を再開した政府に対し、住民は反発を強めている。対立が先鋭化すれば不測の事態も起こりかねない。
 政府は「辺野古移設が唯一の解決策」とするかたくなな姿勢を改め、対話を続ける必要がある。
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