2010年5月29日土曜日

沖縄切り捨ての日米共同声明  県民・国民は鳩山政権の裏切り許さない

これほど県民・国民を露骨に裏切る政権があっただろうか。
辺野古への回帰は、自民党政権時への逆戻り以上に、県民・国民を愚弄している。
だから余計に裏切りが許せない。

福島大臣罷免は、連立政権をどうするのかというより、沖縄県民の声を罷免、切り捨てたように映る。
事実、反対で団結する沖縄県民や、徳之島島民の声を無視したのだから、切り捨てだ。

結局、鳩山政権は、国民を切り捨て、アメリカとの軍事を優先したことになる。





東京新聞 2010年5月29日
【社説】辺野古方針決定 福島氏罷免は筋が違う
米軍普天間飛行場の移設先を辺野古とする日米共同声明が発表され、反対した福島瑞穂消費者担当相が罷免された。責められるべきは公約を実現できなかった鳩山首相自身であり、罷免は筋違いだ。
日米外務・防衛担当閣僚の共同声明は、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を現行案通り、米軍キャンプ・シュワブのある名護市辺野古崎地区と隣接水域と明記した。いわゆる県内移設だ。
「最低でも県外」と公約した鳩山由紀夫首相は「現行案ではない」と強弁するが、在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民に負担を強いることに変わりはなく、そんな詭弁(きべん)は許されるものでない。
首相は自らが決着期限に設定した五月末までに米国、移設先、連立与党の合意を得ると言っていたものの、共同声明発表までに合意を得たのは米国だけだった。
移設先や連立与党を差し置いて共同声明を発表したのは、首相の体面を保つ意味しかない。
そんな共同声明に社民党が反対するのは当然だ。鳩山首相がすべきは、福島氏の罷免ではなく、国外・県外移設への努力を続けることではなかったか。
移設先とされた名護市の稲嶺進市長は「今さら辺野古だと言っても実現可能性はゼロだ」、沖縄県の仲井真弘多知事は「実行するのは極めて厳しい」と語った。
自民党政権時代に辺野古への移設が進まなかったのは地元の反対が強かったからにほかならない。
鳩山首相は今後、地元の反対を押し切ってでも移設を推し進める愚を犯すつもりなのだろうか。それでは自民党政権以下だ。
首相は二十七日の全国知事会議で沖縄での米軍訓練の一部を受け入れるよう協力を呼び掛けた。
在日米軍の基地負担を、沖縄だけに押しつけず、受益者である日本国民全体で可能な限り分かち合うという方向性は正しい。
しかし、具体案がないまま負担を求めても対応のしようがなく、沖縄の負担軽減に努力する姿を見せるパフォーマンスにすぎない。
政権発足後八カ月の迷走劇を、沖縄に過重な基地負担を強いる安保体制の現実に目を向けさせたと前向きに受け止める意見があることは理解するが、それ以上に、首相発言に対する信頼が失われたことの意味は大きい。
鳩山氏が首相として適任かどうか、参院選は本来、政権選択選挙ではないが、この際、国民の意思を参院選で示すほかあるまい。


朝日新聞  2010年5月29日(土)付印刷
社説:首相の普天間「決着」―政権の態勢から立て直せ
これが、鳩山由紀夫首相の「5月末決着」の姿だった。深い失望を禁じ得ない。
米海兵隊普天間飛行場の移設問題は最後まで迷走を続けたあげく、政府方針が閣議決定された。臨時閣議に先立ち発表された日米共同声明とともに、移設先は名護市辺野古と明記された。
これは、首相が昨年の総選挙で掲げた「最低でも県外」という公約の破綻(はたん)がはっきりしたことを意味する。首相の政治責任は限りなく重い。
首相は決着の条件として、米国政府、移設先の地元、連立与党のいずれの了解も得ると再三繰り返してきた。
しかし、沖縄は反発を強め、訓練の移転先として唯一明示された鹿児島県徳之島も反対の姿勢を崩していない。
社民党党首の福島瑞穂・消費者担当相は国外・県外移設を貫くべきだとして方針への署名を拒み、首相は福島氏を罷免せざるをえなくなった。連立の一角が崩れたに等しい打撃である。
「5月末決着」という、もうひとつの公約すら守れなくなることを恐れ、事実上、現行案に戻ることで米国とだけ合意したというのが実態だろう。
地元や連立与党との難しい調整を後回しにし、なりふり構わず当面の体裁を取り繕おうとした鳩山首相の姿は見苦しい。
■同盟の深化も多難
この「決着」は、大きな禍根を二つ残すことになろう。一つは沖縄に対して。もう一つは米国政府に対して。
沖縄県民には、今回の政府方針は首相の「裏切り」と映るに違いない。
政権交代の結果、普天間の県外移設を正面から取り上げる政権が初めて誕生した。県民が大きな期待を寄せたのは当然であり、そのぶん反動として幻滅が深くなることもまた当然である。
日米合意は重い。だが辺野古移設は沖縄の同意なしに現実には動くまい。首相はどう説得するつもりなのか。
それが進まなければ、2014年までの移設完了という「日米ロードマップ」(行程表)の約束を果たすことも極めて困難になる。それとも強行という手段をとることも覚悟の上なのか。
一方、米国政府に植え付けてしまった対日不信も容易には取り除けまい。
きのうの共同声明は「21世紀の新たな課題にふさわしい日米同盟の深化」を改めてうたった。両国が手を携えて取り組むべき「深化」の課題は山積している。だが、普天間問題の混乱によるしこりが一掃されない限り、実りある議論になるとは考えにくい。
私たちは5月末の期限にこだわらず、いったん仕切り直すしかないと主張してきた。東アジアの安全保障環境と海兵隊の抑止力の問題も含め、在日米軍基地とその負担のあり方を日米間や国内政治の中で議論し直すことなしに、打開策は見いだせないと考えたからだ。その作業を避けたことのツケを首相は払っていかなければならない。
■「問い」あって解なし
普天間問題の迷走は、鳩山政権が抱える弱点を凝縮して見せつけた。
成算もなく発せられる首相の言葉の軽さ。バラバラな閣僚と、統御できない首相の指導力の欠如。調整を軽んじ場当たり対応を繰り返す戦略のなさ。官僚を使いこなせない未熟な「政治主導」。首相の信用は地に落ち、その統治能力には巨大な疑問符がついた。
もとより在日米軍基地の75%が沖縄に集中している現状はいびつである。県民の負担軽減が急務ではないかという首相の「問い」には大義があった。
しかし、問いに「解」を見いだし、実行していく力量や態勢、方法論の備えが決定的に欠けていた。
普天間に限らない。予算の大胆な組み替えにしても「地域主権」にしても、問題提起はするものの具体化する実行力のなさをさらしてしまった。
首相と小沢一郎幹事長の「政治とカネ」の問題や、利益誘導など小沢氏の古い政治手法も相まって、内閣支持率は20%を割り込むかというところまできた。鳩山政権はがけっぷちにある。
55年体制下の自民党政権であれば、首相退陣論が噴き出し、「政局」と永田町で呼ばれる党内抗争が勃発(ぼっぱつ)するような危機である。
しかし、鳩山首相が退いても事態が改善されるわけではないし、辞めて済む話でもない。誰が首相であろうと、安保の要請と沖縄の負担との調整は大変な政治的労力を要する。そのいばらの道を、首相は歩み続けるしかない。
そのためには民主党が党をあげて、人事も含め意思決定システムの全面的な再構築を図り、政権の態勢を根本から立て直さなければならない。
■参院選の審判を待つ
何より考えるべきなのは鳩山政権誕生の歴史的意義である。有権者が総選挙を通じ直接首相を代えたのは、日本近代政治史上初めてのことだ。
政治改革は政権交代のある政治を実現した。永久与党が短命政権をたらい回しする政治からの決別である。選ぶのも退場させるのも一義的には民意であり、選んだらしばらくはやらせてみるのが、政権交代時代の政治である。
歴史的事件から1年もたたない。政治的な未熟さの克服が急務とはいえ、旧時代の「政局」的視点から首相の進退を論じるのは惰性的な発想である。
普天間への対応も含め、鳩山首相への中間評価は間もなく参院選で示される。首相は「5月末」は乗りきれても、国民の審判からは逃れられない。


毎日新聞 2010年5月29日 2時30分
社説:「普天間」政府方針 この首相に託せるのか
日米両政府は、米軍普天間飛行場移設に関する共同声明を発表した。移設先を沖縄県名護市の「辺野古崎地区及び隣接水域」とし、米軍訓練の鹿児島県・徳之島をはじめ県外への分散移転、グアムなど国外移転を検討するという内容だ。
政府は、共同声明に基づいて普天間移設と沖縄の負担軽減に取り組むとする政府方針を閣議決定した。
鳩山由紀夫首相は、共同声明の辺野古明記に反発する福島瑞穂消費者・少子化担当相(社民党党首)が政府方針への署名を拒否する考えを表明したため、福島氏を罷免した。
◇「信」失った言葉
普天間問題は首相が約束した、移設先の合意を含めた「5月末決着」も「県外移設」も実現できなかった。
閣議後に記者会見した首相は、県外の約束が守れなかったことを謝罪し、辺野古移設について「代替地を決めないと普天間の危険が除去できない」と語った。また、移設先・沖縄の理解を得ることなどに「今後も全力を尽くす」と述べ、首相の職にとどまる考えを明らかにした。
私たちは、鳩山首相が政治の最高責任者の座に就き続けることに大きな疑念を抱かざるを得ない。最大の政治課題、普天間問題での一連の言動は、首相としての資質を強く疑わせるものだった。これ以上、国のかじ取りを任せられるだろうか。来る参院選は、首相の資質と鳩山内閣の是非が問われることになろう。
首相は5月末決着に「職を賭す」と語っていた。しかし、今回の日米大枠合意は、「辺野古移設」を具体的に決める一方で、沖縄の負担軽減策は、辺野古移設の「進展」を条件とする今後の検討項目となった。カギを握る移設先の同意は見通しも立たない。「決着」にはほど遠い。
移設先をめぐる混迷は、より深刻だ。首相は「最低でも県外」「辺野古以外に」と明言した。「沖縄県民の思い」を繰り返し、「腹案がある」とも語った。06年日米合意の辺野古埋め立てを「自然への冒とく」と非難した。その結果が、現行案と同様の辺野古移設である。
国の最高指導者が「県外」「腹案」と自信ありげに断言すれば、沖縄県民が県外への期待を膨らませるのは当然だ。それを裏切った罪は重い。
県外から辺野古への変心は在日米軍の抑止力を学んだ結果だという。首相として耳を疑う発言だった。「最低でも県外」は党公約ではないと釈明を重ねる姿に、首相の威厳はない。
鳩山首相の言葉は、羽根よりも軽い。そう受け止められている。政治家と国民をつなぐ「言葉」が信用されなくなれば、政治の危機である。
首相が沖縄の負担軽減を願い、県外移設に込めた思いは疑うまい。しかし、希望を口にすれば実現するわけではない。政治は結果責任である。
経済財政政策や深刻な雇用への対策、緊急の口蹄疫(こうていえき)対応、政治主導の国づくり、緊迫する朝鮮半島情勢--内政・外交の諸課題が山積している。しかし、首相の言葉が信を失った今、誰がその訴えに耳を傾けるだろうか。深刻なのはそこだ。
日米同盟は日本の安全のために有効かつ必要である。「北朝鮮魚雷」事件で、改めてその思いを強くしている国民は多い。が、日米同盟の円滑な運営には、基地を抱える自治体との良好な政治的関係が不可欠である。辺野古移設を強行突破することになれば、その前提が崩れる。
◇まず普天間危険除去を
沖縄の合意のないまま辺野古移設で米政府と合意したことは、沖縄には、日米両政府が新たな負担を押しつけようとしていると映っている。県外移設に大きな期待を抱いた沖縄の、首相への不信は深い。その落差を、当の鳩山首相が埋めるのは果たして可能だろうか。
稲嶺進名護市長は受け入れ断固拒否の姿勢だ。11月に知事選を控え、かつて辺野古移設を容認していた仲井真弘多知事も、今回の日米合意の内容を認める環境にない。
同月のオバマ米大統領来日にあわせ、辺野古移設の詳細で日米合意しても、実現の保証はない。「世界一危険な基地」普天間が継続使用される最悪の事態が現実味を増している。普天間問題への対応は明らかな失政である。その責めは鳩山首相自身が負うべきだ。
普天間移設が現実に進展しないとしても、普天間問題の原点である周辺住民への危険除去は、ただちに取り組むべきだ。訓練分散などによる飛行回数の大幅減少は急務である。大惨事が起きかねない現状を放置してはならない。
共同声明は、訓練分散移転のほか、米軍施設立ち入りなどによる環境対策、沖縄東方の「ホテル・ホテル訓練区域」の使用制限一部解除など新たな負担軽減策を盛り込んだ。これらの措置は辺野古移設の進ちょくを条件に実施されるとしている。これでは、負担軽減策が先延ばしになりかねない。特に、訓練分散など普天間飛行場の危険除去策は、移設作業と切り離して対応すべきだ。
米政府にも、普天間の危険除去と騒音など生活被害対策に積極的に協力するよう求める。この点で日本政府には強い姿勢が必要だ。
その解決の先頭に立つ指導者として、鳩山首相には不安がある。



2010年5月29日(土)「しんぶん赤旗」
主張:日米共同発表
県民・国民は裏切り許さない
「裏切りだ」「暴挙は許さない」―。無条件撤去が迫られた米海兵隊普天間基地を名護市辺野古(へのこ)に「移設」し、鹿児島県徳之島などに一部訓練を「移転」させるとした日米共同発表に、県民・国民が怒りの声をあげるのは当然です。
沖縄県民や徳之島の住民は、島をあげ、県民ぐるみで、県内「移設」や訓練「移転」に反対してきました。公約を踏みにじり、民意を裏切った鳩山由紀夫首相を許すはずがありません。県民・国民が基地の「たらい回し」を許さない、一大闘争を巻き起こすことになるのは避けられません。
最悪の辺野古「回帰」
沖縄県民や徳之島の住民は文字通り、島を揺るがす大集会で「移設」や「移転」に反対する意思を示してきました。住民の意向を受け、仲井真弘多県知事や稲嶺進名護市長らも、繰り返し反対の意向を表明してきました。こうした意思表示を全面的にほごにした鳩山首相の責任はきわめて重大です。
鳩山首相が口では「民意にもとづかない政治というものがあってはならない」といいながら、結局は民意に反する日米合意を強行したのは、民主主義をまったくわきまえないというほかありません。県民・国民がそうした合意を認めず、無条件撤去を求めるのは、主権者としての当然の権利です。
日米合意の内容が、「国外、最低でも県外」への移設を公約した、鳩山首相の選挙公約をまったく踏みにじっていることは明らかです。公約を守らないなら、当然改めて国民の信を問うべき性格の問題です。そうでなければ、実行する気のない公約で県民をもてあそんだのかと、鳩山首相が非難されるのは免れません。
日米合意が、普天間基地に代わる新基地を名護市の「辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する」と明記したことはとりわけ重大です。それは一時言われたキャンプ・シュワブの「陸上部」に建設するという案でもありません。自公政権が目指した、辺野古沿岸での新基地建設に回帰しただけの計画が、沖縄県民の負担を軽減するどころか、新たな負担の押し付けになることは明白です。
日米合意が、新基地建設に関する環境アセスメントを「遅延がなく完了」すると明記しているのも問題です。新基地建設のために進めた環境アセスは、配備が予定されている新型機の騒音も検討しない欠陥・違法アセスです。本来破棄するしかない欠陥アセスを前提にするなどまさに言語道断です。
徳之島などへの訓練「移転」も、基地被害を拡散させるだけで、沖縄での負担を軽減する保障がないことは明らかです。こんな合意でごまかされません。
米国にもの言う政治を
鳩山政権が政府方針には「辺野古」を明記しない「二枚舌」を使うことを画策し、それでも政権内の混乱で福島瑞穂社民党党首を罷免することになったのも、大義のないやり方が、県民・国民との矛盾を広げていることの反映です。
問題の根本には、鳩山政権が政府として当然やるべき普天間基地の無条件撤去を求める対米交渉をやってこなかったことがあります。日本共産党は無条件撤去を正面から要求します。「基地のない平和な沖縄」に道を開くうえでも、アメリカにものを言う政治、ものを言う政党の出番です。

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