米政府は、オスプレイを沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画を日本政府に正式に通告した。
森本敏防衛相は30日に沖縄を訪問し、1日午前、仲井真弘多知事と県庁で会談した。
知事は、防衛相に配備拒否を重ねて伝えた。
各紙社説も、産経を除き「政府は米国の代弁者か」「配備強行は許されない」「民意無視の強行許されぬ」と批判。
森本防衛相は米国の「使い走り」だ。それも、「パシリ」に近い。
よりによって米軍機が墜落し児童らが死傷した忌わしい事故のあった日に通行するとは・・・。
沖縄タイムスは批判する。
「森本敏防衛相は、6月30日が沖縄にとってどんな日か、知っていたのだろうか。
自国民の不安や懸念をそっちのけに、防衛大臣が米国の「使い走り」をするようでは、世も末だ。
53年前の1959年6月30日、石川市(当時)の宮森小学校に米軍のF100戦闘機が墜落した。パイロットは墜落直前に脱出して助かったが、児童ら17人(後に後遺症で1人)が死亡、210人が負傷した。この事故は、今でも沖縄の人々の記憶に深く刻まれている。
宮森小では29日、追悼集会が開かれ、児童や遺族らが花や千羽鶴を手向け、黙とうをささげたばかりだ。
よりによって米政府は、追悼集会のあったその日に、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備を通告した。
よりによって森本防衛相は墜落事故のあった30日に来県し、宜野湾市の佐喜真淳市長にオスプレイの受け入れを要請した。
おぞましい話である。政府は「CH46ヘリからMV22オスプレイへの通常の機種変更」だと説明するが、ことはそんな単純なものではない。
沖縄のすべての自治体議会がオスプレイ配備に反対し、決議や意見書を可決した。
米国でも日本本土でも受け入れられないことがなぜ、沖縄だったら許されるのか。」
琉球新報も批判する。
「森本敏防衛相は米側の正式通告(接受国通報)を受け、早速それを沖縄県に伝達するため、30日に来県する。
オスプレイは県内各地を飛ぶ予定だ。県民は頭上に、いつ墜落するか分からないものを絶えず抱えることになる。この切実な不安を受け止めず、むしろ恐怖を強制するとは、いったいどこの国の大臣なのだろう。
30日は宮森小学校米軍ジェット機墜落事故から53周年の当日である。森本氏はそれを承知で来県するのだろうか。
そもそも普天間問題は、1995年に大田昌秀知事(当時)が返還を求めたのが出発点である。その理由として挙げたのが、飛行場周辺に19もの小・中・高校・大学が存在し、宮森の悲劇を繰り返しかねない、というものだった。
よりにもよってその原点の日に来県し、墜落の不安を強いるとは何事か。県民の戦後の苦難に向き合う気持ちなどみじんもないということであろう。
自国内でありながら、土地(基地)や空の使い方について政府が口出しできない状態は、上海など戦前の租借地を想起させる。まさに植民地にほかならない。
森本氏が一国の大臣であるなら、米国の使い走りのごとく、配備先を行脚するより先にやることがあろう。むしろ、このような日米関係でよいのか、国会で正面から議論すべきではないか。」
<各紙社説>
毎日新聞)オスプレイ通告 配備強行は許されない(6/30)
産経新聞)オスプレイ 安全データに耳傾けたい(7/1)
東京新聞)オスプレイ配備計画 政府は沖縄をだますな(6/26)
東奥日報)配備強行は許されない/オスプレイ(6/30)
新潟日報)オスプレイ配備 地元の理解得られるのか(6/30)
信濃毎日新聞)オスプレイ 配備の強行はだめだ(6/30)
京都新聞)オスプレイ 配備強行は許されない(6/30)
山陽新聞)オスプレイ配備 民意無視の強行許されぬ(6/29)
中国新聞)オスプレイ配備計画 政府は米国の代弁者か(6/30)
沖縄タイムス)[県民大会開催へ]配備反対の声広げよう(6/29)
沖縄タイムス)[オスプレイ配備通報]防衛相は「使い走り」か(7/1)
琉球新報)オスプレイ配備通告/欠陥機受忍の義務はない 国会で日米関係議論を(6/30)
赤旗)欠陥機オスプレイ 国民の不安に応え配備中止を(6/29)
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日本語俗語辞書 パシリ
http://zokugo-dict.com/26ha/pasiri.htm
パシリとは、強い人や偉い人の命令で使い走りする人のこと。
【年代】 1982年 【種類】 若者言葉
パシリの解説
パシリとは「使いっ走り(つかいっぱしり)」の略で、自分より強い人や偉い人の命令で使い走りする人やそういう行為自体を意味する。先輩の命令で買い物に行く後輩がパシリにあたるが、全後輩が同等程度に交代で使い走りする場合、全後輩をパシリと呼ぶことはない。これはパシリに「アゴで使われる人」といった嘲う意が込められるためである。ただし、現代では特に嘲う意を込めず、「ちょっとパシリに行ってくれ」といった形で単に使いを頼む際にも使われる。このため一概にパシリ=いじめであるとは限らない。ちなみにパシリはツッパリブームの不良が使用、直に学生を中心に広く若者に普及した。
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沖縄タイムス 2012年7月1日 10時41分
オスプレイ:知事、防衛相に配備拒否
来県中の森本敏防衛相は1日午前、仲井真弘多知事と県庁で会談し、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備に関する米国の接受国通報の内容を説明した。知事は「オスプレイはシステムの性能の問題だ。安全性に疑問があるものは拒否するしかない」と述べ、配備反対の考えを重ねて示した。
会談後、仲井真知事は記者団に、日米地位協定で米軍の運用に日本の法律が適用されない問題点を指摘し、「危険で安心できないものを人口密集地で運用され、地位協定があるから、などという話をしたら、それこそ全基地即時閉鎖という動きにいかざるを得なくなる」との認識を示した。
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毎日新聞 2012年06月30日 02時30分
社説:オスプレイ通告 配備強行は許されない
米政府は、海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画を日本政府に正式に通告した。
4月にモロッコ、今月、米フロリダ州で墜落するなど事故が相次いだオスプレイには、日本国内で安全性への懸念が広がっている。沖縄では、仲井真弘多知事が配備反対を表明し、県議会、41全市町村議会も反対の決議・意見書を採択した。
安全性について地元の理解が得られないまま、配備を強行することは決してあってはならない。
米海兵隊は、オスプレイを7月下旬に米軍岩国基地(山口県)に搬入し、試験飛行を行った後、8月に普天間飛行場に配備を開始、10月から本格運用する計画だ。
米側はモロッコの事故について「機体に機械的な不具合はなかった」とし、フロリダの事故は8月末までに調査を終了するという。米政府は、事故調査結果がまとまるまで岩国基地での試験飛行を見合わせると発表した。それ自体は当然である。
しかし、フロリダの事故も機体の不具合ではないと断定された場合、どうするのか。地元が反対しても、これを無視して配備を進めるのだろうか。そうであれば問題だ。
森本敏防衛相は30日と7月1日、沖縄、山口を訪問し、両県知事らに米側の通告内容などについて説明する予定だ。だが、両県とも配備や試験飛行に同意するめどはない。
オスプレイは、主翼両端に回転翼を持ち、その角度を変えて、ヘリコプターのように垂直離着陸し、水平飛行では固定翼機のように高速飛行できる。空中給油も可能なため航続距離が長く、輸送能力も高いため、抑止力の向上につながるという。
一方で、ヘリモードと固定翼モードの変換時には独特の機体操作が必要となり、事故を誘発しやすいとの指摘がある。モロッコ、フロリダの両事故とも、ヘリモードから固定翼モードへの変換時に起きている。
野田政権は、オスプレイ配備が日米安保条約上の事前協議事項にはあたらないことなどから、米政府の配備計画を容認する姿勢だ。この問題で米側とぎくしゃくすれば、日米で合意している、沖縄の米軍嘉手納基地以南の施設・区域返還などに影響しかねないとの懸念もあるようだ。
しかし、04年に普天間飛行場所属の輸送ヘリ墜落事故を経験した沖縄では、米軍機の安全性に向ける視線は特に厳しい。配備を強行すれば、政府と沖縄の関係が再びこじれ、普天間問題など在日米軍再編の課題が一層、難しい事態となりかねない。
野田佳彦首相は、地元の理解を前提に解決を図る考えを明確にし、米側と協議するよう指示すべきだ。
産経新聞 2012.7.1 03:31
【主張】オスプレイ 安全データに耳傾けたい
米政府が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備を日本に正式通告したことを受け、7月末に山口県・岩国基地へ搬入した後、8月に米軍普天間飛行場に配備される計画が確定した。
森本敏防衛相は沖縄、山口両県を訪ねて地元調整に入ったが、墜落事故が続いたこともあって、「安全性」をめぐる地元の反対や抵抗感は根強い。
しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出で日本の安全が脅かされる中、米海兵隊の装備・能力を飛躍的に向上させるオスプレイの導入は、日米同盟の抑止力を高める上で不可欠だ。政府は全世界的な運用状況や技術面も含めた安全性について丁寧に説明し、日本の平和と安全に必要な配備を粛々と進めてほしい。
オスプレイは2005年、米政府が「すべての安全基準を満たした」として量産に入った。米海兵隊は世界で約140機を運用中で最終的に360機を導入する。
問題は、沖縄配備を控えた4月にモロッコ、6月に米フロリダ州で墜落事故が起き、地元自治体や反対派などによる反対論や慎重論が一斉に高まったことだ。
だが、モロッコの事故では「機械的不具合はなく機体の安全性に問題はない」と米政府が経過報告した。フロリダの事故も「設計上の欠陥を疑う理由はない」として同型機の運用が続いている。
オスプレイの事故率は11年時点で10万飛行時間あたり1・12で、海兵隊の全航空機平均2・47の半分以下(米軍統計)との安全データもある。それでも日米両政府が地元の不安に配慮して、フロリダの調査結果がまとまるまで岩国基地での試験飛行を見合わせることにしたのは妥当といえよう。
オスプレイは老朽化した現行のCH46中型ヘリと比べ、速度が2倍、行動半径が4倍、積載量は3倍あり、「日本の防衛や人道・救難能力を飛躍的に高める」(米国防総省声明)ものだ。飛行時の騒音レベルも低く、能力向上に伴って普天間での年間飛行回数を約11%減らせるなど、住民の要望にも十分に応える更新といえる。
「安全性」を口実とする一部の反対論に屈しないためにも、こうしたデータや事実を根気よく提示して説得することが肝要だ。同時に、防衛相と野田佳彦首相は同盟の最大の懸案である普天間移設にも力を注いでもらいたい。
東京新聞 2012年6月26日
【社説】オスプレイ配備計画 政府は沖縄をだますな
墜落事故が続く米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが近く沖縄の米軍基地に配備される。「危険な航空機」に沖縄が反発するのは当然だろう。
オスプレイは主翼の両端にある二つのプロペラの角度を変えてヘリコプターのように垂直に離着陸したり、固定翼機のように高速で移動したりできる特殊な航空機である。開発・試験段階で四回墜落し、計三十人が亡くなった。実戦配備後も事故は続き、今年四月にモロッコで墜落して二人が亡くなり、今月になって米国で空軍仕様機が墜落した。
◆不具合なくても墜落
それでも日本政府は山口県の岩国基地への一時移駐を経て、予定通り八月にも沖縄へ配備する方針でいる。モロッコでの事故について、防衛省は「米国から『機体に不具合はなかった』と連絡を受けた」と途中経過を発表し、地ならしを急いでいる。
米国の説明通りとすれば、不具合がなくても墜落するほどコントロールが難しい機体ということになり、沖縄の不安をかきたてるばかりだろう。不安の背景には「政府は本当のことを言わない」という根深い不信感があることを指摘せざるを得ない。
米政府は十五年も前に沖縄への配備計画を作成した。計画は公然の秘密となり、何度も国会で取り上げられたにもかかわらず、日本政府が公式に認めたのは昨年五月である。強く批判されても仕方がない。
事故率について、日米両政府は「平均を上回る安全性を有している」と発表したが、米国の技術系専門サイトは少なくとも四件の事故が除外された可能性があるとすっぱ抜き、地元紙の沖縄タイムスが報道して公になった。
◆危険な普天間へ配備
安全性は米国でも疑問視されている。米国防総省でオスプレイの首席分析官だったレックス・リボロ氏は二〇〇九年六月、米下院の公聴会に出席し、エンジン停止した場合、空力でプロペラを回転させ、安全に着陸するオートローテーション機能に「欠陥がある」と述べた。滑空できる固定翼モードへの移行も「試みてはならない」との決まりがあるとし、墜落する可能性が高いことを証言した。
そんな航空機を米政府が採用したことに驚きを禁じ得ないが、より納得できないのは日本政府の態度である。
このほど作製したパンフレットには、エンジン停止時にはオートローテーション機能を使うか、固定翼モードに切り替えて着陸できると書かれ、リボロ証言を完全に無視している。データは米政府提供というが、情報を都合よく使い分けるのは大飯原発の再稼働宣言とうり二つではないか。
沖縄の人々には、政府が「危険な航空機」である事実を隠し、住民の安全より米国の意向を優先させていると映る。配備先となる宜野湾市の普天間飛行場の構造的な問題は、さらなる不安材料となっている。
米軍は滑走路の延長線上に障害物のないことを基地の条件としているが、普天間飛行場の滑走路の先には学校、病院など十八施設、住宅八百棟があり、米軍の安全基準を満たしていない疑いが強い。オスプレイの配備がなくても危険極まりない基地なのである。
普天間飛行場には太平洋戦争前まで集落が点在していた。米軍による沖縄占領と同時に強制接収され、本土決戦に向けた滑走路が建設された。戦後、奪われた土地の周りを囲むようにして家が建ち、現在に至っている。
土地を取り戻す機会は、過去に二度あった。日本が主権を回復した一九五二年のサンフランシスコ条約で沖縄が切り捨てられなかったならば、と仮定した場合と、七二年の本土復帰時である。本土復帰に際し、日本政府は沖縄の期待を裏切って米政府にほとんどの基地の返還を求めず、米軍基地として継続使用することを認めた。
沖縄の人々が口にする「(本土からの)差別」は、戦前戦後を通じて日本の「捨て石」にされ続けてきた歴史に根ざしている。政府は特別措置によって償ってきたが、カネだけで済む話ではない。米軍基地が必要だというなら、本土も公平に負担しなければならないし、負担の必要がないというのなら米政府に撤収を求めるべきである。
◆基地問題に取り組め
オスプレイの配備をめぐり、沖縄四十一市町村の全議会が反対決議をした。基地に関する問題に正面から向き合わず、小手先でかわすやり方は限界に来ている。モロッコと米国での墜落事故の原因と安全対策が明確に説明できるようになるまで、沖縄のみならず、日本のいかなる場所でもオスプレイを飛行させてはならない。
東奥日報 2012年6月30日(土)
社説:配備強行は許されない/オスプレイ
墜落事故が相次ぐ垂直離着陸輸送機MV22「オスプレイ」について、米政府は29日、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備することを日本政府に正式通告した。7月末に山口県岩国市の岩国基地に搬入した後、8月にも普天間飛行場に配備する。
オスプレイは主翼の両端に傾斜式回転翼を持ち、ヘリコプターのように垂直に離着陸できる上に航空機のように飛べるのが特徴。老朽化したヘリの後継機で、最高速度や航続距離などが格段に勝り、海兵隊の即応力が強化されるという。
だが、開発段階から墜落事故が相次いだ、いわくつきの輸送機だ。イラクなどに実戦配備された後、今年4月にMV22がモロッコで墜落し4人死傷。今月13日には別型機CV22が米フロリダ州で墜落し5人が負傷したばかりだ。
事故調査はモロッコの事故が7月末、フロリダの事故は8月末に終了する見通し。米側は現段階の事故原因を人為的ミスとし、機体に安全上の問題はないとの姿勢を貫く。
日米安保条約で通常兵器の変更は事前協議の必要がなく、米側の判断で実施できる。ただ、米政府は事故原因に関する追加の調査情報を日本政府に伝えるまで、岩国基地での試験飛行を見合わせるという。
仮に事故原因の情報提供がなされたとしても、安全対策を明確に説明できないまま配備を強行するのは許されない。日本政府は30日から地元調整に入るが、配備に反対している沖縄県をはじめ、山口県など関係自治体は納得できまい。
市街地の真ん中にある普天間飛行場は「世界で最も危険な基地」とされる。2004年には隣接する沖縄国際大学の敷地内に米軍ヘリが墜落した。
オスプレイの配備によって事故発生の危険や騒音など地元負担は一層増す。沖縄が望む普天間飛行場の「一日も早い危険性の除去」にも逆行する行為だ。地元の理解なしに配備手続きを進めてはならない。
沖縄、山口両県だけの問題ではない。米軍は配備後に本州、四国、九州での低空飛行訓練を計画している。経路は青森-福島、青森-新潟など本県を含む6ルートという。夜間訓練も予定され、騒音被害などが懸念される。
日本政府は米政府に対し、詳細な訓練計画や安全対策に関する情報提供を求め、三沢基地を抱える本県をはじめ関係自治体に説明する責務がある。
日米両政府は先ごろ老朽化した普天間飛行場を補修することで合意した。8年かけての大規模な補修計画も浮上している。日米が合意した普天間飛行場の移設問題が宙に浮く中、基地の機能強化で「普天間の固定化」の懸念が一層強まるのは避けられない。
本土復帰から40年。日本政府は基地負担の軽減に向けた具体的な展望を示せないままだ。沖縄との溝は一層深まる。日米両政府は、沖縄に負担を強いることのない安保政策の在り方を真剣に議論すべきだ。
新潟日報2012年6月30日
社説:オスプレイ配備 地元の理解得られるのか
米垂直離着陸輸送機オスプレイの米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備に向けた動きが、具体化してきた。
米政府は29日、「接受国通報」を行い、日本政府に対する正式な配備通告をした。
7月中に岩国基地(山口県岩国市)に搬入した後、普天間飛行場へ移し、10月をめどに本格運用する方針だ。本県の上空を含め全国各地で低空飛行訓練も行うという。
オスプレイは4月以降、モロッコと米フロリダ州で墜落事故が相次いで起きた。
日米両政府は、追加的な調査情報が出るまで岩国基地での試験飛行を見合わせることで合意したが、安全上の懸念は極めて強いと言わざるを得ない。日本政府には毅然(きぜん)とした対応を求めたい。
米軍が配備を急ぐ背景にあるのは、軍事力を増強する中国への警戒感だ。アジア太平洋地域重視の国防戦略を鮮明にすることで、中国をけん制する狙いがある。
オスプレイは現在、普天間に配備されているCH46中型輸送ヘリコプターの後継とされる。
ヘリのように垂直離着陸ができる一方、固定翼機並みの速度を出すことが可能で「性能には格段の差がある」とされる。緊張の高まる地域に不可欠というわけだ。
半面、墜落事故は後を絶たない。
開発段階で多数の死者が出た重大事故が4回発生し、開発が一時停止となった経緯がある。モロッコでは乗員4人が死傷、フロリダ州では5人がけがをした。構造上の欠陥を指摘する専門家もいる。
米国防総省は6月下旬、2件の事故概要について日本側に説明した。
いずれも調査は継続中としつつ、機体に安全上の不具合はなかったと強調している。この結論は追加調査でも変わらないとみられる。
だが、こうした見解を示されても納得できるはずがない。
ましてやモロッコの事故は、ホバリング(空中静止)中に追い風を受け、操縦ミスをしたとみられている。同じような条件はいくらでも起こり得る。それだけ制御が難しいということである。
宜野湾市では、5千人を超える市民がこれ以上の危険は要らないと訴えた。沖縄県議会も配備計画の撤回を全会一致で決議した。
当然だろう。普天間飛行場は市街地に隣接し「世界一危険な基地」といわれる。米軍ヘリが隣の大学構内に墜落したこともある。移設問題は全く進展がない。沖縄県民の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
政府の対応は腰が引けているように見えてならない。
配備はあくまで米側の計画であり、日本側が法的に拒む権利はないという理由はあろう。だからといって、国民が危険にさらされる恐れを見過ごしていいはずがない。
森本敏防衛相は沖縄、山口両県を訪れ、地元の理解を得たい考えだが、政府に必要なのは問題があれば計画の撤回を迫ることだ。それなくして日米同盟の深化はあり得ない。
信濃毎日新聞 06月30日(土)
社説:オスプレイ 配備の強行はだめだ
米政府は、安全性への疑念が深まっている米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイを、沖縄の普天間飛行場に配備することを正式に日本側に伝えてきた。
深刻な墜落事故が相次いでいる機体である。4月にモロッコ、今月に入って米フロリダ州で起こした事故の原因も明確になっていない中、米側の強い姿勢に日本政府が押し切られた格好だ。
沖縄だけでなく、長野県内を含むとみられる日本各地で飛行訓練が計画されている。国民の不安に丁寧に答える必要があるのに、納得できる説明もなく、日米両政府は強引に配備を進めている。安全軽視の姿勢は疑いようもなく、容認することはできない。
オスプレイは山口県岩国市の米軍岩国基地で安全確認の試験飛行を行った後、普天間飛行場に配備することになっている。
日米両政府は、米国内の事故に関する新たな調査情報が日本側に伝えられるまでは試験を行わないことにするなど、配慮の姿勢を見せてはいるが、沖縄など各地で反発が広がっている。
今月17日には普天間を抱える宜野湾市で配備反対の市民大会が開かれた。沖縄県議会も反対の決議と意見書を全会一致で可決。県民の拒否姿勢を日米両政府にはっきりと示すための県民大会を開く動きも活発化している。
反発が強まっているのはオスプレイそのものへの不安からだけではない。以前から配備の可能性が言われてきたにもかかわらず、配備について説明を避けたり、曖昧にしてきたりした日本政府への根強い不信感がある。
中国の軍事的台頭で、米軍はアジア太平洋地域を重視するようになり、オスプレイの沖縄配備を急ぐことになった。政府はこの動きを追認するだけだった。
森本敏防衛相が今日から沖縄、山口両県を訪れ、配備への理解を求める。安全と言い切れない段階で、地元の態度を軟化させることは難しいだろう。
モロッコなどの事故の調査は今も継続中で、米軍は既に機体に問題はない、と説明している。操縦ミスなどに言及しているけれど、人為的なミスが起きやすいとしたら、それも欠陥になるのではないか。米側の説明をそのまま受け取ることはできない。
オスプレイの運用がなし崩しで拡大する懸念もある。政府は独自に安全性を確認し、国民に説明するべきではないか。不安が解消されないうちは受け入れを認めるわけにはいかない。
[京都新聞 2012年06月30日掲載]
社説:オスプレイ 配備強行は許されない
墜落事故を繰り返す米国海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイを沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)に配備することを、米政府はきのう正式通知してきた。
沖縄県民の不安をかえりみる姿勢はまったく見えず、あまりに無神経だ。
オスプレイは4月に北アフリカのモロッコで、今月14日には米フロリダ州で相次いで墜落、米兵2人が死亡、7人が負傷している。
事故を起こしても計画通りの配備を押し通す米側に、日本政府は何も言えないのか。森本敏防衛相は沖縄を訪れ、配備への理解を求めるというが、野田佳彦政権は一体どこを向いて国政を預かっているのかと言いたくなる。
オスプレイは岩国基地(山口県岩国市)に搬入、8月に普天間に配備後、キャンプ富士(静岡県御殿場市)や岩国基地に毎月数機派遣し訓練する予定だ。本州や四国、九州各地で低空飛行訓練も計画しており、訓練や飛行ルートにある自治体から反対の声が上がっている。無理もないことだ。
開発中から事故が絶えず、「寡婦製造機」と陰口をたたかれている。4月のモロッコ事故について米側は機体の安全性に問題はないとし、原因調査中の米フロリダ州の事故も機体に不具合はなかったとの見方のようだ。
日本政府は継続調査の追加情報が伝わるまで岩国基地での試験飛行を見合わせることで米側と合意したという。それなら配備通知も、せめて調査終了まで遅らせるよう要請すべきだったろう。
米側は墜落事故の原因を操縦ミスとの見方をアピールし、機体自体は安全だと強調する。そうだとしても、墜落事故が相次いでいるのは厳然とした事実だ。米国やアフリカと違って、普天間飛行場は住宅や学校などに囲まれた「世界一危険」な立地であることを忘れてはいけない。
2004年8月、普天間飛行場近くの沖縄国際大に訓練中の米軍大型輸送ヘリコプターが墜落、炎上した事故は、いまだに生々しく記憶に残る。
ちょうど53年前のきょうのことだ。1959年6月30日、うるま市の宮森小学校に米軍ジェット機が墜落し、児童や住民17人が死亡、210人が負傷した。家屋12棟、校舎3教室が全焼した。
沖縄県民の不安は、基地と隣り合わせで暮らす現実からくるものだ。
仲井真弘多知事や県内市町村の首長、議会は配備反対の姿勢を強め、県民からは怒りの声が高まっている。野田政権は米国の顔色より沖縄の現実に向き合うべきだ。
山陽新聞 2012年6月29日
[社説]オスプレイ配備 民意無視の強行許されぬ
米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが沖縄県の普天間飛行場(宜野湾市)に配備されることについて、同県をはじめとする関係自治体が反発を強めている。機体の安全性への不安が拭えないからだ。
米軍は、7月下旬に米軍岩国基地(山口県岩国市)で試験飛行した上で8月に沖縄へ配備する方針だ。これに対し岩国市議会は反対の意見書を可決。沖縄では全市町村議会が反対し、近く配備反対の県民大会も予定されている。
オスプレイは主翼の両端にある回転翼の角度を変えてヘリコプターのように上下動したり、固定翼機のように高速で水平飛行もできる。普天間には老朽化したヘリに代わって24機が配備され、最高速度や航続距離などが格段に向上するため、在日米軍の即応力が強化されるという。
だが、開発段階から重大事故が相次ぎ、一時は開発停止に追い込まれたいわく付きの輸送機である。実戦配備後も墜落事故が続き、今年4月にはモロッコで乗員4人が死傷。今月13日には米フロリダ州で5人が負傷した。
普天間飛行場の周囲は住宅、学校、病院が林立し「世界一危険な基地」と呼ばれる。2004年には隣接する大学に米軍ヘリが墜落した。そこに安全性が疑われる機体が配備されるとなれば、沖縄県民の危機感が募るのは当然だ。
沖縄だけの問題ではない。オスプレイは岩国基地とキャンプ富士(静岡県)にも月に2、3日間、2〜6機が派遣され、国内各地で低空飛行訓練をするという。米軍は六つの訓練ルートを公表した。和歌山県知事が訓練の反対を表明するなど、直下の自治体では抗議の声が広がっている。
公表ルートに中国地方は含まれていないものの、岡山県上空でも米軍機は度々、目撃されている。昨年、米軍機の飛行直後に津山市の民家の土蔵が全壊したのは記憶に新しい。中国地方でのオスプレイ飛行について米軍は可能性を否定しておらず、墜落の危険性も人ごとではない。
モロッコでの事故後、米側は「操縦ミスが原因で、機体に問題はない」との見解を日本側に伝えてきたが、事故調査は終わっておらず、安全対策も示されていない。にもかかわらず米側はきょう日本に配備計画を正式通告し、米本土から機体を積んだ船を出発させるという。
日本政府は配備計画の見直しを米側に迫るどころか、早い段階から事故の全容解明が済まなくても配備を容認する考えを示していた。これでは沖縄県民の怒りが収まるはずはない。
日米両政府は老朽化した普天間飛行場の補修で合意し、沖縄では基地の固定化への懸念が強まっている。政府はまず、負担軽減に向けた展望を示して、沖縄の理解を得るという原点に戻るべきだ。沖縄の声を無視してオスプレイ配備を強行することは断じて許されない。
中国新聞 '12/6/30
社説:オスプレイ配備計画 政府は米国の代弁者か
外国のいうがまま自国民に危険と不安を押しつける。日本政府は一体だれの代弁者なのか。
野田政権が米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイの配備計画を受け入れる。米国からの正式通告によると7月下旬に米海兵隊岩国基地(岩国市)に搬入して試験飛行をした後、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されることになる。
半月前に米フロリダ州で空軍の同型機が墜落したばかり。それでも米政府の「安全だ」との言い分をうのみにした格好だ。
基地の足元の首長たちが一斉に反発したのも当然だろう。
きょうから沖縄、山口両県を訪れる森本敏防衛相は「事故調査が終わっていない時に、安全に確信を持っていただけることは一国民の立場に立っても無理」と言い放った。ならばなぜ米国に「ちょっと待て」と言わないのか。
岩国での試験飛行はフロリダの事故の調査報告が出るまで控えるという。政府からすれば米国と交渉し、地元への配慮を引き出したと言いたいのだろう。しかし米側の腹一つで飛ばせることには変わるまい。
そもそもオスプレイに関し、米軍の言い分が信じられるのか。開発段階を含めて大きな事故を繰り返し、乗員30人以上が死亡している。エンジン全停止の場合の緊急着陸機能に欠陥があると米国内での指摘もある。
それでも国防総省は安全と言い張る。4月にモロッコで起きた墜落死亡事故も機体の欠陥ではなく「操縦ミス」という。しかし危険性とはパイロットの技術を含めたもののはずだ。
普天間に配備された後、どう飛ぶのかも不安が募る。日本政府に米側が提出した環境審査報告書から、列島各地で訓練する計画が判明したからだ。もはやオスプレイは沖縄だけではなく日本全体の問題といえよう。事故の危険に加え、騒音被害が全国に広がる恐れがある。
報告書によると岩国基地とキャンプ富士(静岡県御殿場市)に月2、3日飛来するという。岩国は滑走路の沖合移設を終えたとはいえ、山側に住宅地が密集している。
さらには四国を横断する「オレンジルート」など六つの飛行路で、戦闘機と同じように低空飛行訓練を繰り返すとしている。明記されてはいないが、中国山地の「ブラウンルート」を飛ぶとの見方もあるようだ。
米側の理屈からすれば、いつどこを飛んでもいいのが現在の日米地位協定である。各地の自治体が米軍機低空飛行への抗議の声を上げて久しい。オスプレイ配備を機に、堂々と開き直って訓練を増やそうという姿勢自体が許しがたい。
このままなら国民の不信感が強まる一方だ。日米安保体制の根本も問い直されよう。
普天間をめぐる迷走を受け、民主党政権は、米国にすり寄る姿勢が露骨に強まった感がある。今回の問題もその流れにあるのは間違いない。「対等な日米関係を」としたマニフェストなど忘れてしまったのだろう。
今からでも遅くない。野田佳彦首相は国民の不安を解消し、安全を守るという原点に立ち返ってもらいたい。森本防衛相が出向く先は沖縄県や山口県ではないはずだ。米国を説得し、強引な配備計画にストップをかけるべきである。
沖縄タイムス 2012年6月29日 09時22分
社説:[県民大会開催へ]配備反対の声広げよう
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備に反対する県民大会が、開催に向けて動きだした。県内全11市長が合意し、町村会、県議会なども賛同する見込みで、8月配備に抗する包囲網が一気に広がる。
11市長は政治的立場が異なり、在沖米軍基地の存在についても考え方は一様ではない。この違いを乗り越え、大会開催に道を開いた意味は大きい。県内全41市町村議会もすでに配備反対を決議した。
日米両政府はこうした「県民運動」に向かう県内世論を重く受け止めるべきだ。オスプレイ配備に向けて、いまだに「県民の理解」を期待しているのなら、早々に大きな誤りだと気付くはずだ。
防衛省が26日に公表した米政府による墜落事故調査の経過報告では、根本的原因が依然、不明のままだ。パイロットの操縦ミスをにおわせ、機体に欠陥はないとする米側の見解を伝えたが、これで安心する人がどこにいるのか。
「理解」どころか、このままオスプレイを強行に配備しようとするなら、県民の反発で想定外の混乱が起きる可能性がある。
11市長を束ねた翁長雄志那覇市長は、両政府の強行を「銃剣とブルドーザー」と例え、米軍の土地強制接収から「島ぐるみ闘争」に発展した1950年代の歴史的な抵抗運動に重ねた。
米兵暴行事件後の県民大会規模を想定したり、全ての県民で抗議するゼネストの提起もあり、運動の拡大は予断を許さない。
フロリダで落ちたオスプレイは、飛行経験を積んだ中堅的パイロットが操縦していたという。飛行経験にかかわらず、墜落した事実は動かない。仮に操縦ミスが原因だとしても、ミスが墜落に直結する航空機は飛ばしてはいけない。
エンジン故障時に不時着を想定したオートローテーション機能の欠如や、前後左右のバランスが取りにくい不安定な構造など「欠陥」を疑う専門家の指摘は少なくない。
森本敏防衛相は事故調査を報告した記者会見で、オスプレイの安全性を問われ、「直接(オスプレイを)見たことも乗ったこともない」と自身の見解を避けた。
軍事専門家として、知見の乏しさを正直に示すのは結構だが、国家国民の安全を守る防衛省のトップとしては無責任極まりない発言だ。安全性に確証がないオスプレイ配備をどう理解しろというのか。
米側調査の伝達役に徹する限り、話を聞く余地はない。配備中止を即、米側へ求めるべきだ。
米側の意向に従い、県民を欺くような政府の姿勢は、オスプレイの配備計画にとどまらず、米軍普天間飛行場の移設問題とも共通している。
県民大会の詳細を詰める中で、オスプレイ配備反対をてこに普天間問題をも動かせるよう、基地政策の過ちを日米両政府に気付かせる工夫が必要だ。
仲井真弘多知事は、那覇市長のリーダーシップを褒め上げるだけでなく、今こそ基地被害を止める県民大会に向けて指導力を発揮してほしい。
沖縄タイムス 2012年7月1日 09時40分
[オスプレイ配備通報]防衛相は「使い走り」か
森本敏防衛相は、6月30日が沖縄にとってどんな日か、知っていたのだろうか。
自国民の不安や懸念をそっちのけに、防衛大臣が米国の「使い走り」をするようでは、世も末だ。
53年前の1959年6月30日、石川市(当時)の宮森小学校に米軍のF100戦闘機が墜落した。パイロットは墜落直前に脱出して助かったが、児童ら17人(後に後遺症で1人)が死亡、210人が負傷した。この事故は、今でも沖縄の人々の記憶に深く刻まれている。
宮森小では29日、追悼集会が開かれ、児童や遺族らが花や千羽鶴を手向け、黙とうをささげたばかりだ。
よりによって米政府は、追悼集会のあったその日に、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備を通告した。
よりによって森本防衛相は墜落事故のあった30日に来県し、宜野湾市の佐喜真淳市長にオスプレイの受け入れを要請した。
おぞましい話である。政府は「CH46ヘリからMV22オスプレイへの通常の機種変更」だと説明するが、ことはそんな単純なものではない。
沖縄のすべての自治体議会がオスプレイ配備に反対し、決議や意見書を可決した。
米国でも日本本土でも受け入れられないことがなぜ、沖縄だったら許されるのか。
党派を超え、年齢を超え、職業を超え、多くの人たちがオスプレイ配備に怒りを募らせているのは、そこに、米軍基地をめぐる構造的差別の存在を感じているからだ。
オスプレイをめぐっては、米国内でも、さまざまな動きが浮上している。
安全性を疑問視する声は米軍関係者の中にも存在する。国防予算の大幅削減に取り組んでいる米議会も、オスプレイの安全性や保有機数などに不明な点がある、として海兵隊当局に情報公開を求めた。
4月のモロッコでの墜落事故も、6月のフロリダでの墜落事故も、最終調査結果はまだまとまっていない。
はっきりしないことがあまりにも多すぎるのだ。加害者は歴史を忘却しがちだが、被害の記憶は簡単には消えない。ましてやオスプレイの普天間配備は、沖縄にとって「今、そこにある脅威」である。
信頼性の乏しい米軍の中間報告をひっさげて、のこのこ沖縄を訪ね、欠陥飛行場への欠陥機の受け入れを要請する―一国の防衛を預かる大臣が、そんな政治感覚しか持ち合わせていないことこそが危機的、というべきである。
公正な負担を実現するため、日本における米軍基地のあり方を根本的に見直す必要がある。
基地の管理権を日本側に移し、地元自治体との間で基地使用協定を結ぶこと。基地の自由使用を保障した諸取り決めを廃止すること。地位協定を改定すること。外務省や防衛省の米国寄りの基地政策を監視し、県民の人権や財産を守るための、駆け込み寺的な第三者機関を政府の中に設置すること、などを真剣に検討すべきである。
琉球新報 2012年6月30日
社説 :オスプレイ配備通告/欠陥機受忍の義務はない 国会で日米関係議論を
これは「ごり押し」以外の何物でもない。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備について、日本政府の延期要請を押し切って、米政府が正式通告の手続きを取った。
配備されるのは日本の国内である。国内で国民が危険を強いられることを、なぜ日本政府が拒否できないのか。拒否どころか、なぜ、たかが延期ですら実現できないのか。不思議でならない。
拒否権も留保すらも許されないこのような関係が妥当なのか。ことは日本の主権にかかわる。政府は一から仕切り直すべきだ。
“宮森”当日
配備について、米国は日米安全保障条約上の権利と主張したという。それなら、危険と恐怖を耐え忍ぶのは日本の義務だというのだろうか。しかし、欠陥機を受け入れる義務などない。
ところが日本政府は突き返すどころか、結局は受け入れた。「最終的に押し返すことが無理だった」(藤村修官房長官)と語るだけの政府に、国民を災厄から守ろうとする気概は感じられない。
それどころか、森本敏防衛相は米側の正式通告(接受国通報)を受け、早速それを沖縄県に伝達するため、30日に来県する。
オスプレイは県内各地を飛ぶ予定だ。県民は頭上に、いつ墜落するか分からないものを絶えず抱えることになる。この切実な不安を受け止めず、むしろ恐怖を強制するとは、いったいどこの国の大臣なのだろう。
30日は宮森小学校米軍ジェット機墜落事故から53周年の当日である。森本氏はそれを承知で来県するのだろうか。
そもそも普天間問題は、1995年に大田昌秀知事(当時)が返還を求めたのが出発点である。その理由として挙げたのが、飛行場周辺に19もの小・中・高校・大学が存在し、宮森の悲劇を繰り返しかねない、というものだった。
よりにもよってその原点の日に来県し、墜落の不安を強いるとは何事か。県民の戦後の苦難に向き合う気持ちなどみじんもないということであろう。
自国内でありながら、土地(基地)や空の使い方について政府が口出しできない状態は、上海など戦前の租借地を想起させる。まさに植民地にほかならない。
森本氏が一国の大臣であるなら、米国の使い走りのごとく、配備先を行脚するより先にやることがあろう。むしろ、このような日米関係でよいのか、国会で正面から議論すべきではないか。
心強い動き
国民もまた、事態を「沖縄問題」であり、「人ごと」だと受け止めているかのように見える。だがオスプレイは本州、四国、九州で低空飛行訓練をすることも分かっている。その意味で高知市議会が反対決議をしたのは心強い。この動きが広がってほしい。
米国は、米国内での墜落事故の調査情報を日本側に伝えるまで、岩国での試験飛行を見合わせるという。だが7月に岩国基地に搬入し、普天間に配備する計画は変えない。あまつさえ、通告の中で米側は、10月初旬に普天間で本格運用を始める方針を明記している。
配備反対の県民大会に県内11の市長全員が賛成し、県議会も超党派で開催に前進していることは、米国も承知しているはずだ。そんな中で配備を正式通告するのは、沖縄の強い反発を力で押さえ込もうという姿勢にほかならない。
通告について仲井真弘多知事は「危険で落ちるというものを、(配備すると言われて)ああそうですかとはいかない」「いい加減にしてくださいとしか言いようがない」と述べた。
同感だが、それなら知事は県民大会に積極的な姿勢を示すべきだ。大会への参加について知事は「検討させてほしい」と慎重姿勢を示したが、容認の含みがあるとの誤ったメッセージを発することになりかねない。むしろ先頭に立つ気構えを示してほしい。
しんぶん赤旗 2012年6月29日(金)
主張:欠陥機オスプレイ 国民の不安に応え配備中止を
沖縄の米軍普天間基地に配備予定の垂直離着陸輸送機オスプレイは、沖縄県内だけでなく、本土各地でも低空飛行訓練をおこなうことが明らかになり、各地の住民が不安と怒りをつよめています。
オスプレイは開発段階から墜落事故をくりかえし、4月にはアフリカ北部のモロッコで、6月にはアメリカのフロリダで墜落事故をおこしたばかりです。沖縄県民だけでなく、訓練が予定される本土各地の住民も危険にさらされるのは明らかです。日米両政府のオスプレイ配備計画をやめさせることがいよいよ重要です。
構造的欠陥が濃厚
米軍はオスプレイ配備の環境審査報告書で、普天間基地に配備されるオスプレイが岩国基地(山口県)やキャンプ富士(静岡県)で飛行訓練することや、米軍が勝手に設定した飛行ルートで夜間も含めた低空飛行をおこなう計画を示しています。飛行ルートは東北地方に2本、北信越、近畿・四国、九州、沖縄・奄美に各1本の合計6本あり、これに中国地方のルートも加わる可能性があることが明らかになりました。
米国防総省の報道官は25日、オスプレイを岩国基地を経由して普天間基地に配備する計画について、「予定通り」とのべ配備強行の方針を重ねて示しました。オスプレイの配備に反対している沖縄県民をはじめ、各地の住民の反対を踏みにじるものです。
オスプレイは離着陸時にはヘリとして、水平飛行時にはプロペラ機として飛ぶ軍用機です。防衛省が26日に公表したアメリカから提供された情報で、モロッコとフロリダで発生した事故は二つともヘリモードから固定翼モードに切り替える途中で墜落した事実が明らかになりました。構造的な欠陥による疑いが濃厚です。
米国防総省内の研究機関でオスプレイの分析にあたってきたレックス・リボロ氏は、エンジンが停止した際、風の力でプロペラが回転して墜落を避ける機能がないオスプレイは「米連邦航空局の安全基準を満たしていない」と指摘しており、民間機ならアメリカ国内で飛ぶことができない欠陥機です。「機体に不具合はない」と強弁して配備を強行することは、絶対に許されません。
米軍機の爆音や墜落の危険でいまも苦しめられている沖縄では、県知事や県議会をはじめ41市町村長と議会すべてがオスプレイの配備に反対しています。「世界一危険」な普天間基地にもっとも危険な欠陥機を配備する日米両政府の企てに、沖縄県民が島をあげて反対するのは当然です。
低空飛行訓練は、沖縄だけでなく本土の住民も危険にさらします。米軍機の低空飛行はすさまじい爆音を伴い、各地の住民を苦しめるものです。オスプレイの配備が、これまでも低空飛行訓練の中止を求めてきた住民の願いをふみにじる暴挙であるのは明白です。
沖縄と本土力を合わせ
沖縄県民と本土住民が力を合わせて配備をやめさせるために、力をつくすことが求められます。
日米両政府がオスプレイの配備強行に固執するのも日米安保条約=日米軍事同盟があるためです。安保をなくしてこそ、米軍基地強化の策動をやめさせ、基地そのものもなくせるという声を、全国に広げていくことが重要です。
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