米国にモノ言わぬ首相 対米従属
23日にも米軍岩国基地に入港するオスプレイ積載船。
日本中から怒りの声が上がっている。
アメリカに物言わぬ政府・首相への失望・怒りは広がっている。
7月以降の各紙社説・論説(その2)を紹介する。
社説:オスプレイ 米国に「ノー」と伝えよ(7月18日)
沖縄タイムス 2012年7月18日 09時32分
社説:[オスプレイ容認]首相まで米国追従とは
琉球新報 2012年7月18日
社説:首相追認発言 無責任配備は言語道断だ
しんぶん赤旗 2012年7月18日(水)
主張:欠陥オスプレイ 安保優先の配備強行するな
琉球新報 2012年7月16日
社説:オスプレイ 延期でなく配備中止を
神奈川新聞 2012年7月15日
社説:オスプレイ配備 地元との関係を壊すな
河北新報 2012年07月13日金曜日
社説:オスプレイ配備/国民はノーと言えないのか
沖縄タイムス 2012年7月11日 09時26分
社説:[オスプレイ配備]全国に広がる不安の声
琉球新報 2012年7月11日
社説:墜落事故隠し オスプレイは飛ぶ資格なし
読売新聞 (2012年7月11日01時40分 )
社説;オスプレイ配備 政府は安全性の説明を尽くせ
秋田魁新報:(2012/07/10 付)
社説:オスプレイ配備 反米感情高めるだけだ
徳島新聞 2012年7月7日付
社説:オスプレイ 配備計画を見直すべきだ
沖縄タイムス 2012年7月5日 09時24分
社説:[オスプレイ出港]配備は日米関係損なう
琉球新報 2012年7月5日
社説:県民大会開催へ 日米安保崩壊への警告だ
神戸新聞 (2012/07/04 09:01)
社説:オスプレイ出港/配備の強行は許されない
朝日新聞 2012年7月3日(火)付
社説:オスプレイ―政府は待ったをかけろ
日経新聞 2012/7/3付
社説:オスプレイで丁寧な説明を
西日本新聞 2012/07/03付
社説:オスプレイ配備 政府は米側に再考を迫れ
琉球新報 2012年7月2日
社説:知事防衛相面談 配備拒否以外 道はない
北海道新聞 2012年7月18日
社説:オスプレイ 米国に「ノー」と伝えよ(7月18日)
危険な米軍機が日本の空を飛ぶのは耐えられない。
米政府は海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画を日本政府に正式通告し、機を搭載した輸送船が日本に向かっている。
墜落事故が相次ぎ犠牲者が続出している機種だ。米国の専門家は性能に問題があることを指摘している。
地元沖縄は配備拒否を明確にしている。民主、自民両党からも配備計画見直しを求める声が上がった。
米国の方針を追認するだけでは国民の生命と財産を守れない。政府は国内の懸念を米側に伝え、配備を中止するよう求めるべきだ。
計画は7月下旬に山口県の米軍岩国基地に搬入し、8月に普天間配備を開始、10月から本格運用する内容だ。米国は日米安全保障条約における事前協議の対象ではないことを理由に一方的に配備を進める構えだ。
野田佳彦首相は「配備自体は米政府の方針」として拒否できないとの認識だ。あまりに受け身の対応だ。
オスプレイの安全性には疑問が膨らんでいる。米専門家によると、近くを飛行する他機から生じる気流の影響で墜落する危険があるという。
沖縄の反発は強まる一方だ。沖縄県議会と県内全41市町村の議会が配備反対を決議した。来月には大規模な県民大会が予定されている。仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は事故が起きた場合「全基地即時閉鎖」を求める考えだ。
「オスプレイ拒否」は県民の総意と言っていい。
岩国基地がある山口県でも反対運動が強まっている。沖縄配備後には東北、四国、九州などで低空飛行訓練も計画されている。北海道はいまのところ含まれていないが、オスプレイへの懸念は全国規模だ。
理解に苦しむのは森本敏防衛相の対応である。安全性について米側から納得のいく回答がないまま、沖縄県や山口県を訪問し米軍の配備計画を説明している。
米国の代理人であるかのような振る舞いだ。説得する相手は米国である。事故原因や性能の問題点を詳細に説明するよう求めるのが筋だ。
気になるのは日米関係への影響である。地元の反発を置き去りにして配備を強行すれば、普天間飛行場移設問題でぎくしゃくしている日米関係がさらにこじれかねない。
民主党の前原誠司政調会長は配備計画を再検討すべきだとの考えを表明した。自民党も配備見直しを政府に申し入れた。ともに日米関係の悪化を恐れての動きだ。
配備計画は米国のものでも、国民の懸念を伝えることはできるはずだ。首相が先頭となり、米政府に日本の立場を強く主張してほしい。
沖縄タイムス 2012年7月18日 09時32分
社説:[オスプレイ容認]首相まで米国追従とは
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場配備をめぐり、驚くべき発言が飛び出した。
野田佳彦首相が16日、民放のテレビ番組で「配備自体は米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない」と述べた。つまり日本政府としては配備に口を差し挟むものではなく、ましてや拒否などできないとの認識だ。
いったい日本は主権国家なのか、この国のトップはどこを向いて政治・行政をしているのか、そもそも政治や外交はあるのか。米追従の姿勢まる出しに、情けない思いをした県民も多いことだろう。
首相の「どうしろ…」発言は、日本政府としても独自に安全性を再確認すると強調せんがために言ったようだ。
では、オスプレイの安全性を確認するノウハウが日本政府にあるのか。国交省や第三者の専門的な知見も入れるというが、設計・開発、試験に携わったわけでもなく、米軍の機密情報満載の新型機を、どうやってチェックし「安全だ」と判定するのか、素人目にも疑わしい。
安全性の大きな要素には、エンジンが止まった時に滑空して不時着するオートローテーション機能がある。その機能を使った滑空距離は重要なポイントだが、防衛省は「米側からデータの提供を受けておらず把握していない」というから驚く。根拠となるデータが示せないのだ。
こんなレベルだから、いくら「安全だ」と言っても信用するわけにはいかない。せいぜい、米軍発表の日本語訳になるのではないか。
開発段階から危険性が指摘されてきたオスプレイは、米国内でもなお物議をかもしている。
2010年にアフガニスタンで発生した墜落事故の調査委員長を務めた空軍准将(当時)は、最大要因とみていたエンジントラブルへの改善措置がいまだに講じられず、同様の事故が再発する可能性があるとの見解を示した。
さらに事故原因の確定をめぐっては、操縦士のミスとするよう空軍上層部から圧力がかかったという。世界的な展開を狙う米軍当局としては、オスプレイそのものに欠陥があっては困るのだ。
元准将は、先月あったフロリダ州での墜落事故について、ダウンウォッシュ(下方に吹き付ける風)の可能性を指摘した。編隊飛行に墜落の危険が付きまとう。市街地上空を編隊で飛ぶ普天間飛行場への配備は、政府自ら住民を危険にさらすようなものだ。
日米関係を振り返ると、在日米軍の重要事項に関する事前協議は一度も履行されず、核持ち込みなどをめぐっては密約にまみれていた。
ただし、今回のオスプレイ配備については他府県での低空飛行訓練も明らかになり、沖縄だけに封じ込められる問題ではなくなった。
福田良彦岩国市長は「自治体の立場をしっかり受け止めて米政府と交渉してほしい」と注文をつける。
安全保障は、いったい誰を守るためにあるのか、野田首相をはじめ日本政府は政治の原点を忘れてはならない。
琉球新報 2012年7月18日
社説:首相追認発言 無責任配備は言語道断だ
この人たちに果たして国民の生命、財産を守るという気持ちがあるのだろうか。
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備について、野田佳彦首相は「米政府の方針で、どうしろ、こうしろという話ではない」と述べ、日本政府としての判断をせず、米側の意向を追認する姿勢を示した。日本には国家主権など存在せず、米国の言いなりになる従属国家だと言うのだろうか。
また森本敏防衛相は17日の閣議後会見でエンジン停止時に回転翼の空気抵抗で安全に着陸する機能の自動回転(オートローテーション)について、オスプレイの同機能に関する正確な情報を持っていないことを認めた。
米国防総省の元主任分析官が同機の自動回転機能について「欠如している」と指摘し、同機開発の航空機会社も解説書で「自動回転機能に頼らない」と記している。
それなのに防衛省の解説書では同機の自動回転機能を絵入りで紹介している。正確な情報も持たないのに、何を根拠にこうした説明をしているのか。安全を強調するだけの虚偽記載としか言いようがない。都合の悪い事実を隠して国民を欺くことは断じて許されない。
その欠陥機を米国で搭載した貨物船が現在、試験飛行をする山口県岩国市に向けて洋上航行を続けている。岩国市でも反対の声が上がり始めた。16日の市民集会には約千人の住民が集まり、搬入阻止と配備反対を強く訴えている。当然の要求だろう。
岩国市だけでなく、同機が低空飛行訓練を予定している全国各地でも反対の声が出ている。国民が示す不安を受け止めないまま、まるで人ごとのように対米追従を重ねる首相や防衛相の姿勢とのギャップはあまりに大きい。
普天間飛行場に隣接する普天間第二小学校で練習を重ねる少年野球チーム「少年翼」の児童は取材にこう語った。「米軍の飛行機の音をよく知っているので、いつもと違う音がすればすぐ気付く。危ない時は頑張って逃げれば助かると思う」と。
首相に問いたい。あなたはこの児童の言葉をどう受け止めるのか。消費増税の時に見せた政治生命を懸けて、なぜ米側に配備断念を求めることをしないのか。それとも日米同盟の重要性に比べれば、沖縄の犠牲など大した問題ではないと考えているのか。
しんぶん赤旗 2012年7月18日(水)
主張:欠陥オスプレイ 安保優先の配備強行するな
墜落事故が相次ぐ米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイを、山口県の岩国基地に先行搬入したうえで沖縄県の普天間基地に配備するという日米両政府の計画に反対する動きが、沖縄でも本土でも爆発的に広がっています。
沖縄では県議会や県内41市町村の議会と首長すべてが配備に反対し、8月5日に県民大会を開きます。山口県でも県議会や岩国市議会と首長が搬入に反対し、22日にも市民が反対集会を開きます。米軍基地のある14都道県からなる渉外知事会も地元の意思を尊重せよと政府に申し入れています。政府は配備強行をやめるべきです。
事故は場所を選ばない
オスプレイの配備が普天間基地がある沖縄だけでなく、低空飛行訓練が予定される日本列島の北から南まで全国で住民の生活を脅かし、墜落の危険をもたらすことはいよいよ明らかになっています。
オスプレイは開発段階から墜落事故をくりかえし、実戦配備が始まった2005年以降も10年にアフガニスタンで、今年に入って4月にアフリカ北部のモロッコで、6月には米国のフロリダで墜落を重ねている危険な欠陥機です。今月9日には機体のトラブルで米国南部の民間飛行場に緊急着陸しています。いつどこで落ちるかわからないのがオスプレイです。墜落の場所を選ばないオスプレイを沖縄県民や本土住民が受け入れられるはずはありません。
オスプレイはヘリ機能と固定翼機能をあわせ持っていますが、特に危ないのはヘリとして飛ぶときです。普通のヘリは飛行中にエンジンが止まっても、機体の降下による空気の流れでプロペラを回し、浮力を得て着陸できるオートローテーション機能をもっています。しかしオスプレイにはその機能がありません。
オスプレイの開発に携わったレックス・リボロ氏はオートローテーションについて「実証のための試みもされていない。危険すぎると考えられたからだ」(13日付「しんぶん赤旗」)とのべています。安全が実証されていないのに、オスプレイが「緩やかに降下する」(森本敏防衛相)とのうその説明で配備を強行するのは許されません。
オスプレイ積載の米国の車両運搬船は24日にも岩国基地に着く予定です。日米両政府は国民の反発を恐れ試験飛行は当座行わないとしていますが、ほとぼりが冷めたら試験飛行にふみきり、普天間基地に配備する計画です。
オスプレイが配備される普天間基地は住宅密集地のなかにある「世界一危険」な基地です。そこへ「世界一危険」なオスプレイを配備するのは許されません。日米両政府はオスプレイの持ち込みと配備計画を中止すべきです。
安保なくす方向でこそ
米政府はオスプレイ配備を「日米安保条約にもとづく権限だ」といい、日本政府も受け入れを「安保条約上の義務」だといっています。しかし、それなら安保条約そのものをなくせということになります。沖縄の琉球新報社説は県民大会開催を「日米安保崩壊への警告だ」と書き、愛媛新聞は「オスプレイ配備中止し安保見直す契機に」と書いています。
安保をたてに配備を押し付けるのではなく、配備を中止し、日米安保条約をなくしていくことこそ、根本的な解決への道です。
琉球新報 2012年7月16日
社説:オスプレイ 延期でなく配備中止を
国民の声に対する恐るべき鈍感ぶりを発揮してきた政権にも、多少の感度はあると言うべきか。民主党の前原誠司政調会長が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米軍普天間飛行場への配備計画について日米両政府に再考を求めた。
ただ前原氏は「一呼吸置くことが大事だ」と述べており、単なる配備延期が念頭にあるようだ。しかしオスプレイは構造的欠陥の疑いが濃く、時期をずらせば済む問題ではない。政府は配備中止を求めるべきだ。
前原氏はルース駐日米大使に「事故が立て続けに起こっている。万が一のことがあれば、日米安保そのものの土台が大きく揺らぐ」と、配備計画の見直しを求めた。住民の生命への心配でなく日米安保への影響を理由に挙げる点が解せないが、ともあれ米側の計画に異議を唱えた点は評価したい。
まずは思考停止から脱しよう。オスプレイはそもそも配備の必要があるかを吟味すべきだ。
米海兵隊の将校がこの機種の軍への配備について「最良の選択ではない」と論文で指摘している。
玄葉光一郎外相は「(従来機種と比べ)行動半径は4倍、抑止力が高まる」と、あたかもオスプレイが直接、中国や台湾に飛行するように説明するが、当の米軍自身、そんな想定はしていないことが、この論文で分かる。
論文は、遠距離飛行に必要な除氷装置の不具合で緊急着陸した例を挙げ、「オスプレイは危険を避けるため長い航続力は活用せず、強襲揚陸艦で運ばれている」と述べる。実際に艦船で輸送している事実が、論文の正しさを雄弁に示している。抑止力などという空論とは無縁の配備だということだ。
国防分析研究所や米軍内部の論文でも運用中止を提起されたのに、抑止力とも無関係なのに、なお配備しようとする理由は何か。生産で利益を得る軍産複合体の利益を守るため、と疑うのが自然だろう。
利益を得る複合体の論理で計画が進み、周囲の官僚も政治家も凍り付いたように思考停止したまま、何ら実際的な検証もなされずに配備が進む。原子力ムラと原発再稼働をめぐる構図とうり二つである。
森本敏防衛相も配備後に事故を起こした場合は「日米同盟に想像できなかったような大きな亀裂が入る」と述べた。それが分かっているなら、直ちに配備中止を提起すべきだ。
神奈川新聞 2012年7月15日
社説:オスプレイ配備 地元との関係を壊すな
地元住民が飛行の安全に対する不安を払拭(ふっしょく)し得ていない状況で、なぜ配備を急がなければならないのか。それも、よりによって「危険な基地」という理由で、日米両政府間で返還が合意されたはずの基地に、である。
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)へ配備することを、米政府が日本政府へ通告した。
機体は7月下旬にも岩国基地(山口県岩国市)に陸揚げされ、安全性の確認や試験飛行を行った上で、普天間に8月に配備される予定だ。
米海兵隊が現在使用している輸送用ヘリコプターCH46は老朽化している。オスプレイが代替機となれば、最高速度や積載量が大幅に改善される。
空中給油も可能なため、航続距離も延び、南西諸島方面の防衛能力向上が見込めるという。
だが、オスプレイは開発段階から事故が相次いだ。試験飛行での墜落が多発し、「未亡人製造機」という悪名まで付けられた。
今年も4月にモロッコで、6月には米フロリダ州で空軍仕様機による墜落事故が起きている。
米側は事故について「原因は設計上の問題ではない」としているが、事故の報告がまとまるまで日本では飛行させないことで一致している。玄葉光一郎外相と先ごろ会談したクリントン米国務長官は、事故原因の調査と情報提供の方針を示す一方、配備計画に変更がないことを強調した。
配備反対の声は沖縄にとどまらない。岩国市の福田良彦市長は、森本敏防衛相との会談で「陸揚げが強行されれば国との信頼関係が揺らぐ」と述べ、日米間で合意済みの厚木基地(大和、綾瀬市)からの空母艦載機移転に影響が出かねないとの認識を示した。
配備後に日本各地で実施される予定の低空飛行訓練ルートが公表されたことも、全国に反発を広げている。
そもそも在日米軍再編の出発点は、抑止力の維持と同時に、過密地にある基地負担を和らげることにもあったはずだ。一度でも事故が起きたら、その時点で全てを失う。地元住民にはそうした思いがある。
地元が日米両政府から納得のいく説明を得られないまま配備が押し切られるような事態になれば、安保体制の根幹である米軍基地と地元との関係が壊れることは避けられない。
河北新報 2012年07月13日金曜日
社説:オスプレイ配備/国民はノーと言えないのか
米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが、24日にも米軍岩国基地(山口県岩国市)に搬入される。予定通りなら、10月から米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)で運用を始める。
日本に配備されるのは24機。老朽化した現在の輸送用ヘリと交代する。
速度や航続距離が大幅に向上するとの触れ込みだが、開発段階から事故が相次ぐ、いわく付きの輸送機だ。ことしもモロッコと米フロリダ州で墜落事故を起こしており、技術的な完成度にも疑問符が付いている。
そうした問題機を、よりによって住宅地に囲まれた普天間に配備することは、およそ妥当な選択とは言えまい。基地負担の軽減という沖縄県民との約束にも逆行する。
基地に反対する立場の住民だけが声を上げているわけではない。沖縄県の仲井真弘多知事や、米軍基地容認の立場を取る岩国市の福田良彦市長も、搬入・配備や運用開始に強い拒否の意向を示している。
それでも配備計画は粛々と進む。
中国の海洋進出に神経をとがらせる米軍の「アジア回帰」の一環と位置付けられるオスプレイ配備に、政府が物申そうという姿勢は全く感じられない。
普天間移設をめぐる混乱や環太平洋連携協定(TPP)参加問題など、日米間の懸案が日本側の事情で進まない状況が続いており、政府が米国に「借り」をつくった状態にあることと無関係ではあるまい。
米国は「機体の安全性に問題はない」の一点張りだ。来日したクリントン国務長官は配備計画の堅持を表明。パネッタ国防長官も「日本側の懸念は払拭(ふっしょく)できた」と述べ、聞く耳を持たない様子だ。
政府は「基本的に米軍の機材変更であり、配備計画に疑義はない」との立場を表明している。日本政府には手の届かない問題として扱おうとの思惑も、透けて見える。
「米国が安全と言うから安全」という姿勢は、原発をめぐる電力会社と規制当局のもたれ合いと二重写しだ。反対を押し切った上で事故が起きれば、沖縄県民の生命と財産が失われかねないのだ。
「主体的な外交戦略を構築し、緊密で対等な日米同盟関係をつくる」。政権交代を果たした2009年衆院選での民主党の政権公約は、どこかへ消し飛んでしまった。
本格運用の開始後、オスプレイは現行の米軍機訓練ルートを使い、東北上空を含む全国の空域で低空飛行訓練を実施する。
青森-福島、青森-新潟と、2本のルートの起終点となる青森県の三村申吾知事は、「関係自治体の意向を尊重すべきだ」と話し、米国の事故情報を地元側に説明するよう求める。
「危ない輸送機」が運び込まれることだけが問題なのではない。配備拒否を求める国民の声が日米どちらの政府にも届かないこと、それがオスプレイをめぐる一番の危うさだ。
沖縄タイムス 2012年7月11日 09時26分
社説:[オスプレイ配備]全国に広がる不安の声
米軍普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備計画は、決して沖縄だけの問題ではない。普天間に配備される部隊の分遣隊(2~6機)が岩国基地(山口県)とキャンプ富士(静岡県)を拠点に、本州、四国、九州など全国6ルートで低空飛行訓練を予定しているからだ。
沖縄タイムス社が沖縄を除く全国46都道府県知事を対象に実施したアンケートで、多くの知事がオスプレイ配備に不安を抱いていることが明らかになった。
回答を寄せた41知事のうち、15府県が機体の安全性への懸念を示し、20府県が政府による関係自治体への説明は不十分だと指摘した。
配備に向けた環境審査の報告書では、東北や北信越、四国~近畿、九州、沖縄本島北部~奄美諸島と、6本の低空飛行訓練ルートが示された。
計画では月平均2~3日(場合によっては2週間)、全国6ルートで低空飛行訓練を行う。1ルートの年間運用回数は約55回、全6ルートで計330回の見込みだ。さらに中国地方の山間部を通る別ルートも検討されているという。
こうした低空飛行訓練の計画に対し、アンケートでは7県の知事が反対を表明した。
知事は、都道府県を代表する立場で住民の生命と財産を守る責務がある。墜落事故が相次ぎ、原因究明も十分なされていない「欠陥機」の飛行に不安の念を抱くのは当然だといえよう。
一方、アンケート結果は、知事間の温度差もあらわにした。
普天間への配備に賛成はゼロだったものの、反対を示したのは山口や和歌山、広島など6県知事にとどまった。地元への十分な説明を求めつつ、「安全保障・防衛政策は国の専管事項」などとして判断を控える姿勢も目立った。
米軍基地所在14都道県でつくる渉外知事会は10日、外務、防衛両省に対し、モロッコと米フロリダで続いた墜落事故を受け、地元で安全性への懸念が広がっているとし「関係自治体の意向を十分尊重するよう強く要請する」との緊急要請書を提出した。
渉外知事会としてまとまって要請した意義は大きいが、構成メンバーの中でも温度差はあり、要請に「配備見直し」は盛り込めなかった。
だが、今回のオスプレイ配備は沖縄だけの問題ではない。よそ事ではなく、自分たちにふりかかる問題として全国でしっかりと受け止めてもらいたい。
民主党政権は、鳩山由紀夫元首相が普天間をめぐりつまずいて以降、沖縄の基地問題に正面から向き合おうとしない。危険性の伴うオスプレイ配備を強行しようとする米国に、政府は追認するばかり。沖縄の反発の声に耳を貸さず、「機体に欠陥はない」と繰り返すだけだ。
その姿勢が、普天間基地へのオスプレイ配備計画を許し、山間部を縫うようにルート設定された危険な低空飛行訓練となって全国に広がろうとしている。この事実に野田政権の本質が見える。
琉球新報 2012年7月11日
社説:墜落事故隠し オスプレイは飛ぶ資格なし
この飛行機に果たして空を飛ぶ資格があるのだろうか。米軍普天間飛行場に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイのことだ。2006年3月に米ノースカロライナ州で乗員が飛行準備中に突然離陸を始め、約9メートルの高さまで上昇後、地面に落下して機体の一部が損壊する事故が起きていた。
修理費は約706万8千ドルかかっており、損害200万ドル以上のクラスAに該当し、本来なら公表されるべき事故だ。しかし海兵隊は「機体は離陸するはずではなかった」との理由で公表から除外していた。「事故隠し」以外の何物でもない。
そもそも飛行させる意思がなかったのに、機体が勝手に離陸してしまう航空機など存在するのだろうか。こんな調子で「構造的な欠陥がない」などと言われて、誰が信じることができようか。
10年に起きたオスプレイ墜落事故をめぐり「機体に問題があった」との調査報告を空軍上層部が「人為的ミス」に改ざんするよう圧力を掛けていたことも分かっている。
米国防総省が今年4月と6月に起きた2件の墜落事故について「機体に問題はない」と強弁し、事態の収拾を図っているが、説得力のある根拠を示していない。
伝えられていなかった情報はほかにもある。06~11年に発生の損害200万ドル未満やけが人発生の未公表のBCクラスの事故が28件起きていた。公表のAクラスの事故2件と合わせれば30件に上る。それ以前の開発段階には4件の墜落事故を起こし、乗員30人が死亡している。配備されているはずの機体が40機も所在不明との市民団体の情報もある。一体どこに安全を見いだせばいいだろう。
今年発生した2件の墜落事故について森本敏防衛大臣はこれまで「機体が安全かどうか、見たことも乗ったこともないので、提供された情報以外に知識を持ち合わせていない」と、ひとごとのように説明している。
06年の未公表事故、BCクラスの事故件数、事故報告の「人為的ミス」との改ざん圧力の事実は琉球新報がさまざまな情報を基に報道して明らかにした。しかし日米両政府はいまだにこの事実の十分な説明をしておらず、無責任だ。日米は都合の悪い情報を隠しても無駄だ。事故を起こす可能性のあるオスプレイが沖縄の上空を飛行することなど許されないと悟るべきだ。
(2012年7月11日01時40分 読売新聞)
オスプレイ配備 政府は安全性の説明を尽くせ(7月11日付・読売社説)
米軍新型輸送機の安全性については、冷静に評価し、議論することが肝要である。
玄葉外相がクリントン米国務長官と会談し、海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの日本配備に関連して、今年発生した2件の墜落事故の原因の情報提供を要請した。
クリントン長官は、「安全性について調査を徹底的に行い、結果を日本と共有する」と約束するとともに、日本配備の方針は変更しない考えを表明した。
日本への情報提供に前向きな米側の姿勢は評価できる。政府は、専門家の訪米などを通じて情報を収集し、吟味する必要がある。
4月のモロッコにおけるMV22の墜落事故に続き、6月中旬には米フロリダ州で訓練中の空軍の同型機CV22が墜落した。
配備先の沖縄県宜野湾市の普天間飛行場や、一時駐機先である山口県岩国市の岩国基地の関係自治体は、安全性を懸念し、配備や駐機に反対している。
政府は、MV22の安全性について関係自治体に丁寧に説明し、理解を広げなければならない。
2件の事故原因は機体の問題ではないとされ、米軍は飛行禁止措置などを取っていない。
そもそも、40年近く使用している輸送ヘリコプターCH46から新型輸送機への交代は、悪いことではない。むしろ老朽化した輸送ヘリを今後も長期間使い続けることの方が安全上の問題があろう。
MV22の10万飛行時間当たりの重大事故(死亡または200万ドル以上の損害を伴う事故)率は1・93件で、海兵隊航空機の平均の2・45件よりも低い。
一方で、最高速度、航続距離などの性能が優れるMV22の配備によって、米軍の民間人救出や災害救援の活動は強化される。強襲上陸作戦能力が向上し、抑止力が高まることも見逃せない。
中国の急速な軍事的台頭に対応し、西太平洋地域を重視する米軍戦略とも合致している。
米側は、今月下旬にオスプレイ12機を岩国に搬入した後、沖縄に配備する予定だ。CH46の退役が始まる中、部隊運用に支障を生じさせられない事情がある。
モロッコの事故は今月下旬、フロリダの事故は8月末に報告書がまとまる見通しだ。日米両政府は、それまではMV22を日本で飛行させないことで一致している。
妥当な判断である。日米合意を順守し、事故の再発防止策をきちんと講じたうえ、配備を実現することが重要となろう。
秋田魁新報:(2012/07/10 付)
社説:オスプレイ配備 反米感情高めるだけだ
米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を積んだ輸送船が経由地のハワイを出港、日本に向かっている。米側は今月下旬にも岩国基地(山口県岩国市)へ一時搬入し、10月初旬から普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)で本格運用する計画だ。しかし、両県のみならず国内各地で反発が強まる中で配備を強行すれば、反米感情が一気に高まるのは避けられまい。
相次ぐ墜落事故の原因が究明されないまま配備計画が進んでいることに対し、基地を抱える自治体が「安全二の次の見切り発車だ」と憤るのはもっともだろう。米側が「日本の懸念を理解する」と言うならば、配備を先送りしてしかるべきではないか。日本政府も安全確保を第一に、配備計画の見直しを米側に強く求めるべきである。
米軍が沖縄へのオスプレイ配備を急ぐ背景には、台頭する中国をにらんだアジア太平洋地域重視の国防戦略がある。オスプレイはヘリコプターのような垂直離着陸が可能な一方、固定翼機並みの速度を出すことができる。航続距離も普天間に配備されているCH46中型輸送ヘリの5倍以上となるため、米側は「戦略上、不可欠な装備」と位置付けているという。
ただし、いくら性能に優れているとはいえ、配備に当たって最優先すべきは安全性であることは言うまでもない。オスプレイは1989年の初飛行後、2000年まで墜落事故が4回発生し、多数の犠牲者が出たため開発が一時中止された。さらに今年に入ってからも4月にモロッコで、6月には米フロリダ州で墜落事故が起きているだけに、日本国内でも不安が高まるのは当然だろう。
特に本格運用が予定されている普天間は市街地に隣接しており、「世界一危険な基地」と言われている。04年に普天間の米軍ヘリが大学に墜落した事故は記憶に新しい。県外移転どころか普天間固定化への懸念すら強まる中、オスプレイ配備に対して沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が「事故が起きたら誰が責任を取るのか」と計画撤回を強く求めたことを日米両政府は厳しく受け止めなければならない。
しかも、米側が作成したオスプレイ配備に関する環境審査報告書によると、普天間配備後は国内各地で低空飛行訓練を実施するという。このルートの中には青森—福島、青森—新潟など本県上空を通過する可能性があるルートも含まれており、県内の平和団体などが配備反対を表明。佐竹敬久知事も「簡単に訓練を受け入れるわけにはいかない」と安全性に疑問を呈している。問題は普天間や岩国だけにとどまらないのである。
森本敏防衛相は今月下旬にも米国を訪問し、国防長官と会談する。オスプレイ配備が強行されれば日米関係にも大きな亀裂が入りかねないだけに、計画見直しを軸に毅然(きぜん)とした態度で協議に臨んでもらいたい。
徳島新聞 2012年7月7日付
社説:オスプレイ 配備計画を見直すべきだ
米政府が進める普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備計画をめぐり、関係自治体の反発が強まっている。墜落事故が相次ぐなど機体の安全性に問題があるからだ。
配備に理解を求める森本敏防衛相に対し、沖縄県知事や宜野湾市長らが「極めて遺憾」などと厳しい口調で受け入れ拒否を打ち出したのは、当然だろう。
森本防衛相は今月末にも訪米してパネッタ国防長官と会談し、事故の詳細な情報提供も求める予定だ。ただ、安全性が確保されたとしても、沖縄県民の懸念が直ちに払拭(ふっしょく)されるとは思えない。防衛相は米政府に、配備計画の見直しを申し入れるべきである。
米政府は、老朽化した米海兵隊のCH46中型ヘリコプターの後継機として12機を普天間飛行場に配備し、10月から本格運用を始める方針だ。これに間に合わせるため、オスプレイを積んだ輸送船が今月1日に米サンディエゴ港を出港した。下旬には一時駐機予定地の山口県岩国市の米軍岩国基地に到着、その後、普天間に移すことになっている。
米軍は、CH46に比べると最高速度、搭載量、行動半径がそれぞれ2~4倍となるオスプレイの性能を重視。海洋権益の拡大を図る中国をにらみ、アジア太平洋地域の安全保障の面から同機の展開が不可欠としている。
海兵隊の能力、機能を向上させることは、日本の安全保障にとっても重要だ。しかし、オスプレイは開発段階から重大な墜落事故が度々発生し犠牲者を出している。今年4月にはモロッコ、6月にも米フロリダ州で墜落事故を起こしたが、米側は日本側に十分な説明をせず、早い段階から「機体に不具合はない」と主張してきた。
配備が予定されている普天間飛行場は人口密集地の中心部にある。2004年には米軍ヘリコプターが近くの沖縄国際大に墜落、爆発炎上する事故があった。今回の計画にこの事故を重ね合わせる県民は多いのではないか。安全性が確保できない以上、配備は時期尚早である。
先に防衛省が示したオスプレイ配備後の飛行訓練計画では、計6ルートの中に徳島県上空を通るルートも入っており、年間約55回の低空飛行が予定されている。このため、県は「安全性に疑問がある」などとして訓練が行われないよう政府に申し入れをしている。ルートに関わる他の自治体も同じ思いだろう。
ただ、米側はオスプレイ配備を日米の事前協議対象ではなく、機材の変更と位置づけており、日本側に口出しする権利はないという。だとしても、沖縄県民の声に耳を傾けず、日米同盟を優先させて配備計画を容認した日本政府の姿勢には、首をかしげざるを得ない。
民主党政権が誕生して以降、政府と沖縄の溝は深まるばかりだ。普天間飛行場の移設問題が難航する中、配備が強行されれば県民の不信感がさらに増大し、抜き差しならない状況に陥る。
日本政府は米政府に対し、毅然(きぜん)とした対応を取ってもらいたい。それなくして、在日米軍再編計画の展望は開けない。
沖縄タイムス 2012年7月5日 09時24分
社説:[オスプレイ出港]配備は日米関係損なう
米政府は、部隊の論理を優先させ、自分たちのスケジュールにこだわるあまり、受け入れ地域の住民感情を配慮するゆとりを失っている。
日本政府は「装備の換装を拒否することはできない」と相変わらずの弱腰、形式主義で米国の使い走りに終始している。
その結果、沖縄で何が起きているか。「住民の敵意に囲まれた基地は安全保障機能を果たすことができず、存在し得ない」という政治状況が、急速に広がりつつある。
仲井真弘多知事は1日、受け入れ要請のため来県した森本敏防衛相に対し、「全基地即時閉鎖」という強い言葉を使って、県民感情悪化への懸念を表明した。知事発言を「口がすべった」と矮小化(わいしょうか)すべきではない。
ことここに至っても「沖縄のマグマ」に気づかないとすれば、日米両政府は、自らの手で日米関係を毀損(きそん)しているというほかない。あまりに鈍感で、あまりに高慢だ。
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを載せた輸送船は米時間の1日、米サンディエゴ港を出港した。今月下旬に12機が山口県岩国基地に陸揚げされ、試験飛行などのあと8月に普天間に配備、10月から本格運用する計画だという。
CH46ヘリからMV22への機種交代は「装備における重要な変更」に該当せず、事前協議の対象にはならない。しかし、「だから受け入れるしかない」と機械的に処理するのは、他国の軍隊の便宜のために自国民を不安に陥れるもので、主権の放棄に等しい。
沖縄県の人口約140万人。人口密度は全国9位。普天間飛行場のある宜野湾市は、基地面積を除いた部分の人口密度が那覇市に次いで高く、一平方キロメートル当たり約6700人に達する。
飛行場の金網の周りには、住宅や学校などの公共施設が密集し、屋上をかすめるようにヘリや輸送機が連日、離着陸を繰り返す。飛行場に必要な緩衝地帯さえ規定通りの広さが確保できていない。
普天間飛行場の一日も早い返還と危険性除去に全力を尽くすべきなのに、日米両政府がやろうとしていることは、正反対のことだ。
返還合意施設の返還を棚上げし、飛行場の危険性を知りながら、住民の声を無視して沖縄にだけオスプレイを配備するのは、背信行為である。
米軍や政府は「機体に欠陥はない」と言うが、日米の説明は配備を前提にして安全性を強調するためになされており、まったく説得力がない。
かって沖縄に配備されていた垂直離着陸機AV8Aハリアーは、頻繁に墜落事故を起こした。試作飛行以来、墜落事故が相次いでるオスプレイも、やはり垂直離着陸機である。果たして偶然の一致だろうか。
沖縄の犠牲の上に日本の安全保障が成り立つ―といういびつな構図をいつまでも放置してはいけない。
日本における米国の軍事プレゼンスを見直し、住民生活への影響を極小化する方策、公正な負担の道を探らなければならない。
琉球新報 2012年7月5日
社説:県民大会開催へ 日米安保崩壊への警告だ
日米両政府が進める米軍普天間飛行場への垂直離着陸輸送機MV22の配備計画を阻止するため、県議会は県民大会を開催することを決めた。4日の各会派代表者会議で合意した。
県議会が主導することで、主義主張を超えた異議申し立ての受け皿が確立する。高く評価したい。
仲井真弘多知事、県議会、県下の全41市町村長、全市町村議会が結束して配備反対を訴えても、両政府は沖縄の民意に耳を傾けようとしない。そうであるならば、もはや県民の総意を結集し、県民大会で対抗するしかあるまい。
酷暑の中で開かれるが、経済界やさまざまな市民団体が一丸となって、沖縄に犠牲を強い続ける差別的な国策を改めるよう明確な意思をより熱く、より広く発信したい。
米軍はオスプレイ12機を積んだ船を、普天間配備前の試験飛行のために搬入する山口県の岩国基地に向かわせている。強硬姿勢を改めず、なし崩し的に岩国に運び、普天間配備は不可避と沖縄側が動揺することを狙っているのだろう。
米政府が老朽化したヘリコプターの更新の必要性を挙げ、どれだけ「機体に問題はない」と安全性を強調し、日本政府が丸のみして伝えても、県民には生死にかかわるリスクを受け入れる余地などない。
問題は一時的な安全性の確保ではない。世界一危険とされる普天間に数カ月、数年間隔で落ち続ける欠陥機を配備し、県内全域で飛ばすことの不条理を問うている。
普天間飛行場の名護市辺野古への移設をごり押しする日米両国に反発し、県民の基地負担に対する忍耐は我慢の限度を超えている。
普天間配備後、オスプレイは本土でも訓練し、本州、四国、九州各地での低空飛行訓練が実施される。本土の自治体でも配備阻止の動きが広がりを見せている。
オスプレイ配備は基地負担増の象徴と化し、日本の民主主義の成熟度と対米従属をも鋭く問い直している。沖縄社会と日本政府の断絶は深まり、一触即発の局面を迎えている。
日米両政府に警告したい。日米安保の土台が刻一刻と掘り崩されている。本当にそれでいいのか。
仲井真知事は、配備強行ならば、県内の全基地閉鎖要求に世論が傾くと再三警鐘を鳴らしている。知事が望む超党派の開催が見えた今、自らも県民大会に参加し、配備阻止の先頭に立つべきだ。
神戸新聞 (2012/07/04 09:01)
社説:オスプレイ出港/配備の強行は許されない
安全性が何ら確認されていないのに、米海兵隊の最新鋭輸送機MV22オスプレイ12機を積載した輸送船が米国から日本に向けて出港した。
沖縄の普天間飛行場への配備に先だち、今月下旬には山口県の岩国基地に到着する予定で、米側は10月から普天間を拠点に本格運用に乗り出す。最終的には24機に増やす方針である。
オスプレイをめぐっては約20年前の開発段階から4度の墜落事故が起き、計30人が死亡した。今年4月にはモロッコで、6月には米フロリダ州でもあった。
いずれも、詳しい事故原因はいまだに明らかにされていない。
にもかかわらず、米側は予定通り計画を推し進める。沖縄、山口両県とも反対し、搬入先となる普天間や岩国でも不安や怒りの声が上がる。当然である。
オスプレイ配備は日米安保条約で定める事前協議の対象でなく、日本の許可は必要でない。米側の意向を受け入れざるを得ないのが実情とはいえ、こんな一方的なやり方が許されるのだろうか。政府は米側に再考を迫るべきだ。
米側は安全性が確認されるまで岩国での試験飛行を見合わせるとしている。だが、安全確認をする前に出港させるという姿勢をみると、何が何でもスケジュールありきで進めているとしか思えない。
オスプレイは普天間飛行場に配備されている中型輸送ヘリコプターの老朽化に伴い、その後継機として導入される。ヘリと飛行機の機能を兼ね備えているため垂直離着陸ができる。多くの兵士を一度に、より速く輸送できる利点があるのだろう。
先の2件の墜落事故について、米側は人的ミスが原因で機体の安全性に問題はないとするが、人的ミスが相次ぐのは構造に何らかの不具合があるからではないか。米側には基本に立ち返り、厳しくチェックするよう求めたい。
ましてや配備されるのは住宅や学校、病院などが密集し「世界一危険な基地」といわれる普天間飛行場である。沖縄を訪れた森本敏防衛相に、仲井真弘多知事は「断固拒否するしかない」と県民挙げて反対する意思を示した。
普天間飛行場の返還が一向に実現しない上に、危険の上乗せでは、沖縄県民の反発がさらに強まるのは間違いない。
日米両政府は強行配備をせず、住民の声を真(しん)摯(し)に聞くべきだ。週末にはクリントン国務長官が来日し、野田佳彦首相と会談する。配備計画に「待った」をかける英断に期待したい。
朝日新聞 2012年7月3日(火)付
社説:オスプレイ―政府は待ったをかけろ
米政府は、墜落事故が相次ぐ米軍の新型輸送機オスプレイを沖縄県の普天間飛行場に配備すると日本政府に通告した。これを受けて森本防衛相は沖縄、山口両県に出向き、知事らにその内容を説明した。
だが、森本氏は話をする相手を間違っている。米政府にこそ配備を強行せぬよう「待った」をかけるべきだ。
米政府は、オスプレイ12機を7月下旬に山口県の岩国基地に船で運び込む。当初は岩国での試験飛行をへて普天間に移す予定だったが、その後、最近の2件の墜落事故の調査結果が出る8月まで試験飛行を見合わせると方針を変えた。
米政府は日本側の懸念に配慮したという。それでも、10月からオスプレイを普天間で運用するという計画は変えていない。
米軍の日本政府への説明によると、4月のモロッコでの海兵隊機の墜落では、機体に不具合はなかったと断定し、人為的ミスを強く示唆している。
6月の米・フロリダでの空軍機の事故の詳細は不明だが、空軍はその後も「飛行は安全だ」として使い続けている。
オスプレイは、機体の両脇についた回転翼を90度傾けることで、垂直飛行と飛行機並みの水平飛行ができる特異な形の航空機だ。機体に問題がないのに事故が相次ぐということは、素直に考えれば操縦が難しいということではないか。
実際、海兵隊用のオスプレイの飛行時間10万時間あたりの事故率は1.93で、いま普天間に配備されている輸送ヘリCH46の1.11より高い。飛行時間が2万時間あまりしかない空軍用にいたっては13.47だ。
住宅地の真ん中にあり、沖縄県民が県外移転を強く求めている普天間飛行場だ。墜落の危険が大きい航空機が配備されることは、住民には耐え難い。知事が激しく抗議したのは当然だ。
今後、米側が何らかの欠陥を認めるとは考えにくい。それでも配備を認めれば、県民の気持ちを逆なでするだけだ。
そのあげくに事故が起きてしまえば、日米同盟が取り返しのつかない危機に陥るだろうことは、日米両政府ともわかっているはずだ。
森本氏は、配備の変更を求める権限は日本にはないという。条約上はその通りだし、戦略上もあり得ないというのが、軍事専門家としての森本氏の理解なのだろう。
だが、いま求められているのは日本の防衛相としての政治的な判断だ。向き合う相手は米国であることを忘れては困る。
日経新聞 2012/7/3付
社説:オスプレイで丁寧な説明を
対立が深まり、解決の糸口が見えないときには、原点に立ち返って考えることが肝心だ。米軍が最新型の輸送機、オスプレイを沖縄に配備しようとしている問題もそんな局面にある。
オスプレイはヘリコプターと飛行機を合わせた機種だ。プロペラと固定翼を持ち、飛行機のように長い距離を飛べるほか、離着陸時には垂直にも動ける。
米軍は7月下旬に米軍岩国基地(山口県岩国市)に12機を陸揚げし、10月から沖縄県の米軍普天間基地で本格運用する計画だ。来年も12機を新たに導入するという。
地元の自治体は強く反発している。森本敏防衛相は1日、沖縄県の仲井真弘多知事や山口県の二井関成知事らに会い、計画を説明したが、理解を得られなかった。安全への不安が最大の理由だ。
この溝をどう埋めるのか。それにはまず、オスプレイの配備がなぜ必要なのか、改めて考える必要がある。米軍にとって最大の狙いは部隊の即応力を高めることだ。
海兵隊がいま、沖縄で使っている輸送ヘリCH46は「もはや旧式だ」(日米両政府筋)。CH46に比べると、オスプレイの最高速度は約2倍、搭載量は約3倍、行動半径も約4倍に広がる。
これは日本の安全保障にとっても利益になる。朝鮮半島など日本の周辺でいざという事態が起きれば、海兵隊が大切な役割を担うとみられるからだ。
だからといって、地元の安全を犠牲にするわけにはいかない。オスプレイは4月にモロッコ、6月に米フロリダ州で墜落事故を起こした。米軍はオスプレイを岩国基地に搬入しても、事故の調査結果が出そろい、安全を確認できるまでは試験飛行を控えるという。引き続き、丁寧に安全対策を説明してもらいたい。
沖縄の海兵隊の行動半径が広がれば、訓練の県外移転も進めやすくなるはずだ。日米両政府は地元の理解を得るために、オスプレイの配備に合わせた負担軽減策も検討するべきだ。
=2012/07/03付 西日本新聞朝刊=
社説:オスプレイ配備 政府は米側に再考を迫れ
米政府は、新型の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを、当初予定に沿って米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備すると、日本政府に正式通告した。
米側のスケジュールでは、7月下旬にオスプレイを米軍岩国基地(山口県岩国市)に運び込み、岩国での試験飛行の後に普天間に移動、配備する。10月初旬から本格運用するという。
オスプレイは開発段階で重大事故が度々発生し、約30人の死者を出した。実戦投入後も事故を起こしており、今年4月にモロッコで墜落、6月にもほぼ同型の空軍仕様機が米フロリダ州で墜落した。
このため、配備が予定される沖縄はもちろん、一時的な駐機地となる山口でも、配備への反対が強まっている。
米側から通告を受け、森本敏防衛相はこの週末、沖縄と山口を訪れて知事や市長らと面会、配備への理解を求めた。
しかし「安全性に疑問があるものは拒否するしかない」(沖縄県・仲井真弘多知事)、「スケジュールありきで、なし崩し的に進めようという姑息(こそく)な考えになっていないか」(山口県・二井関成知事)と反発され、平行線に終わった。
住民の安全を第一に考える自治体のトップとして、知事や関係市長らの懸念や反発は当然である。特に普天間飛行場は市街地のど真ん中にあり、事故が起きれば重大な被害が予想される。
疑問に感じるのは、この問題に関する日本政府の立ち位置だ。米軍の計画を地元に受け入れさせるための「調整係」になってはいないか。
日米両政府とも、オスプレイ配備は日米安保条約で定める事前協議事項にはあたらないとの解釈だ。このため、日本政府や自治体が配備を拒否する法的権限はないとされる。
米側は、8月にモロッコやフロリダの事故の追加調査結果を日本側に提供し、安全性が確認されるまでは、岩国での試験飛行を控える方針を示した。
これについて森本防衛相は地元との会談で「今までにない措置だ」と米側の譲歩を強調したが、米軍主導の「安全性確認」をどこまで信用できるのか。米国を評価する基準が甘すぎないか。
仲井真知事は、配備を強行して事故が起きた場合は「(県内の米軍の)全基地即時閉鎖という動きにいかざるを得なくなる」と警告した。
米国は世界戦略上のオスプレイ配備の必要性を主張する。しかし日本政府は、住民の懸念を無視した配備強行が、長い目で見た日米安保体制にどれだけ大きな悪影響を与えるかを米側に説き、配備を再考するよう迫るべきではないか。
米軍はオスプレイ配備後に全国6ルートで訓練飛行を計画している。九州では熊本、大分両県にまたがるルートと、鹿児島県奄美群島と沖縄県を結ぶルートで、平均高度約150メートルの超低空飛行を行うという。沖縄以外の九州にとっても、直接関わってくる問題なのである。
琉球新報 2012年7月2日
社説:知事防衛相面談 配備拒否以外 道はない
ガス抜きのつもりだったのだろうが、むしろガスは充満してしまった。県民の不満は爆発寸前。森本敏防衛相の来県が招いた結果はそういうことだ。
米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備強行の方針を伝えたが、仲井真弘多知事や佐喜真淳宜野湾市長の姿勢で、県民の拒否反応の強さを肌で感じただろうか。
森本氏がこのまま配備を是認するだけなら、米国防総省(ペンタゴン)の代理人にすぎない。大臣たるもの、自国民の意を受け、米側に配備中止を談判するのが務めであろう。直ちにその交渉に入ってもらいたい。
知事との面談で森本氏は、米国内の墜落事故の調査結果が出るまで日本での試験飛行は保留となったことを指し「米側も日本側の懸念に配慮した」と述べた。保留は当然、日本の空の使い方を決めるのは日本であるはずだ。それなのに、少々飛行を延期するだけのことをありがたがるとは何事か。
日米安保条約第6条に関する「岸・ハーター交換公文」は、「装備の重要な変更」は日本政府との事前協議の対象と規定する。オスプレイ配備はこれに該当するはずだ。そうであれば、配備の拒否も日本側の選択肢となる。
だが属国根性の染みついた日本政府は「装備の一部変更」という米側の主張をうのみにし、事前協議に持ち込もうとさえしない。
あまつさえ、森本氏は宜野湾市長との面談で「モロッコの事故は(中略)機械的な不具合、システムの不具合で起こったものではない」と米側の説明をオウムのごとく繰り返した。主体性を喪失した大臣の姿は、情けない限りだ。
同じ面談では「(オスプレイを)岩国にとどめ置く期間は8月まで」とも述べた。8月には普天間飛行場に配備するということだ。県民総ぐるみの反発を、力で押さえ込もうという宣言にほかならない。
仲井真知事は面談で「オバマ大統領か誰か知らないが、誰が責任を持つんですか」と述べた。
面談後にはさらに、「配備を強行した場合、(県内の米軍の)全基地即時閉鎖という動きに行かざるを得ない」と述べた。
県民の生命と財産を預かる知事としての、強い決意の表れと受け止めたい。それは、県民大多数の憤りをも代弁してもいる。政府も配備拒否以外、道はないと知るべきだ。
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