オスプレイ配備強行のさなか、沖縄米兵暴行事件、我慢の限界を超えている。
アメリカの「軍事植民地」か!県議会の抗議決議100件目だ。
沖縄に基地がある限り根絶できない
地位協定改定、そして、米軍基地を全面撤去、安保条約を破棄せよ!!
各紙社説等を紹介する。
全国紙と沖縄2紙を(その1)で、その他地方紙を(その2)に掲載する。
<各紙社説、主張の見出し>
朝日新聞)米兵の犯罪―沖縄の怒りに向きあう(10/18)
読売新聞)沖縄米兵事件 再発防止へ実効性ある対策を(10/19)
毎日新聞)相次ぐ米兵事件 米政府は深刻さ自覚を(10/18)
日経新聞)米兵事件を繰り返さぬ対策を (10/19)
東京新聞)米兵女性暴行 沖縄に基地がある限り(10/18)
しんぶん赤旗)米兵の暴行事件 基地あるがゆえの犯罪許さず(10/18)
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沖縄タイムス)[抗議決議100件目]沖縄は「軍事植民地」か(10/23)
沖縄タイムス)[夜間外出禁止令]政府の姿勢は弱すぎる(10/21)
沖縄タイムス)[2米兵暴行事件]我慢の限界を超えた(10/18)
琉球新報)知事訪米要請 米国民主主義の真価問う(10/24)
琉球新報)県議会抗議決議 返還促進突き付けた重み(10/23)
琉球新報)防衛相「事故」発言 人権感覚を欠く妄言(10/22)
琉球新報)米軍再発防止策 地位協定改定が不可欠だ(10/21)
琉球新報)米兵集団女性暴行/卑劣極まりない蛮行 安保を根本から見直せ(10/18)
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朝日新聞 2012年10月18日00時34分
社説:米兵の犯罪―沖縄の怒りに向きあう
沖縄で、米海軍兵2人が女性への集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。
「正気の沙汰ではない」と、仲井真弘多(ひろかず)知事が述べたのは、当然だ。
容疑者2人は米国本土から出張で来ていた。事件がおきたのは未明。その日の午前中に沖縄を出てグアムへ行く予定だったという。「沖縄を出てしまえばわかるまい」とでも考えたのだろうか。
沖縄では、1995年に米海兵隊員3人による少女暴行事件がおき、県民の怒りが燃え上がった。基地の再編や、事件をおこした米兵の扱いをめぐって日米間の交渉が行われた。
だがその後も、米兵による犯罪はなくならない。性犯罪に限っても、この10年余りで中学生への強姦や強制わいせつ、ほかにも強姦致傷、今年8月にも強制わいせつ致傷の事件がおきた。被害者が泣き寝入りし、表に出ない事件もあるとみられている。
沖縄では、米軍によって女性や子どもの身の安全を脅かされていると受けとめる人がふえている。
仲井真知事は「日米地位協定を改定しない限り問題は出てくる」と述べた。
今回の事件は容疑者を基地外で見つけて警察が逮捕したが、もし基地内に入っていれば、米兵や軍属を手厚く守る協定によって、引き渡しに時間がかかっただろう。ほかの事件では、地位協定があることで米兵や軍属が「軍の公務中だった」といった言い分で、日本側が捜査できなかったことがある。
重大な事件がおきるたびに少しずつ運用で見直されているとはいえ、沖縄をはじめ米軍基地を抱える自治体は、協定そのものを変えなければ犯罪は減らないという強い思いがある。
そして沖縄には、安全への心配がぬぐえぬ新型輸送機オスプレイが配備されたばかりだ。不信が募っているときの、この卑劣な事件である。
日本と米国の協調は大切だ。そのことを多くの人が感じている。だが、今回の事件が火種となって、再び沖縄で反基地の思いが爆発することは十分に考えられる。
日米両政府は真剣に対策を講じる必要がある。
沖縄で米兵による事件が多いのは、国土の面積の0.6%にすぎないこの島に、在日米軍基地の面積の約74%が集中している現実が根底にある。
沖縄の負担をどう分かつか。沖縄の外に住む一人ひとりが考えなくてはならない。
(2012年10月19日01時30分 読売新聞)
沖縄米兵事件 再発防止へ実効性ある対策を(10月19日付・読売社説)
卑劣で悪質な犯罪で、日米同盟にも悪影響を及ぼしている。
米軍は、実効性ある再発防止策を早急に講じるべきだ。
沖縄県中部で、未明に帰宅中の成人女性が米海軍兵2人に暴行された。
沖縄県警は2人を集団強姦致傷容疑で逮捕した。厳正な捜査を求めたい。
2人は米テキサス州の基地所属で、今月上旬に来日し、犯行当日中に離日する予定だった。
8月には、那覇市で在沖縄米兵による強制わいせつ事件が発生したばかりだ。こうした不祥事が繰り返されるようでは、日本の安全保障に欠かせない米軍の沖縄駐留が不安定になろう。
沖縄県の仲井真弘多知事が「正気の沙汰ではない」と憤るのも無理はない。米軍による具体的な犯罪抑止策の徹底が急務である。
現在も、在沖縄米兵には、米軍基地外での飲酒制限や、沖縄の文化・歴史に関する講習などが義務づけられているが、今回のような短期滞在者は対象外だ。
森本防衛相らは、日米合同委員会で米側に綱紀粛正の徹底を強く求める考えを示している。
若い米兵を対象にした中長期的な教育の拡充、外出制限など、より包括的で効果的な対策をまとめることが重要だ。
今回の事件は、米軍の新型輸送機MV22オスプレイが沖縄に配備された直後だったため、県民の反発が一段と高まっている。
ただ、暴行事件への対応とオスプレイの安全確保は基本的に別問題であり、それぞれ解決策を追求するのが筋だろう。
同時に、米軍による事故の防止や騒音の軽減など、周辺住民の負担全体を軽減する努力を日米双方が不断に続ける必要がある。
政府内には、1995年の女児暴行事件時のように、沖縄の反米軍世論が沸騰する事態になることを懸念する向きもある。
しかし、当時は、県警が逮捕状を取った米兵の身柄引き渡しを米側が一時拒否したのに対し、今回は県警が容疑者の身柄を確保している点が大きく異なる。容疑者2人は日本の司法手続きに基づき、処罰される見通しだ。
仲井真知事は日米地位協定の改定を改めて主張している。だが、今回の事件捜査では、起訴前の米兵引き渡しなどを制限する地位協定が障害とはなっていない。
日米両政府は従来、地位協定の運用の改善を重ね、具体的問題を解決してきた。それが最も現実的な選択であり、同盟関係をより強靱にすることにもつながろう。
毎日新聞 2012年10月18日 02時30分
社説:相次ぐ米兵事件 米政府は深刻さ自覚を
繰り返される事件に強い憤りを覚える。「再発防止」はかけ声だけではないか、と思わざるを得ない。
沖縄県で16日、米海軍兵士2人が女性に性的暴行を加え、首にけがをさせたとして、沖縄県警に集団強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕された。2人は米テキサス州の基地所属で、任務のため14日に米軍嘉手納基地に入り、16日にグアムに向かう予定だった。
沖縄では、8月18日に米軍キャンプ瑞慶覧(ずけらん)所属の海兵隊員が女性に暴行し、強制わいせつ致傷容疑で逮捕されたばかりだ。この時、米側に抗議した日本政府に対し、米政府は事件の再発防止を約束していた。
それから、わずか2カ月後の事件再発である。仲井真弘多沖縄県知事は17日、森本敏防衛相に「正気の沙汰ではない。綱紀粛正という生やさしい言葉でなく、もっと厳しい対応を強く米側に申し入れてほしい」と求めた。再発防止という米側の言葉が信じられないのは当然だろう。
防衛相は、日米合同委員会の開催を米側に求める考えを示し、パリを訪問中の玄葉光一郎外相は「綱紀粛正や再発防止という言葉で片付けられない。抜本的な対策を考えないといけない」と語った。
「抜本的な対策」の中身は不明だが、兵士の教育や私生活を含めた管理強化にとどまらず、日米地位協定の改定を含め、考えられる限りの対策を講じるべきである。
仲井真知事は防衛相に「協定を改定しない限り、彼らは基本的に日本の法律は守らなくていいことになっている」と改定を求めた。協定は、公務外の米兵士が基地の外で起こした犯罪について、基地に逃げ込むなどして米側が先に身柄を確保した場合、日本側が起訴するまで米側が身柄を確保することを認めている。これが日本側の捜査の障害になっている。日米両政府は運用改善によって重大犯罪については捜査段階から身柄を日本側に引き渡すことで合意しているが、協定そのものを改定して日本側の捜査権を強化すれば、事件に対する抑止効果が期待できる。
沖縄では、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備強行や、米軍普天間飛行場の移設難航で、日米両政府や米軍への不満が高まっている。背景には、沖縄に米軍基地が集中することによる過重な負担がある。
ルース駐日米大使は事件について「米政府は極めて強い懸念を持っている」と述べたが、相次ぐ事件は、米軍への信頼を失わせ、日米安保体制そのものをむしばむ。米政府と米軍は事態の深刻さを自覚すべきだ。
米側が被害者に誠意ある対応を示すのはもちろん、日米両政府には、事件根絶のための、納得のいく対策を打ち出してもらいたい。
日経新聞 2012/10/19付
社説:米兵事件を繰り返さぬ対策を
沖縄県で米兵による性的暴行事件がまた起きた。県民は「正気の沙汰ではない」(仲井真弘多知事)と憤っており、日米同盟の基盤となる信頼関係が損なわれかねない。二度と事件を起こさないためにはどうすればよいのか。両国政府に実効ある対策を求めたい。
在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄では米軍人・軍属による事件・事故が後を絶たない。
海兵隊員3人が女子小学生を暴行し、県を挙げての抗議運動に発展した1995年の事件以降、米軍は綱紀粛正を何度も約束してきた。しかし今年も8月に海兵隊員が強制わいせつ致傷容疑で逮捕された。それに続く事件だ。
日米両政府は近く再発防止策を打ち出す方向だ。だが、研修を増やすなどの通り一遍の対策では、県民はかけ声だけに終わるのではないかとの懸念を拭えまい。
事件を起こすのは比較的軍歴が浅い米兵が多い。今回も米本土から出張で来た、いずれも23歳の水兵2人の犯行だった。酒に酔い、仕事帰りの女性を襲った。
教育のまだ行き届いていない米兵は沖縄に派遣しないように米軍に配慮させるだけでも事件はかなり減るはずだ。
在日米軍の存在は日本の安全保障に欠かせない。領土を巡る周辺国との摩擦で、こうした思いを深めた日本人は多いに違いない。
にもかかわらず肝心の沖縄では、米軍普天間基地の移設を巡る民主党政権の迷走などで米軍への県民感情はかつてなく悪くなっている。ルース駐日大使が事件後に「米政府は極めて強い懸念を持っている」と述べたのは、こうした状況を理解しているからだろう。
沖縄が安保の最前線に位置すること。その守りには日米同盟という盾が必要なこと。県民の信頼を回復するにはこうした原点に立ち返り、日本政府が真摯に説明する以外に手はない。
同時にこうした沖縄の状況をすべての日本人が認識することも大事だ。米軍訓練の一部を本土も引き受けるなどの対応が望まれる。
東京新聞 2012年10月18日
【社説】米兵女性暴行 沖縄に基地がある限り
あってはならない事件がまた起きた。米海軍兵二人が二十代の女性に対する集団強姦(ごうかん)致傷容疑で沖縄県警に逮捕、送検された。沖縄に重い米軍基地負担を強いる限り、県民の痛みはなくならない。
米兵による事件・事故の後、繰り返される「綱紀粛正」の言葉がむなしく響く。事件の報告を受けて東京滞在を延ばした仲井真弘多沖縄県知事は、斎藤勁官房副長官を首相官邸に訪ね、「(在沖縄米軍基地は)安全保障上必要だから理解してくれと言われても、こういう事件が起きると無理な話だ」と強く抗議した。
知事に代表される県民の怒りは当然だ。日米両政府に加え、日本国民全体が重く受け止め、自分の痛みとして感じる必要がある。
米軍基地は周辺地域の住民にさまざまな負担を強いる。平穏な生活を脅かす日々の騒音や事故の危険性、米国の戦争に加担する心理的圧迫、それに加えて、今回のような米兵の事件、事故などだ。
日米安全保障条約で、日本の安全と、極東の平和と安全を維持するために日本に駐留する米軍が、日本国民の生命を脅かす存在にもなり得ることは否定しがたい。
在日米軍基地の約74%は沖縄県に集中する。米軍の世界戦略に加え、本土では基地縮小を求める一方、沖縄での過重な基地負担を放置することで平和を享受してきたわれわれ本土側の責任でもある。
沖縄では今、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備に反対する動きが強まっている。
安全性が確認されたとは言い難い軍用機を、人口密集地が迫り、危険な飛行場に配備することへの反発はもちろん、日米安保体制に伴う負担を沖縄県民がより多く負う差別的政策への怒りでもある。
普天間飛行場の名護市辺野古への「県内移設」では、沖縄県民の負担軽減にはならない。日米両政府は普天間飛行場の国外・県外移設の検討を手始めに、在沖縄米軍基地の抜本的な縮小に着手すべきだ。普天間でのオスプレイ運用も直ちに中止すべきである。
今回は沖縄県警が米兵を基地外で逮捕したが、日米地位協定では米側が先に身柄を拘束した場合、起訴まで米側が拘束できる。日本側は殺人、強姦など凶悪犯罪では身柄引き渡しを要求できるが、米側は拒否できる。
治外法権的な協定は沖縄県民が不平等感を抱く一因にもなっている。運用見直しではなく、抜本的改定に踏み出さねばならない。
しんぶん赤旗 2012年10月18日(木)
主張:米兵の暴行事件 基地あるがゆえの犯罪許さず
起きてはならない、あってはならない犯罪がまた起きました。沖縄本島中部での、米兵による女性への暴行事件です。
女性への性的暴行は、女性の人権を侵害する重大な犯罪です。しかも米兵が来日し一時滞在した沖縄で女性を襲い暴行するなどというのは、日本でなら沖縄でなら何をやっても許されるというに等しい、言語道断な行為です。今回の暴行事件は、繰り返されている米兵犯罪の氷山の一角です。基地あるがゆえの犯罪を、絶対に許すわけにはいきません。
繰り返される米兵犯罪
事件は16日未明に起きました。アメリカ本土の基地に所属する米海軍の3等兵曹と上等兵の容疑者が、沖縄本島中部の路上で帰宅途中の女性を襲い、性的暴行を加えたうえ、首にケガをさせたというものです。女性が容疑者の顔を覚えていたため警察に緊急逮捕されました。
容疑者の米兵は所属するアメリカ本土の基地から神奈川県の厚木基地を経て沖縄の嘉手納基地に来ており、暴行事件は帰国する日の朝だったといいます。朝早くで、しかも2人は酒を飲んでいたといわれ、公務中などという言い訳はまったく成り立たちません。日本の法律に照らして、きびしく処罰されるのは当然です。
事件をうけ、仲井真弘多沖縄県知事は日米両政府にきびしい対応を申し入れました。野田佳彦首相や玄葉光一郎外相、森本敏防衛相らも「あってはならない事だ」と発言しています。その言葉が本当なら、形ばかりの綱紀粛正にとどまらない対策を示すべきです。
米兵による暴行や強盗、殺人などの犯罪は、沖縄をはじめ全国で繰り返されています。日本がアジア・太平洋戦争に敗れアメリカなどに占領されてから70年近くたつのに、日米安保条約にもとづいていまだに全国に米軍基地が置かれ、沖縄や横須賀(神奈川県)、佐世保(長崎県)など基地周辺では米兵がわが物顔で歩き回っている現実は、独立国ではとても考えられない異常このうえないものです。
とくに沖縄は、戦争中に不当に奪った土地に基地がつくられ、「銃剣とブルドーザー」で拡大して、全国の米軍専用基地の74%が集中します。嘉手納基地は極東最大の米空軍基地としてかつてはベトナム侵略戦争などの出撃基地とされ、沖縄の海兵隊は世界で唯一海外に基地を置く「殴り込み」部隊です。1995年には米海兵隊員による少女暴行事件が発生し、島ぐるみの抗議行動が繰り広げられました。繰り返される犯罪は、米軍がいまだに沖縄を「植民地」扱いしていることを示すものです。
安保も基地もなくして
日米安保条約や在日米軍についての地位協定で、米軍は日本国中どこでも基地を置くことが認められ、米兵が事件を起こしても「公務中」などの理由で裁判にもかけられない特権が犯罪を激化させているといわれます。県民の反対を踏みにじり米海兵隊の新型輸送機オスプレイの配備が押し付けられる根本にも安保があります。
これまでも米兵の犯罪が起きるたび、日米両政府は地位協定の「運用改善」などでお茶をにごしてきました。これでは基地あるがゆえの犯罪はなくなりません。安保条約を廃棄し、基地そのものをなくす方向に踏み出すべきです。
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沖縄タイムス 2012年10月23日 09時37分
社説[抗議決議100件目]沖縄は「軍事植民地」か
米海軍兵2人が沖縄本島中部で女性を襲い、集団強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕された事件で、県議会は22日に開いた臨時会で抗議決議と意見書を全会一致で可決した。
県議会事務局によると、米軍がらみの事件・事故に対する抗議決議は、本土復帰後、100件目となった。野田佳彦首相はこの数字をどのように考えているのだろうか。日本の安全保障政策はこの100件の犠牲の上に成り立っており、政府は防衛白書に100件の抗議決議一覧表を掲載すべきである。
県のまとめによると、復帰時から昨年末までに米兵らによる刑法犯は5747件起きている。凶悪犯は568件、このうち強姦事件は未遂を含め127件に上る。
今年8月には県議会が、海兵隊員による強制わいせつ致傷事件に対する抗議決議を全会一致で可決している。政府当局者はこの数字に接しても神経が鈍磨し無感覚になっているのではないか。
本土復帰から40年が過ぎたにもかかわらず、米兵による性暴力が後を絶たず、日常生活を平穏に営む平和的生存権さえ保障されていない現実は異常というしかない。被害者が受けた心の傷は統計では表せない。
抗議決議では「県民の我慢の限界をはるかに超え、県民からは米軍基地の全面撤去を求める声も出始めている」と指摘している。日米両政府は、事態の深刻さを認識する必要がある。県議会の100件目の抗議決議は、沖縄から発せられた事実上の「非常事態宣言」と受け止めるべきだ。
■ ■
沖縄には、日本にある米軍専用施設の74%、4軍合わせた米軍兵力の70%が集中している。特に海兵隊は9割近くが沖縄に駐留する。在沖米軍全体でみると、海兵隊は6割を占める。
海兵隊、基地とも沖縄に集中する現状を変えない限り、日米両政府がいくら「綱紀粛正」「再発防止」と叫んでも根本的な解決につながらないのは明らかである。
だが、野田政権からは沖縄の意を体して米国政府と交渉する気概も姿勢も全く感じられない。日米地位協定によって米兵はさまざまな特権や有利な扱いが保障されているが、そのことが末端の兵士に、沖縄では何をしてもいいという治外法権的な意識を植え付けていないか。米海軍兵2人が2泊3日の日程で沖縄入りし、わずかな滞在期間中に凶悪事件を起こすとは「占領意識」そのものではないか。
■ ■
森本敏防衛相は集団強姦致傷事件を「たまたま、外から来た兵士が起こした」と言った。米本国でのオスプレイの緊急着陸を「車を運転するときに警告灯がついて道の脇でチェックしたようなもの」とたとえた。米国でオスプレイに試乗して「快適だった」と県民感情を逆なでした。
森本氏が体現しているのは日米同盟至上主義である。住民の安全・安心はあまり念頭にないようだ。
森本氏が、オスプレイ配備と普天間の辺野古移設を自身の任務とみているのは間違いない。一体どこの国の大臣なのか。
沖縄タイムス 2012年10月21日 09時31分
社説[夜間外出禁止令]政府の姿勢は弱すぎる
2人の米兵による女性暴行事件を受け、在日米軍は日本に滞在する全ての軍人を対象に夜間外出禁止令を発令した。
時間は午後11時から午前5時まで。対象者は陸海空軍と海兵隊の約4万人。違反者は統一軍法に基づき処罰する。
併せて、軍人・軍属への再研修、勤務時間外の行動指針の見直しにも触れた。
在日米軍トップのアンジェレラ司令官が会見し、ルース駐日米大使も立ち会った。
「迅速な対応」や「全米兵対象の異例の措置」とする本土側の評価とは違って、沖縄の反応は冷めている。この種の再発防止策が長期的に有効に機能してきたとはいえず、実効性の乏しい約束であることを肌で感じているからだ。
県民に大きな衝撃を与えた、1995年の暴行事件の後、米軍は再発防止を約束し、日本の文化や習慣について集中討議するなど規律教育を徹底したはずだった。
2008年に中学生が暴行された事件では、沖縄に駐留する軍人と軍属の外出を禁止する措置が講じられた。
だが、その後も米兵による事件は続いた。禁止令を破って、フェンスを乗り越え、酒を飲み…。
いくらトップが神妙な面持ちで綱紀粛正を説いたところで、空疎な演説にしか聞こえない。
半年ほどのローテーションで次々と入れ替わる海兵隊の若い兵士たちに、きちんとした教育がなされるのか、疑問である。
■ ■
今回、米側の対応が早かった背景には、新型輸送機オスプレイをめぐる県民の反発など、日米同盟を揺るがしかねない事態への危機感がある。
日本側にいたっては「最悪のタイミング」(官邸筋)で事件が起こったとし、反基地運動の高まりを心配している。被害に遭った女性のことより、日米関係への影響を懸念する政府とは何だろう。
米兵による事件・事故が発生するたびに、政治は問題を沈静化することに力を注いできた。しかし沈静化で問題は解決しない。被害者の苦しみは終わることがないからだ。
事件を受けて、過去に危険な目に遭ったことのある50代の女性は「狭い場所にいられない。大きな声が怖い。カウンセリングの電話番号を持たないと外出できない」と明かした。ようやく気持ちの整理がついたのは、事件から30年以上たってからだという。
■ ■
軍隊が持つ占領意識や暴力性は構造的なもので基地と性暴力は深く結びついている。
にもかかわらず、政府は米兵の性暴力を個人的な問題として押しやり、なぜ事件が繰り返されるのかの原因に目を向けようとしない。米兵犯罪が沖縄に集中しているのに、基地を受け入れている日本側の対策はあまりに傍観者的だ。
今回の事件でも、野田佳彦首相や森本敏防衛相の言葉から、自国民の安全や尊厳を守ろうとの決意や気迫が伝わらない。
政府はもっと強い姿勢で再発防止策を要求し、その実効性に目を光らせるべきだ。
沖縄タイムス 2012年10月18日 09時46分
社説 [2米兵暴行事件]我慢の限界を超えた
沖縄本島中部で、帰宅途中の女性が、米海軍所属の上等水兵(23)と3等兵曹(23)から性的暴行を受け、沖縄署と県警捜査1課が2米兵を集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕した。
女性に落ち度は全くない。女性の人権を踏みにじる悪質極まりない事件である。
調べでは、2米兵は女性に片言の日本語で声を掛けた。女性が取り合わずに歩いていると、後ろから近づき首を羽交い締めにし、人けのない場所に引きずり込んで犯行に及んだという。
2米兵は米テキサス州にある海軍航空基地に所属し、厚木基地(神奈川県)から14日に沖縄に入った。任務を終え、犯行当日の16日にグアムに出発することになっていた。
2米兵は民間ホテルに滞在し同日午前にチェックアウトする予定で、沖縄を離れる日を選んで犯行に及んだのではないかとの疑念が消えない。県警には捜査を徹底して明らかにしてもらいたい。
今年8月には本島南部の路上で米海兵隊による強制わいせつ致傷事件が起きたばかりである。森本敏防衛相は日米合同委員会を開く意向を示している。だが、沖縄からは、事件のたびに日米両政府が口にする「再発防止」「綱紀粛正」という言葉は、沖縄の怒りを収めるための政治的パフォーマンスにしかみえない。
なぜ、再発防止や綱紀粛正が実行されず、事件が繰り返されるのか。合同委ではそれこそを問うべきである。
戦後67年がたったが、これほど長期間にわたって女性の人権が脅かされている地域が一体どこにあるだろうか。
■ ■
県警が県議会軍特委で明らかにしたところでは、復帰後だけに限っても米兵による強姦事件は未遂を含め昨年末までに127件に上る。あくまで統計上の数字である。1995年には米海兵隊ら3人による暴行事件が起き、県民総決起大会が開かれた。その後も女性を被害者とするおぞましい事件が後を絶たない。
復帰前には「空にB52、海に原潜、陸に毒ガス。天が下に隠れ家もなし」と言われたが、基地の過重負担は基本的に変わっていない。「空にオスプレイ、陸に米兵犯罪」-それが復帰40年の現状だ。相変わらず軍事が優先され、住民の安全・安心がないがしろにされているのである。
沖縄に米軍の専用施設の74%を押し込める矛盾が噴き出しているのだ。その場しのぎでは、もう立ちゆかないのは目に見えているのに、日米両政府とも負担軽減を求める沖縄の声を無視し続けている。
■ ■
2000年の沖縄サミットでクリントン米大統領は「米軍のフットプリント(足跡)を減らしていく」と演説した。負担や影響の軽減である。キャンベル国務次官補も同年、「一つのかごにあまりに多くの卵を入れすぎた」と、沖縄の過重負担を指摘する論文を発表している。
だが、負担軽減策は実行されていない。日本政府が海兵隊の沖縄駐留を求め続けているからだ。もはや我慢の限界を超えた。日米両政府が目に見える負担軽減策を実行しない限り、マグマが噴き出すのは間違いない。
琉球新報 2012年10月24日
社説:知事訪米要請 米国民主主義の真価問う
訪米中の仲井真弘多知事が、米海軍兵士による集団女性暴行致傷事件に抗議し、米軍普天間飛行場の県外移設と垂直陸離着陸輸送機MV22オスプレイの配備見直しを米政府に初めて直接要請した。
知事は要請の中で「基地にさまざまな意見はあっても、これまで沖縄県民が米兵に石を投げたりしたことはない。一方的に被害に遭っている」と述べた。非暴力的な沖縄の異議申し立てに十分思いを致せ―との知事の警告を米政府は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
キャンベル国務次官補は今回の暴行事件について謝罪と悲しみを表明し、リッパート国防次官補は「日米同盟の強化に取り組んでいて沖縄を公平に扱いたい」とした。
その謝罪、悲しみが本物なら、米軍、米兵の傍若無人な振る舞いを助長している不平等な日米地位協定を直ちに改めるべきだ。公平に扱うというのなら沖縄の過重負担を解消し、普天間飛行場の県外・国外移設もしくは閉鎖・撤去を実現すべきだ。沖縄の民意を米国民並みに重んじるのなら、世論調査で9割が反対するオスプレイの強行配備などあり得ないはずだ。
米国の政府関係者や有識者、すべての良識ある市民に呼び掛けたい。沖縄県民は、普天間の「県内移設反対」でしっかりと民主的な手続きを踏んできた。今日、県内41市町村長と議長、全県議がオスプレイの配備撤回を求めている。今回の卑劣な暴行事件には激しく憤っている。こうした沖縄の民意をわが事と受け止めてほしい。在沖米軍基地の現状を劇的に改善することで、米国民主主義の復元力を、今度こそ見せてもらいたい。
仲井真知事は昨年9月にも、日米の有識者による国際シンポジウムで「県内移設は事実上不可能」「他の都道府県への移設が合理的かつ早期に課題を解決できる」と演説した。海兵隊の沖縄駐留ついても明確に疑義を唱えていた。
2年連続の訪米で知事は明確に県民の総意という“ボール”を投げた。今度は米側が投げ返す番だ。
県民は戦後、県内で暮らす米軍人ほか米国市民を教師および反面教師として民主主義を学んだ。アンフェアな対沖縄政策は連綿と続いている。今問われるべきは米国の民主主義だ。誰が、どの政党が政権を握ろうともこれ以上、沖縄を踏み付けにすることは断じて許されないと肝に銘じるべきだ。
琉球新報 2012年10月23日
社説:県議会抗議決議 返還促進突き付けた重み
見ず知らずの2米兵に突然襲われた被害者の無念さに思いが至ったのだろう。静まり返った議場で、決議文案を読み上げた県議会米軍基地関係特別委員長の新垣清涼委員長が声を震わせた。
県議会は米海軍兵による集団女性暴行致傷事件に対し、「激しい憤りを禁じ得ない」とする抗議決議・意見書を全会一致で可決した。
米軍普天間飛行場に、オール沖縄の反対の民意を無視して海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが配備されて間もない今回の凶行である。
決議は「県民の我慢の限界をはるかに超え、県民から米軍基地の全面撤去を求める声も出始めた」と指摘した。
沖縄の過重負担を上塗りするオスプレイ配備強行をめぐり、米紙ニューヨーク・タイムズは「(沖縄の)古傷に塩を塗り込むようなもの」と形容した。
今回の暴行致傷事件は、沖縄社会にとって、オスプレイ配備で古いかさぶたが破けて血がにじむ生身の傷口に、新たに塩を塗るようなものだ。
米軍事件・事故をめぐる従来の「基地の整理・縮小」に加え、今回の決議は初めて「返還」の促進を盛り込んだ。
名ばかりの綱紀粛正を繰り返す米軍が有効な再発防止策を講じることはできまい。米軍専用基地の74%が集中する島に2万数千人の米兵を押し込める限り、新たな性被害を再生産してしまうことを危惧し、返還促進を突き付けたのだ。
「基地の全面撤去」への言及とともに、日米両政府は決議の重みを真摯(しんし)に受け止めねばならない。
決議を携えた県議らの抗議に対し、耳を疑う発言が早速飛び込んできた。日米地位協定の改定要求に対し、マグルビー在沖米総領事が「今回の事件は日米地位協定とは関係がない」と答えた。
この人は、何が県民の怒りを呼び起こしているかに目を背けているとしか思えない。米軍駐留地に赴く米国の出先機関のトップとしての適格性に疑念が生じる。
県警は、容疑者の2米兵が次の任地のグアムに向かう直前に逮捕した。あと1時間半遅れていれば、地位協定が壁となって、捜査に重大な支障を来した可能性が高い。
事件の核心に直結する地位協定改定要求を過小評価する態度こそ、沖縄社会の反発を高め、溝を深めることを日米政府は自覚すべきだ。
琉球新報 2012年10月22日
社説:防衛相「事故」発言 人権感覚を欠く妄言
米海軍兵による集団女性暴行致傷事件を森本敏防衛相が繰り返し「事故」と表現している。これが国民を守るべき立場の閣僚の人権感覚か。妄言のそしりを免れない。
通りすがりの女性を路上で暴行した行為は容疑通りなら、凶悪犯罪だ。蛮行を「事故」と矮小(わいしょう)化し表現することで被害女性をさらに傷つけ、苦しめてしまうとの想像力は働かないのか。女性全体を侮辱する発言でもあり断じて許せない。
いま国がやるべきことは、米軍に対して毅然とした態度で被害女性に対する謝罪や賠償、ケアを求めることであり、実効性ある再発防止策を打ち出させることだ。事件の重大性を薄めて国民の印象を操作することは、加害者側をかばうような行為であり言語道断だ。
森本防衛相は、記者団から事件の受け止め方を聞かれ、「非常に深刻で重大な『事故』だ」と発言した。二度、三度繰り返しており、吉良州司外務副大臣も同様に使っている。米軍基地内外で相次ぐ性犯罪を米政府は深刻に受け止めている。これに比べ日本側の対応は浅はかとしか言いようがない。
防衛相は、仲井真弘多知事の抗議に対し「たまたま外から出張してきた米兵が起こす」と発言した。
しかし、在沖米軍の大半を占める海兵隊は6カ月ごとに入れ替わる。移動は常態化しており、「たまたま外から出張してきた」との説明は言い訳にすぎない。そのような理屈が成り立つなら「ローテーションで移動してきたばかりで沖縄の事情を知らない兵士がたまたま事故を起こした」といくらでも正当化できよう。防衛相は詭弁(きべん)を弄(ろう)するのではなく、無責任な発言を直ちに撤回すべきだ。
復帰後、県警が認知しているだけでも127件の女性暴行事件が起きた。認知に至らず事件化していない事案も含めると女性の尊厳がどれだけ踏みにじられたことか。
政府に警告する。米兵犯罪が後を絶たないため仲井真知事をはじめ多くの県民が、「諸悪の根源」は米軍の特権を認め占領者意識を助長している日米地位協定にあるとの認識を一段と深めている。
県民からすれば凶悪犯罪を「事故」と認識する不見識な大臣、副大臣を抱えたことこそ「事故」だ。米兵犯罪や基地問題と真剣に向き合えない政務三役は、政権中枢にいる資格はない。日米関係を再構築する上でも害悪だ。
琉球新報 2012年10月21日
社説:米軍再発防止策 地位協定改定が不可欠だ
米軍や日米両政府は何か勘違いをしていないか。米海軍兵による集団女性暴行致傷事件を受け、米政府と米軍が発表した再発防止策のことだ。在日米軍全兵士の一時的な深夜外出禁止などが柱だが、基本的に同様の重大事件が発生するたびに取られた措置であり、抜本的対策になるとは思えない。
日本政府の対応もおかしい。森本敏防衛相は県が求めている日米地位協定の抜本的見直しについて「現時点で改定する考え方は政府内にはない」と述べた。しかし、このような対米従属的な考え方や姿勢が、米軍・米兵絡みの事件事故が繰り返される根本的な要因であることを日本政府は認識すべきだ。
地位協定は前身の行政協定からの改定(1960年)時に、刑事裁判権をめぐる米軍人・軍属の公務中か否かの判断について、日本側が行うか裁定機関を設けるべきだとの要求が日本側にあったことが、外交文書で判明している。
この時、米軍側に配慮する形で要求を抑えたのが外務省だ。こうした姿勢が米軍側の占領意識、植民地意識を助長し、同様の犯罪を誘発しているのだ。
占領政策の延長線上のような決めごとが、今や時代遅れなのは明らかだ。「治外法権」「基地の自由使用」の特権をほしいままに傍若無人に振る舞う米兵や米軍組織の行動を規制し、事件事故を何としても抑え込む必要がある。
綱紀粛正、運用改善など、姑息(こそく)で小手先の対策では限界がある。国民が公平に感じ、米軍に緊張感を持たすような、地位協定の抜本的改定が不可欠だ。
1995年のきょう、在沖米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しを求めて「県民総決起大会」が開かれた。言うまでもなく、米兵3人による少女乱暴事件を契機にした取り組みだ。そして今回、地位協定の見直しが進まない中で同様な事件が起きたのだ。
米軍普天間飛行場の県内移設計画が続き、欠陥が指摘されるオスプレイが強行配備される中で起きた重大事件。県民の人権と尊厳は二重にも三重にも踏みにじられている。
中部市町村会は18日の記者会見で「基地撤去まで訴えていかなければ根底から解決できない」と強調した。「県民総決起」は続いている。日米両政府は県民の積年の怒りと訴えを見誤ることなく、真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
琉球新報 2012年10月18日
社説:米兵集団女性暴行/卑劣極まりない蛮行 安保を根本から見直せ
被害者女性の尊厳を踏みにじった米兵の野蛮な行為に強い憤りを覚える。凶悪犯罪の再発を防げなかった日米両政府の無策と責任も、県民とともに厳しく糾弾したい。
県警は16日、県内の20代女性への集団女性暴行致傷容疑で米海軍上等水兵(23)と、同三等兵曹(23)を逮捕した。容疑が固まれば速やかに起訴し、日本の裁判で厳正に裁くべきだ。
米軍は事件のたびに綱紀粛正や兵員教育による再発防止を約束するが、何が変わったというのか。現状は基地閉鎖なくして米兵犯罪の根絶は不可能だと、米軍自らが自白しているようなものだ。
続く米国の恥
女性は安心して道を歩けない。米兵は沖縄を無法地帯と考えているのか―。県婦人連合会の平良菊会長はこんな疑問を抱きつつ「危険なオスプレイが縦横無尽に飛んで、危険な米兵が地上にうようよしているのが今の沖縄か。人権蹂躙(じゅうりん)も甚だしい」と述べた。同感だ。
ことし8月にも那覇市で女性への強制わいせつ致傷容疑で米海兵隊員が逮捕された。復帰後の米軍関係の刑法犯は5747件(2011年12月末現在)に上る。米国はこうした現状を恥じるべきだ。
在日米軍には日米安保条約に基づき「日本防衛」の役割がある。しかし県民には苦痛をもたらす暴力組織としての存在感が大きい。
日米安保体制を容認する保守系首長も、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを強行配備した日米両政府に抗議し、万が一墜落事故が起きた場合には「全基地閉鎖」要求が強まると警告する。
両政府は在沖基地が人権を脅かし、地域振興を阻害している現実も直視して、普天間飛行場閉鎖と在沖海兵隊撤退を含め、米軍駐留の根本的見直しを進めるべきだ。
04年10月21日付紙面で、わたしたちは「沖縄を取引材料にするな」との社説を掲げた。
大野功統防衛庁長官(当時)が米軍の東アジア10万人体制を見直すため、1996年の橋本龍太郎―クリントン両首脳による日米安保共同宣言の見直しを提起し、在日米軍再編協議を本格化させた頃だ。
社説はこう説く。
「1972年の本土復帰に際して、当時のニクソン米大統領は佐藤栄作首相が求める『核抜き本土並み返還』を受け入れる代わりに、自らの公約である日本の繊維業者の輸出削減問題で首相に譲歩を求め成功した。いわゆる『縄と糸』の取引だ。96年の日米安保共同宣言の際には、橋本首相が普天間飛行場返還合意と引き換えに、極東有事に米軍の後方支援を積極的に行えるよう『日米防衛協力のための指針』(ガイドライン)の見直しを受け入れた」と。
復帰の内実
それは政府が「沖縄の負担軽減」を大義名分に米軍に譲歩する状況が、復帰時や安保共同宣言当時の日米交渉の構図と酷似していることを指摘したものだ。
米国は実を取ったが、沖縄住民は「核抜き本土並み返還」も「普天間飛行場返還」も手に入れていない。今また、米国は“招かざるオスプレイ”を県民に押しつけながら、植民地政策と見まがう基地の強化、固定化を推し進めている。
沖縄国際大の佐藤学教授は、今回の女性暴行事件について「沖縄が自由に使える土地という認識が復帰から40年たっても変わっていない。その認識の延長線上にこういう犯罪がある」と指摘し、仲井真知事に対し訪米要請で「沖縄の人権が、国民としての権利がどれほど踏みにじられているのかを直接伝えるべきだ」と注文している。
米国は沖縄の施政権こそ日本に返還したが、復帰後も日米地位協定に基づき「基地の自由使用」の権利や米軍の特権的地位を温存した。こうした対米追従の不平等協定は改めるべきだ。さもなくば県民の人権を踏みにじる日米両政府の「構造的差別」も続くだろう。
沖縄を踏み台とする日米の理不尽な政策について、県民を挙げて国際社会へ告発する必要がある。
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1 件のコメント:
産経新聞社は社説(主張)では未だこの事件を書いていませんが、
報道記事でも、米空軍に批判的な論調です。
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