2012年10月24日水曜日

米兵暴行事件 沖縄は「軍事植民地」か! 我慢の限界を超えた (その2)


米軍基地は全面撤去し、安保条約を破棄せよ


<各地方紙社説、論説の見出し>

北海道新聞)米兵の犯罪 地位協定改定へ行動を(10/19)
東奥日報)地位協定改定に踏み出せ/沖縄米兵暴行事件(10/22)
河北新報)米兵の集団強姦/地位協定改定を一日も早く(10/19)
信濃毎日新聞)沖縄抗議決議 不信拭う基地対策こそ(10/24)
信濃毎日新聞)米兵の犯罪 基地押し付け見直しを(10/18)
京都新聞)沖縄米兵事件  県民の怒り分からぬか(10/19)
神戸新聞)沖縄米兵逮捕/綱紀粛正だけで済まない(10/18)
山陰中央新報)沖縄米兵事件/地位協定改定に踏み出せ(10/19)
山陽新聞)米兵の犯罪 沖縄の怒りを受け止めよ(10/20)
中国新聞)沖縄 米兵事件 綱紀粛正では済まない(10/18)
徳島新聞)沖縄米兵事件   小手先の対応では駄目だ (10/24)
愛媛新聞)米軍の事件再発防止策 地位協定見直しは欠かせない(10/22)
高知新聞)【米兵逮捕】沖縄の我慢は限界だ(10/19)
西日本新聞)米兵犯罪 「綱紀粛正」では済まない(10/19)
佐賀新聞)米兵女性暴行事件 「地位協定」の見直しを (10/20)
熊本日日新聞)米兵犯罪 沖縄の怒り重く受け止めよ(10/23)
南日本新聞)[相次ぐ米兵犯罪] 沖縄の怒り受け止めよ(10/20)




----------------------------------------------

北海道新聞 2012年10月19日
社説:米兵の犯罪 地位協定改定へ行動を(10月19日)
 沖縄県民の怒りは沸騰している。
 沖縄県警は、20代女性を乱暴しけがをさせたとして米海軍の兵士2人を集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕した。
 複数の男性米兵が面識のない1人の女性を、深夜に屋外で乱暴した。極めて卑劣な犯罪で、重大な人権侵害だ。
 米兵の犯罪は後を絶たない。8月にも那覇市で女性への強制わいせつ容疑で米海兵隊員が逮捕された。県民が安心して暮らせる日が来ない。
 米軍を特別扱いする日米地位協定があるため、犯罪に対する米兵の認識が甘い。協定を改定して厳しく対処しなければならない。
 沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は森本敏防衛相に会い、事件について「正気の沙汰ではない」と怒りをぶつけた。そして「綱紀粛正という生易しい言葉ではない厳しい対応を」と日米地位協定の抜本改定を求めた。
 藤村修官房長官は改定ではなく運用改善で対応する考えを示した。及び腰と言わざるを得ない。
 日米地位協定は公務中の事件・事故は米側、公務外は日本側に裁判権を認めている。しかし、公務外でも米側が先に容疑者の身柄を拘束した場合は、検察が起訴するまで引き渡されず、十分な捜査が難しい。
 1995年の少女暴行事件をきっかけとして、起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的配慮を払う」と運用改善を図った。だが実際の判断は米側にゆだねられたままだ。
 今回、県警は米側より先に2容疑者の身柄を確保した。1人は容疑を認め、滞在先のホテルの部屋から証拠物を押収した。初期の捜査がいかに重要かを示すものだ。
 米兵犯罪は沖縄だけでなく全国各地で起きている。「罪を犯しても逃げ切れるため、抑止力が機能していない」との見方が強い。地位協定を改定して厳正に処罰する仕組みをつくることが防止につながるはずだ。
 今回の事件は新型輸送機MV22オスプレイの普天間基地配備直後に起きた。生活の安全・安心を望む県民感情を相次ぎ踏みにじる米軍の姿勢に対し怒りが増幅している。
 「基地がある限り犯罪は後を絶たない」という県民の思いは当然だ。米兵犯罪への不満は地位協定改定にとどまらず、基地撤去要求となって沖縄全体に広がりつつある。日米両政府は深刻に受け止めるべきだ。
 野田佳彦首相は事件について「あってはならないことだ」と述べた。大事なのは行動だ。地位協定改定へ向け指導力を発揮してもらいたい。
 ルース駐日米大使は陳謝し、捜査への全面協力を約束した。沖縄の怒りを本国に伝え、米政府に抜本策を講じるよう促すことが求められる。


東奥日報  2012年10月22日(月)
社説:地位協定改定に踏み出せ/沖縄米兵暴行事件
 女性の尊厳を踏みにじる卑劣な事件がまたしても沖縄で起きた。米海軍の兵士2人が若い女性に対する集団強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕された。
 8月に沖縄で女性への強制わいせつ致傷容疑で海兵隊の兵士1人が逮捕されたばかりだ。何度繰り返されるのか。人の道にはずれた蛮行に強い憤りを覚える。
 折しも、普天間飛行場(宜野湾市)に米軍の新型輸送機MV22オスプレイ12機が、県民の反対を無視して配備された直後だ。しかも、オスプレイは日米両政府が合意した安全策に反する形で垂直離着陸(ヘリ)モードでの市街地飛行を繰り返しているという。
 空にオスプレイ、夜道に米兵-。沖縄の怒りと不信感は頂点に達している。生活が脅かされるのは、沖縄に国内の米軍専用施設の74%が集中する現実から生じている-と、県民は受け止めている。
 逮捕された米兵2人は、米本土から業務のために嘉手納基地に来て、基地外のホテルに宿泊していた。女性は帰宅途中に声を掛けられ、路地裏で乱暴された。
 重大事件が起きるたびに、米側は「再発防止」「綱紀粛正」の約束を繰り返してきた。だが、効果が上がっているとは思えない。
 今回の事件を受け、在日米軍は、日本に滞在する全軍人を対象に夜間(午後11時~午前5時)の外出禁止令を発令した。
 しかし、「外出禁止令は過去にもあったが、度々破られ、根本的な解決にならなかった」と実効性を疑問視する声が上がる。
 米軍の法的地位を特別扱いする日米地位協定が、米兵の規範意識を低下させる一因-との指摘は根強い。今度こそ、日米両政府は地位協定の抜本的な改定に踏み出すべきだ。
 仲井真弘多知事は、「米軍は地位協定で身分が保障されるという感覚で仕事をしているに違いない」と述べ、米政府に直接、抜本的な改定を訴える考えだ。
 地位協定は1960年の発効以来、一度も改定されていない。公務外の米兵の事件は日本に裁判権があるものの、現行犯逮捕以外は米軍が身柄を拘束し、日本側は起訴後に引き渡しを受けるのが原則だ。
 米軍が身柄引き渡しを拒否した95年の沖縄少女暴行事件を機に運用が見直され、起訴前の引き渡しが可能になった。だが、あくまで、米側の「好意的考慮」が前提である。
 今回の事件で米兵2人が基地に戻っていたら、少なくとも引き渡しに相当の時間を要し、捜査は難航したかもしれない。
 2人は事件の数時間後に米領グアムに向かう予定だった。協定により米兵は日本での入国管理手続きが不要で、警察は出国を知ることすら難しかっただろう。
 地位協定の改定は、本県はじめ米軍基地を抱える自治体共通の問題だ。森本敏防衛相は「現時点で改定する考え方は政府内にない」と否定的だ。だが、一時的な対症療法でお茶を濁すのはもう許されない。抜本的な抑止策づくりが急務だ。


河北新報 2012年10月19日金曜日
社説:米兵の集団強姦/地位協定改定を一日も早く
 沖縄県内で、米兵2人が20代の女性を乱暴してけがをさせたとして集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。
 1人は容疑を否認しているが、卑劣な犯行だ。事件当日にグアムに移動予定だったといい、「高飛び」を織り込んでいた可能性もある。
 仲井真弘多沖縄県知事は、米軍の駐留が「安全保障上必要だと言われても、こういう事件が起きると無理だ」と非難する。
 沖縄県議会が作成した抗議決議案は「再発防止の取り組みや、軍人への教育はもはや機能していないと言わざるを得ない」と、厳しい表現で米国と日本双方に不信感を突き付ける。
 「彼ら(米軍)にとって沖縄は植民地なんだ」。新型輸送機オスプレイのなし崩し的な配備強行に反対し、普天間飛行場ゲートを封鎖した座り込み活動のリーダーは憤る。
 いつまでたっても基地負担軽減が実現しない状況に、沖縄は「差別」と不満を募らせる。
 日本政府は日米地位協定の改定を強く求めるべきだ。本土復帰40年。もう、沖縄県民を痛みにさらすことはできない。
 迷走が続く普天間飛行場の移設問題も、1995年に起きた女子児童への集団強姦事件がきっかけだった。米軍関係者が起こした事件や事故は、72年の本土復帰以降5700件に上る。
 キューバ・グアンタナモでの拷問事件にみられるように、米軍の軍紀の乱れは世界の知るところだ。地位協定は「兵士の士気を損なう」との理由から米国に裁判権を認めるが、そうした配慮を受け入れる信頼関係は、もはや崩れ去っている。
 度重なる事件を受け運用改善は進んだが、時代遅れとなった治外法権は残る。根本的な改定により、日本側の主体的な捜査権限を確保すべきだ。
 抜本的見直しについて、米国は「日本との改定に応じれば全体のバランスを欠く」と消極姿勢を崩していない。
 韓国はことし、米韓協定の改定を果たし、容疑者引き渡し要件を韓国側有利に改めた。
 だが、改定後も韓国当局の権限は実質的に日本以上の制約を受けており、さらに日本側の権限が拡大されれば、韓国側が新たな不公平感を抱きかねない。米国が懸念する不均衡だ。
 米軍の駐留先は40カ国に及ぶ。協定の改定そのものが米国の国益後退に直結する以上「議会の同意を得ることも難しい」(外交関係者)ことは確かだ。
 それでも、日本側が改善を訴えていかなければ、変わるべきものも変えられない。
 事件を受け外交・防衛当局者による日米合同委員会が開催される。沖縄住民の怒りと苦悩を率直に米国側に伝えることが、日本政府の責任だ。
 「綱紀粛正という生易しい言葉ではない厳しい対応を申し入れてほしい」(仲井真知事)
 「綱紀粛正や再発防止という言葉で片付けられない」(玄葉光一郎外相)
 認識は一致している。米側の具体的な対応を求める時だ。


信濃毎日新聞 2012年10月23日(火)
社説:沖縄抗議決議 不信拭う基地対策こそ
 沖縄県議会は、米兵による集団強姦(ごうかん)致傷事件について、日米両政府に抗議し、日米地位協定や基地対策の見直しを求める決議を全会一致で可決した。
 決議は、新型輸送機オスプレイの強行配備にも触れ、「我慢の限界をはるかに超え、県民からは米軍基地の全面撤去を求める声も出始めている」とした。
 基地負担の軽減を求める沖縄の声はかき消され、重荷ばかりを押し付けてくることへの怒りが強くにじみ出ている。
 反発は強まりそうだ。沖縄と米軍の関係悪化ばかりでなく、基地を抱える日本各地で不信感が高まる可能性がある。安全保障分野を中心に日米関係がさらにぎくしゃくするかもしれない。
 日米両政府は、事態の深刻さを重く受け止めなくてはならない。日本で犯罪を犯した米軍関係者に有利な内容になっている日米地位協定の改定などに本腰を入れるときではないか。
 沖縄で事件が起きた後、在日米軍は日本に滞在する全ての米軍人を対象とした深夜外出禁止令を初めて出した。反発が強まることを懸念しての措置である。けれど、外出禁止令は米軍がよく用いる対応策で、沖縄では綱紀粛正や根本的な解決にはつながらない、との冷めた見方が出ている。
 決議の背景に目を凝らしたい。決議文によると、米軍関係者による犯罪は1972年に沖縄が本土への復帰を果たしてから昨年末までで5747件に上る。大ざっぱな計算でも1年間に150件近く起きたことになる。
 事件・事故が発生するたびに綱紀粛正、再発防止、教育の徹底を米軍に求めてきたが、是正されているとは言い難い。決議は「再発防止の取り組みや、軍人への教育の在り方などはもはや機能していない」と言い切った。
 沖縄の反対を無視し、米軍普天間飛行場に強行配備されてから3週間が過ぎたオスプレイも、日米合意に反する危険性の高い飛行が常態化しているとされる。
 県民の安全が脅かされているのに、本気で改善しようとしない日米両政府への怒りが沖縄で高まるのは当然のことだ。
 野田佳彦内閣をはじめとする民主党政権の責任はことさら重い。「地域主権の確立」「緊密で対等な日米関係」という政権交代時の公約に照らせば、沖縄への対応はとんでもない約束違反である。しっかり反省し、県民の声を反映させた基地負担軽減策を米側と再協議してもらいたい。


信濃毎日新聞 2012年10月18日(木)
社説:米兵の犯罪 基地押し付け見直しを
 沖縄県で米兵が女性に乱暴してけがを負わせ、逮捕された。8月にも同様の事件が起きたばかりである。
 米軍普天間飛行場に新型輸送機オスプレイが配備され、住民は不安を募らせている。暮らしを守るには基地撤去しかない―。そんな声が高まるのは必至だ。再発防止に向けた取り組みとともに、沖縄に基地の負担を押し付けている現状を抜本的に見直さなければならない。
 沖縄県警は16日、20代の米海軍の上等水兵と3等兵曹を集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕した。県警によると、2人は同日午前3時半ごろから4時20分ごろまでの間、飲食店勤務の女性が帰宅する途中、日本語で声をかけ、無視されると追い掛けて乱暴し、首に擦り傷を負わせたという。
 1人は容疑を否認し、もう1人は認めているようだ。事実とすれば、女性を力ずくで乱暴する悪質な犯罪である。沖縄県警には、引き続き事実関係を徹底的に調べてもらいたい。
 米兵による性犯罪が後を絶たない。1995年に海兵隊員3人が小学生の女児を暴行した事件のほか、2000年代に入ってからも02年、05年、08年、09年、11年と頻繁に起きている。
 今年も8月、海兵隊伍長が女性にわいせつな行為をしてけがをさせた疑いで逮捕されている。被害者は米兵と面識がなく、友人と会食した後に帰宅する途中だった。米兵の犯罪がこれほど起きるようでは、女性は安心して出歩けない。それが沖縄の現実である。
 仲井真弘多知事は17日、森本敏防衛相と会談し、「正気の沙汰ではない」と怒りをあらわにし、厳しい対応と捜査協力を米側に強く申し入れるよう要求した。ルース駐日米大使にも抗議している。効果的な再発防止策を講じることができるかどうか、日米両政府の責任は重い。
 オスプレイ配備から間もない事件である。オスプレイの事故の危険性も米兵の凶悪犯罪も、沖縄に基地が集中する現実から生じている―。県民が、そう受け止めるのは当然だろう。
 仲井真知事は「県民の怒りは簡単に静まらない」と述べている。事件を機に、オスプレイ配備や普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、反対の声が一段と高まることが予想される。
 基地問題は次期総選挙の争点である。各党は事件を真剣に受け止め、基地の在り方を含む抜本策を示す必要がある。これ以上押し付けを続けることは許されない。


[京都新聞 2012年10月19日掲載]
社説:沖縄米兵事件  県民の怒り分からぬか
 何度繰り返されるのか。沖縄県民の我慢も限界というものだ。
 今度は、任務で嘉手納基地に来ていた米兵2人が女性に乱暴、けがをさせたとして集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。
 卑劣な行為であり、断じて許せない。捜査を尽くし、法に基づいて厳正に処罰してもらいたい。
 米側は事件が起きる度に再発防止に努めるとしてきたが、8月に強制わいせつ容疑で海兵隊員が逮捕されたばかりだ。県民の納得がゆく対策を示さなくてはならない。
 背景には米兵に甘い日米地位協定の存在がある。これまでような「運用の改善」ではなく、抜本的に改正すべきだ。
 事件を受け、仲井真弘多知事は「正気の沙汰ではない」と強い言葉で怒りを表した。森本敏防衛相に対し、米側に綱紀粛正という生易しい言葉でなく厳しい対応をするよう申し入れてほしい、と求めたのも当然だ。
 理解に苦しむのは防衛相の対応ぶりだ。悪質な事件とする一方で「日米安保体制や県民の米軍に対する信頼を損なう」という。県民の安全より、日米関係重視の姿勢が透けてみえる。
 野田佳彦首相も「あってはならないことだ」と言うだけ。それも官邸内を移動中の立ち話だ。県民の怒りが胸に届いているのか。
 沖縄の本土復帰以降、米軍関係者による犯罪が約5700件も発生、女性に対する犯罪も目立つ。
 多発の要因にあげられるのが、米兵らに駐在公館並みの治外法権や特権を保証する日米地位協定で1960年の発効以来、一度も改正されたことがない。
 とりわけ、問題とされてきたのが米兵の犯罪に関する手続きだ。
 95年に発生した海兵隊員ら3人による小学生女児暴行事件で県民の怒りが大きなうねりとなり、運用面で少しは改善された。
 強姦や殺人などの凶悪事件では起訴前の容疑者の身柄引き渡しに合意したものの、一次的な裁判権は米側にあるなど不平等で差別的な構造は変わっていない。
 「米兵は沖縄を植民地か、占領地と思っているのではないか」という県民の疑念を解くには、地位協定を改正するしかない。
 世界で最も危険な普天間飛行場の固定化への懸念、新型輸送機オスプレイの強行配備。米軍や、追随するだけにみえる日本政府への県民の不満は高まるばかりだ。
 国土の0・6%に米軍基地の74%が集中する矛盾、負担の押し付け。「沖縄差別」から目をそらしてこなかったか-。政府だけでなく、「本土」に住む私たちにも重い問いが突きつけられている。


神戸新聞 (2012/10/18 09:51)
社説:沖縄米兵逮捕/綱紀粛正だけで済まない 
 沖縄でまた、米兵による暴行事件が起きた。任務で沖縄にいた米兵2人がおとといの未明、沖縄本島中部の街で飲食店に勤める女性を乱暴し、首に擦り傷を負わせたとして逮捕された。
 1人は容疑を否認しているが、もう1人は「2人で犯行に及んだ」と認めている。2人は飲酒した帰り、歩いていた女性に日本語で声を掛けたが、無視されたため追いかけて乱暴したという。
 沖縄では8月にも那覇市で海兵隊員が女性への強制わいせつ致傷容疑で逮捕されたばかりだ。相次ぐ卑劣な犯行には、強い憤りを覚える。
 忘れてならないのは1995年9月、沖縄で起きた米兵3人による小学女児暴行事件だ。全島で怒りが爆発し、普天間飛行場移設の合意につながった。
 それ以降も女性や女子児童・生徒らを狙った米兵の犯罪は後を絶たない。17年前から何も変わっていないといえる。
 米政府は事件を深刻に受け止め、捜査に全面協力する構えを見せる。当然のことで、厳しい姿勢で臨むべきだ。
 沖縄では今、安全性が懸念される新型輸送機オスプレイの配備に反対する声が渦巻いている。顛(てん)末(まつ)次第でそのうねりが基地撤去運動にも発展しかねない。
 それほど深刻な事態に直面していると、米政府は認識しなければならない。
 米兵の犯罪はなぜ、こうも繰り返されるのか。在日米軍基地の4分の3が沖縄に集中するいびつな現状に加え、米軍統治時代の名残ともいえる米軍優位の日米地位協定が、その背景にある。
 沖縄では毎年、60件前後の米兵犯罪が起きているが、身柄が米側にあれば、地位協定に基づき、起訴されるまで日本に引き渡さなくてもよい。今回も2人が逮捕前に出国していれば、捜査が難航した可能性が高い。
 そうした不平等協定が運用上の改善以外、いまだに改定されたことがない。
 事件を受け、仲井真弘多知事はきのう、地位協定の抜本改革を森本敏防衛相に要請した。防衛相は早期に日米合同委員会を開いて対応するとした。
 今度こそ、地位協定の見直しにつなげるべきである。
 米兵による事件や事故が起きるたび、米政府は綱紀粛正や再発防止を約束した。だが、そのほとんどは守られておらず「米軍は沖縄を植民地か占領地としかみていない」との声も聞かれる。
 人権を重んじる米国がこの状態では、国際社会の信用を失う。信頼回復への確実な取り組みを求めたい。


山陰中央新報 ('12/10/19)
論説:沖縄米兵事件/地位協定改定に踏み出せ
 沖縄で、また卑劣な事件が繰り返された。地元の若い女性に乱暴したとして、米兵2人が集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。沖縄の怒りは頂点に達している。
 沖縄では米兵による事件が後を絶たない。2カ月前にもわいせつ事件が発生している。東京出張中に一報を受け、滞在を延長して政府に厳正対処を申し入れた仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が「正気の沙汰ではない」と怒りをあらわにしたのも当然だ。
 米軍の新型輸送機オスプレイが県民の反対を無視して配備され、日米合意に反する形でヘリモードでの市街地飛行を繰り返し、反発が強まった直後の事件である。日米両政府は「最悪の事態」の認識を、あらためて共有すべきだ。
 逮捕された2人の米兵は米本土の海軍航空基地所属で、業務のため沖縄の嘉手納基地に来て、基地外のホテルに宿泊していた。事件が起きたのは明け方で、女性は屋外の路地裏で乱暴された。
 この種の事件が起きるたびに米側は綱紀粛正、再発防止の約束を繰り返してきた。今回も駐日米大使や米国防総省担当者らが「大変深刻な問題、捜査に全面協力」と口をそろえ、日本政府も「日米合同委員会での再発防止要求」に言及している。しかし信頼に足らない。
 過去10年に限っても沖縄では米兵による事件が頻発している。今回の事件で警察には米兵2人の動機や計画性、事件前後の行動などの全容を徹底した捜査で解明してもらいたい。米軍には捜査結果を再発防止に生かす義務があるが、それだけでは不十分と言わざるを得ない。
 仲井真知事も指摘するように、日米両国はこれを機に日米地位協定の改定に踏み込むべきだ。日本での米軍の法的地位を定めた地位協定は発効以来、半世紀を経ながら一度も改定されていない。
 地位協定では公務外の米兵の事件は日本に裁判権があるものの、現行犯逮捕以外は米軍が身柄を拘束し、日本側は起訴後に引き渡しを受けるのが原則だ。
 米軍が身柄引き渡しを拒否した1995年の沖縄少女暴行事件を機に運用が見直され、起訴前の引き渡しも可能になった。しかし、これはあくまで米側が「好意的考慮」「十分な考慮」をするという内容で、保証はされていない。
 今回の事件では警察が早期に米兵2人を逮捕できた。もし基地に戻っていたら、少なくとも引き渡しに相当の時間を要し、捜査は困難を強いられていただろう。
 2人の兵士は事件の数時間後にグアムに向かう予定だったという。米兵は地位協定によって日本の入管手続きが不要で、警察は迅速に2人の出国を知ることすら難しかった。
 少なくとも身柄をめぐる「特別な存在」ぶりが、米兵の規範意識を低下させる一因になっているのではないか。その点で地位協定の改定は効果的な再発防止策の一つとなり得る。
 在日米軍基地の4分の3を抱える沖縄にとって、頻発する米兵事件は過酷な基地負担の一つの断面にすぎない。
 明治政府は長い時間をかけ不平等条約の改正にこぎ着けた。政府も事件を重視し、真剣に地位協定改定に取り組むべきだ。


山陽新聞 (2012/10/20 9:03)
[社説]米兵の犯罪 沖縄の怒りを受け止めよ
 沖縄県警は、20代女性に乱暴しけがをさせたとして米兵2人を集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕した。またもや繰り返された極めて卑劣な犯罪である。捜査を尽くし、厳正に処罰してもらいたい。
 事件が起きたのは16日未明だ。面識のない帰宅途中の女性に声を掛けたが無視されたため、追いかけて首を絞め、路地裏で乱暴したという。
 事件の報告を受けた仲井真弘多沖縄県知事は直ちにルース在日米大使に抗議した。さらに斎藤勁官房副長官との会談で、在沖縄米軍基地について「安全保障上必要だと言われても、こういう事件が起きると(理解するのは)無理な話だ」と憤りを伝えた。
 知事の言葉に象徴されるように、沖縄県民の怒りは当然だろう。
 1972年の本土復帰以降、沖縄県内での米軍関係者による犯罪は約5700件も起きている。95年には米兵3人が女子小学生を車で拉致し暴行した。女性や子どもが被害者になるケースが少なくない。そのたびに米国側は「綱紀粛正、再発防止に努める」としてきたが、効果はない。ことし8月にも女性への強制わいせつ致傷容疑で米兵1人が逮捕されたばかりだ。
 仲井真知事は森本敏防衛相に日米地位協定の抜本改定をあらためて要請した。米兵が事件を引き起こす背景にあるとされるのが、米軍の治外法権的な特権を認めた日米地位協定の存在だからだ。
 今回の事件で逮捕された米兵2人は米本土から出張で沖縄を訪れ、事件の数時間後には次の任務地グアムに向かう予定だった。「罪を犯しても逃げ切れる」との意識があったのではないか。県警は基地外にいた2人を逮捕したが、もし基地内に逃走していれば、原則として起訴前まで日本側に身柄は渡されない。
 協定は60年に発効し、運用改善は図られてきたが、一度も改定されていない。今回の事件を受け、沖縄県民から改定を求める声が一段と強まるのは必至である。
 事件は地元の反対を押し切って米軍の新型輸送機オスプレイが強行配備される中で起きた。頂点に達している沖縄県民の怒りを日米両政府は深刻に受け止めねばならない。
 再発防止策として米軍は日本滞在中の全米兵を対象に夜間外出禁止令を出すことを決めた。これにとどまらず、両政府は地位協定の改定まで踏み込み、抜本的な対策を講じるべきだ。
 「本土」に住む私たちも沖縄の怒りと痛みをしっかり受け止めてきただろうか。世界一危険な普天間飛行場、米軍機の騒音や事故、後を絶たない米兵の犯罪…。在日米軍基地の約74%が集中し、日米安全保障体制に伴うさまざまな負担を沖縄だけが過重に負わされてきた。
 だが、負担軽減が叫ばれながら一向に改善されていない。その現実にあらためて目を向ける必要がある。


中国新聞 '12/10/18
社説:沖縄 米兵事件 綱紀粛正では済まない
 人間の尊厳を踏みにじる卑劣な行為である。米本国の海軍に所属する2兵士が集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕、送検された。沖縄県で20代女性の首を絞め、乱暴したという。
 数日前から任務で訪れ、離日する直前の犯行だったらしい。女性は2人と面識はなく、歩いて自宅に帰るところを路上で襲われたというのだ。
 知人の力を借りて、女性は被害を届けた。勇気を振り絞ったのだろう。沖縄県警も直ちにそれに応えた。そのまま出国していたら、追跡は困難になったかもしれない。
 事件を受け、政府はルース駐日大使に米軍の綱紀粛正と再発防止の徹底を求めた。だが、そんな型通りの抗議で済まされるはずがない。
 折しも沖縄では、日米両政府への強い不信感が渦巻く。米軍普天間飛行場(宜野湾市)へ垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備を強行した問題だ。どんなに県民が「ノー」と言っても米側は一歩も引かず、日本政府は言いなりだった。
 しかも配備後は、日米で取り決めた安全策が守られていない。「米軍の施設および区域内に限る」などとしたヘリモード飛行が、配備から2週間で既に常態化しているという。
 そこへ今回の事件である。米軍のモラルの低さ、教育や統制の乏しさが露呈した。米本国の兵士がほんの数日の滞在で、このような事件を起こすこと自体が、米側の差別意識を物語ってはいないだろうか。
 それは、日本政府も同じなのかもしれない。米軍基地が存在する理由は「日本の防衛やアジア太平洋地域の平和と安全に寄与する抑止力」というが、一方で沖縄に基地を集中させ、負担を押しつけてきた。
 軍用機が日々、住宅地の上空を飛び交う危険性。それに加え、米兵による犯罪が県民を脅かす。本土復帰後の米軍関係の犯罪検挙数は5700件余りにも上るという。
 沖縄の人々は地道な闘いを続けてきた。1995年の3米兵による少女暴行事件で県民が立ち上がる。日米地位協定でかなわなかった、起訴前の身柄引き渡しを可能にした。
 反基地運動のうねりはさらに高まり、日米両政府を負担軽減のための話し合いの席に着かせる。そうして、普天間返還で合意した経緯がある。
 米兵による犯罪への心配は岩国など米軍基地を抱える地域に共通する。対等な関係を築くためにも、政府は米国に具体的な申し入れをすべきではないか。
 まずは米兵の夜間外出制限など、規律強化を求めたい。そして、成果が確認できるまではオスプレイの訓練自粛を約束させるべきだ。米軍への不信が募る一方では、前に進めてはならないだろう。
 また起訴前の身柄引き渡しについては、地位協定の抜本的見直しが欠かせない。現状は殺人や強姦など凶悪な犯罪が基本で、あくまでも米側の「好意的考慮」に基づく。理不尽で不平等な規定は、米兵の犯罪を助長させるだけではないか。
 「重く受け止めている」と口では言い、結局は軽くあしらう。政府のそんな対応はもう許されない。沖縄の痛みを日本の問題として捉え、米側に毅然(きぜん)と主張する姿勢が求められる。


徳島新聞 2012年10月24日付
社説:沖縄米兵事件   小手先の対応では駄目だ
 「正気の沙汰ではない」。沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は、こう言って事件を厳しく非難した。
 同県中部で米兵2人が20代の女性を強姦(ごうかん)してけがを負わせ、集団強姦致傷容疑で逮捕、送検された事件である。
 沖縄県では、8月にも米兵が那覇市で女性にわいせつな行為をしたとして逮捕されたばかりだ。後を絶たない犯罪に怒りがこみ上げてくる。
 宜野湾市の普天間飛行場には、県民の総意を無視する形で新型輸送機MV22オスプレイが配備された。プロペラを上向きにした垂直離着陸(ヘリ)モードで市街地上空を飛ばないとした日米両政府の合意も、配備当初から破られている。
 米軍には沖縄県民の声が届いていないのか。沖縄を治外法権の地だと考えているのではないか。知事や県民でなくとも、そう思わざるを得ない出来事が頻発している。
 日本の安全保障上、日米同盟が重要であるのは言うまでもない。しかし、だからといって在日米兵が罪を犯してもいいわけではない。
 訪米した仲井真知事は、キャンベル国務次官補らに「沖縄の人は怒っていて、基地の存在にかなりの影響を持つ」と抗議した。県議会が全会一致で可決した抗議決議も「県民の我慢の限界をはるかに越え、基地の全面撤去を求める声も出始めている」としている。
 沖縄の怒りは頂点に達しており、これ以上信頼が損なわれれば日米双方に大きなマイナスとなる。米政府は、二度と事件が起きないよう再発防止を徹底しなければならない。日本政府も強い姿勢で米側に対応を迫るべきだ。
 在日米軍は事件を受けて、日本に滞在する全ての米軍人を対象に、夜間外出禁止令を発令した。出張で日本に滞在する軍人も含めた措置は初めてだという。
 だが、在沖縄米兵を対象にした外出禁止令は過去に何度も出され、度々破られてきた。短期間で解除されるケースが多く、再発防止に実効性があるかどうかは疑わしい。
 最近では、2008年2月に起きた女子中学生暴行事件を受けて全軍人・軍属を対象に発令されたが、約2週間で軍人のみに緩和。期間中、基地のフェンスを乗り越えて外出し、事件を起こす米兵もいた。
 禁止令に対し、沖縄県内では早くも「一時的な対症療法だ」との声が出ている。米軍は「解除が新たに決定されるまで続ける」としているが、恒久化を検討すべきである。
 米軍構成員らによる沖縄での犯罪は、1972年の本土復帰から昨年末までに5747件に上っている。多発する背景には、米兵に甘い日米地位協定の存在があるとされる。
 米軍の法的地位などを定めたもので、米軍人・軍属の公務中の事件、事故は米側に裁判権があると規定している。運用は一部見直されたものの、60年の発効以来、一度も改定されていない。小手先の改善ではなく抜本的な改定が必要だ。
 沖縄には在日米軍基地の74%、駐留軍人の65%が集中している。普天間移設や海兵隊のグアム移転を含む在日米軍再編を前に進め、基地の整理縮小と兵士数の削減に取り組まなければならない。


愛媛新聞 2012年10月22日(月)
社説:米軍の事件再発防止策 地位協定見直しは欠かせない
 沖縄県で起きた米兵による集団強姦(ごうかん)致傷事件で、在日米軍は再発防止策として在日米軍人の夜間外出禁止令を発令した。
 日本政府は異例の迅速で厳しい措置だとするが、実効性は甚だ疑問だ。過去、在沖縄米軍に限った全面外出禁止などの措置がとられたが、事件は繰り返されている。沖縄はじめ基地周辺住民の不安を解消する抜本策にはなり得ないと言わねばなるまい。
 外出禁止の対象は日本に滞在する陸海空軍と海兵隊の計約4万人で、毎日午後11時から午前5時まで。期限こそ未定だが、時限的なものでしかあるまい。軍人に加え、軍属の再研修や勤務時間外の行動指針の見直しも打ち出した。しかし、過去にも言明してきたこの種の対策では、再発を防げないのは明らかだ。
 仲井真弘多(なかいまひろかず)沖縄県知事は「地位協定が諸悪の根源との感すらあり、(沖縄が)治外法権的空間になっている」と述べ、訪米して米政府に直接抗議、日米地位協定の抜本的な改定を訴える考えを示している。
 日米地位協定は在日米軍人・軍属の日本での法的地位を定めた協定だ。公務中の犯罪は米側に第一次裁判権があり、公務外の犯罪でも米側が先に被疑者を拘束した場合は日本側が起訴するまで身柄の引き渡し義務はない。
 1995年の少女暴行事件をきっかけに、運用の改善で殺人や強姦など特定犯罪被疑者の起訴前の引き渡しが認められたが、米側の優越的地位は歴然だ。
 今回は身柄引き渡しにかかわる運用問題は浮上していない。事件後、次の国外任務地に向かう直前に米兵の身柄を沖縄県警が押さえられたからだ。それでも協定改定を求めるのは、沖縄の反発が運用改善といった弥縫(びほう)策では収まらないところまで来ているとの意思表明にほかならない。
 日本政府は米軍と他国との地位協定への影響に配慮して改定には否定的だ。国民の人権、安全をいかに守るかという根本問題に真剣に向き合おうとしない政権の体質を表していると言えよう。ましてや事件は地元沖縄の反対を押し切り、米軍の新型輸送機MV22オスプレイを配備したさなかに起きたのである。沖縄県民の憤りを深刻に受け止めているとは認めがたい。
 沖縄県議会の米軍基地関係特別委員会は先に可決した決議案などで「県民からは米軍基地の全面撤去を求める声も出始めている」として、日米両政府に地位協定の抜本的見直しを迫った。政府は、アメリカに追従して沖縄県民の意思を軽んじることへの怒りと不信が極まりつつあると認識すべきだ。再発防止に向け、協定見直しの取り組みは欠かせないと心得たい。


高知新聞 2012年10月19日08時25分
社説 【米兵逮捕】沖縄の我慢は限界だ
 沖縄で米兵による卑劣な犯罪がまた繰り返された。海軍兵2人が集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで沖縄県警に逮捕された。帰宅途中の20代の女性に日本語を交えて声を掛け、首を絞めて暴行したという。
 沖縄では8月に海兵隊員が強制わいせつ致傷容疑で逮捕されたばかりだ。米軍垂直離着陸輸送機オスプレイの配備に対する反発が強まるさなかでの今回の事件である。沖縄県の仲井真知事が「正気の沙汰ではない」と強い言葉で非難したのはもっともだ。
 米政府は県警の捜査に全面的に協力するとともに、厳正に事件に対処すべきだ。
 在日米軍施設の74%が集中する沖縄では、米兵による交通事故や殺人、暴行事件がたびたび繰り返されてきた。被害者への補償や犯人の処罰などがうやむやにされたケースも多い。普天間飛行場の移設問題も、1995年の米兵3人による少女暴行事件が発端だ。
 事件のたびに「綱紀粛正」や「再発防止」が言われながら、その誓いはむなしく破られてきた。表面化した事件は「氷山の一角」との指摘もある。
 「空にはオスプレイ、地上には歩く凶器がいる。県民はどこを歩けばいいのか」。事件を受けた市民団体の訴えは、多くの女性たちの率直な思いであろう。
 女性への暴行事件など犯罪が絶えない背景として、軍隊という特殊性とともに、日米地位協定の存在が挙げられる。協定は、在日米軍人が起こした事件や事故の裁判権は原則米側にあるとする。この規定の壁に多くの被害者たちは泣かされてきた。
 95年から、殺人や強姦など凶悪事件に限り起訴前の身柄の引き渡しが行われるようになったが、それも米側の裁量次第という現実は変わっていない。
 政府は事件を受け、沖縄県側が求める地位協定の見直しに向けた日米合同委員会の開催を急ぐ方針だ。県との間では、オスプレイの配備に加え、日米合意に反する「ヘリモード飛行」の常態化という新たな問題を抱えている。沖縄との関係をこれ以上悪化させたくないとの思惑があるのだろう。
 世界各地の駐留国と同様の協定を結んでいる米国は、日本とだけ見直しに応じることに依然消極的だが、非は米国側にある。沖縄の我慢が限界に達していることを踏まえ、政府は強い姿勢で米側との交渉に臨むべきだ。


=2012/10/19付 西日本新聞朝刊=
社説:米兵犯罪 「綱紀粛正」では済まない
 一体いつまで、沖縄でこうした非道な犯罪が繰り返されるのだろう。
 沖縄県で米兵2人が集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。深夜の路上で帰宅途中の女性を襲った容疑だ。声を掛け無視されると、追いかけて首を絞めたという。犯行の暴力性と卑劣さに憤りを覚える。
 日本国内の米軍専用施設の74%が集中している沖縄県では、米兵による犯罪が絶えない。同県によると、本土復帰した1972年から2011年までに、米軍人・軍属による刑法犯罪が5747件も発生している。そのうち殺人、強姦、強盗などの凶悪犯罪は568件に上る。
 1995年には海兵隊員ら3人が小学生の少女を集団で暴行するという衝撃的な事件も起きた。
 米兵による重大犯罪が起きるたびに、日本政府が再発防止を申し入れ、米軍は綱紀粛正を約束する。しかし、効果が上がっているとは思えない。
 今年8月には、那覇市で海兵隊員が強制わいせつ致傷事件を起こし、政府は米軍に綱紀粛正を要請した。そのわずか2カ月後に今回の事件が起きているのだ。
 沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は事件を受け、森本敏防衛相に対し「米側に綱紀粛正という生易しい言葉ではない厳しい対応と、県警への捜査協力を強く申し入れてほしい」と要請した。
 知事の怒りは、米軍だけでなく、実効性の乏しい再発防止要請で済ませてきた日本政府にも向けられている。
 仲井真知事は森本防衛相との会談で、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の抜本的改定をあらためて求めた。
 現行の地位協定では、米軍人の公務中の事件・事故については米軍が裁判権を優先的に行使できる。公務外に基地の外で起こした犯罪についても、米側が身柄を拘束した場合は、起訴まで身柄を日本側に引き渡さなくていい規定になっている。つまり、基地に逃げ込んでしまえば日本側は逮捕できないのだ。
 95年の少女暴行事件を受け、凶悪犯罪では起訴前の容疑者引き渡しに「好意的配慮を払う」と運用を改善したが、引き渡しを判断する権限は依然米側にある。
 今回の事件では、容疑者が事件直後に基地の外で逮捕されたため、身柄引き渡しをめぐる問題は生じていない。
 それでも沖縄県が地位協定の改定を求めるのは、米軍人が犯罪を起こす背景には、米軍を特別扱いする地位協定の存在があると考えるからだ。
 「日本では悪いことをしても逃げ切れる」-米兵がこう考えているとすれば、今後も犯罪はなくならないだろう。
 こうした沖縄の要請に対し、政府は早くも改定に消極的な姿勢を示している。米側の猛反対が予想されるからだ。
 地位協定の改定は、米軍人の犯罪に泣かされてきた沖縄県民の長年の願いだ。政府は地位協定改定も含め、抜本的な犯罪防止策に取り組むべきである。「綱紀粛正」でお茶を濁すのは許されない。


佐賀新聞 2012年10月20日
論説:米兵女性暴行事件 「地位協定」の見直しを
 沖縄で米兵2人が、女性への集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕された。なぜ、こうも同じような蛮行が繰り返されるのか。仲井真弘多(なかいまひろかず)知事の「正気の沙汰ではない」という言葉が沖縄県民の強い怒りを代弁しているが、日米両政府はこの怒りを真正面から受け止めるべきだ。
 沖縄では、米兵による女児や女性を狙った強姦やわいせつ事件が後を絶たない。本土に復帰してからに限っても、強姦事件は未遂を含めて120件を超える。1995年には海兵隊員ら3人が小学生の女児を暴行し、大規模な県民総決起大会が開かれるなど大きな怒りを買った。今年8月にも海兵隊員が強制わいせつ致傷で逮捕されたばかりだ。
 今回のケースでは、日本側が米兵2人の身柄を押さえたが、もしも基地内に逃げ込んでいたらどうなっていただろうか。2人は事件の数時間後には次の任務地グアムに向かう予定だったという。沖縄を離れれば罪に問われないと踏んでの行為ではなかったかという疑念も浮かぶ。
 それというのも、罪を犯した米兵の取り扱いなどを定めた「日米地位協定」で、米兵の立場ばかりが守られているからだ。
 地位協定は、米軍人や軍属が起こした公務中の事件、事故については、米側に裁判権があると規定している。今回のような公務外であっても、米側が先に身柄を確保すれば、日本側が起訴するまでは身柄は米側の手元に残る。これでは起訴しようにも、日本側は捜査さえ難しい。
 在沖縄米海軍艦隊活動司令部の司令官は「二度とこのようなことがないよう努力したい」と謝罪した。こうした事件が起きる度に、米軍は再発防止を約束してきたが、その結果がこれだ。
 仲井真知事は、日本政府に対して「米側に綱紀粛正という生易しい言葉ではない厳しい対応と、県警への捜査協力を強く申し入れてほしい」と求めた。知事のいらだちは当然だし、そもそも日本政府は日米地位協定の見直しに、どれだけ努力してきたのか。
 地位協定は60年の発効以来、一度も改定されていない。95年の女児暴行事件を受けて凶悪事件については起訴前でも容疑者を引き渡すことになったが、あくまでも米側の「好意」でしかない。日本政府は地位協定の抜本的な見直しには、どうも及び腰だ。
 政府関係者からは、今回の事件を「最悪のタイミング」と嘆く声も漏れているようだ。それもそうだろう。沖縄県民の不安を押し切る形で、新型輸送機オスプレイを配備し、こじれた普天間基地の移設問題にしても出口が見えないままだ。
 腫れものにさわるような対応に終始するのではなく、日本政府は地位協定の抜本的な見直しに真っ向から取り組んでもらいたい。沖縄県民がいつまでも不安を強いられているのでは、本当の意味で同盟関係を築いたとは言えまい。
 今、海洋の覇権拡大をもくろむ中国が不穏な動きを続けている。こうしたアジア情勢を考えれば、日米同盟の重要性はかつてないほどに高まっている。それならば、なおのこと沖縄の負担の重さや犠牲の大きさから目を背けるわけにはいかない。日米双方が対等な立場で地位協定の見直しなどにきちんと対処して初めて、同盟は一層盤石になるのではないか。(古賀史生)


熊本日日新聞  2012年10月23日
社説:米兵犯罪 沖縄の怒り重く受け止めよ
 米兵2人が沖縄県の女性に対する集団強姦[ごうかん]致傷容疑で逮捕された事件を受け、同県議会は22日、「激しい憤りを禁じ得ない」として、米軍の綱紀粛正などのほかに、日米地位協定の抜本的な見直しと基地の整理・縮小・返還の促進を求め、日米両政府に抗議する決議と意見書を全会一致で可決した。
 議会事務局によると、沖縄県議会が意見書などで基地の「返還促進」にまで踏み込んだのは、今回が初めて。日米安保を容認する立場の会派と反対する会派の勢力が伯仲しているため、これまでは基地の整理や縮小という表現が限度だった。日米両政府は、この議会の意思表示を重く受け止める必要がある。
 意見書は、米海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイが沖縄県民の反対を無視して配備される中で、再び事件が起きたとして「県民の我慢の限界をはるかに超え、米軍基地の全面撤去を求める声も出始めている」とも指摘した。沖縄の人々の怒りは事件やオスプレイばかりでなく、基地そのもの、そして沖縄の基地負担をそのままにしてきた日米両政府に向けられている。
 逮捕された2人は米テキサス州の基地所属。業務のため沖縄・嘉手納基地に来て、基地外のホテルに宿泊していた。事件が起きたのは16日の明け方で、数時間後には次の任務地グアムに向かう予定だったという。直前に沖縄県警が身柄を押さえたが、基地内に逃走していれば、日米地位協定上は原則として起訴前まで日本側に身柄が引き渡されることはなかったはずだ。
 事件の翌日には、沖縄県の仲井真弘多[なかいまひろかず]知事が森本敏防衛相らに地位協定の抜本見直しを求めたが、日本政府の対応は、藤村修官房長官が運用面での見直しを先にすべきだとの認識を示しただけ。
 米側はルース駐日大使が涙ながらに「私にも25歳の娘がいる」と述べて捜査への協力を約束し、在日米軍は全国の駐留米兵4万人だけでなく、出張者を含む全米軍人を対象に深夜の外出禁止令を出した。こうした措置は初めてだが、住民の不安と怒りは解消されたわけではない。
 意見書は、沖縄が1972年に本土復帰して以来、昨年12月までの間に米軍構成員などによる犯罪は5747件に上ることも指摘している。近年に限っても95年の海兵隊員3人による小学女児暴行事件をはじめとする数々の性犯罪や死亡ひき逃げ事件など枚挙にいとまがない。沖縄では、地元紙への投稿などでも「こうした犯罪を防ぐには基地撤去しかない」などの意見が相次いでいる。
 尖閣諸島をめぐる日中間の緊張の高まりなどから、日米同盟の意義が強まっているのと裏腹に、沖縄ではこれまで積もり積もった怒りが噴き出し始めた。頻発する米兵事件は日本の国土の1%に満たない島に在日米軍基地の4分の3を担わされた沖縄の一断面でしかない。
 日米両政府は、発効から半世紀もの間、一度も改定されることがなかった地位協定の抜本的な見直しに手をつけるべきではないか。そして、米軍基地の縮小や返還など、具体的な負担軽減策に向けての議論を確実に進めていく必要があろう。


南日本新聞 (2012/10/20 付 )
社説:[相次ぐ米兵犯罪] 沖縄の怒り受け止めよ
 米兵による卑劣な事件が、またしても沖縄県で繰り返された。米海軍兵士2人が、地元の20代女性に乱暴してけがをさせたとして、集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで沖縄県警に逮捕された。
 8月にも那覇市で米海兵隊員による強制わいせつ致傷事件が起きている。仲井真弘多知事が「正気の沙汰ではない」と怒りをあらわにしたのは当然だ。
 県民の強い反対を無視して強行配備された米軍の新型輸送機MV22オスプレイは、日米合意に反するヘリモードでの市街地飛行を繰り返すなどし、沖縄では反発が強まっていた。そんなさなかに起きた今回の事件である。
 仲井真知事は、在日米軍基地についても「安全保障上必要だといわれても、こういう事件が起きると(理解するのは)無理な話だ」と踏み込んだ。日米両政府は、沖縄の怒りが頂点に達していることを認識しなければならない。
 今回逮捕された兵士2人は米テキサス州の海軍基地所属で、業務のため沖縄の嘉手納基地に来て、基地外のホテルに宿泊していた。事件が起きたのは明け方で、通報を受けた県警がホテルにいた2人の身柄を確保した。事件の数時間後には、次の任務地グアムに向かう予定だった。
 2人が基地内に逃走していれば、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定により、米側が身柄を押さえたとしても、原則として起訴前までは日本側に身柄が渡されることはなかった。また、地位協定によって米兵は入管手続きが不要なため、警察は2人の出国を把握することすら難しかった。逮捕はまさにタッチの差だった。
 こうした事件が繰り返される背景に「米兵に甘い」日米地位協定の存在が指摘される。協定は、発効以来半世紀を経ながら一度も改定されていない。1995年の沖縄少女暴行事件を機に運用を見直し、起訴前の身柄引き渡しも可能になったが、あくまで米側の「好意的考慮」に委ねる内容で、保証されているわけではない。
 これを機に、日米地位協定の改定に踏み込む必要がある。運用の改善だけでは効果が上がらないことは、事件・事故が後を絶たない実態を見れば明らかだろう。抜本的な再発防止策が求められる。
 沖縄少女暴行事件では、米軍への抗議が大規模な反基地運動に発展し、米軍普天間飛行場の移設計画につながった。オスプレイへの反発と合わせ、再び反基地の思いが爆発することは十分に考えられる。日米両政府は、小手先の対処ではもう沖縄県民が納得しないことを肝に銘じるべきだ。




0 件のコメント: