「世界一危険な普天間飛行場に、事故を繰り返す垂直離着陸機オスプレイを配備するのは、差別以外の何ものでもない」
<各紙社説・主張>
朝日新聞)首相沖縄訪問―不信の源に向き合え(2/4)
読売新聞)首相沖縄訪問 普天間移設へまず信頼回復だ(2/3)
毎日新聞)普天間問題 沖縄の声に耳を傾けよ(2/3)
産経新聞)首相沖縄訪問 普天間移設に県は協力を(2/3)
東京新聞)普天間と首相 沖縄の危機を直視せよ(2/5)
沖縄タイムス)[安倍首相初来県]何のための沖縄訪問?(2/3)
琉球新報)安倍首相来県 これが建白書への回答か(2/3)
琉球新報)安倍首相来県/沖縄は「質草」ではない 犠牲の連鎖を断つときだ(2/2)
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朝日新聞)沖縄@東京―基地問う声が重く響く(1/29)
沖縄タイムス)[要請団東京集会]今度は政府が試される(1/28)
沖縄タイムス)[政府直訴]状況転換への第一歩だ(1/27)
琉球新報)安倍首相直接要請/民主国家を取り戻せ 普天間閉鎖で仕切り直しを(1/29)
琉球新報)全首長東京集会 変わるべきは政府、国民だ(1/28)
琉球新報)東京要請行動/犠牲の強要断つ出発点 不退転の決意示そう(1/27)
朝日新聞 2013年2月4日(月)付
社説:首相沖縄訪問―不信の源に向き合え
安倍首相が就任後初めて、沖縄を訪問した。
「緊密な日米同盟の復活」は首相が経済再生とともに掲げる柱だ。だが、同盟を支えてきた足元が揺れている。在日米軍基地の74%を引き受ける沖縄が負担軽減を求め、政府への異議申し立てを強めているのだ。
沖縄との信頼関係を結び直して足元を固め、今月後半の訪米にのぞみたい。首相にすれば、そんな思いだったのだろう。
信頼は結び直せたか。
首相と仲井真弘多知事の会談は、残念ながら、従来の平行線を出るものではなかった。
知事が米軍普天間飛行場の県外移設を求めたのに対し、首相が基地負担の軽減に努力するとしながらも、「普天間の固定化はあってはならない。米国との合意の中で進めていきたい」と述べたからだ。
もちろん、首相なりに努力した形跡はある。
首相は2013年度の沖縄振興予算の増額や、那覇空港第2滑走路の完成を早めることを強調し、知事は謝意を示した。
普天間問題では、政府がいつ名護市辺野古の海の埋め立てを知事に申請するかが焦点だが、首相は訪米前の申請は考えていないと記者団に語った。
沖縄の負担を考えれば、予算増額は理解できる。知事の承認を得るめどのない申請の見送りは当然のことだ。しかし、それだけで信頼回復がかなうはずはない。では、どうしようとしているのか。首相の考えがみえないのが残念でならない。
沖縄の市町村長や議長らが先月末に首相に渡した「建白書」は、「差別」に触れている。世界一危険な普天間飛行場に、事故を繰り返す垂直離着陸機オスプレイを配備するのは、差別以外の何ものでもない、と。
不信の源は、差別されているという実感だ。沖縄がなぜ、米軍基地の74%を引き受けなければならないのか。本土の人々による沖縄差別ではないのか。
首相がなすべきは、この問いに耳を傾け、応えることだ。
単に政権の問題ではない。本土の人々が、数の上では少数派の沖縄の人々に負担を強いている。総論で沖縄の負担軽減に賛成しても、ならばうちで引き受けようという地域が出てこない現実を、本土に住む私たち自身が直視しなければならない。
首相が先頭に立って本土の人々に沖縄の現状を説明し、負担の分かち合いを説かない限り、「差別」の疑念は晴れないだろう。それをせず、日米同盟の深化といっても、足元から崩れることになりかねない。
(2013年2月3日01時36分 読売新聞)
首相沖縄訪問 普天間移設へまず信頼回復だ(2月3日付・読売社説)
1996年の米軍普天間飛行場返還の日米合意から17年にも及ぶ、多くの関係者の努力を無に帰させてはなるまい。政府は、普天間移設の前進に全力を挙げてもらいたい。
安倍首相が就任後初めて沖縄県を訪問し、仲井真弘多知事と会談した。2013年度予算案で沖縄振興費を増やしたことを説明するとともに、普天間飛行場の名護市辺野古移設に理解を求めた。
知事は、沖縄振興予算の増額を高く評価し、謝意を表明した。
沖縄振興予算は、野田政権が12年度に25%増やしたのに続き、安倍政権も13年度は4%増の3000億円を計上した。那覇空港第2滑走路の工期も当初の7年から1年以上短縮する方針だ。
長年の懸案である普天間問題の進展には、民主党の鳩山政権が崩壊させた沖縄県との信頼関係の再構築が欠かせない。安倍政権が沖縄振興策の拡充をその第一歩にしようとする意図は理解できる。
重要なのは、きちんと結果を出すことだ。民主党政権は、振興予算の特別扱いなどで沖縄県に配慮したが、「振興予算と米軍基地問題は関連させない」といった建前論に終始し、肝心の普天間問題を前進させられなかった。
会談で仲井真知事は、普天間問題について「県民には県外に出してほしいとの強い願いがある」と語った。首相は「普天間の固定化はあってはならない。米国との合意の中で進めたい」と応じた。
首相は会談後、今月下旬の訪米前は辺野古沿岸部の埋め立てを沖縄県に申請しない考えを示した。信頼関係構築の一環だろう。
今のところ、辺野古以外に現実的な普天間の移設先はない。知事の埋め立て許可が得られない場合、普天間の危険な現状が長期間固定化する恐れが濃厚だ。
そうした最悪の事態を避けるよう、政府と沖縄県は真剣に多角的な協議を尽くす必要がある。
普天間飛行場返還後の跡地利用策について、地元の宜野湾市を交えて話し合うのも一案だろう。跡地の有効利用策がないため、地主らが消極的になり、米軍施設の返還が遅れる例も少なくない。
キャンプ瑞慶覧など他の米軍施設の返還と一部訓練の県外移転による地元負担の軽減や、辺野古移設に伴う県北部の地域振興の協議も着実に進めることが大切だ。
自民党政権は96年以降、地元関係者と地道な対話を重ねて、普天間移設への理解を広げた実績がある。今こそ政府・与党が一体となり、説得作業を加速すべきだ。
毎日新聞 2013年02月03日 02時32分
社説:普天間問題 沖縄の声に耳を傾けよ
安倍晋三首相が就任後初めて沖縄を訪問し、仲井真弘多知事と会談した。民主党政権下で悪化した関係修復を図り、今月下旬の日米首脳会談に向けて米軍普天間飛行場の移設問題で意見交換するのが目的だった。
知事は会談で、普天間移設について「県民には県外へという強い願いがある。願いに沿う形で解決してもらえればありがたい」と県外移設を要求した。これに対し、首相は「普天間の固定化はあってはならない」としつつ、「米国との合意の中で進めていきたい」と述べ、名護市辺野古への県内移設に理解を求めた。
移設先をめぐる沖縄と政府の対立の構図は政権交代後も変わらない。
一方、首相は、沖縄振興費について、沖縄の意向を踏まえ、来年度予算案で満額の3001億円とし、那覇空港第2滑走路の工期を予算の拡充によって当初計画から前倒しすると説明した。知事は謝意を示した。
日米両政府の普天間返還合意から4月で17年となる。政府はこの長い年月から教訓をくみ取り、沖縄に対する今後の対応に生かすべきだ。
第一は、普天間返還に伴う代替の施設という理由であっても、沖縄県内に新たな基地を建設することは至難ということだ。その背景には米軍基地の過重負担がある。
沖縄の本土復帰以降、本土の米軍基地は約65%削減されたが、沖縄では約15%減にとどまった。沖縄の基地の比重が高まり、国土面積比0・6%の沖縄に在日米軍全体の施設面積の約74%が集中する。
先月末、東京都内で、沖縄県の市町村長らが垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備撤回と、普天間の県内移設断念を求める集会を開き、「建白書」を首相に提出した。県内全市町村の代表がそろって東京で集会を開くのは異例のことだ。基地問題の深刻さを象徴している。
日米両政府が合意している米空軍嘉手納基地以南の基地施設・区域返還を早急に具体化すると同時に、本土への基地・訓練の移設・移転が必要だ。本土の自治体、国民にはこれを引き受ける覚悟が求められる。
第二は、普天間問題で沖縄が当事者として参加する協議機関を設けることである。日米両政府の合意を沖縄に強いるやり方はもう通用しない。辺野古への移設に必要な、知事への公有水面の埋め立て申請を強行するようなことは避けなければならない。
そして、第三は、沖縄振興策など基地を抱える自治体への経済支援と引き換えに基地負担を押しつける古い手法から脱却することである。
沖縄の基地負担は限界を超えている。安倍首相には、沖縄の「叫び」に真摯(しんし)に耳を傾け、基地問題、普天間問題に取り組んでもらいたい。
産経新聞 2013.2.3 03:12
[主張]首相沖縄訪問 普天間移設に県は協力を
安倍晋三首相が新内閣発足後初めて沖縄を訪問し、陸海空自衛隊員らを激励するとともに、仲井真弘多県知事との会談で米軍普天間飛行場移設に理解と協力を求めた。
尖閣諸島への攻勢を強める中国を念頭に、首相が「日本の領土、領海、領空や主権に対する挑発が続いている。私も先頭に立って危機に立ち向かう」と隊員らを激励し、自ら中国を強く牽制(けんせい)した姿勢を高く評価したい。
日本防衛の最前線の一つである沖縄は、日米同盟の抑止態勢強化が喫緊に必要な最重要拠点だ。普天間移設が急がれるのもそのためであり、現状固定化の回避と対中抑止力向上のためにも、首相は地元との信頼を再構築し、移設促進へ全力を傾けてほしい。
普天間移設は、日米の抑止力を強化しつつ地元の基地負担軽減を図る18年越しの宿題だ。とりわけ中国の海洋権益拡大など安全保障環境の激変に直面している日米にとって、今や一刻も猶予のならない緊急課題といえる。
その意味で、首相が仲井真知事に「普天間の固定化があってはならない。負担軽減に力を尽くし、日米合意の中で進めていきたい」と名護市辺野古への移設に理解を求めたのは、極めて当然だ。
知事は改めて県外移設を求めたが、移設が進まなければその先は現状の固定化しか選択はない。基地負担は減らず、住民への危険は逆に高まる。知事らはそうしたマイナスも認識し、国民全体の平和と安全を守る大局的な見地に立って移設に協力してもらいたい。
米海兵隊新型輸送機オスプレイ配備問題もあって地元説得の道は険しいが、首相は先月30日の衆院代表質問への答弁でも、「沖縄の声に耳を傾け、信頼関係を構築しつつ移設を進める」と語った。日米首脳会談へ向け、誠実かつ着実に努力を重ねて成果を得ていくことが何よりも大切だ。
首相が尖閣周辺の海上警備にあたる第11管区海上保安本部に足を運び、激励したのもよかった。
米国では1日、ケリー新国務長官が就任した。ヘーゲル次期国防長官も上院公聴会で在日米軍再編計画を継承し、引き続きアジア太平洋の米軍態勢の強化を約束するなど、オバマ政権2期目の態勢づくりが着々と進んでいる。
日本もオバマ政権と足並みをしっかりとそろえ、共同防衛の強化に確実な歩を進めていきたい。
東京新聞 2013年2月5日
【社説】普天間と首相 沖縄の危機を直視せよ
安倍晋三首相が訪問した沖縄県。米軍基地の県内たらい回しや安全性に懸念が残るオスプレイの配備強行に対する県民の反発はかつてなく高まっている。今こそ「沖縄の危機」を直視すべきだ。
首相には再登板後初の沖縄訪問だ。仲井真弘多知事に「(民主党政権の)この三年間に崩れた国と沖縄県民との信頼関係を構築することから始めなくてはいけない」と語りかけ、会談後は記者団に「知事と私との個人的な信頼関係をつくることはできたのではないか」と胸を張った。
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の「最低でも県外」移設の公約を民主党政権が破り、政府に対する沖縄県民の信頼は地に落ちた。
日米首脳会談を控える首相にとって、県民の信頼回復は、日米間の懸案である普天間返還を進展させるための第一歩なのだろう。
同時に首相は、在日米軍基地の約74%という過重な負担を、経済振興策との引き換えで、やむを得ず受け入れた以前の沖縄県民とは違うことも理解する必要がある。
先月二十七日には、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備撤回などを求める反対集会が東京で開かれ、沖縄全四十一市町村から首長ら代表者、県議、沖縄選出国会議員らが集まった。普天間の県内移設断念、オスプレイの配備撤回を求める運動は党派を超え、本土による沖縄差別に抗(あらが)う県民挙げての闘いになっている。
首相も、こうした沖縄の危機的な政治状況を、ある程度は意識したようだ。今回の訪問では日米が普天間の移設先に合意した名護市辺野古という地名には触れなかった。県民を刺激するのを避ける意図があったのだろう。だが、触れないだけでは意味がない。
日米安全保障条約が日本を含む極東の安全に必要なら、義務である基地負担は日本国民が等しく負うべきである。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発を受けて、日米同盟強化の声がかまびすしいが、住民の反発が米軍基地を取り囲むような状況で、安保体制が円滑に運用できるだろうか。
仲井真知事を含む県民の多くが反対する中で県内移設を強行しても、暗礁に乗り上げるのは目に見えている。その先にあるのは最も回避すべき普天間の固定化だ。
沖縄の危機を直視し、普天間の県内移設を見直す。難しい外交交渉、国内説得になろうが、その困難な作業をやり遂げてこそ、沖縄を「取り戻す」ことができる。
沖縄タイムス 2013年2月3日 09時51分
社説[安倍首相初来県]何のための沖縄訪問?
安倍晋三首相は日帰り日程で初来県し、仲井真弘多知事と面談した。意図は明白である。首相は今月下旬の訪米前に、普天間移設に取り組む姿勢を米側にアピールする必要に迫られている。沖縄訪問は米国への「手土産」とみるのが妥当だ。知事が何と言おうと政府方針を示すことに意義があるとの考えなのだろう。
安倍首相は「沖縄の基地負担軽減」を唱える一方、普天間問題については日米合意に沿って辺野古移設を推進する考えを明言した。辺野古への新基地建設は負担の増加である、と捉える県民多数の声には全く向き合おうとしない。これでは政府と沖縄の認識のずれは一向に埋まらない。
「安全保障」や「米国」がかかわる基地問題となれば、どれだけ政府に要請してもらちが明かない。過剰な基地負担が解消されない現状に、県内には「差別」という言葉が満ちているが、それを本土にぶつけても、のれんに腕押しの状態だ。
基地負担をめぐっては本土と沖縄の間で「利害対立」の面があるのは否めない。普天間の県外移設やオスプレイ撤去が、自分たちの居住地の負担増につながるのであれば受け入れがたいという本音だ。利害が相対する本土住民に向かって「差別だ」と良心の呵責(かしゃく)に訴えても、耳を傾けようとしないのは必然かもしれない。それでも県民は、過剰な基地負担の現実から目を背けるわけにはいかない。沖縄を踏み台に対米関係を良好に維持する。そんな都合のいい状況はいつまでも続かないことを政府は認識すべきだろう。
■ ■
首相は今回、航空自衛隊那覇基地で訓示し、南西地域での自衛隊の対応能力向上に取り組む姿勢を強調した。これも「沖縄の基地負担軽減」に逆行する。「中国の脅威」が日常的に語られる中、沖縄の軍備強化を当然視する大手メディアの論調や全国世論が勢いを増す。沖縄の歴史的な基地被害や戦争の傷については考慮の余地すら感じられない。
国益に反する、と判断すれば倫理的な問題からは目を背け、国民多数の利益を優先する-これが大手メディアの基本スタンスなのだろうか。さらに言えば、政府の対米従属を支えているのもマスメディアと国民世論である。
知事は昨年、オスプレイ配備を強行し、事故などが起きた場合は「(在沖米軍の)全基地即時閉鎖という動きにいかざるを得なくなる」と述べた。が、政府はそれを現実の危機とは受け止めていない。
■ ■
全首長らの東京要請行動や安倍首相の来県を経て可視化されたのは「安保の負担」に対する本土側の当事者意識のなさだ。オスプレイ配備について知事は首相に「県民の不安感の払拭(ふっしょく)に力を入れてほしい」と要請した。が、県民の反発は「危険な欠陥機」の配備という側面が全てではない。戦後60年余を経てもなお、最新鋭機を沖縄に配備し軍事要塞(ようさい)と位置づける。負担軽減を求め続ける県民の声を無視して機能強化を図る姿勢への異議申し立てだろう。
沖縄を再び「本土防衛の砦(とりで)」とするわけにはいかない。
琉球新報 2013年2月3日
社説:安倍首相来県 これが建白書への回答か
オール沖縄の東京要請行動で県内首長らが安倍晋三首相に直接手渡した建白書への回答が、これなのか。本当に熟慮したのだろうか。
安倍首相は第2次安倍内閣発足後、初めて沖縄を訪れ、仲井真弘多知事と会談した。その中で首相は2013年度予算案編成で沖縄側の要望に応えたことを示し、米軍普天間飛行場の辺野古移設推進に理解を求めた。
オスプレイ配備についても「訓練をなるべく県外へ移す努力をする」と述べるにとどまった。
振興策と引き換えに基地を押し付ける。安倍首相は、古い自民党の政治手法を復活させるのか。
首相は、沖縄が振興策で容認に転じると思わない方がいい。先の衆院選沖縄選挙区では自民党候補の4氏も、県内移設反対を掲げて当選した。沖縄は後戻りしない。
沖縄が訴えているのは、国土面積の0・6%しかない島に過重な基地負担を強い、民意が拒否するものを押し付けるのは差別だ、アンフェアだということだ。
県民の激しい反発にもかかわらず、オスプレイが強行配備され、米兵による集団女性暴行致傷事件、住居侵入中学生傷害事件が立て続けに起きた。建白書は、こうした米軍の傍若無人な振る舞いや事件事故に苦しむ沖縄の状況に触れ、オスプレイ配備撤回と普天間飛行場の県内移設断念を求めている。
沖縄の切実な訴えを一顧だにせず、“満額予算”を手土産のごとく誇示し、首相がもし県民の共感を得られると考えるのなら、見当違いも甚だしい。
首相訪米を前に、米国は同飛行場移設問題で「具体的な成果」を求めているとされる。首相は沖縄を説得できる可能性がないことを米国に伝え、県外移設にかじを切るべきだ。
知事にも注文したい。国と密室での会談に応じるべきではなかった。「しっかりと意が通じるため」(県幹部)と言うが、同飛行場の移設問題は条件闘争ではないはずだ。交渉の余地ありとの誤ったメッセージを国に与えかねず、全国に対する情報操作に使われる恐れもある。
もっと指導力を発揮できるはずだ。第三者的な物言いでなく、民意の代弁者として主体的に普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設を求める。政権へ復帰した自民党に対し、もはや県内移設はあり得ないと説得する。それが知事の使命だとあらためて銘記してほしい。
琉球新報 2013年2月2日
社説:安倍首相来県/沖縄は「質草」ではない 犠牲の連鎖を断つときだ
安倍晋三さま。首相に再登板して初めての来県ですが、県民は冷めた目で見ており、いささか危ぶんでもおります。
今月下旬の訪米の前に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う知事への公有水面埋め立て申請をしたい。県内移設に向けた進展を証明し、それを米大統領への「手土産」としたい。そのためには事前に沖縄を訪問する必要がある。そんなアリバイづくりのための来県でしょうか。
そうであれば歓迎できません。沖縄はもう「質草」、言い換えれば米国へ良い顔をするために差し出されるだけの、モノ扱いは甘受しないと決めているのです。
岩国から移設
昨日の国会であなたは「沖縄の声によく耳を傾ける」と言いました。そのせりふを、歴代首相の口から何度聞いたことか。そう言いつつ、自分の聞きたい返事、「県内移設容認」の言葉だけを聞きたいのではないですか。
どうぞ正確に「声」を聴いていただきたい。そうすれば、沖縄はもう元には戻らない、県内移設を拒否する県民の民意は不退転だ、と容易に気付くでしょう。
垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備撤回と普天間の県内移設断念、閉鎖・撤去を求めた県民大会実行委の文書は「建白書」と銘打ちました。時代がかった呼び名には壮絶な犠牲の歴史を踏まえた県民の決意が込められています。
建白書には県議会議長をはじめ県内の全市町村長、全市町村議会議長、各種団体の長の署名・押印がなされています。その重みを知るべきです。
オスプレイは県民総ぐるみの反対の中、強行配備され、それを民主党政権は容認しました。あなたもまたそうするのですか。
辺野古移設も昨年の世論調査で県民の9割が反対しています。昨年の総選挙でも県内4小選挙区で当選した人全員が反対です。それなのにあなたは選挙後早々「名護市辺野古に移設する方向で努力したい」と言いました。
民意をくみ取らないどころか、民意なきに等しい扱い、「政治的無人島」と呼ぶべき扱いです。
ご存じですか。普天間飛行場に駐留する海兵航空団は1976年にあなたの地元・山口県の岩国市から移転してきました。米軍統治下でもない、復帰後のことです。
昨年、米国は在沖海兵隊の岩国への一部移転を打診しましたが、日本政府は即座に断りました。本土から沖縄へはいとも簡単に移設してくるのに、逆は断る。これは明らかな差別ではありませんか。
差別でないと言うのならぜひ証明してほしい。逆を実行できない限り、証明はできないでしょう。
力で押し切る
全国の政官界・メディアの中には、沖縄の抵抗は振興策目当てだとの見立てを語る人がいます。
あなたの官邸スタッフである飯島勲内閣官房参与は、かつて小泉純一郎首相(当時)の政務秘書官として、現行の辺野古移設案を決めた守屋武昌防衛事務次官(同)と深く通じていました。その守屋氏は著書で、沖縄の抵抗はカネ目当てだという趣旨を繰り返し述べています。あなたもまたそう見ているのなら、大きな誤りです。
新幹線を整備する他県に、政府がその見返りとして米軍基地移設を求めた例はありません。沖縄には求めるとすれば、それは差別にほかなりません。
近年、「沖縄は力で押し切るほかない」という主張もまた、半ば公然と語られるようになりました。沖縄だけには民主主義を適用せず、民意を踏みにじるのなら、それがあなたの言う「取り戻す」べき日本の姿なのでしょうか。
所信表明演説であなたは「日米の絆を取り戻す」と言いました。沖縄を犠牲にして維持を図る「絆」が砂上の楼閣なのは明らかです。本当に日米関係を大切にしたいなら、沖縄の犠牲の連鎖を断ち、基地を含め、持続可能な日米関係の形を模索すべきなのです。
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朝日新聞 2013年1月29日(火)付
社説:沖縄@東京―基地問う声が重く響く
「オスプレイいらない」「基地ノー」と怒る沖縄県民の叫びが東京で響いた。本土に住む私たちと政府は、この声を誠実に聴かなくてはいけない。
主催者発表で4千人が、霞が関の官庁街に近い日比谷公園に集い、銀座を歩いた。
そのなかに沖縄県内の41市町村すべてからの首長、議長や県議ら約140人がいた。党派の異なる首長、議員らがこれほどまとまって上京するのは他県もふくめ異例だろう。
首長らは、新型輸送機オスプレイの配備撤回と米軍普天間飛行場の県内移設断念を求める建白書を、安倍首相に渡した。
首相は「基地負担軽減に向けて頑張っていきたい」と述べたという。この答え方は民主党政権時代の政府と同じだ。
沖縄県民が求めているのは普天間の閉鎖・撤去そのものだ。経済的な手当てではない。根本的な解決がない限り、沖縄の怒りは消えず、日米同盟を不安定にする要素がいつまでも続く。
どれほど訴えても負担が減らず、逆に安全性に疑問があるオスプレイが新たに配備され、沖縄の人たちは民意が踏みにじられたと受けとめている。
森本敏・前防衛相は退任前の昨年末、普天間移設先について「軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄が最適の地域」と話した。
本土に新たな基地を造るのは住民が受け入れないが、すでに米軍基地が多い沖縄ならできるということなのか。沖縄の「戦略的な地理的優位性」を掲げる防衛省とは別の本音を、大臣が明かしたことになる。
日本各地で基地反対の闘争が激化した半世紀前、岐阜と山梨にいた海兵隊が沖縄に移った。
それ以来いまも続く海兵隊の沖縄駐留は、軍事上の必要というより、国内の負担分かちあいをできない日本政府の都合によるものではないか。そう、沖縄県民はみている。
在日米軍の再編見直し計画では、沖縄の海兵隊をオーストラリア、ハワイにも移転し、巡回展開する。地上部隊の主力である歩兵の第4海兵連隊はグアムに。沖縄に残る砲兵の第12海兵連隊は日本本土でも訓練し、およそ半年間は沖縄にいない。
常駐基地が沖縄でないといけない根拠は、ますます薄くなっている。
地域の安定のために、日米同盟を必要だと考える人は多い。だが海兵隊をはじめ、国内の米軍専用施設の74%を沖縄に集中させたままの必要はどこにあるか。安倍政権は説得力のある答えを沖縄に返す必要がある。
沖縄タイムス 2013年1月28日 09時35分
社説[要請団東京集会]今度は政府が試される
東京行動に参加した首長、議員らは、いつになく強い調子で沖縄の窮状を訴えた。積もり積もったうっぷんを一気に吐き出すかのように。
日比谷野外音楽堂で開かれた「NO OSPREY東京集会」は、米軍基地をめぐる「差別的処遇」を浮き彫りにした集会だった。
戦後日本のいびつな基地政策は、半世紀を優に超える。日本本土に配備されていた海兵隊、陸軍などの米地上兵力は1950年代に沖縄と韓国に移駐した。海兵隊受け入れのため本島北部の広大な土地が接収され、基地面積は倍増した。沖縄に核兵器が配備されたのもこの時期だ。米ソ冷戦のもとで沖縄は軍事要塞(ようさい)化し、ベトナム戦争が終わった後も、米ソ冷戦が終結した後も、沖縄の基地だけは維持された。
政府は、政治的問題を引き起こすとの理由で、基地や部隊の本土移転に難色を示し、沖縄に基地を押し込めてきた。その結果、どうなったのか。
東京要請団が壇上で等しく強調していたのは「国土の0・6%しかない沖縄に米軍専用施設の74%が集中している」という現実だった。
「うちなーは、ほんとに日本でしょうか」。壇上からの問い掛けに、会場は一瞬、しーんと静まり返った。
「日本国民が痛みを分かち合ってもらいたい。県民は心の中で泣いている」「沖縄の問題は沖縄だけでは解決しない。本土全体の問題である」
■ ■
東京集会を主催したのは「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会実行委員会」である。共同代表の翁長雄志那覇市長は「沖縄県民は基地でメシを食っている」との俗説に数字をあげて反論し、「沖縄が日本に甘えているのか。日本が沖縄に甘えているのか」と、単刀直入に問い掛けた。保守系首長が公式の場で、このような問い掛けを行うこと自体、異例のことである。
事務局長の玉城義和県議は、歴史的な東京行動を「平成の沖縄一揆」と呼んだ。「これ以上、私たちには手がないんです」と胸の内を明かし、国民的な議論を呼び掛けた。
要請団はきょう28日、安倍晋三首相宛ての建白書を提出し「オスプレイ配備撤回」「普天間基地の閉鎖・撤去」「県内移設断念」をあらためて政府に要請する。
今、追い詰められているのは誰なのか。
■ ■
東京行動の成果が直ちに表れるとは要請団も思っていない。そのことを熟知しながら愚直に行動に打って出たのだ。自分たちの後ろに、多数の県民が控えていることを感じながら。そこにこそ沖縄の強みがあるというべきだろう。
沖縄の行動を政府がどう受け止めるかは、今後の基地政策全般に重大な影響を与えることになる。尊厳がおとしめられた時、人はどのような苦難にも立ち向かうものだ。
金をばらまいて懐柔するというような従来型の基地政策はもはや通用しない。どうすれば解決が可能なのかを、政府はもう一度、真剣に、政治主導で考えたほうがいい。
沖縄タイムス 2013年1月27日 09時30分
社説[政府直訴]状況転換への第一歩だ
東京要請行動は、日本政府の事前の過小評価とは異なり、沖縄にとって歴史的な異議申し立てになるだろう。
オスプレイの配備撤回と、普天間飛行場の閉鎖・撤去、県内移設の断念。この二つの主張は、切り離せない一対のものである。
県議会、市町村、市町村議会、商工団体、婦人団体などの代表が、立場の違いを超えて結集し、総理大臣あての建白書まで携えて、集会と要請活動を展開する。このような形で対政府行動を展開するのは、復帰後初めてである。
東京行動は、もう後には引けないという沖縄発のメッセージであり、沖縄の住民意識に化学変化が起きたことを示すものだ。
安倍政権は、東京行動の歴史的な意味をくみ取り、沖縄の声に正面から誠実に向き合うべきである。
沖縄県立看護大学の當山冨士子教授は20年以上、沖縄戦体験者の「こころの傷」を追い続け、聞き取り調査を実施してきた。昨年夏、八重瀬町、大宜味村を調査したとき、ある変化に気づいた。
「おばあちゃんの口からしきりにオスプレイという言葉が出てくるんです。不安そうに、また何かあるんじゃないかねぇ、と。ニュースで知って言葉に反応しているんですね」
耳をつんざくような軍用機の騒音に接して戦時の記憶をよみがえらせ、恐怖におびえるお年寄りは今も多い。當山教授らの聞き取り調査では、およそ4割の体験者が沖縄戦による強いストレス症状を訴えたという。
「戦争は終わっていない。何十年たってもまだ終わっていないということを知ってほしい」
オスプレイ配備を、機能や性能などの軍事的有用性だけで評価するのは一面的だ。問題の根はもっと広くもっと深い。
キャンプ・ハンセンに隣接する宜野座村城原区の泉忠信さん(83)は昨年11月から、飛来時間や機数などを簡単にメモした「オスプレイ日記」をつけるようになった。
「上空を飛んでくるのでサッシの窓もテーブルも、がたがた揺れる。夜は無灯火でくるから怖いですよ。住宅地域だということを知らせるため2階は電気をつけています」
政府は、CH46ヘリからオスプレイへの一般的な装備変更だと説明するが、住民の実感はまったく正反対だ。県や市町村の調査では、昨年10月から2カ月間で、日米合意違反とみられる飛行が計319件もあった。全国6ルートで低空飛行訓練が始まれば、被害は全国に拡散することになるだろう。
1996年、日米両政府が普天間返還に合意したのは、沖縄の基地負担を軽減し、普天間の危険性を除去するためだ。ところが今や、「世界一危険な飛行場」に、返還の見通しもないままオスプレイを配備し、日本政府の予算で滑走路を改修するのだという。危険性除去という本来の目的は一体、どこに雲散霧消してしまったのか。
政府は、政治問題化するのを避けるため、自治体に対しても住民に対しても、配備計画を隠し続けてきた。積極的な情報開示を欠いた「知らされない構図」の下で、沖縄の声を無視して、配備が進んだのである。
オスプレイ配備と尖閣問題を天秤(てんびん)にかけ選択を迫るのは、本土と沖縄の亀裂を深め、問題を複雑化させる。沖縄の過重負担の解消と尖閣問題の平和的解決は、東アジアの新たな地域秩序形成に向けて、セットで追求すべき政治課題だ。
琉球新報 2013年1月29日
社説:安倍首相直接要請/民主国家を取り戻せ 普天間閉鎖で仕切り直しを
沖縄の未来は自らの行動で変えていく。その強固な意思が日本の政治中枢で示された。
東京の青く澄んだ寒空の下、県内の41全市町村長と議会議長ら総勢約150人の要請団が永田町、霞が関を駆け巡った。
海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備中止と、米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去を求めるオール沖縄の民意を安倍晋三首相ら主要閣僚にぶつけた。
都道府県単位の全市町村長による総行動は例がない。沖縄の自己決定権を取り戻す不退転の決意が示された節目の日として、歴史に刻まれることになるだろう。
■欺瞞を問う
小異を超え、政党や首長らが大同団結して掲げた二つの要求は最低限のものだ。沖縄を踏み台に、経済的繁栄を謳歌(おうか)してきた全国民への痛烈な問い掛けでもある。
国土の0・6%しかない基地の島に、安全保障の過重な負担を押し付け続けるこの国の欺瞞(ぎまん)を問い、民主主義が機能するよう求める公憤と理解されるべきだ。
沖縄の民意は分水嶺を越え、「もはや後戻りしない、できない」(喜納昌春県議会議長)ことが一層鮮明になった。
当初は困難視されていた安倍首相との面談が実現し、要請団から直接、建白書が手渡された。
「誠心誠意向き合い、沖縄の理解を得たい」と述べてきた安倍首相に、面談を避ける選択肢はなかったのだろう。沖縄の民意の力が増したことの表れとみていい。
首相は「皆さんの意見に耳を傾けながら、基地負担軽減を含め頑張りたい」と思わせぶりに語ったが、具体的な返答はなかった。
同じ日の所信表明演説で、安倍首相は緊密な日米同盟の復活を内外に示すとし、「普天間飛行場の移設をはじめとする沖縄の負担の軽減に全力で取り組む」と述べ、県内移設推進を強くにじませた。
安倍首相は、島ぐるみの民意を聞き置く程度にとどめることで、沖縄の疎外感と失望感を高めてきた歴代政権の失政と一線を画すべきだ。
沖縄振興予算をアメにして、沖縄を懐柔する補償型の基地維持政策は、県民にもう通用しない。
政権発足から日が浅いだけに、まだ外交政策を改める時間的猶予はある。首相は、オスプレイ配備撤回、普天間飛行場の閉鎖・撤去に向け、米国と仕切り直すことこそ、日米関係の不安定要因を取り除けることに気付くべきだ。
2月に予定されるオバマ米大統領との首脳会談で、安倍首相は、正面からオスプレイと普天間問題の大胆な見直しに臨んでほしい。
■屋良さんの悲願
要請や記者会見、総括集会の場で、各界代表から放たれる言葉は研ぎ澄まされていた。沖縄と、日本政府と本土の国民の関係性を突く鋭利な切れ味を増していた。
翁長雄志那覇市長は、県民の結束の力として、「銃剣とブルドーザー」で強制接収した土地を二束三文の地代で売り渡すよう迫った米軍にあらがい、阻止した四原則完徹運動を挙げた。その上で、沖縄の民意がないがしろにされる状況について、「アジアや世界から信頼される品格ある国、国民と言えるのか」と問い掛けた。
「祖国復帰運動」を引っ張り、初代県知事に就いた屋良朝苗さんは「新沖縄県発足式典」で、沖縄が本土の安全や経済繁栄の踏み石にされる構図を変える決意をこうにじませていた。
「沖縄が歴史上、常に手段として利用されてきたことを排除して、平和で豊かで希望のもてる県づくりに全力を挙げたい」
屋良さんの悲願は本土復帰から40年の節目を迎えても実らず、沖縄の試練は続く。だが、もはや沖縄の民意をないがしろにした沖縄の基地問題の解決はない。
米国に追従するばかりの思考停止から脱することなく、「落としどころ」を沖縄に求めてはならない。日本政府が、そして本土の国民こそが変わるべきなのだ。
琉球新報 2013年1月28日
社説:全首長東京集会 変わるべきは政府、国民だ
県民の怒りと決意は全国にどこまで届いただろうか。
オスプレイ配備に反対する県民大会実行委員会の代表らが参加して、東京で行われた集会とデモ行進。「復帰運動」で歌われた「沖縄を返せ」も響いた。それはまさに「返らない沖縄」が、いまも続くことを意味する。過重な基地負担がなくならない限り、沖縄の「日本復帰」は実現しないということだ。
集会では「平成の沖縄一揆」の例えもあった。沖縄の積年の訴えが、新たな局面を開いたと言うべきだろう。日米両政府は沖縄の民意を見誤ってはならない。「抑止力」や振興策をかざせば、いずれ軟化すると思っているのなら、見当違いも甚だしい。
集会で翁長雄志那覇市長が訴えたように、基地問題に関する沖縄の民意は後戻りしないし、もう変わることはない。変わるべきは日本政府、日本国民である。
県民の要求はささやかで最低限のものだ。そこから後退するのは、人間としての尊厳を放棄することに等しい。そんな生き方を県民は甘受しないし、子や孫に引き継ぐわけにもいかないのだ。
国際情勢は厳しい、現実の政治は甘くないとはいえ、沖縄の現状はあまりにも不合理だ。
国土の0・6%の面積に国内米軍専用施設の74%が集中し、県民の大反対の声を押しのけて、欠陥機のオスプレイが強行配備され、米軍普天間飛行場の県内移設が推し進められようとしている。
このような実態を仕方がないかのように態度を決め込む日本政府に、大多数の国民。「沖縄は日本なのか」。多くの県民が素朴な疑問を強く、深くしている。
日本の主権国家としての在り方と民主主義が問われているのだ。28日には大会実行委らによる要請行動も展開される。日本政府はこうした素朴な疑問に、真剣に答えてほしい。そして今度こそ、県民が望む形で、基地問題の解決を図るべきだ。
全国の国民にもあらためて訴えたい。日本政府が国民の声を背に米国と交渉できるように、今回の東京集会を契機に沖縄の思いを共有し、国内で広げてほしい。
県民もいま一度、覚悟を決めよう。この期に及んでも、政府は懐柔策を強めてくるかもしれない。県民がひるんでは全国、世界での共感も広がらない。一丸となって粘り強く、訴えるしかない。
琉球新報 2013年1月27日
社説:東京要請行動/犠牲の強要断つ出発点 不退転の決意示そう
いったい他のどの都道府県が、このような取り組みを余儀なくされるだろうか。
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備撤回を求め、県内41全市町村の首長またはその名代が27日、一斉に上京し、東京で集会を開く。翌日も打ちそろって首相官邸はじめ関係省庁に要請する。沖縄はもちろん、全国でも前代未聞であろう。
異例の行動は、そこまで取り組んで見せないと無視され、黙殺されると恐れるからだ。日本全体への強烈な不信感の表明でもある。この民意をくみ取らなければ基地問題は極めて危険な局面に入る。政府はそう認識すべきだ。
扱いの落差
沖縄では全市町村長と県知事が配備反対を表明し、全市町村議会と県議会が反対決議を可決した。間接民主主義の手続きを尽くして意思表示したと言える。
加えて、昨年9月には復帰後最大規模の県民大会を開き、直接民主主義の手法でも意思を示した。にもかかわらず、米軍はオスプレイを強行配備し、日本政府もそれを容認した。沖縄には民主主義を適用しないという宣言に等しい。
昨年2月、米側から在沖海兵隊の岩国への一部移転を打診された政府は即座に断り、玄葉光一郎外相(当時)は岩国市長に「お願いするつもりはないので安心してほしい」と述べた。長年、基地被害に苦しんだ沖縄こそ、その言葉を切望してきたのではなかったか。
実は普天間の海兵航空団司令部は1976年に岩国から沖縄に移転してきた。占領統治下でもない、施政権返還後の話だ。本土から沖縄へは容易に移転するが、逆は政府が拒絶する。扱いの、あまりの落差にがくぜんとする。
8月には森本敏防衛相(同)がオスプレイを一時駐機中の山口県知事に「大変な心配、迷惑をかけ申し訳ない」「沖縄への安定的な展開のためだ」と告げた。沖縄には半永久的に置こうとし、わずか2カ月置いた地域にはわびる。これほど歴然とした違いは、やはり差別と呼ぶほかあるまい。
オスプレイ配備撤回を求める県民の意思が固いのは、このような差別的取り扱いの認識があるからだ。それは民主党政権時代に露見したが、以前の自民党政権時代の積み重ねの結果でもある。
全国的には、自民党政権に回帰したことを挙げて、沖縄の世論がいずれ軟化すると見る向きもあるが、誤りだ。政権が変わったから差別的取り扱いを甘受するという人はいるまい。
振興策の詐術
安倍晋三首相は政権交代早々、普天間飛行場の辺野古移設を進める意向を示した。今回の総選挙で当選した自民党候補4人全員が県内移設に反対したにもかかわらず、である。沖縄の民意を踏みにじろうとする点において、民主党政権時代と何が違うだろうか。
閣僚ら政府関係者の態度には、振興策をちらつかせて移設容認を迫る気配が見え隠れするが、それもまた、差別にほかならない。
翁長雄志那覇市長が本州四国連絡橋や九州新幹線を例に挙げ、「四国、九州は国の犠牲(になり)、迷惑を掛けられたから、整備されたわけではない」と指摘したのは本質を突いている。他県では基地と関わりなく整備する施設を、沖縄では基地を受け入れない限り造らないと宣言するに等しいからだ。
「抑止力」、「地理的優位性」などという実態のない空虚な言葉で県内移設を説明するのは既に無効だ。振興策の誇示も差別に等しい。その意味で、沖縄への押し付けを可能にする政治的資源は、もはや使い果たされたのである。
政府は事態を正しく認識すべきだ。そうすればオスプレイ配備も辺野古移設も撤回するほか道はあるまい。
今回の要請行動は犠牲の強要と差別を断つ、沖縄の尊厳を懸けた闘いだ。われわれ県民はその出発点に立っている。歴史的意義を認識し、不退転の決意を示そう。
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