2013年3月24日日曜日
オスプレイ本土訓練 すべて米軍まかせなのか 「安全軽視」の強行に抗議する ただちに計画撤回せよ
<各紙社説・論説>
東奥日報)安全軽視は許されない/オスプレイ本土訓練(3/24)
福島民報)【オスプレイ訓練】「野放図」は許されない(3/23)
愛媛新聞)オスプレイ本土訓練 「安全軽視」の強行に抗議する(3/9)
山陽新聞)オスプレイ訓練 なし崩しの拡大を許すな(3/8)
西日本新聞)オスプレイ訓練 すべて米軍まかせなのか(3/7)
山陰中央日報)オスプレイ低空訓練/地元に十分な説明をせよ(3/6)
徳島新聞)オスプレイ訓練 説明と配慮が足りない (3/6)
宮崎日日新聞)オスプレイ低空飛行訓練 情報を開示し説明すべきだ(3/6)
新潟日報)オスプレイ 低空での安全保てるのか(3/4)
信濃毎日新聞)オスプレイ 不安は残されたままだ(3/3)
熊本日日新聞)オスプレイ訓練 なし崩し的拡大でいいのか(3/2)
京都新聞)オスプレイ訓練 ルール違反には厳しく(3/2)
中国新聞)オスプレイの本土訓練 ただちに計画撤回せよ(3/2)
高知新聞)【オスプレイ】なし崩しの拡大は駄目だ(3/2)
南日本新聞)[オスプレイ訓練] 安全対策の徹底求める(3/2)
東奥日報 2013年3月24日(日)
社説:安全軽視は許されない/オスプレイ本土訓練
在日米海兵隊の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されている新型輸送機MV22オスプレイの低空飛行訓練が今月から、本土上空で始まった。
初回から事前の情報不足などで関係自治体が振り回され、今後の訓練拡大が不安視される。
米側は初回計画で九州のルートを使うとしたが予定日前日に変更し、和歌山県から四国に設定したルートで実施した。後日同じルートで実施した際、当日午前に米側が防衛省に連絡したにもかかわらず、政府は訓練ルート下の自治体に事前連絡しなかった。自治体側が「不意打ち」などと反発したのは当然だ。
オスプレイは墜落事故が相次ぎ、安全性への懸念が払拭(ふっしょく)されないまま強行配備された、いわくつきの機材である。これでは関係自治体ばかりでなく国民の不信や不安は増幅するばかりだ。
米側には訓練計画を日本側に事前通告する義務はない。それでも連絡してきたのは本土での訓練を考慮したからだろう。情報を得ながら、訓練ルート下の自治体に連絡せず混乱を招いた政府の対応は無責任と言わざるを得ない。
訓練は今後、本県を含む東北のルートでも行われる可能性がある。
政府は米側に対し、事前に訓練計画や飛行実態を開示するよう根気強く要求するとともに、情報が入り次第、速やかに関係自治体に連絡すべきだ。
重大な問題がある。MV22の配備に当たり、日米両政府が合意した訓練の安全確保策が事実上ほごにされていることだ。安全軽視の姿勢は許されない。
騒音が格段に大きく、過去の大半の事故が発生した垂直離着陸(ヘリ)モード飛行は米軍基地内などに限定されているが、人口が密集する市街地上空などでの飛行が常態化している。
運用上の抜け道もある。操縦士によれば、「地上150メートル以上」が原則の飛行高度は、低空飛行訓練で200フィート(約60メートル)まで下げるケースがあるという。
本土訓練について、政府には、沖縄県内での訓練が減ることで米軍基地をめぐる「沖縄の負担軽減」につながり、普天間飛行場の同県内への移設問題などで沖縄側の理解が深まるとの思惑があろう。
しかし、本土でも安全確保策が守られるという保証はない。政府は、米側に合意の順守徹底を求め、違反が認められた場合には訓練を中止させるべきだ。
空軍仕様の特殊作戦用CV22オスプレイを沖縄に配備する計画もある。CV22は輸送用のMV22と基本構造はほぼ同じだが、過酷な条件での稼働を想定しており事故率が高いとされる。
米国では今月、財政支出を幅広くカットする歳出の強制削減が発動され、CV22の調達計画の先行きは不透明となった。しかし、なし崩し的にオスプレイの増強を容認すれば、普天間飛行場移設への理解を得るどころか、沖縄の信頼はさらに遠のくということを政府は肝に銘じるべきだろう。
福島民報 2013/03/23 09:26
論説:【オスプレイ訓練】「野放図」は許されない(3月23日)
在日米軍は新型輸送機MV22オスプレイの低空飛行訓練を今月に入り四国を中心に実施した。「十分な説明もなく…遺憾だ」「全て事後通告。配慮を欠いた」。事前連絡を受けなかった各県知事は米軍、政府の対応を批判する。本県上空も訓練ルートに設定されており、安全性に疑問のある機体が今後飛行する恐れがある。野放図に飛び交う事態を認めるわけにはいかない。
本土訓練は、和歌山県と四国を結ぶ「オレンジルート」で繰り返された。防衛省に訓練内容の詳しい連絡はない。政府は安全運航徹底を米政府に要請するにとどまる。住民の安全に責任を持つ各知事が厳しく反応するのは当然だ。
米国での墜落事故を受けて米政府は「人為ミス」との報告書を昨年8月に発表した。日本政府も米政府の発表内容を追認している。しかし、人間の誤りは完全に防げない。先月には沖縄県で、水の入ったペットボトルをオスプレイが落とした。人命にも関わりかねない事故だった。
本県上空は青森-本県の「グリーン」、新潟-本県-岐阜の「ブルー」の両訓練空域に設定されている。人家の多い中通り地方、集落が散在する阿武隈山地、山脈が続く会津地方が広がる。「山間地域を飛ぶ場合は風の影響などで操縦ミスを起こしやすい」と警告する米専門家もいる。
本県の自然環境への影響も懸念される。訓練空域が絶滅危惧種のイヌワシ、クマタカなどの生息地に当たり、騒音が影響を与える-と自然保護団体は指摘する。
安倍晋三首相は「即応態勢を維持するために不可欠」と訓練を容認する。安全保障上の理由も強調する。ならば、航路の下に暮らす国民の不安をどう解消するのか。
東京電力福島第一原発事故によって、県民は、「安全」とされた科学技術のもろさを身に染みた。県議会、東北市長会、県内各市議会などは説明責任、安全確保を国に求める意見書を次々に可決、採択している。県は「情報収集に努める」とするが、事前説明や安全確保策を国に強く求める姿勢を見せてほしい。
本県では航空自衛隊機の事故が過去に発生している。昭和33(1958)年12月に練習機が安達太良山系、平成4年3月には偵察機が平田村の水田に落ちた。両事故で乗員各2人が死亡した。
墜落事故は一歩誤れば大惨事を招く。沖縄県にはオスプレイ12機の配備が完了し、市街地間近の基地から飛び立っている。住民の不安や恐怖はいかばかりか。無関心ではいられない。(鞍田 炎)
愛媛新聞 2013年03月09日(土)
社説:オスプレイ本土訓練 「安全軽視」の強行に抗議する
在日米海兵隊の普天間飛行場(沖縄県)に配備されている新型輸送機MV22オスプレイが、本土上空で初の低空・夜間飛行の訓練を行った。
和歌山県から四国上空に設定した「オレンジルート」と呼ばれる経路で、愛媛でも新居浜市や西条市、松山市などで目撃情報が相次いだ。
オスプレイは昨年4月と6月に墜落事故が相次ぐなどしたにもかかわらず、なし崩し的に配備・運用されている。
安全性への懸念が払拭( ふっしょく)されないまま、危険とされる訓練を強行・容認した米軍や日本政府に抗議したい。この先本土訓練が拡大し、常態化することに強い危機感を覚える。
今回の訓練について、米軍はいったん九州のイエロールートで行うとしながら、前日になって突然、オレンジルートに変更した。
イエロールートは「大分県での陸上自衛隊の訓練と場所が重なっている」との理由だが、陸自訓練で危険を知らせる航空情報も出ていたはずだ。未確認だったというのならお粗末と言うほかない。
むろん米軍側から正確な情報を得られず、訓練ルート下の地元自治体を混乱させた日本政府の責任は極めて重い。
米軍には事前に訓練日程やルートを日本に伝える義務はない。今回は地元自治体や住民が不安視し、情報開示を求める声が強かったため、異例の対応だったといえる。
しかし、それも本土で初の訓練だからこそ取った措置ではないか。既に配備されている戦闘機などの低空飛行訓練で事前通告が一切ない現状を見れば、今後を保証するものでないのは明らかだ。
安全性に疑念が残るオスプレイではなおのこと、政府は米軍に正確な情報を要求する責務がある。米軍側の運用の問題として放棄するような怠慢は到底許されない。
一方で、今回のような訓練が「日常」である普天間、ひいては沖縄の現状に目を向けねばならない。
訓練の本土分散が沖縄の負担軽減につながる、とする政府の弁には耳を疑う。普天間の部隊丸ごと県外移転を求める沖縄に、そんなまやかしが通じるはずはなかろう。
そもそもオスプレイ運用について日米が合意した安全確保策には「抜け道」が多い。
飛行高度は地上150メートル以上としながら、それを下回らざるを得ない場合もあるとのただし書き付き。極力避けるとした住宅密集地上空の飛行は、普天間で日常茶飯事。米軍基地上空限定が原則の「垂直離着陸モード」での飛行は、那覇市の市街地上空などでも頻繁に目撃されている。
安全保障や日米同盟の名の下、国民の安全、安心が軽んじられている現実を日本全体の問題として捉え、見直していかねばならない。
山陽新聞 (2013/3/8 9:03)
[社説]オスプレイ訓練 なし崩しの拡大を許すな
米軍の新型輸送機MV22オスプレイによる本格的な本土上空での訓練が始まった。岩国基地(山口県)を拠点に和歌山県から四国上空に設定した「オレンジルート」と呼ばれる経路での低空飛行訓練がきょうまで予定されている。
米軍はオスプレイを普天間飛行場(沖縄県)に配備し昨年12月から本格運用に入っている。地元では反対の声が強く、安全性への疑念も払拭(ふっしょく)されていない。米軍や日本政府が沖縄県民の不安や怒りに真摯(しんし)に向き合わないまま、本土への訓練がなし崩し的に拡大されたことに強い憤りを抱かざるを得ない。
低空飛行訓練は、敵のレーダーに捕捉されないよう低い高度で山間地などを飛ぶ。米軍は訓練経路について、昨年6月に公表した環境審査報告書で九州中部付近を周回する「イエロールート」など6ルートを明示した。岡山、広島県など中国山地を東西に横断する「ブラウンルート」も想定しているとされる。
オスプレイの本土訓練は今後拡大する見通しだ。とりわけ懸念されるのは、事故を繰り返してきた同機の安全性の問題である。
日米両政府は昨年9月、オスプレイの低空訓練に関して、航空法で定めた安全高度150メートル以上で飛行し、原発施設や人口密集地などの上空は回避することで合意した。ヘリコプターのように回転翼を上向きにする「垂直離着陸モード」は米軍施設上空に限定するなどとしている。
だが、運用実態はずさんの一語に尽きる。沖縄県と市町村が昨年10月から11月にかけて実施した目視調査では、517件の飛行のうち、約6割に上る318件が日米合意に違反していた。
沖縄への配備を強行した上に、これほどまで合意違反が常態化しているのは到底許されない。本土訓練でも安全確保策が守られる保証がないのは明らかである。日本政府は合意の徹底順守を求めるとともに、違反には厳正に対処する強い姿勢で臨むべきだ。
そのためには監視態勢の強化が欠かせないが、政府は米軍の詳細な情報を把握できておらず、十分な対応ができるかは極めて疑問だ。米軍は訓練開始予定前日になって訓練ルートを突然変更するなどし、関係自治体や住民の不安や不信が募っている。政府は今後の訓練日程やルートなどについて米軍に詳しい情報の開示を要請することも必要である。
在日米軍基地の7割強が集中する沖縄の県民は負担軽減を訴え続けている。日本政府は「本土での訓練で基地負担が軽減される」とアピールするが、部隊丸ごとの訓練移転を求める沖縄側は「まやかしだ」と反発する。
沖縄の負担軽減へ、政府が明確な展望を示すことがまず第一だ。オスプレイの配備や運用に歯止めをかけなければ、沖縄県民をはじめ国民の理解は得られない。
西日本新聞 2013年3月7日 10:36
社説:オスプレイ訓練 すべて米軍まかせなのか
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に所属する新型輸送機MV22オスプレイの低空飛行訓練が6日、四国山地上空で始まった。オスプレイの本格運用は、沖縄県以外の日本国内では初めてだ。
米軍岩国基地(山口県岩国市)を拠点に、和歌山県から四国にかけての「オレンジルート」を使った訓練である。
オスプレイは開発段階で4回の重大事故を起こし、30人が死亡した。昨年もモロッコや米国内で、海兵隊所属機や空軍仕様の同型機の墜落が相次いだ。
安全性に疑問があるとして、配備先の沖縄では激しい反対運動が続いている。
今回の訓練で、米軍はいったん、九州山地を周回するように飛ぶ「イエロールート」を使用すると防衛省に連絡した。訓練区域にかかりそうな九州の自治体は飛行経路の確認を急いだ。
しかし米軍は、訓練前日に突然、ルート変更を連絡してきた。今度は四国の自治体が対応に追われた。肩すかしを食った九州の自治体が「米軍に振り回された」と不満を漏らすのも無理はない。
オスプレイを含む米軍機は、日米地位協定に基づく特例法によって、航空法の適用除外とされている。飛行訓練について米軍側に通知義務はなく、日本側が訓練を規制することもできない。今回も便宜上連絡したにすぎないという。
オスプレイは昨年10月から、沖縄での訓練を実施している。その訓練実態にも問題が多い。
訓練に先立ち、日米合同委員会が「低空飛行訓練は高度150メートル以上」「人口密集地域、学校、病院の上空は避ける」などの安全策をとることで合意した。
しかし「可能な限り」「運用上必要な場合を除き」などの条件をつけているため、安全策を守るかどうかは、事実上米軍の判断に委ねられている。
沖縄県のまとめでは、昨年10~11月の2カ月で、人口密集地や学校の上空飛行など、合意に違反する疑いのある事例が318件報告されている。沖縄県は外務省と防衛省に実態調査を求めているが、回答はまだない。
政府はオスプレイの本土での訓練について「沖縄の基地負担軽減のため」として、関係自治体に理解を求めている。
確かに沖縄の基地負担は過重だ。訓練の実施理由や安全性に納得できるなら、本土側で受け入れ、負担を分かち合うことも必要である。しかし、飛行ルートがよく分からず、安全策の順守も保証されないような訓練を、喜んで受け入れる自治体があるだろうか。
安全性に問題のある訓練なら、本土でも沖縄でも行われてはならない。沖縄の人々とともに中止を求めていく。これが本土側が取るべきスタンスだろう。
日本の空での米軍の訓練について、もっと日本側が関与する権利があってしかるべきだ。日本の空はいったい誰のものなのか。オスプレイの訓練は、そんな根本的な問いを投げかけている。
山陰中央日報 ('13/03/06)
論説 : オスプレイ低空訓練/地元に十分な説明をせよ
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の新型輸送機MV22オスプレイが6日から、本土上空での低空飛行訓練に踏み切る予定だ。
地元の反対を押し切る形となった昨年10月の普天間配備後初めてだが、米軍は直前に訓練ルートを連絡してきただけ。
それも当初は、九州中部としていたのを急きょ変更。当該自治体や住民は振り回された格好で、今回も地元への説明が足りなかったと言わざるを得ない。
不十分な対応のまま、運用の既成事実だけを積み重ねることは許されない。政府には、米側に詳細な情報を開示させ、関係自治体や住民に十分な説明をする責任がある。
加えて、オスプレイ配備に際して取り決めた安全確保策の順守も徹底させてもらいたい。
訓練には、普天間のオスプレイ12機のうち3機が参加。拠点の米軍岩国基地(山口県岩国市)に移動し3日間の日程で行う。
低空訓練はレーダーに捕捉されないことを目的に谷筋を縫うように飛行するため、通常の飛行よりも危険性が高い。過去には、高知県の早明浦ダム上流に米空母艦載機が墜落、乗員2人が死亡する事故なども起きた。
今回は夜間の訓練も実施する予定で当然、危険性はさらに増す。これはオスプレイの安全性に不安を抱く国民感情を無視するのに等しいのではないか。訓練の難度は、国民の安心と理解を得ながら、徐々に上げるべきだろう。
情報不足は不安を増幅させる。訓練ルートのどこを、いつ、どのように飛行するのか。米軍は情報を開示すべきだし、政府は関係地にきっちり説明した上で疑問にも答えるべきだ。
「沖縄の基地負担軽減は重要だが、この飛行訓練でどの程度の軽減が果たされるのか」「米本土では住民の反対運動で低空飛行訓練が延期されたのはなぜか」「今後の訓練の頻度は」―。聞きたいことは山ほどある。
安全確保も忘れてはならない。日米が昨年9月に合意した安全確保策では、低空訓練でも航空法の安全高度150メートル以上を飛行することになっている。また原発や史跡、学校、病院などの上空は飛行しない。
ただし「安全高度を下回らざるを得ないこともある」「標準的な慣行として」の条件付きだ。沖縄でも、住宅密集地上空の飛行は避けるなどの約束が、「可能な限り」の条件付きで骨抜きにされる事態が起きており、信用できない。
政府は自治体と協力して、訓練の状況などを監視することが必要だ。警戒・監視のためにも、詳細な飛行情報の開示が欠かせない。
米軍の環境審査報告書によると、オスプレイの低空飛行訓練ルートは、九州中部をはじめ愛媛―和歌山、新潟―岐阜、青森―福島、青森―山形など6ルートがあり、ほかに中国山地のルートも想定されている。
島根県内の中国山地では過去、米軍岩国基地から飛来したとみられる戦闘機が低空飛行し、窓ガラスが割れるなどの被害も出ている。決して人ごとではない。
計画される飛行訓練は年間300回を超す。国民の理解を得ないまま、訓練がなし崩し的に各地に拡散することがあってはならない。
徳島新聞 2013年3月6日付
社説:オスプレイ訓練 説明と配慮が足りない
米軍の新型輸送機MV22オスプレイによる本土上空での低空飛行訓練が、きょうから始まる。
訓練を実施するのは、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に配備されている12機のうち3機で、山口県の岩国基地を拠点に8日まで行うという。オスプレイが本土上空での訓練に投入されるのは初めてだ。
オスプレイは米国内外で死傷事故を起こしている。昨年10月の普天間への配備後も安全性を懸念する声は強い。夜間訓練も実施されるだけに危惧の念を抱かざるを得ない。
今回の飛行ルートは、米軍が明示している6ルートのうち四国から紀伊半島に設定した経路となる。オレンジルートと呼ばれ徳島県南部の上空が入っている。当初、九州中部としていたルートを急きょ変更した。
米軍が本土での訓練を発表した際、徳島県は「十分な説明もなく、不安や懸念を払拭(ふっしょく)するには至っていない」として訓練を行わないよう防衛省に申し入れていたが、受け入れられなかった。極めて遺憾である。
日米両政府は安全確保に重い責任を持つことは言うまでもない。運用面の事前連絡といった事項についても徹底するよう求めたい。
日米が合意した安全確保策では、飛行高度は日中で約150メートル以上、夜間は約300メートル以上となっている。ところが、「運用の安全性を確保するために、その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」とただし書きが付いている。
騒音が格段に大きい垂直離着陸(ヘリ)モードでの飛行は米軍基地内などに限定されているにもかかわらず、沖縄では市街地上空でもほとんどヘリモードで飛行。人口密集地域や学校、病院上空の飛行は避けることになっているが、「違反飛行」が繰り返されているという。
安全ルールをないがしろにするものであり、本土での訓練でも合意内容が守られるか疑問だ。外務省は、合意違反があれば日米合同委員会を開いて徹底を求めるとしているが、「訓練中止」などの厳しい姿勢をみせてもらいたい。
徳島県によると、2012年度は三好、那賀、牟岐、海陽の4市町で延べ8日間、米軍機とみられる目撃情報が寄せられている。
中でも、牟岐、海陽両町では昨年12月から低空飛行が頻発している。その上にオスプレイの訓練も開始されれば、さらなる騒音や墜落の危険にさらされることになる。住民が不安を募らせるのは当然だ。
米軍の環境審査報告書によると、オスプレイは2~6機が月2~3日間、沖縄から岩国基地とキャンプ富士(静岡県御殿場市)に移動し、本土で飛行訓練を行う予定で、今回の訓練を第一歩に各地に拡大させていく方針のようだ。
本土での飛行訓練について、日本政府は「実質的な沖縄の基地負担軽減」と説明する。数機でも沖縄以外で訓練すれば負担が軽くなるとの考えからだ。
過重な基地負担を強いられている沖縄県民の痛みを共有し、負担を分かち合うことは大切だ。ただ、不安や不信だけが広がるようでは困る。
何よりも重要なのは、住民への説明と安全確保であり、合意内容の順守と情報開示も欠かせない。
宮崎日日新聞 2013年03月06日
社説:オスプレイ低空飛行訓練 情報を開示し説明すべきだ
米軍の新型輸送機MV22オスプレイの低空飛行訓練が6日、四国から紀伊半島にかけてのオレンジルートで始まる。昨年10月の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備完了後、本土上空での訓練は初めてだ。
米軍からの連絡は突然で、しかも当初は本県を含む九州4県を通過するイエロールートとしていたが、急きょ変更する混乱ぶり。訓練ルートに入る可能性があった本県北部の市町村や住民も振り回された格好だ。地元への説明不足は明らかだ。
運用の既成事実だけを積み重ねることは許されない。政府には、米側に詳細な情報を開示させ、関係自治体には十分な説明をする義務がある。
■過去には死亡事故も■
訓練には、普天間のオスプレイ12機のうち3機が米軍岩国基地(山口県岩国市)に移動して3日間の日程で実施される。
低空訓練は、レーダーに捕捉されないことを目的に谷筋を縫うように飛行するため危険性が高い。過去には、高知県の早明浦ダム上流に米空母艦載機が墜落し、乗員2人が死亡する事故なども起きている。今回は夜間訓練も実施する予定で、当然ながら危険性は増すことになる。
また情報不足は不安を増幅させる。いつ、どこを、どのように飛行するのかも分からない。本県の関係自治体も情報の少なさを指摘し、困惑するばかりだ。
ほかにも聞きたいことは多い。「この飛行訓練で、沖縄の基地負担がどの程度軽減されるのか」「米本土では住民の反対運動で低空飛行訓練が延期されたのはなぜか」「今後の訓練の頻度は」などに関し、米軍は情報を開示すべきだし、政府は関係自治体に説明した上で疑問にも答えるべきだ。
■沖縄では約束骨抜き■
安全確保も忘れてはならない。日米が昨年9月に合意した安全確保策では、低空訓練でも150メートル以上を飛行することになっている。また原発や史跡、学校、病院などの上空は飛行しない。
ただし「安全高度を下回らざるを得ないこともある」「標準的な慣行として」の条件付きだ。沖縄でも、住宅密集地上空の飛行は避けるなどの約束が「可能な限り」の条件付きで骨抜きにされる事態が起きており、信用できない。
政府は自治体と協力して、訓練の状況などを監視することが必要だ。警戒・監視のためにも、詳細な飛行情報の開示が欠かせない。
米軍の環境審査報告書によると、オスプレイの低空飛行訓練ルートは6ルートがあり、ほかに1ルートも想定されている。
計画される飛行訓練は年間300回以上。国民の理解を得ないまま、訓練がなし崩し的に各地に拡散することがあってはならない。
安倍晋三首相は2月の日米首脳会談後、「日米同盟は完全に復活した」と胸を張った。しかし、国民不在の同盟などあり得ない。
新潟日報 2013/03/04
社説:オスプレイ 低空での安全保てるのか
低空飛行訓練への不安をどこまで払拭(ふっしょく)できるか。
米軍の新型輸送機MV22オスプレイによる訓練が日本本土で行われることになった。在日米軍の司令官が明らかにした。
昨年10月、沖縄県の米軍普天間飛行場に配備されて以降、本土上空での訓練は初めてである。
今月6~8日、オスプレイ3機が長野、群馬、福島、山形と本県との県境付近など、複数のルートを低空で飛行するとみられる。
訓練は、アジア太平洋地域といった広範囲での活動をにらみ、敵地でレーダーに捕捉されないようにするのが目的だ。日本は山並みが連なる険しい地形が特徴で、操縦士の技量を向上させるには有益とされる。
だが、米軍による日本国内での低空飛行訓練では、高知県のダム上流に墜落し、乗員2人が死亡したり、林業用のワイヤを切断したりする重大事故が起きている。
オスプレイをめぐっても、ヘリと航空機の特性を兼ねた構造が原因とみられる事故が相次いだ。
米国では、住民の反対で訓練が延期になったケースもある。ルートにかかるとみられる自治体や住民らから懸念の声が上がるのは、無理もないだろう。
米軍には安全確保はもちろん、日程や飛行ルート、高度、今後の訓練予定などについて情報公開を徹底するよう求めたい。
低空飛行訓練に関して日米両政府は昨年9月、高度150メートル以上で飛行し、原発や人口密集地上空は避けることで合意している。
問題はそれがどこまで順守されるかではないか。
普天間に配備されるにあたって両政府は、大半の事故原因である垂直離着陸(ヘリ)モードでの飛行は運用上必要な場合を除き、米軍施設・区域内に限定することを確認した。
ところが那覇市上空などでは、今やヘリモードによる飛行が常態化しているのである。
低空訓練飛行は通常約60メートルまで高度を下げて飛ぶ、というオスプレイ操縦士の証言もある。
150メートル以上という規定が守られる保証はどこにもないと言っても過言ではないだろう。
本県をはじめ、各自治体は低空飛行の目撃情報を募る窓口などを設置している。
国民の安全が脅かされるような事態が起きてからでは遅い。日本政府も訓練内容をチェックし、合意内容を逸脱する事例があれば米側をただしていく姿勢が求められよう。
在日米軍の司令官は、訓練実施は「日本政府の要請」と強調する。
政府は、普天間飛行場の名護市辺野古沿岸への移設に向け、今月中にも沖縄県に埋め立て申請をする方向で調整している。
本土での訓練実施で沖縄の過度の負担が減り、移設への理解が深まることを期待しているようだ。
あまりに短絡な考えではないか。住民の暮らしを脅かさないということを大原則として、政府は対応すべきである。
信濃毎日新聞 2013年03月03日(日)
社説:オスプレイ 不安は残されたままだ
米軍の新型輸送機オスプレイの訓練が日本本土でも始まることになった。長野県の一部も低空飛行訓練のルートに入っている。
在日米軍の司令官は会見で、昨年秋に沖縄県の普天間飛行場に配備して以降、「安全に飛行している」と強調した。が、沖縄では日米両政府が合意した安全策を守らない「違反飛行」や騒音被害が相次いでいる。
米軍は訓練内容に関する説明に消極的で、本土での訓練が本格化すれば、こうした問題があちこちで起きるかもしれない。訓練ルート下の自治体や住民から反発が広がる可能性がある。
墜落など深刻な事故が相次いだ機体なのに、日本政府も米軍もその安全性について、納得がいく具体的な説明をいまだにしていないのも問題だ。
配備も訓練開始も、見切り発車である。こんな状況で、事故が起きたら政府や米軍への信頼が損なわれるだけでなく、日米関係にも影響を及ぼす恐れがある。安倍晋三内閣は、あらためてオスプレイの安全性を徹底検証し、国民に説明してもらいたい。
オスプレイをめぐる問題点はほかにもある。本土での訓練が沖縄の米軍基地の負担軽減になるとの理屈で、普天間の辺野古移設実現に利用したい政府の思惑が見え隠れしていることだ。
辺野古への移設をめぐっては、先月の日米首脳会談で早期に進める方針で一致した。この直後、防衛省が地元の漁業協同組合に対し、沿岸部の埋め立てへの同意を求める文書を出した。政府は今月末にも沖縄県に埋め立てを申請する方向で調整している。
政府の動きとは別に、辺野古周辺の住民が移設に向けた環境影響評価の手続きは違法として、国にやり直しなどを求めた訴訟の判決で、那覇地裁は先月、原告の訴えを退けた。門前払いとも受け取れる結果だった。
辺野古移設の実現に突き進む政府と、外堀が徐々に埋められていく沖縄―。近ごろ、こんな構図が浮き彫りになってきた。
日米関係は沖縄県民をはじめとする国民の我慢の上に成り立ち、機能するものではない。政府は辺野古移設とオスプレイを日米の絆を深める証しのように扱ってはいないか。そのために強引に進めているのではないか。
国民の間に米軍への不安や不満が付きまとっていては、関係強化は望めない。安倍政権には対米関係でも日本国民の安心と安全を重視するよう求める。
熊本日日新聞 2013年03月03日
社説:オスプレイ訓練 なし崩し的拡大でいいのか
在日米軍は、新型輸送機MV22オスプレイによる訓練を6日に初めて日本本土で開始することを明らかにした。同機は昨年10月に沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に配備。これまでの同県内での訓練では日米合意に違反する飛行が常態化しており、安全性に対する懸念を残したままでの訓練地域拡大だ。
小野寺五典防衛相によると、6~8日、山口県岩国市の米軍岩国基地を拠点に低空飛行訓練を実施する。また、在日米軍は熊本県内を含む「イエロールート」など全国6ルートで実施する可能性を示唆。今後、訓練地域を順次拡大していくものとみられる。
沖縄配備前に日米両政府が合意した安全策では、飛行高度150メートル以上▽学校や病院を含む人口密集地上空を回避▽プロペラを上向きにしたヘリモードは基地内に限定、とすることなどを取り決めている。
しかし、昨年10月1日から同11月30日まで沖縄県と関係市町村が実施した調査では、確認された517件の飛行のうち、6割以上の318件が合意違反だった。さらに今年2月5日には、離陸直後のオスプレイが普天間飛行場周辺で水入りのボトルを落下させる事故も起きた。
日米合意には「ヘリモードは運用上必要な場合を除き基地内限定」などの米軍側の裁量に任せる多くの条件が付けられている。当初から指摘されていた「抜け穴だらけのルール」が沖縄県内での運用で実証された形で、本土での訓練でも合意規定が守られる保証はないのが実情だ。
また、本土の飛行ルートはこれまで大まかなルート図が示されただけで、どこの市町村上空を飛ぶのかも詳細には明らかにされていない。県内では菊池市、阿蘇市、南阿蘇村、山都町などを通過するものとみられるが、「不安は拭い切れず実施には反対。それでも実行するならば、事前に飛行時間やルートを知らせるべきだ」(福村三男菊池市長)との声が出たのは当然だろう。
しかし、安倍晋三首相は2月13日の衆院予算委員会の答弁で「オスプレイの安全は確認されている」と述べ、民主党政権に引き続き現状を追認する姿勢を示している。また、防衛省は2013年度予算案に自衛隊へのオスプレイ導入を検討する調査費を計上した。丁寧な安全性検証と国民の十分な理解がないまま、なし崩し的に国内での運用を拡大していいのか。大いに危惧を感じる。
ただ、本土への訓練拡大は、沖縄の基地負担軽減という理由で、日本政府が米側に要請したものであることを忘れてはなるまい。オスプレイへの不安をこれまで単独で引き受けてきた同県民からは、「これで沖縄の痛みを分かってもらえるのでは」との声も上がっているという。
飛行ルートの説明がないことには、日米地位協定に米軍の訓練計画を事前通告する義務規定がないことが関わっている。こうした実態の見直しを、日米合意の厳格な運用などとともに沖縄県外からも具体的に求めていくことが必要だろう。遅きに失した感もあるが、今回の訓練開始を、日本国民全体で安全性確保や沖縄の基地負担軽減を考える契機ともしたい。
[京都新聞 2013年03月02日掲載]
社説:オスプレイ訓練 ルール違反には厳しく
在日米軍のトップが、米軍の新型輸送機MV22オスプレイの飛行訓練を6日から日本本土で開始することを明らかにした。
山口県の米軍岩国基地を拠点にして3機が低空飛行訓練を行うという。オスプレイは開発段階から事故が絶えず、米軍が配備後も世界各地で墜落事故を起こしている。事故が起きてからでは遅い。飛行訓練の安全確保に危惧を覚える。
オスプレイは昨年10月、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に6機が国内で初めて配備された。危険きわまりない輸送機を人家や学校がたて込んだ普天間に持ち込むことに沖縄県民が反発したのは当然のことだ。
当時の民主党政権は、最初から配備受け入れありきの姿勢で米国の要請を了承した。「安全性は確認された」との一言で沖縄県民の不安の声を振り切った経過は忘れてはならない。
米軍は、青森-福島、新潟-岐阜、和歌山-愛媛、九州中部の周回など、すでに在日米軍が使用している6つのルートで飛行訓練を行う方針を示唆している。敵地でレーダーに捕捉されないように低高度で山間地を縫うように飛行することを想定している。
在日米軍は「オスプレイを日本全土に展開させる」と明言しており、今後は順次、静岡県のキャンプ富士など各地に訓練地域を拡大するとみられる。
最も懸念されるのが、日米両政府が昨年に合意した安全確保策が確実に守られるかどうかだ。
飛行の安全ルールでは「安全高度150メートル以上」や「原発施設や史跡、住宅密集地の上空は回避する」と取り決めている。しかし、ルールには「運用の安全性を確保するために、その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」とただし書きが付いている。
しかも、実際には「低空飛行は通常、約60メートルまで下げて飛ぶ」というオスプレイの操縦士の証言まである。安全ルールが有名無実化する恐れは十分にあるだろう。
オスプレイの最大の特徴である2種類の飛行モードの切り替えも心配だ。過去の大半の事故が起きた垂直離着陸(ヘリモード)は騒音が格段に大きい。米軍基地内に限定することで合意しているが、基地手前の市街地上空をヘリモードで飛行することが常態化している。
これまでにも、米軍機が山間部で林業用ワイヤを切断したほか、空母艦載機が川に墜落した事故も起きている。重大なルール違反には政府が厳正に対応し、訓練の中止を求めるのが大原則になる。突然の訓練開始に不安を漏らす自治体への説明もまだまだ足りない。
中国新聞 '13/3/2
社説:オスプレイの本土訓練 ただちに計画撤回せよ
重大事故を繰り返してきた米軍の新型機が、ついに本土で低空飛行訓練をするという。断じて容認できない。
在日米軍司令官はおととい、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが6~8日に米海兵隊岩国基地を拠点に訓練すると発表した。昨年秋に普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備された12機のうちの3機という。
米軍の発表後、防衛省は広島、岡山、島根など中四国と九州の各県に情報提供した。低空飛行を伴うと説明している。
日本政府は最近まで、訓練ルートの存在すら公式に認めてこなかった。広島県などから訓練中止を20年来訴えられても、米軍機の運用には関知しない、という立場だった。にわかに開き直ったかのように米軍を代弁するとは、地元の思いを軽視しているとしか言いようがない。
米軍は、以前から中国山地を横断するブラウンルート、広島、島根、山口にまたがるエリア567などの訓練空域を使っている。今回、ブラウンでの訓練を示唆している。
広島県の湯崎英彦知事は、県民が納得できる説明がないとして遺憾の意を表明した。
当然だろう。これまで、主に岩国基地所属の戦闘機が低空飛行を繰り返し、中国山地一帯の平穏な住民生活をかき乱してきたからである。
小学校の授業がごう音で中断し、児童が不安を訴えるケースもあった。衝撃波で民家の窓ガラスが破損した例が報告されている。自治体や住民の抗議にもかかわらず、米軍機の目撃回数はむしろ増えている。
オスプレイの本土訓練は、中国山地での低空飛行がさらに増えることを意味する。そのような事態を見越し、広島、島根両県で騒音測定器を新たに設ける自治体も増えている。
日本政府は地元の危機感を真剣に受け止めているのか。米軍の代弁者になるのではなく、むしろ訓練撤回を迫るべきである。
騒音や衝撃波だけではない。飛行自体の安全に対する懸念も拭えない。
日米両政府は昨年、オスプレイの飛行に関する取り決めを交わした。低空飛行訓練を150メートルより上空で行うことなどを申し合わせた。可動式のプロペラを上に向けた飛行だと事故を招きやすいとして、飛行制限も約束した。ところが沖縄県の昨年の目視調査では、飛行件数の6割に合意違反があった。
地上150メートルであっても、騒音や恐怖感は相当なものとなるだろう。しかも、その約束すら守られる保障はない。
日米合意により厚木基地(神奈川県)の空母艦載機が50機以上、岩国に移転することになっている。オスプレイの本土訓練に歯止めをかけておかなければ、合意違反の低空飛行はなおさら増えるだろう。
防衛省は、本土訓練が沖縄の負担を分散させるためだとする。沖縄の怒りをくみ取った面も確かにある。日本全体が重く受け止めなければなるまい。
ただ、オスプレイがある限り沖縄の基地負担自体はなくならないのも事実である。普天間の機能をグアムに移して差し支えない、との見方は日米双方にある。負担をたらい回しにするだけでなく、いかに解消するかを考えるときである。
高知新聞 2013年03月02日08時13分
社説:【オスプレイ】なし崩しの拡大は駄目だ
米軍の新型輸送機MV22オスプレイによる訓練が、来週から日本本土で始まる。ルートなどは不明だが、まず今月6~8日、山口県の米軍岩国基地を拠点に、3機の低空飛行訓練が実施されるという。
訓練は米軍が公表している6ルートなどで行われるとみられる。「オレンジルート」と呼ばれるルートが上空にある、高知県への影響も懸念される。
オスプレイをめぐっては、昨年10月に沖縄県の普天間飛行場への配備後も、それ以前に相次いだ事故による安全性への懸念が根強く残る。格段に大きい騒音も問題になっている。
まして高知県は19年前、土佐郡大川村に米軍機が墜落し、乗員2人が死亡した事故を経験している。米軍機の爆音にも日常的に悩まされている。そんな状態にオスプレイが加わる。
それでも私たち本土の人間には、オスプレイの飛来について、頭から否定することがためらわれる、そんな複雑な事情もある。
このままでは、ただでさえ過剰な沖縄の基地負担を、さらに重くするだけに終わりかねないからだ。訓練開始はもう目の前だ。
普天間飛行場には現在、オスプレイ12機が配備され、住民たちは日常的に騒音に悩まされている。事故の確率が高い垂直離着陸(ヘリ)モードでの飛行は原則、米軍施設・区域内に限定するという日米合意も、簡単にほごにされ、市街地上空でのヘリモード飛行が常態化している。
過度に米軍基地の負担を担わされてきた沖縄の人々の、本土への感情も複雑だ。中にはオスプレイの本土での訓練を、「これで沖縄の痛みを分かってくれるのではないか」という見方まであるという。
ただし「沖縄の負担軽減のため」という政府の言い分を、額面通り受け取るには条件がある。関係する自治体、国民の納得がゆく説明をすることだ。
訓練の発表時期、おおよその飛行ルートなど訓練の一定の中身、安全対策など、どれをとっても圧倒的に説明が足りない。日米の合意に米側が違反しても、日米の防衛当局者による委員会で、日本側が合意の徹底を求めるだけでは心もとない。だから約束は何度も破られてきた。
このままでは、沖縄の政府への不信が本土に拡散する恐れもある。なし崩し的な訓練拡大は許されない。
南日本新聞(2013/ 3/2 付 )
社説:[オスプレイ訓練] 安全対策の徹底求める
在日米軍のアンジェレラ司令官が新型輸送機MV22オスプレイによる低空飛行訓練を来週から日本本土で始めることを明らかにした。米軍岩国基地(山口県岩国市)を拠点に、6~8日に訓練する。
昨年10月の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備完了後、オスプレイが本土での訓練に投入されるのは初めてである。
訓練は、奄美大島付近とトカラ列島の一部が入るルートを含む6つの空域などで行われるとみられる。米軍は今後、訓練地域を順次拡大するとみて間違いなかろう。
アンジェレラ司令官は記者会見で「(沖縄への)本格配備以来、オスプレイは安全に飛行している」と述べ、米領グアムやフィリピンでも訓練済みだと安全性を強調した。だが、司令官の発言をうのみにするわけにはいかない。
オスプレイは開発段階から事故が相次いだため、日米両政府は普天間配備前に「可能な限り人口密集地上空の飛行を避ける」などの安全確保策で合意した。にもかかわらず、実際は守られていない。日本政府は安全対策を徹底するよう米軍に求めるべきだ。
安全確保策は低空訓練時、飛行高度は航空法で定める「地上150メートル以上」を求めている。だが、合意には「運用の安全性を確保するため、その高度を下回る飛行をせざるを得ないこともある」とのただし書きがある。飛行高度は米軍の運用次第ということだろう。
さらに見逃せないのは、過去の大半の事故が発生した垂直離着陸(ヘリ)モードでの飛行問題だ。
合意では、騒音が大きいヘリモードは米軍基地内などに限るとされた。だが、実際は普天間飛行場へ着陸体勢に入る手前の那覇市の市街地上空でも、ヘリモードで飛んでいるのが大半という。沖縄県幹部が指摘するように「書かれているからといって、守られることがないのが米軍の運用」とすれば、何のための合意なのか。
日本政府には、沖縄での訓練が減ることで米軍基地をめぐる負担軽減につながり、普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題などで沖縄側の理解が深まるとの期待があるに違いない。
だが、沖縄側の反発は根強い。1月にはオスプレイの配備撤回と普天間飛行場の県内移設断念を求め、沖縄県内41市町村全ての首長や議長らが上京して安倍晋三首相に「建白書」を手渡した。
事故や騒音などに対する国民の不安は大きく、訓練を容認することはできない。政府は、オスプレイの安全対策の徹底や訓練計画の詳細について米軍に公表を求めるべきだ。
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