2013年8月6日火曜日

米軍ヘリ墜落 オスプレイ全機を撤収せよ! 全基地即時閉鎖せよ!

危険放置 もはや限界だ 理不尽は終わりにしたい この国は民主国家か 人道に反する危険強要

<各紙社説>
沖縄タイムス)[米軍ヘリ墜落炎上]危険放置 もはや限界だ(8/6)
琉球新報)米軍ヘリ墜落 理不尽は終わりにしたい(8/6)

沖縄タイムス)ハンセン米軍ヘリ墜落事故(報道)
http://www.okinawatimes.co.jp/category/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E7%B1%B3%E8%BB%8D%E3%83%98%E3%83%AA%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85

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オスプレイ関連 各紙社説 

朝日新聞)オスプレイ―負担軽減の約束どこへ(8/1)
東京新聞)オスプレイ 民意顧みぬ配備強行だ(7/31)
北海道新聞)オスプレイ 沖縄の負担なぜ増やす(8/4)
信濃毎日新聞)オスプレイ 不信が募るばかりだ(7/31)
神戸新聞)オスプレイ/負担軽減に逆行する配備(8/4)
中国新聞)オスプレイ岩国陸揚げ 沖縄への配慮と言うが(7/31)
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沖縄タイムス)[オスプレイと尖閣]現状をどう理解するか(8/5)
沖縄タイムス)[オスプレイ追加配備]理不尽で矛盾している(8/3)
沖縄タイムス)[オスプレイ]沖縄が犠牲 もう限界だ(7/30)
琉球新報)オスプレイ追加配備 この国は民主国家か 人道に反する危険強要(8/4)
琉球新報)12機岩国到着 オスプレイ全機を撤収せよ(7/31)




沖縄タイムス 2013年8月6日 09時50分
社説[米軍ヘリ墜落炎上]危険放置 もはや限界だ
 恐れていたことが現実になった。米軍機による連日の訓練で住民の暮らしが日常的に脅かされている沖縄のこの現実を、日本中の人々が直視してほしい。
 嘉手納基地所属の救難用ヘリHH60が5日午後、訓練中にキャンプ・ハンセン内の宜野座村側山中に墜落し、炎上した。
 樹木をなぎ倒し、機体が黒煙を上げて燃え続ける様子は、テレビ局の上空からの撮影でも確認された。
 防衛省、県警の間で乗員数の発表が食い違うなど情報がさくそう。基地内での事故の事実把握の難しさを露呈した。けが人が出たとの情報もある。
 昼夜の別なくオスプレイの訓練が実施されている宜野座村城原は、事故現場からそれほど遠くない。異なる機種とはいえ、墜落事故が発生したことで、住民の不安がいっそう高まるのは確実だ。
 今年5月には、嘉手納基地所属のF15戦闘機が国頭村安田の東南東約60キロの海上に墜落したばかり。嘉手納基地のF15は、2002年に本島の南約100キロの海上に墜落、06年にも国頭村安波の東約54キロの海上に墜落した。
 普天間飛行場所属のCH53ヘリが04年8月、沖縄国際大学構内に墜落し、炎上した事故は今も記憶に新しい。
 事故が発生すると、政府は「原因究明」と「再発防止」を真っ先に口にするが、これだけ米軍機が集中し、日々、激しい訓練を続けていれば、事故は必ず起きる。もはや通り一遍の再発防止策でお茶を濁す段階ではない。
    ■    ■
 米軍普天間飛行場には3日、オスプレイ2機が追加配備され、5日には、残る10機が山口県岩国基地から移動してくる予定だった。
 追加配備予定のまさにその日に、HH60の墜落事故が起きたのである。
 「沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会」はこの日、予定通り政府にオスプレイの配備中止を要請することを決めた。
 県民が最も懸念しているのは、住宅密集地のど真ん中にある普天間飛行場に、欠陥機の疑いのあるオスプレイを配備することによって、取り返しのつかない事態を招くことである。HH60の墜落事故で、その不安が現実味を帯びたというべきだろう。
 圧倒的多数の住民が反対しているにもかかわらず、政府は、オスプレイの「安全宣言」を発し、配備を強行した。今回の墜落事故を踏まえ、配備計画を早急に見直すべきである。
    ■    ■
 米軍機による事故発生の蓋然(がいぜん)性が全国のどの地域よりも高い沖縄の現実を放置することは、県民の生命・財産を危険にさらすようなものである。
 事故発生で政府が素早い反応を示したのは、オスプレイ配備への政治的影響を懸念したからだ。
 だが、これは倒錯した考え方である。政府が何よりも優先すべきなのは、住民の安全だ。
 本土自治体がいやだというのを沖縄に押しつけてはならない。


琉球新報 2013年8月6日
社説:米軍ヘリ墜落 理不尽は終わりにしたい
 どれほどの痛みを被れば、沖縄は米軍の事故の恐怖から解放されるのだろう。宜野座村のキャンプ・ハンセン内に米空軍所属のHH60救難ヘリ1機が5日、墜落した。 県民挙げての強い反対を押し切って日米両政府が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを追加配備しようとしているさなかのことだ。もうすぐ米軍ヘリ沖国大墜落9周年もめぐってくる。そんな中での墜落だ。
 県民の犠牲の恐れがあってもオスプレイ配備を撤回せず、ヘリ基地の県内移設押し付けもやめようとしない。沖縄の人には生命を脅かされずに暮らす権利さえ無いと言わんばかりの、この国はいったい何なのか。米国も、自国では許されぬ市街地飛行を繰り返すのは人種差別ではないのか。そんな根源的な疑問がわいて仕方がない。
 復帰後の米軍機の墜落は昨年末までに県が把握しただけで43件に上る。空中接触や移動中損壊、着陸失敗など他の事故も含めると、枚挙にいとまがない。死亡者は34人、行方不明は24人に達する。
 今年も5月下旬にF15戦闘機が既に墜落しているから、今回で復帰後45件目の墜落ということになる。1年に1回以上だ。こんな県がほかにあるか。
 復帰前に目を向ければ、犠牲はもっと膨らむ。小学生ら18人が犠牲になった宮森小ジェット機墜落事故を持ち出すまでもない。
 不幸中の幸いだが、今回の事故で県民の犠牲者はいない。だが付近の松田区などには保育所も幼稚園も小学校もあり、間近に自動車道も通っていた。
 まして普天間・嘉手納の両飛行場は市街地の真ん中にあるから、沖縄で再び事故が起きれば奇跡でもない限り人身、財産への影響は免れないだろう。そんな中、損害額百万ドル以上の事故率が海兵隊平均より6割も高く、墜落が時間の問題のオスプレイを追加配備するとは、危険な人体実験としか思えない。
 実は外国軍が長期・大規模に駐留するのは第二次大戦後の現象だ。ましてこれほど一地域に集中して押し付けるのは世界史的にもまれなのである。
 そのような理不尽はもう終わりにしたい。日米両政府が沖縄の訴えに耳を貸さない以上、仲井真弘多知事の言う「全基地即時閉鎖」しか、もはや選択肢はないのではないか。沖縄に犠牲を強要し続ける日米両政府の差別性を国際社会に訴え、事態打開を図りたい。


沖縄タイムス)ハンセン米軍ヘリ墜落事故
http://www.okinawatimes.co.jp/category/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E7%B1%B3%E8%BB%8D%E3%83%98%E3%83%AA%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85

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朝日新聞  2013年08月01日00時35分
社説:オスプレイ―負担軽減の約束どこへ
 米海兵隊の新型輸送機オスプレイ12機が米軍岩国基地(山口県岩国市)に陸揚げされた。
 試験飛行や整備を経て、今月上旬に沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備される。
 普天間には昨秋からオスプレイの第1陣、12機が配備されており、これで計24機になる。
 安倍首相は「沖縄の負担軽減に全力で取り組む」と誓ってきた。これでは逆に、負担倍増ではないか。
 沖縄の反発は、強まるばかりである。
 今年1月、沖縄県内の全41市町村の首長らが上京し、首相に配備撤回を直訴した。追加配備も中止を求めた。仲井真弘多(ひろかず)・沖縄県知事は「沖縄の負担は限界」と訴えてきた。
 それなのに、なぜ普天間への追加配備なのか。説得力のある説明はない。
 老朽化した輸送ヘリCH46に比べ、オスプレイは速度が2倍、搭載能力は3倍、行動半径は4倍とされる。専門家の間でも沖縄配備にこだわる必然性は小さくなったとの見方がある。
 地元の訴えに真剣に耳を傾ける姿勢も見られない。
 沖縄県は、昨年配備されたオスプレイについて目視調査を実施。飛行ルールなどの日米合意違反が、2カ月間で318件あったと指摘した。
 これに対し、防衛省は「違反との確証は得られていない」とする検証結果をまとめた。
 ところが、その根拠は「22時以降は飛行しないよう努力しているとの説明を米側から受けている」「住宅地が少ない場所を飛行しているとの説明を米側から受けている」と、米側の説明をそのまま受け入れている。
 そもそも日米合意自体が「できる限り人口密集地域上空を避ける」「できる限り早く夜間の飛行を終了させる」と米軍に配慮した書きぶりで、厳しい歯止めにはなっていない。
 これでは、沖縄軽視と言われても仕方あるまい。
 オスプレイの空軍仕様機CV22の配備問題も浮上している。米太平洋空軍のカーライル司令官は会見で、配備先の候補として、沖縄の嘉手納基地(嘉手納町など)と、東京都の横田基地(福生市など)を挙げた。
 だが菅官房長官は横田基地への配備について「実現性はないと思っている」と述べている。沖縄がさらに負担を強いられる可能性がある。
 負担軽減の約束はどこへ行ったのか。「抑止力強化」の名の下に沖縄の民意を黙殺するようでは、いずれ日本の安全保障政策は行き詰まる。


東京新聞 2013年7月31日
【社説】オスプレイ 民意顧みぬ配備強行だ
 沖縄県の米軍普天間飛行場に追加配備されるMV22オスプレイ十二機が山口県の米軍岩国基地に搬入された。仲井真弘多知事ら沖縄県民の多くが配備強行に反対している。なぜ民意を顧みないのか。
 外国軍である米軍機が日本の空を自由に飛び回る。その軍用機は安全性に疑念が残るから、配備をやめてほしいと基地周辺住民が再三求めても聞き入れられない。これが安倍晋三首相が思い描く「主権」国家なのか。
 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイは、八月上旬にも岩国基地から普天間飛行場(宜野湾市)に移動し、配備済みの十二機と合わせて二十四機態勢が整う、という。
 住宅地に囲まれ、かつて米国防長官が「世界一危険」と認めた普天間飛行場に、開発段階から実戦配備後まで墜落事故を繰り返す軍用機を、なぜ配備できるのか。日本政府もなぜそれを許すのか。
 事故の危険性が指摘される飛行方法を米軍施設上空に限定し、人口密集地上空の飛行は避けるなどの日米合意も守られていない。
 仲井真知事は九日、菅義偉官房長官らに追加配備の見直しを要請した。沖縄県議会も十一日、全機撤収を求める意見書と抗議決議を全会一致で可決している。二十一日の参院選では、配備に反対する糸数慶子氏が当選したばかりだ。
 日米両政府は直近の民意がオスプレイ配備反対であることを、重く受け止めるべきではないか。
 米国内ではオスプレイの低空飛行訓練計画に周辺住民から懸念が出て、中止や見直しが行われたという。米国内では住民の意見に耳を傾け、国外では聞く耳を持たないというのでは二重基準だ。
 これでは自由と民主主義を「人類共通の価値観」と位置付ける米国が世界の民主化の先頭に立とうと意気込んでも、信用されまい。
 米太平洋空軍のカーライル司令官は、空軍仕様のオスプレイCV22の、嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)や横田基地(東京都福生市など)への配備に言及した。
 CV22は陸軍特殊部隊の輸送など特殊作戦機として運用されるため、MV22に比べて事故率が高いという。昨年六月には米国内で訓練中に墜落事故を起こしている。
 危険な軍用機が日本中を飛び回り、その配備も止められない。オスプレイは沖縄にとどまらず、「国の在り方」にもかかわる重い課題だ。日本国民全体が自らの問題として考えなければならない時機に来ているのではないか。


北海道新聞 2013年8月4日
社説:オスプレイ 沖縄の負担なぜ増やす(8月4日)
 米海兵隊が沖縄県の米軍普天間基地に垂直離着陸機MV22オスプレイの追加配備を始めた。
 昨年10月に初めて配備された12機に新たに12機が加わって24機態勢となる。
 危険が指摘されるオスプレイに対し、沖縄県民は不安を募らせ、撤収を求める声が沸き上がっている。
 沖縄の負担軽減が政府の基本姿勢のはずだ。追加配備はそれに逆行している。米軍の動きを追認するばかりでは納得できない。
 民意をしっかりと受け止め、危険と不安の除去に向けた道筋を示すのが政府の責務だ。
 初配備に伴い、当時の野田佳彦首相は「沖縄の負担軽減に一層力を入れる」と約束した。安倍晋三首相も今年1月の所信表明演説で「負担軽減に全力で取り組む」と訴えた。
 オスプレイ配備が進む状況をみると、国の決意は言葉だけで、実行力が伴っていない。
 日米両政府は配備にあたって住宅密集地上空や夜間の飛行を避けるなどの運用ルールを決めた。だが配備後の2カ月間だけで318件の違反が地元から指摘された。
 検証を求めた沖縄県に対し、防衛省は「違反は確認できない」と回答した。地元の深刻な訴えに耳をふさいでいる。住民は不安や騒音被害に黙って耐えろと言わんばかりだ。
 少なくとも米国に対し運用改善を求めるのが筋ではないのか。米国の意向を沖縄に押しつけるばかりの政府の姿勢は到底容認できない。
 沖縄県議会は先月、オスプレイの全機撤収を全会一致で決議した。仲井真弘多(なかいまひろかず)知事も配備計画の見直しと配置分散を政府に要請した。真剣に受け止めてもらいたい。
 オスプレイの配備による普天間飛行場の固定化が懸念されている。日米両政府は名護市辺野古への移転を目指しているが、県外、国外移転へ向けて負担軽減を探るべきだ。固定化はあってはならない。
 気になるのはオスプレイを沖縄以外にも広めようとする動きがあることだ。米空軍司令官が空軍仕様のCV22オスプレイを東京都の横田基地に配備する可能性を示した。
 特殊作戦を想定した訓練を行うなどからMV22よりも事故率が高いとされる。安全性に疑問を残したまま、次々と配備を進める米軍の姿勢は一方的で受け入れられない。
 北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の海洋進出を念頭に、日米両政府は抑止力強化の必要性を強調する。だが沖縄の過剰な基地負担を後回しにする安全保障政策には限界がある。
 オスプレイの訓練移転の可能性も含め、全国で負担をどう分かち合うかの議論も必要になるだろう。


信濃毎日新聞 2013年07月31日(水)
社説:オスプレイ 不信が募るばかりだ
 沖縄に追加配備される米軍の新型輸送機オスプレイ12機が山口県の岩国基地に搬入された。反発を強める沖縄の人たちをはじめ、国民の反対や不安の声を政府は重く受け止めるべきだ。
 沖縄県の普天間飛行場には昨年10月、12機が配備された。追加分は、点検や試験飛行を経て8月上旬にも移される見通しだ。配備が完了すれば、海兵隊の輸送機の機種更新が終わる。24機態勢の運用が本格化する。
 岩国基地の周辺では市民団体が抗議活動をした。沖縄県の仲井真弘多知事は計画の見直しを求めてきた経緯がある。1月には自治体代表が撤回を求める「建白書」を安倍晋三首相に手渡した。こうした民意を顧みることなく、再び配備が進もうとしている。
 オスプレイは開発段階から事故が相次いだ。墜落で死傷者も出ている。それなのに、日本政府も米軍も安全性について納得のいく説明をしていない。市民の不安は拭えていないと沖縄県が訴えるのは当然だ。これでは日米両政府への不信がますます募る。
 両政府が昨年9月に合意した安全確保策も守られていないとの指摘がある。プロペラを上向きにした垂直離着陸モードでの飛行は米軍の「施設及び区域内」に限るとしたのに、沖縄の市街地上空での飛行が目撃されている。
 沖縄だけの問題ではない。米軍は本州から九州にかけて設定したルートで低空飛行訓練を計画している。長野県の一部もルートに含まれる。和歌山県から四国にかけてのルートでは3月に低空や夜間の飛行訓練が始まった。騒音などの影響が各地で出かねない。
 ルートにかかる自治体としてはいつ、どんな訓練があるのか、情報が大事になる。米軍は最初こそ事前にルートや日程を日本に伝えたものの、2回目は詳しい内容を明かさなかった。これでは、影響や安全確保策が守られているかを確かめにくい。
 海兵隊とは別に、空軍仕様のオスプレイの配備計画もある。米太平洋空軍の司令官は、候補地として沖縄の嘉手納基地に加え、東京の横田基地を挙げた。2015年の配備を目指している。計画通りなら、飛行訓練などへの不安がさらに増すことになる。
 米軍への反発が高まれば、日米関係にも影響する。その点を政府は押さえるべきではないか。あらためて安全性を検証して国民に説明するとともに、米側に対して合意の徹底や訓練の情報提供を働き掛けるよう求めたい。


神戸新聞 2013/08/04
社説:オスプレイ/負担軽減に逆行する配備
 「負担軽減」は言葉だけと受け止められても仕方がない。
 沖縄県の米軍普天間飛行場に追加配備される新型輸送機オスプレイ12機が、山口県の米軍岩国基地に搬入された。明日にも普天間に全て移動し、既に運用されている12機との計24機態勢となる。
 沖縄には日本の米軍専用施設の74%が集中している。今回の追加配備で負担がさらに重くなるのは確実だ。
 沖縄県や県内市町はこぞって配備に反対している。それを押し切る形で強行すれば、地元との溝は一層深くなる。
 安全性の不安が解消しない段階での配備と運用を見合わせる。事故防止と安全対策を徹底させ、説明を尽くして先に地元の理解を得るのが筋だろう。
 実際は話が逆になっている。オスプレイは昨年7月、地元の反対を押し切って搬入された。第2陣も同じである。
 プロペラの向きを切り替えて飛ぶことができるオスプレイは、航続距離と輸送力に優れると期待されている。一方で開発段階から事故やトラブルが相次ぎ、多くの死傷者が出ている。
 民主党政権は独自の検証に基づく「安全宣言」を出し、飛行訓練時の高度制限などを柱とする安全確保策について米側と合意した。安倍政権もこれを引き継いで配備を進める方針だ。
 しかし、国民の理解をどこまで得られたか。危険性への疑念が払(ふっ)拭(しょく)されないまま、飛行訓練が本土の上空でも繰り返されており、飛行ルートの自治体では住民の憤りと不安の声が聞かれる。
 米軍の姿勢も疑問だ。「可能な限り人口密集地上空を避ける」などの運用ルールに違反した飛行を、沖縄県は300件以上も確認したという。
 国は「違反の確証は得られていない」としているが、政府は米側に事実確認とルール順守を強く迫るべきだろう。
 日本維新の会の橋下徹共同代表は大阪・八尾空港での一部訓練受け入れを提案しているが、問題は沖縄の負担軽減にとどまらない。米軍は東京・横田基地などへの配備も検討している。
 事故の不安だけでなく、普天間周辺では、飛行に伴う低周波の影響が確認されている。圧迫感や振動による不快感などで、研究者は「本土でもさまざまな影響が出る恐れがある」と指摘する。
 オスプレイ配備の是非は自分たちの地域に引き寄せて考える必要がある。
 なし崩しでは国民の理解は到底得られない。配備受け入れの前に徹底的に議論を重ねることが不可欠だ。


中国新聞 '13/7/31
社説:オスプレイ岩国陸揚げ 沖縄への配慮と言うが
 1年前の光景がそっくり再現された。米国から船便で運ばれた12機の垂直離着陸輸送機オスプレイがきのう、米海兵隊岩国基地に陸揚げされた。
 点検や試験飛行を経て来月には米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備される。機数も行き先も昨年と同じだ。
 沖縄県民がいかに反発しようと、計24機を普天間に配備する計画を着実に実行しているだけと米軍は主張するだろう。ただそこに、普天間から辺野古(名護市)への移設を進めたい日米両政府の思惑が重なる。
 このまま県内移設に反対する限り、普天間は固定化され、オスプレイは居続ける。沖縄の人たちが一種の脅しと受け止めてもおかしくはない。
 オスプレイを沖縄に直接運び込まないのは、そうした県民への「配慮」だとされる。しかし形ばかりの配慮を重ねても、何ら根本的な解決にはならない。
 日米両政府が本当に県民のことを考えているというなら、オスプレイの配備を取りやめるとともに、普天間の国外移設を真剣に検討すべきではないか。
 そんなそぶりは全くうかがえないため、本土側の私たちも疑心暗鬼にならざるを得ない。陸揚げや本土訓練飛行の拠点に岩国を使うのはひょっとして、普天間の県外移設の候補地とする布石ではないのかと。
 だが沖縄でのオスプレイの飛び方を見る限り、積極的に受け入れようとする地域が現れるとは考えにくい。
 沖縄県の調査によると、人口密集地の上空や夜間など、日米で合意したルールを逸脱すると思われる飛行が昨年だけで318件あったという。
 ところが防衛省は「明確な違反は確認されていない」とのスタンスを貫く。そもそも日米合意は随所に「可能な限り」などの前置きがあり、米軍が「運用上必要」と言えば、それだけで違反は問えない仕組みだ。
 菅義偉官房長官がきのうの記者会見で「地元の懸念が払拭(ふっしょく)されていない」と認めたのも当然だろう。ならば、言い逃れできないよう、より厳格な合意へと改定すればいい。
 そうでもしない限り政府は、今後増えるであろうオスプレイの本土訓練も認めるべきではない。低空飛行や騒音に対する不安は解消されないからだ。
 気になるのは、今回の陸揚げと機を同じくした米太平洋空軍司令官の発言である。空軍仕様のオスプレイを将来配備する候補地として、沖縄県の嘉手納基地や東京都の横田基地を挙げた。ルール違反の飛行が、なし崩し的に増える懸念がある。
 もっとも司令官の発言については、オスプレイは沖縄にいなくても役割を発揮できる、といった解釈も成り立つだろう。
 従来のヘリコプターに比べ、オスプレイは飛行速度で2倍、搭載量で3倍、行動半径で4倍の性能を持つ。横田基地と言わず、グアムやハワイを拠点にしても十分ではないか。
 そもそもオスプレイは兵員や装備を前線に運ぶ輸送機であって戦闘機ではない。離島防衛の抑止力となり得るかどうか、異論がくすぶり続けるゆえんだ。
 本質的な議論がないまま、基地周辺や訓練飛行ルート直下の住民が諦めるのを待つ。そんなやり方をいつまでも続けていい道理はない。

愛媛新聞 2013年08月01日(木)
社説:オスプレイ追加配備 対米追従の連鎖を断つべきだ
 またしても沖縄の声は、日米両政府に届かなかった。
 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に追加配備される新型輸送機MV22オスプレイ12機が、山口県岩国市の米軍岩国基地に搬入された。
 昨年10月に配備された12機と合わせて24機体制での運用が本格化することになる。今回も、沖縄県民の反対を押し切っての強行である。追加配備までの間、対米追従に終始した日本政府の姿勢に強い懸念を示しておきたい。
 「海兵隊仕様」のオスプレイ配備は単なる機種更新ではない。米軍がアジア太平洋地域へ配備を計画している「空軍仕様」のCV22オスプレイについても、沖縄県の嘉手納基地や東京都の横田基地などが候補地に上がっている。
 米軍は現在、再編のさなかであり、オスプレイの導入はその一環であろう。政府がいう「沖縄の負担軽減」を実現するためには、その再編の過程で沖縄の基地を縮小し、さらには日本全体の基地再配置や縮減を見据えて米軍と交渉しなければならない。
 次々に配備されるオスプレイは、沖縄の苦悩の象徴ともいえる。仲井真弘多(ひろかず)知事は安倍晋三首相に配備の中止を要請しており、佐喜真(さきま)淳(あつし)宜野湾市長も「極めて遺憾である」と批判を強めている。
 開発段階から安全性が懸念されてきたオスプレイの配備後、沖縄県民の懸念が現実になりつつあるからだ。
 日米両政府は昨年9月に安全確保策で合意。しかし普天間では配備直後から、合意に反した垂直離着陸モードで市街地上空を飛行するなど、市民の感情を逆なでする訓練が繰り返されている。
 またオスプレイは、愛媛県上空も含まれる「オレンジルート」を飛行するなど、本土で訓練を重ねている。米軍は当初こそ日程や飛行ルートを伝えてきたが次第に先細り。情報提供は途絶えがちだ。
 基地の存在がベールに包まれてきただけに、国民、ことに沖縄県民は受け入れられないでいる。政府が「抑止力」を口にするなら、そして危険を伴ってなお基地に存在意義があるのならば、実態を明らかにした上で国民に、沖縄の人々に説明すべきだ。
 そもそも普天間飛行場は、約10年後かそれ以降に返還することで日米政府が合意している。しかし、両政府が固執する名護市辺野古への移設については、沖縄の反対で実現できる状況にはない。そんな「仮置き場」に、主力輸送機を配備する矛盾を、国民はとうに見抜いているのだ。
 日本政府はそろそろ長期的な基地再編計画を含め、日米同盟や日米地位協定などについて、逃げずに議論を始めるべきだ。このままだと、いつまでたっても基地問題が解決する日は来ない。


高知新聞 2013年08月02日08時33分
社説:【オスプレイ追加】負担軽減はどこへいった
 「反対だと言っても事態は進行していく。不安は払拭(ふっしょく)されていない」
 米軍岩国基地(山口県)に新型輸送機MV22オスプレイ12機が搬入された先月30日、沖縄県の仲井真知事はあらためて地元の憤りを口にした。
 12機は近く沖縄に追加配備される予定で、普天間飛行場は計24機のオスプレイを抱えることになる。参院選前から安倍首相は、「沖縄の負担軽減に全力を尽くす」と強調してきたが、さらなる配備が「負担軽減」にどうつながるのか、全く理解できない。
 昨年10月の初配備の後、飛行ルートや飛行時間をめぐり多くの日米合意違反が指摘されてきた。だが地元から確認を求められた防衛省は、「違反の確証はない」との回答だったという。
 こうした結果は、配備前から地元が抱いていた心配だった。今回の合意もほかの日米協定と同様に「(米軍が)運用上必要な場合を除き」という条件付きだ。政府は「抜け道」を承知していたと受け取られても仕方がない。
 住民らが目視で違反を指摘しても米軍に「運用上必要」と言われれば沈黙する。不合理の根本にある日米地位協定を見直そうともしない。国民を守る政府の姿勢として決して許されない。
 沖縄では最初の配備後、ヘリコプター離着陸帯の使用が100倍近くに激増した場所がある。危険性を心配する県民はさらに増えるだろう。県議会もオスプレイ全機撤収を求めるなど、追加配備を認める民意はほぼないことを政府はまず理解すべきだ。
 安全性への懸念は沖縄だけでない。
 本県山間部を含めた全国の訓練ルート周辺も、機体の倍増で飛行回数が増える可能性がある。不安を感じている県民は多いはずだ。
 そんな住民の心配をよそに、国は米軍機の飛行経路の情報などを事前に把握しながら国民や自治体にほとんど提供していなかった。担当者は「米国との信頼関係」を理由にしたというからあきれるばかりだ。衝突事故なども想定されるだけに、即刻、情報提供を始めるべきだ。
 沖縄では参院選投開票日翌日の先月22日、普天間に新たなフェンスが設けられた。米軍の要請で防衛省が設置し、追加配備への抗議を封じ込める意図がありありだ。政府は国民に顔を向けているのか、それとも米国を向いているのか。

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沖縄タイムス 2013年8月5日 10時04分
社説:[オスプレイと尖閣]現状をどう理解するか
 「オスプレイに反対するのは沖縄の地域エゴである」「これ以上、沖縄を甘やかしてはならない」-そんな空気が永田町の保守政治家や霞が関の官僚、全国メディアの記者の間に広がっているらしい。
 雑誌メディアは「日中もし戦わば」式の領土ナショナリズムを刺激するような特集であふれ、ネット上では毒々しい扇情的な言葉が飛び交う。
 この種の言論で批判の矢面に立たされるのは、米軍基地を引き受けようとしない日本本土の側ではなく、普天間飛行場の辺野古移設やオスプレイ配備を認めようとしない沖縄の側である。
 原因と結果を取り違えてはいけない。現在の「ごたごた」は、米軍の基地維持と作戦展開を優先し、県民の負担軽減を先送りし続けてきたことの結果であり、問われなければならないのは政府の姿勢だ。
 沖縄の基地負担を軽減することは、米軍統治の下で呻吟(しんぎん)してきた沖縄県民の「労苦に報いる」ため、政府や国会が復帰以来、何度も強調し続けてきた県民に対する厳粛な約束である。
 にもかかわらず、全国の米軍基地(専用施設)の約74%が今なお沖縄に集中し、ここに来て、負担軽減と逆行する機能強化策が相次いで打ち出されているのだ。
 辺野古移設やオスプレイ配備をめぐって「ごたごた」が続いてるのは、基地負担を沖縄に負わせ続ける「おまかせ安保体制」を堅持しているためである。この構造的問題をどう変えていくかの冷静な議論が何より必要だ。
    ■    ■
 「尖閣を守るためにはオスプレイが必要」との議論が、検証もされずにまかり通っているが、ほんとにそうなのだろうか。
 米国は尖閣諸島の領有権問題について「あいまいな戦略」を取り続けている。背景にあるのは日米中3カ国の複雑な関係である。
 日中の軍事衝突に巻き込まれ中国や台湾を敵に回すことは、米国の国益に反する。米国にとっては最悪の、絶対にあってはならない事態だ。
 その一方で、尖閣をめぐって日中関係が緊張状態にあるということは、米軍にとって、沖縄駐留を正当化しオスプレイ配備などの機能強化を日本の負担で実現するための好機でもある。事情は複雑だ。
 日中衝突の際にオスプレイが投入されることを当然の前提にするのはナイーブ(素朴)な考えではないだろうか。そもそも米軍の抑止力とは空軍、第7艦隊などの総合力をいうのであって、輸送機にすぎないオスプレイに過剰な抑止力を期待するのはいかにも危うい。
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 中国の不透明な軍備拡大や周辺国を威圧するようなやり方が、国民に強い不信感を与えている。
 国民の「嫌中感情」をうまく利用して、オスプレイ配備と辺野古移設を正当化しようとしているのが現在の構図である。
 だが、県民の声を無視して強行すれば、日米同盟はいっそう不安定化する。
 日中双方が知恵を出し、尖閣問題を封印するしかない。


沖縄タイムス 2013年8月3日 09時30分
社説:[オスプレイ追加配備]理不尽で矛盾している
 参院選が終わったと思ったら、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが普天間飛行場に追加配備される。山口県・岩国基地に陸揚げされた12機のうち4機が3日に、残る8機が週明けの5日に、移動する予定である。
 この措置は、基地政策の失敗の付けを住民に回すようなもので、とうてい認めることはできない。
 もう一度、思い出してみよう。日米両政府が普天間飛行場の移設条件付き返還に合意したのは、危険性の除去と騒音被害の解消と基地の重圧に苦しむ沖縄の負担軽減のためではなかったのか。
 それなのに、人口密集地のど真ん中にある飛行場に、24機ものオスプレイを配備し、この先何カ年も、沖縄を拠点に全国各地で、夜間訓練や低空飛行訓練、物資輸送訓練などを続けるというのである。
 おそらく多くの県民が、深い失望と怒りで「わじわじー」しているのではないか。 
 県が日米合意違反だと指摘したオスプレイの318件の飛行事例に対し、国は「合意違反があると確認することはできなかった」との調査結果を公表した。合意違反が確認できなかったのであれば、事実関係の究明とルール順守を優先し、追加配備にストップをかけるのが筋だ。
 宜野湾市や伊江村、宜野座村の住民は国に対し再三、訓練を何とかしてくれと訴えてきた。騒音などの被害や訓練に伴うさまざまな不安をそっちのけにして追加配備を優先するようでは、口先だけの「負担軽減」といわれても仕方がないだろう。
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 オスプレイが岩国基地に陸揚げされたとき、地元の山本繁太郎知事は、国に「滞在期間の短縮」を要請したという。その発言がどのような意味を持つのか、知った上での発言なのだろうか。
 米太平洋空軍のカーライル
 司令官が、空軍仕様のCV22オスプレイを横田基地(東京)か嘉手納基地に配備する意向を表明すると、地元の5市1町がすかさず反応し、外務省や防衛省に配備計画の撤回を要請した。
 大阪・八尾市でオスプレイの訓練を、という日本維新の会の提案に対して、田中誠太市長は反対の考えを明らかにした。
 昨年11月、沖縄・宮古島市で開かれた九州市長会では、地元沖縄から提案された「オスプレイの沖縄配備に反対する決議案」の採択が、本土側市長の反対で見送られてしまった。
 一事が万事、こんな調子である。
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 オスプレイ配備をめぐって、戦後日本の基地政策の欠陥が、思わぬ形で露呈した、というほかない。
 政府の基地政策は、国内に「防衛は米軍にまかせ、米軍の基地は沖縄にまかせ、万事めでたし」の空気を生んでしまった。
 戦後日本の「おまかせ安全保障」はいびつだ。
 オスプレイ問題が全国化しつつあるこの機会に、「おまかせ安全保障」を検証し、抜け道だらけの日米合意や米軍優先の地位協定を国民生活の立場から見直すべきである。好機到来と思いたい。


沖縄タイムス 2013年7月30日 09時55分
社説:[オスプレイ]沖縄が犠牲 もう限界だ
 理不尽というほかない。日本政府は沖縄の要求には全く耳を貸さず、「米軍の配備には文句を言えない」という立場をとり続けている。政権が代わっても、「対米従属」の姿勢は一貫している。
 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が30日、米軍岩国基地(山口県)に搬入される。8月上旬には普天間飛行場に配備される予定だ。民主党政権時代の昨年10月には12機が配備されており、2飛行隊、計24機の配備が完了することになる。
 政府は口を開けば沖縄の「負担軽減」と普天間の「危険性除去」を唱えるが、その言葉を自ら裏切っていることは誰が見ても明らかだ。
 政府は沖縄の要求には「ゼロ回答」のオンパレードだ。
 県知事、全41市町村長、県議会、全41市町村議会がそろって反対を表明。ことし1月には全市町村の代表らが異例の東京集会を開き、「建白書」を安倍晋三首相に手渡した。6月にも仲井真弘多知事が安倍首相に配備計画の中止を求めた。普天間を抱える宜野湾市は佐喜真淳市長が市内6団体の代表らとともに追加配備に反対する声明を発表した。政府は「馬耳東風」だ。
 オスプレイ着陸帯から住宅地まで400メートルしか離れていない宜野座村城原区は総決起大会を開いた。低空飛行の証拠をDVDに収録して、何度も抗議しているにもかかわらず、何も改善されない。
 伊江島補助飛行場に隣接する真謝と西崎両区の住民の会は騒音被害に対し住居移転費などの補償を求めている。対応は困難というのが沖縄防衛局の回答だ。
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 オスプレイ配備後の昨年10月と11月の2カ月間に県と市町村が調査した結果、運用ルールを定めた日米合意違反は318件に上った。ほとんどが「学校や病院を含む人口密集地上空での飛行」である。普天間は市街地のど真ん中を占拠しており、合意に違反することなしに離着陸することがそもそも無理なのである。
 合意には「可能な限り」とか「運用上必要な場合を除き」などの表現が組み込まれ、抜け道だらけだ。県への回答もまだ届いていない。
 不快感を与えたり、睡眠を妨げたりするオスプレイ特有の低周波音も気掛かりだ。周辺の学校では「基準値」を超えているとの専門家の調査結果が相次いでいるからだ。
 昨年10月の配備前に、市民らの反対運動で普天間のゲートが一時封鎖された。沖縄防衛局は市民の反対運動を封じるため、参院選翌日の夜間に、フェンスを張り巡らした。姑息(こそく)なやり方だ。
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 参院選前に日本維新の会の橋下徹共同代表が八尾空港(大阪府八尾市)で訓練の一部を受け入れる提案を政府にした。だが、地元が反対。関西広域連合の25日の会合ではトーンダウンし、訓練の受け入れは盛り込まれなかった。
 沖縄に基地が集中するのを支えているのは、本土側の「無関心」である。訓練の移転、分散も進まない。
 沖縄を犠牲にした防衛政策はいびつだ。本土側が受け入れの声を上げない限り、何も変わらない。


琉球新報 2013年8月4日
社説:オスプレイ追加配備 この国は民主国家か 人道に反する危険強要
 米海兵隊は岩国基地(山口県岩国市)に一時搬入していた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機のうち2機を3日、宜野湾市の普天間飛行場に追加配備した。
 県民は、オスプレイの安全性や常駐配備に伴う騒音激化を強く懸念している。7月中旬の県民世論調査では8割超がオスプレイ配備に反対した。大半の県民が普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する中でオスプレイを強行配備し、危険との共存を強要するのは民主国家にあるまじき暴挙である。
 日米はオスプレイを米本国へ撤収させた上で、新たな普天間返還合意を模索するべきだ。
 現実離れの神話
 オスプレイは虚飾にまみれ、米軍の事故対応なども過小評価、情報隠しが際立ち信頼性が疑わしい。
 米海兵隊は、2009年に被害が甚大なクラスAの損害額の評価基準を「100万ドル以上」から「200万ドル以上」に引き上げた。
 この見直しで従来の評価基準なら3・98となるオスプレイの事故率が、1・93と低くなった。この作為を指摘すると、米側当局者は「事故が多いのは試作段階の話。今は安全だ」などと反論する。
 だが現実に事故は起きている。オスプレイは開発段階で30人が死亡し、昨年4月にモロッコ、6月には米フロリダ州で墜落事故を起こし計9人が死傷した。海兵隊のオスプレイに限っても06年以降30件以上事故が起きた。日米の「安全宣言」は神話にすぎない。
 10年にアフガニスタンで起きた墜落事故に関しては、事故調査の責任者だった空軍准将(当時)が「機体に問題があった」との報告を作成したところ、空軍上層部の圧力で「人為ミス」に書き換えさせられたことが分かっている。
 09年まで17年間、米国防分析研究所の主任分析官としてオスプレイ開発に関わってきたレックス・リボロ氏は本紙の取材に対し、ヘリモードでエンジンが停止した場合に通常のヘリならオートローテーション機能(自動回転機能)で着陸できるが、オスプレイには同機能が欠如して「どこにでも墜落する」と証言。安全性に「深刻な穴がある」と指摘した。
 米本国と海外基地の運用で対応が異なる、アンフェアな実態もある。米ニューメキシコ州で予定された米空軍のオスプレイの低空飛行訓練は、住民の反対で延期され訓練内容が見直された。ハワイの二つの空港でのオスプレイの着陸訓練が、住民の反対で撤回されたこともある。命をめぐる「二重基準」など人道上許されない。
 国民への印象操作
 防衛省は先月30日、オスプレイをめぐり県が日米合意の運用ルールや安全確保策に違反すると指摘していた318件の飛行について、「合意違反の確証は得られていない」との検証結果を公表した。
 防衛省の担当者は「米側も日米合同委員会の合意に基づいて飛行していると繰り返し述べている。政府としてそれを否定するような立場にはない」と会見で説明した。
 防衛省のこの対応は、検証結果公表の狙いが県民への説明ではなく、国民への印象操作にあると自白しているに等しい。根拠もなく「安全」を触れ回り、国民をミスリードする国の手法は姑息(こそく)である。
 普天間飛行場へのオスプレイの配備理由として、日本政府関係者は「抑止力の向上」を重要視する。
 だが、オスプレイの安全性や採算性を疑問視する非営利組織「米政府監視プロジェクト」のベンジャミン・フリーマン博士は、「オスプレイは超音速の戦闘機ではなくただの輸送機。日本への攻撃や侵略を防ぐ能力はない。抑止力なら既に存在する空軍が担っている」と指摘。「オスプレイの沖縄配備は不要」と断言する。
 米議会有力者や安全保障専門家からも辺野古移設見直し論や海兵隊のオーストラリア移転、米本国撤退論が出ている。日米は民主主義を踏み外した安保政策から脱却すべきだ。オスプレイ、普天間飛行場を沖縄から撤去させるときだ。


琉球新報 2013年7月31日
社説:12機岩国到着 オスプレイ全機を撤収せよ
 米軍普天間飛行場に追加配備される米海兵隊垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が岩国基地に到着した。機体の搬入や整備を経て8月上旬にも普天間に飛来する予定だ。昨年10月の12機に続いての強行配備で、24機が沖縄に駐留することになる。
 県内では知事と全41市町村長が反対を表明し、県議会と全市町村議会が反対決議をしている。沖縄の民意を無視した強行配備は到底容認できない。
 オスプレイ配備後の昨年10月から今年3月末までの間で、普天間飛行場から派生する航空機騒音は宜野湾市上大謝名地区で9344回発生した。前年同期と比べて1206回、14・8%増加した。機数が倍増すれば騒音も倍増するのは明らかだろう。飛行場周辺の住民被害を日米両政府はどう考えるのか。
 昨年2月、米側から在沖海兵隊の岩国への一部移転を打診された際、政府は即座に断った。玄葉光一郎外相(当時)は岩国市長に「(移転を)お願いするつもりはないので安心してほしい」と述べた。沖縄配備を断り、なぜ沖縄県民に「安心してほしい」とは言わないのか。この国にとって沖縄は何なのか。
 普天間飛行場に駐留する第1海兵航空団は1976年に岩国から沖縄に移転した。本土から沖縄には簡単に移転し、沖縄から県外への移転は政府が拒絶する。これは差別以外の何物でもない。
 昨年8月、当時の森本敏防衛相は一時移駐した山口県知事に「大変な心配、迷惑をかけ申し訳ない」とわびた。今回の地元への伝達では沖縄県と宜野湾市を訪れたのは沖縄防衛局の企画部長で、1週間程度とどまるだけの山口県と岩国市には国会議員の防衛政務官が向かった。沖縄軽視にも程がある。
 オスプレイの飛行実態について、日米間で合意した安全確保策に照らして違反だと県が指摘した318件について、沖縄防衛局は「違反しているとの確証は得られていない」との結論を公表した。午後10時以降の飛行を確認しているが「運用上必要と考えられるものに制限される」とあることから、合意違反ではないとしている。野放図な飛行を容認するとは犯罪的だ。
 これ以上、県民は危険と共存する不条理を受け入れることはできない。沖縄から全てのオスプレイを撤収させるべきだ。

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