2013年9月4日水曜日

防衛費予算増額要求 無原則な拡張許されぬ 2・9%増の総額4・8兆円 新たな案件が目白押し

オスプレイの15年度導入に向けた調査費1億円。
無人偵察機グローバルホークの15年度導入に向け調査費用を2億円。
水陸両用車を装備する経費として13億円・・・・・

<各紙社説・主張>」
朝日新聞)防衛の行方―装備を増やすだけでは (9/2)
毎日新聞)防衛費 議論置き去りが心配だ (8/31)
北海道新聞)防衛予算要求 無原則な拡張許されぬ (8/31)
しんぶん赤旗)軍事費概算要求 侵略のための軍隊になるのか (8/31)


朝日新聞 2013年 9月 2 日(月)付
社説:防衛の行方―装備を増やすだけでは
 防衛省が14年度予算の概算要求で、今年度当初比2・9%増の総額4・8兆円を計上した。
 中身をみると、新たな案件が目白押しである。
 米軍の無人偵察機グローバルホークの15年度の導入をめざして、調査費が2億円。実現すれば4機で数百億円ともいわれる高額の装備だ。
 離島の守りを担う水陸両用準備隊を新たに編成し、水陸両用車2両を調達する。
 安倍政権のもと、中国・北朝鮮をにらんだ抑止力強化の動きが鮮明となっている。
 だが問題は、このような装備の増強によって、ほんとうに日本の安全保障環境が良くなるのか、という点にある。
 なにが日本を守るのか。それを考えることが出発点だ。
 たしかに自衛隊の能力は一つの重要な要素だが、それだけではない。国際情勢を冷静に複眼的に分析し、外交・安全保障戦略をたてる。そのうえで、自衛隊の任務を規定し、必要な装備を整えなければならない。
 それを国内外に明確に説明することも必要だろう。日本の針路への疑念を招けば、安保環境は悪化するばかりである。
 装備を増やせば安全になる、という単純な話ではあるまい。ましてや米国の軍需産業のお得意さんとなるべく、購入をはかるような理屈は通らない。
 見過ごせないのは、米軍の新型輸送機オスプレイの15年度の導入に向け、1億円の調査費を計上していることだ。
 米海兵隊のオスプレイの沖縄への追加配備が大きな反発を招いたばかりである。本土への訓練の分散移転も進んでいない。そんななかで、自衛隊によるオスプレイ導入が幅広い理解を得られるとは思えない。
 装備の増強を偏重する防衛政策は、国家と国家が兵器で衝突する従来の安全保障観に引きずられてはいないか。
 むしろ、取り組みを加速させるべきなのは、サイバー攻撃への対応だろう。情報システムを守れなければ、自衛隊の運用どころか国全体の中枢が麻痺(まひ)しかねない。サイバー関連経費として240億円を盛り込んだが、対策を急がねばならない。
 さらに言えば、原発こそ日本の安全保障の急所である。そこから目をそらしてはならない。福島第一原発の事故の教訓を踏まえ、大災害やテロ攻撃などによる最悪の事態を想定することも大切な国防政策だろう。
 古い戦争の既成概念にとらわれず、新しい安全保障のあり方を根本から考えていく必要があるのではないか。


毎日新聞 2013年08月31日 02時33分
社説:防衛費 議論置き去りが心配だ
 国民的な議論や日米の役割分担の検討が不十分なまま、南西諸島などの防衛強化を目指して国防の根幹に関わる政策が、既成事実のように積み重なっていく。防衛省がまとめた来年度防衛予算の概算要求を見ると、そんな懸念を抱かざるを得ない。
 概算要求の総額は4兆8928億円で、前年度予算額に比べて2.9%増となった。概算要求の基礎となったのは、先月の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の中間報告だ。
 中間報告のうち敵基地攻撃能力の関連予算要求は見送られたが、沖縄県・尖閣諸島など離島防衛強化のための水陸両用機能については、両用作戦専門の部隊の準備隊を陸上自衛隊に新設することや、水陸両用車2両を約13億円で購入することなどが盛り込まれた。機動展開能力の向上については、米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイを2015年度から自衛隊に導入するための調査費1億円が計上された。このほか警戒監視能力の強化や、弾道ミサイル攻撃への対応、サイバー攻撃への対応など新規事業が目白押しだ。
 安全保障環境を考えれば、南西諸島防衛を強化し、必要な装備を整えるのは妥当な政策判断だ。
 しかし、安倍政権になって見直しに着手した防衛大綱は、年末の策定に向けてようやく中間報告がまとまった段階で、集団的自衛権の行使容認や、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を巡る議論もこれから本格化する。いわば安全保障政策の基本方針が定まっていない状態で、既成事実を積み重ねるように予算要求が行われているようにみえる。
 例えば水陸両用機能は、大綱の中間報告では海兵隊的機能と併記された。「誤解されやすい」(防衛省幹部)として、今回の概算要求の資料から海兵隊的機能の表現は消えたが、いずれにしても、軍事行動の際の「殴り込み部隊」として知られる米海兵隊のような機能が自衛隊に本当に必要なのかどうかは、相当な議論が必要になるだろう。将来、集団的自衛権の行使容認と結びついて運用されるようなら、見過ごすわけにいかない。
 1機100億円とされるオスプレイの導入も費用対効果など慎重な見極めが必要だ。米軍普天間飛行場への配備に沖縄県民が反発していることから、自衛隊が導入すれば県民が反対しにくくなるといった政権の政治的思惑もささやかれている。
 また麻生太郎副総理兼財務相が、先日の講演で「尖閣を守る意思を明確に伝える」として防衛費増強を明言したように、防衛費の増額ありきの空気が政権を覆っている。政府には、無駄削減にくれぐれも注意を払うよう強く求めておきたい。


北海道新聞 2013年8月31日
社説:防衛予算要求 無原則な拡張許されぬ(8月31日)
 防衛省が2014年度予算の概算要求を決めた。
 前年度当初比2・9%増となった。11年ぶりに増額に転じた13年度の0・8%増を上回る伸びだ。
 安倍晋三首相の防衛重視姿勢を反映したとみられるが、厳しい財政状況を考えれば疑問を禁じ得ない。
 要求項目は政府が年末に策定する新防衛大綱を先取りしたものが多い。専守防衛の原則からの逸脱や、周辺国との緊張を高めることが懸念される項目がずらりと並んでいる。
 無原則な拡張路線は認められない。本当に必要な能力は何かを精査した上で、コンパクトかつ効率的な予算運用を目指すべきだ。
 防衛省が先月まとめた新防衛大綱の中間報告では、離島奪還のための海兵隊能力確保や、高高度滞空型無人機の導入を明記した。その是非論を置き去りにしたまま、概算要求には関連予算が盛り込まれた。
 離島攻撃に対応するため陸上自衛隊に「水陸両用準備隊」を新設するという。水陸両用車の購入や訓練強化のための予算も要求しているが、備えが過剰になれば周辺国との対立をエスカレートさせる懸念がある。
 離島への展開力向上を目指す新型輸送機MV22オスプレイは15年度の導入を念頭に置く。米軍が沖縄に配備したが、安全性が疑問視され、地元で反対運動が続いている機種だ。拙速な判断と言わざるを得ない。
 高高度滞空型無人機は旅客機よりも上空を飛行し、広範囲に警戒監視を行う能力がある。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海空の活動に対応する狙いだ。能力を競い合うことで地域の緊張を高めかねない。
 敵基地攻撃能力に直結する予算の要求は避けた。だが4機購入を見込む次期戦闘機F35はステルス性能が高く、高高度滞空型無人機と並んで、敵基地攻撃と関連性が高い。専守防衛の原則を忘れてはならない。
 F35の製造に国内企業が参画するための費用も計上した。政府は武器輸出三原則の例外としているが、国際紛争を助長する結果を招くことも考えられ、注意が必要だ。
 気になるのは尖閣諸島周辺などをめぐる周辺国との緊張を理由に、防衛力をなし崩し的に拡大させようとする意図が見られることだ。
 力に力で対抗するのではなく、外交を駆使して問題解決を図るのが基本である。周辺国との関係改善に何ら成果を得られないまま、防衛力を増強して事態に対処しようとする首相の姿勢は安易で無責任だ。
 社会保障費を削るなど国民生活を圧迫して防衛費だけが突出するのでは納得を得られない。防衛省の組織改革や調達の効率化を進めるなど、歳出を抑え込む努力が欠かせない。


しんぶん赤旗 2013年8月31日(土)
主張:軍事費概算要求 侵略のための軍隊になるのか
 2014年度予算の概算要求が30日締め切られ、このなかで防衛省は今年度より1390億円多い4兆8928億円の概算要求を提出しました。
 安倍晋三政権は年末に新しい軍拡計画「防衛計画の大綱」を策定する作業を進めています。概算要求にもりこまれている「離島防衛」や警戒監視能力の強化、弾道ミサイル防衛、サイバー攻撃への対応強化などはすべてその先取りです。とりわけ重大なのは自衛隊の“海兵隊化”と敵基地攻撃能力の保有の推進です。日米軍事同盟を優先し、歯止めのない軍拡を加速する安倍首相の“暴走”は危険です。
“海兵隊化”と敵基地攻撃
 軍事費は昨年度まで10年連続で削減されていましたが、安倍首相が政権に復帰してすぐに見直し、今年度予算で400億円増やしました。14年度概算要求は、それをはるかに上回ります。まさに大軍拡への本格的突入です。
 安倍政権が狙っている自衛隊の“海兵隊”機能の強化では、米海兵隊が使っている水陸両用車を13億円かけて2両購入することにしました。今年度予算で購入した4両と合わせて6両になります。大型の「おおすみ」型輸送艦を、上陸作戦にも使えるよう改修し、水陸両用車を輸送し、発進できるようにすることも狙っています。
 防衛省は6月に米国で陸海空3自衛隊の部隊と米海兵隊で行った水陸両用戦闘能力強化のための共同訓練を今後も行うとしています。米海兵隊の最新鋭輸送機オスプレイの自衛隊への導入をめざしているのも“海兵隊化”を加速させるためです。
 “海兵隊化”は、自衛隊が米海兵隊のように世界のどこの戦争にも“殴り込む”軍隊になることです。米国が自衛隊に米軍戦略の補完的役割の強化を迫っている中で、「離島防衛」が目的であるかのように言って“海兵隊化”を進めるのは国民をあざむくものです。
 防衛省の概算要求が、長距離攻撃と爆撃能力をもつ最新鋭のF35戦闘機を4機購入するために693億円を計上したことも重大です。12年度4機、13年度2機購入と合わせて10機になります。安倍首相が国会で、「F35の能力も生かしていくことも検討しなければならない」とのべているように、F35の拡充は「敵」のミサイル発射基地など「敵基地攻撃」に活用することを含んだものです。「自衛」の範囲を超えて他国の領土を先制攻撃できる能力をもつこと自体憲法違反であり、許されません。
 “海兵隊化”も敵基地攻撃能力強化も、自衛隊を「専守防衛」を大義名分にした軍隊から、侵略のための軍隊に変えるものです。安倍首相は日本が攻撃もされていないのに米国とともに海外で戦争する「集団的自衛権」の行使にふみだそうとしていますが、それだけに自衛隊に海外で戦争する能力をもたせるのは危険です。
統合運用強化も狙う
 防衛省は概算要求の公表と一体で、「防衛省改革の方向性」と題する文書を発表しました。自衛隊で文官と制服組の垣根をなくし、自衛隊の統合運用を強化し、より実践的に「戦争する軍隊」に変えることを狙うものです。
 国民生活を圧迫する軍事費の拡大を許さず、安倍政権が狙う危険な軍拡の道を阻止することがいよいよ重要です。

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日経新聞 2013/8/30 19:45
無人偵察機調査費など4.8兆円 防衛省14年度概算要求
 防衛省は30日、2014年度予算の概算要求を発表した。米軍再編の関連費用を含む総額は13年度当初予算比2.9%増の4兆8928億円。海洋活動を活発にする中国などの警戒監視を強化するため、無人偵察機の15年度導入に向け調査費用を2億円計上。米軍の「グローバルホーク」を念頭においており、米国から詳細な情報を取り寄せて検討を本格化する。
 警戒監視の強化では、航空自衛隊の早期警戒機E2Cによる飛行警戒監視隊を那覇基地(沖縄県)に設けるための整備費13億円も盛り込んだ。
 中国をにらんだ対応では島しょ防衛にも重点を置き、離島上陸作戦などを担う「水陸両用準備隊」を設ける。水陸両用車を2両購入し、今年度分とあわせて6両体制にする。航続距離が長く遠距離の離島との間の輸送に使える米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイの15年度導入に向けた調査費1億円も計上した。
 北朝鮮の弾道ミサイル対策では、地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を防衛省内に常時配備するための施設整備費17億円を盛り込んだ。

NHK 8月30日 17時41分
水陸両用部隊など予算要求へ
 防衛省は、来年度予算案の概算要求について、島しょ部の防衛を強化するため、アメリカ海兵隊のような水陸両用作戦を専門とする新たな部隊を編成する経費など、およそ4兆8900億円を求めることを決めました。
 防衛省は30日、小野寺防衛大臣ら幹部が出席して省議を開き、来年度予算案の概算要求について、今年度予算より2.9%多い4兆8928億円を求めることを決めました。
 それによりますと、南西諸島など島しょ部の防衛を強化するため、アメリカ海兵隊のような水陸両用作戦を専門とする新たな部隊を陸上自衛隊に編成することにしており、水陸両用車を装備する経費として13億円を盛り込んでいます。
また、再来年度・平成27年度に、新型輸送機オスプレイと高い機能を持つ無人偵察機の導入を目指す経費として合わせて3億円を要求しています。
 さらに、北朝鮮による弾道ミサイルの発射に備えて、東京・市ヶ谷の防衛省に地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」を常時配備する経費として17億円を盛り込んでいます。
 このほか、アルジェリアで起きた人質事件を踏まえ、テロに関する情報収集態勢を強化するため、防衛駐在官と呼ばれる自衛官を、新たにアフリカの7か国に派遣するための経費も盛り込みました。
米軍装備の導入目立つ
 今回の予算案には、自衛隊がこれまで保有してこなかったアメリカ軍のさまざまな装備が多く盛り込まれています。
中でも目立つのが、専守防衛に徹し、水際で相手を阻止することを目標としてきた自衛隊が、初めて本格的に取り組んでいる上陸作戦に必要な装備です。
 まず、アメリカ海兵隊が真っ先に海から相手の陣地に上陸する際の主力装備、水陸両用車の「AAV7」です。
 兵隊を乗せて船のように浅瀬を進み、そのまま上陸して戦闘を開始する戦車に似た形の車両で、防衛省は今年度の4両に加え、参考品としてさらに2両をおよそ13億で購入する計画です。
 アメリカ軍は、この水陸両用車を、揚陸艦と呼ばれる大型の軍艦に積み込み、海兵隊員とともに派遣します。
 そして、沖合で揚陸艦の後部ハッチから水陸両用車を発進させ、上陸を開始します。
 防衛省は、アメリカ軍と同じように車両を運用できるよう海上自衛隊の輸送艦を改修する計画で、後部ハッチに滑り止めの塗装を施したり、車両の重さに耐えられるようハッチの設計を変更したりするための費用としておよそ2億円を盛り込んでいます。
 また、沖縄のアメリカ軍普天間基地に配備され、強襲揚陸艦にも搭載可能なオスプレイについても、平成27年度以降、自衛隊に導入するため、およそ1億円の調査費を盛り込みました。
 さらにオスプレイを海上自衛隊の輸送艦でも運用できるようにするため、甲板に特殊な塗装を施し、オスプレイのエンジンから出る高温の排気に耐えられるよう改修を行う計画です。
 このほか、アメリカ軍がイラク戦争などで実戦に投入した大型の無人偵察機、「グローバルホーク」を平成27年度以降導入するため、アメリカ政府から情報提供を受ける費用として、およそ2億円を盛り込んでいて、一連の予算案が認められれば、自衛隊とアメリカ軍の装備の共通化がさらに進むことになります。

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