2013年12月23日月曜日
21世紀の『琉球処分』 普天間移設 力ずくの理不尽さ 自民公約撤回 民意を裏切る行為だ
<各紙社説>
朝日新聞 2013年12月21日05時00分
(社説)普天間移設 力ずくの理不尽さ
東京新聞 2013年11月28日
【社説】普天間「移設」 公約を撤回させる驕り
[京都新聞 2013年12月03日掲載]
社説:沖縄自民の変節 中央の無理強い許せぬ
沖縄タイムス 2013年12月2日 06:00
社説[辺野古容認]代議制の危機は深刻だ
沖縄タイムス 2013年11月28日 05:30
社説[自民県連 辺野古容認]恥ずべき裏切り行為だ
琉球新報 2013年11月28日
社説:県連公約撤回 民意を裏切る行為だ 議員辞職し信を問え
沖縄タイムス 2013年11月26日 06:00
社説[自民議員辺野古容認]公約破棄 議席返上せよ
琉球新報 2013年11月26日
社説:公約撤回 犠牲強要は歴史的背信だ 辞職し有権者に信を問え
沖縄タイムス 2013年11月25日 07:03
社説[「普天間」公約破棄]衆院選は何だったのか
琉球新報 2013年11月23日
社説:自民選挙公約 「苦渋の決断」は通用しない
朝日新聞 2013年12月21日05時00分
(社説)普天間移設 力ずくの理不尽さ
沖縄県の米軍普天間飛行場を県内の名護市辺野古に移設するため、国の埋め立て申請を承認するかどうか。仲井真弘多(なかいまひろかず)知事の判断時期が迫っている。
この1カ月の政府・自民党の沖縄への働きかけはあの手この手、誠実さからはほど遠い露骨な知事包囲網づくりだった。
まずは、沖縄県が地盤の自民党国会議員5人に、選挙公約だった「県外移設」の放棄を迫った。離党勧告までちらつかせ辺野古容認に転じさせ、党県連にも同調させた。
うつむきがちの5人を従えた石破茂・自民党幹事長の会見を見て、多くの県民が「21世紀の『琉球処分』だ」と怒った。県議会でも屈辱は語られた。
その光景が、1879年に明治政府によって琉球王国が解体され、日本に併合された歴史と重なったからだ。
次の手は、来年度予算の満額回答方針などの振興策や、米軍基地への環境調査に言及した負担軽減策の提示だった。
来年1月の名護市長選で辺野古移設反対派が再選すると、移設は暗礁に乗り上げる。政府には、その前に知事の埋め立て承認を得て、辺野古移設を軌道に乗せたいという思惑がある。
一方、仲井真知事は沖縄政策協議会で政府に「普天間飛行場の5年内の運用停止」「日米地位協定の改定」などを求めた。
いずれも米国が容易に受け入れそうにない難題だ。だからこそ政府の真剣さが試される。
この際、はっきりさせておくべきことがある。
政府・自民党は「県外移設はあり得ない」「(辺野古がだめなら)普天間の固定化になる」と、沖縄に県内移設を迫った。
だが、そもそもなぜ「県外」はあり得ないのか。県内以外の移転先を真剣に探したのか。沖縄県が何度尋ねても、いまだに納得いく説明はない。
96年の返還表明から17年。普天間はすでに固定化している。
辺野古移設が決まっても、日米合意による返還時期は早くて9年後。政府が前倒しを約束しても、理不尽さを味わってきた県民は簡単には信じまい。
自民県連や一部の首長は県内移設容認に転じたが、那覇市議会や県政与党の公明党県本部は、県外移設を堅持している。
朝日新聞などによる県内の世論調査でも、64%が知事の埋め立て承認に反対。政府の負担軽減策も63%が実現に懐疑的だ。
「琉球処分」の言葉が飛び交うほど不信の澱(おり)がたまった沖縄に、政府は誠実に説明を尽くし、信頼回復を図るしかない。それがすべての出発点になる。
東京新聞 2013年11月28日
【社説】普天間「移設」 公約を撤回させる驕り
自民党沖縄県連が普天間飛行場の「県内移設」容認に転換するとは、どうしたことか。「県外移設」を独自に掲げていたが、撤回を求める首相官邸や党本部の圧力に屈した。有権者への裏切りだ。
国政選挙で自民党に一票を託した沖縄の有権者にとって、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)は名護市辺野古への県内移設ではなく、県外移設が自民党との契約だ。これを一方的に破棄することは到底許されず、民主主義を壊す暴挙でもある。
昨年十二月の衆院選で、自民党本部は普天間問題を公約に明記せず、沖縄の同党公認候補はそれぞれ県外移設を訴えて、県内四小選挙区のうち三選挙区で当選した。
今年七月の参院選では、党本部が県内移設を掲げたのに対し、県連は県外移設を「地域公約」として訴え、党本部も結局、容認した経緯がある。
自民党は、県外移設を訴えながら県内移設に転換したり、消費税増税を否定しながら増税を進めた民主党を、公約違反と厳しく批判していたではないか。
その失敗に学ばず、公約破りという同じ過ちを繰り返すのなら、民主党よりも、たちが悪い。
政府はすでに辺野古沿岸部への移設に向けて、沖縄県に埋め立ての許可申請を提出している。仲井真弘多県知事の判断待ちだ。
知事はこれまで、県民の反対が強い県内移設を「事実上不可能」としてきた。安倍晋三首相、菅義偉官房長官率いる首相官邸や党本部は、仲井真県政を支える自民党県連が県内容認に転換すれば、知事も軟化すると考えたのだろう。
国会議員は憲法上、一地域ではなく、全国民の代表である。国の安全保障上、普天間は県内移設が適切だと考えての公約撤回なら、当初からそう訴えるべきだった。
ここは潔く、沖縄県選出の自民党国会議員全員が辞職して、来年四月に行われる補欠選挙で県民の信を問い直したらどうか。
沖縄県には在日米軍基地の約74%が集中する。すでに過重な基地負担を負う県民は、これ以上の負担を望んでいない。普天間は県外へ、という地域の一致した願いを、中央政府や党中央が力でねじ伏せるのはいかがなものか。
この問題は、特定秘密保護法案の衆院通過を強行した安倍政権の姿勢にも通底する。衆参両院で多数を制した安倍自民党の「数の驕(おご)り」だ。「決める政治」の名の下に、民意がどんどん切り捨てられていく。これでいいのか。
[京都新聞 2013年12月03日掲載]
社説:沖縄自民の変節 中央の無理強い許せぬ
どう喝まがいのやり方で、中央が沖縄に勝手な方針を押しつけることが許されるのか。沖縄の民意を全く無視している。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、自民党沖縄県連は、辺野古移設案を容認することを正式に決めた。
これまで「県外移設」は、同党沖縄県連の公約だった。今年の参院選でも、1年前の衆院選でも、沖縄の自民党は普天間飛行場の県外移設を掲げてきた。方針転換は有権者への裏切りに他ならない。
沖縄は本土防衛の「捨て石」とされる地上戦で多数の住民犠牲者を出し、戦後長く基地の島として米国の支配下に置かれてきた。
辛酸をなめてきた歴史を振り返れば、「本土」が圧力を加え、有権者との公約に背くよう強いるのは、むごい構図だ。
これこそ、長年続いてきた本土と沖縄の力関係の繰り返しではないか。議会制民主主義を踏みにじるものでもある。
菅義偉官房長官と石破茂党幹事長の強圧的な手法は目に余る。県連代表との会談で「日米合意があるのに、県連が県外移設を主張するのはとんでもない。党方針に従うべきだ」「県外を主張し続ければ、普天間飛行場の固定化はほぼ確実になる」と発言したという。上意下達の脅しとしか受け取れなかっただろう。
沖縄の人々は一貫して、県外移転を求める声を上げてきた。
今年6月の沖縄戦「慰霊の日」に、仲井真弘多知事は「一刻も早い普天間飛行場の県外移設を」と切望した。県民の反対の声を押し切り、普天間に配備が強行された米軍新型輸送機オスプレイに、県内全市町村が配備撤回と、県内移設断念を政府に求めている。
政府は、辺野古移設に必要な沖合の埋め立て申請を年内にも承認させようと、仲井真知事に重圧をかけている。知事が「固定化という発想が出てくるのは一種の堕落」と言うように、「県内か固定化か」の二者択一を迫ること自体、道理が通らない。
住宅地の中にある危険な普天間飛行場は米国が返還を表明してから17年以上たつ。抜本的な負担軽減策を示せていないことこそ問題だ。
移設先の辺野古がある名護市は来年1月に市長選が控える。現市長は、米軍人による事件事故が続いてきたことから「子や孫に負の遺産を残すべきではない」と、受け入れ断固反対の立場だ。
政権が移設容認派の候補を当選させようと、党県連に有権者への裏切りを無理強いする姿は、ゆがんでいる。沖縄の声に、政府も自民執行部も耳を傾けるべきだ。
沖縄タイムス 2013年12月2日 06:00
社説[辺野古容認]代議制の危機は深刻だ
米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で自民党県連(翁長政俊会長)は1日、常任総務会を開き、辺野古移設容認の方針を正式に決めた。翁長会長は政策変更の責任をとって辞意を表明した。
「普天間飛行場の危険性除去と早期返還・固定化を阻止するため、辺野古移設を含むあらゆる選択肢を排除しない」。回りくどくて分かりにくい表現は、官僚の作文をほうふつとさせる。逃げ道づくりに腐心したような表現だ。
案の定というか、「あらゆる選択肢という言葉には県外移設も含まれる」と釈明する国会議員も現れた。
自民党県連は2010年7月の参院選、12年12月の衆院選、12年6月の県議選、今年7月の参院選で、党本部と異なる県外移設の方針を掲げた。
県議会の自民党会派は県議会各会派や県内41市町村と足並みをそろえて東京要請行動に参加し、安倍晋三首相に直接、建白書を手渡した。
どのように抗弁しようとも、今回の組織決定が有権者に対する背信行為であることは明らかである。有権者との約束を裏切り、政治への信頼をずたずたに切り裂いてしまったのだから。
自民党県連は、沖縄の戦後政治をけん引してきた栄光の歴史に、自ら大きな汚点を残してしまった。
選挙の時には「県内移設では戦えない」と県外移設を公約に掲げ、当選すると今度は「普天間の固定化を避けたい」と理屈をつけて公約を変更する。そんなことを許していては代議制民主主義は成り立たない。
■ ■
稲嶺進名護市長は、市議会で可決された辺野古移設断固反対の市長意見を正式に県に提出した。埋め立てに伴う環境への影響を調査していた県環境生活部は「懸念が払拭(ふっしょく)できない」との意見を土木建築部に提出した。
地元の反対と、環境保全面の懸念材料。それだけでも県外移設を求める十分な理由がある。だが、政府自民党の最近の対応は、万事が「問答無用」の「どう喝調」だ。
菅義偉官房長官は11月、自民党県連代表と会談した後、記者団に対し、県外移設は「あり得ない」と断言した。県民を愚弄(ぐろう)するような発言である。
普天間移設、オスプレイ配備、「主権回復の日」記念式典、日台漁業協定締結-いずれのケースについても、党派を超えた「沖縄の声」は、安倍政権によって完全に無視された。これほど露骨に強権的に沖縄に対処した政権は、過去に例がない。
■ ■
自民党の那覇市議団は県連の方針変更に反発し、市議会で県内移設断念の意見書を採択する。自民党県連顧問の仲里利信元県議会議長は県連に顧問の辞任届を郵送した。
気骨のある政治家がいるという事実は、沖縄の多くの人びとを勇気づける。次は仲井真弘多知事の番である。
党本部からの圧力による自民党県連の公約変更を知事判断の材料にすべきではない。これまで主張してきたこととたがわないような判断を、強く期待したい。
沖縄タイムス 2013年11月28日 05:30
社説[自民県連 辺野古容認]恥ずべき裏切り行為だ
沖縄関係の自民国会議員5人に続き、県議団(議員15人)も「県外移設」の公約をあっさり撤回した。「みんなで渡れば怖くない」を地でいくような雪崩現象だ。
有権者はこれから何を信じて投票すればいいのか。「信なくば立たず」という格言があるように、言ったことを守り、ウソをつかないことが政治の信頼を維持する前提だ。有権者を欺き、政治への不信感を極限まで高めてしまった責任は限りなく重い。
東京・永田町の自民党本部で開かれた石破茂幹事長の会見の光景は、歴史の歯車が1879(明治12)年の琉球処分まで後戻りしたような印象を抱かせた。
説明する石破幹事長は琉球処分官。一言も発言する機会がなく、椅子に座ったまま硬い表情の国会議員5人は、沖縄から連行され、恭順を誓った人びと…。
国場幸之助衆院議員ら3人は、それまで「県外移設」の公約を堅持していた。離党勧告をちらつかせた党本部の圧力に耐えきれなくなったのである。
27日には、自民党県連(翁長政俊会長)が県議団の議員総会を開き、米軍普天間飛行場の辺野古移設を容認する方針を決めた。
外堀から埋めていって、「オール沖縄」の構図を崩し、政治状況が変わったことを理由に仲井真弘多知事の翻意を促す-それが、安倍政権と自民党が一体になって進めてきた沖縄対策だ。
だが、この方針は、政府自民党の強権的な手法と強引さを際立たせる結果を生んでいる。もういちど思い起こしてみよう。
自民党県連は、2010年の参院選沖縄選挙区、12年末の衆院選で、党本部とは異なる「県外」の公約を掲げて戦い、衆参合わせて5人を当選させた。昨年6月の県議選で当選した15人も、そのほとんどが県外もしくは県外・国外を公約に掲げた。
県内41市町村の代表らは今年1月、安倍晋三首相に会い、建白書を提出してオスプレイの配備撤回や県内移設の断念を要請した。自民党県議団は、その要請行動にも他の会派と共に加わっている。
現在の自民党の国会議員と県議の大部分は「県外移設」を公約に掲げて当選した人びとであり、どの党にもまして県外移設に力を入れなければならない政治的な義務を負っているのである。
それができないのなら、関係議員は全員辞職し、あらためて辺野古移設の公約を掲げ、信を問うべきだ。それが代表制民主主義の王道である。
国会議員や県議団は公約撤回の理由について「普天間の固定化を避けるため」だと主張する。
政府自民党首脳が「県外移設を求めるなら普天間は固定化する」と指摘するのは、沖縄の声を分断し、県外移設の公約を撤回させるための政治的な揺さぶりである。脅し以上の意味はない。
思い通りに進まないことに対するいらだちの表れだとみたほうがいい。
米軍が普天間返還に合意したのは(1)訓練の制約要因が多すぎる(2)墜落事故の危険性を除去する必要がある(3)施設全体が老朽化していることなど、米軍の中にも移設しなければならない理由があったからだ。
そもそも普天間の固定化とは一体何を指すのか。返還計画そのものを白紙に戻すことなのか、返還が計画よりも遅れるということなのか。計画の遅延ということであれば、すでに固定化されていると言うべきだろう。
普天間返還を白紙化することはあり得ない。グアム移設計画を含む米軍再編そのものが頓挫し、あらゆる問題に波及するからだ。
仲井真知事は普天間固定化発言について「簡単に固定化を口にする役人がいるとすれば無能」「一種の堕落」であると批判した。至言である。
政府は辺野古が唯一の選択肢だと強調する。ならば、安倍政権は、ほかにどのような選択肢を検討したのか、どのプランのどこに問題があったのかをまず明らかにすべきである。
それもせず結論だけを押しつけるのは情報操作と言うしかない。
琉球新報 2013年11月28日
社説:県連公約撤回 民意を裏切る行為だ 議員辞職し信を問え
自民党県連が県議の議員総会を開き、米軍普天間飛行場の辺野古移設容認を決めた。県議らは県外移設を公約していたから、公約の撤回だ。公約を媒介に有権者と候補者が契約を結ぶという代表制民主主義を根底から破壊した。
それだけではない。沖縄の政治家の公約の軽さを全国に発信した。恫喝(どうかつ)に屈して節を曲げる大人の姿を子どもたちに見せてしまった。自らが県民の命と人権を脅かす側に回る罪深さを自覚しているのか。
公約を撤回する以上、有権者との信託関係は消滅した。自民党県連の県議は全員、議員の職を辞し、信を問うべきだ。
近現代史に残る汚点
県連は、党本部と県関係国会議員が合意した内容を進めるという。「普天間の危険性除去へ、辺野古移設も含めあらゆる選択肢を排除しない」というのがそれだ。県外移設も排除しないのだから公約撤回ではないと強弁したいのだろうが、詭弁(きべん)でしかない。
昨年6月の県議選で、自民党県連の県議15人のうち、無投票の2人と回答保留の1人を除く12人全員が、移設先について「県外」ないし「県外・国外」を公約に掲げていた。「県内」を主張していた者は一人もいない。今後、彼らの公約を信じられるだろうか。
県議会は2010年2月、「県内移設に反対し、国外・県外移設を求める意見書」を、自民会派も含む全会一致で可決した。ことし1月には超党派の県議団が県内の全市町村長とともに県内移設断念を求める「建白書」を政府に提出した。県連の決定は、民意もこれらすべても裏切る行為である。
党本部は今回、離党勧告をちらつかせていた。自民党国会議員も県連も、自分の保身のために沖縄を売り渡したに等しい。沖縄の近現代史に刻まれる汚点だ。
彼らは普天間固定化の危険を方針転換の理由に挙げる。だがキャンベル前米国務次官補は「普天間で事故が起きれば住民の支持は壊滅的打撃を受ける」と述べ、米上院の重鎮マケイン氏も新駐日大使にその危険を警告した。固定化は、実は米側こそが避けたい事態であることを示している。
こうした情報を収集しようともせず、沖縄に基地を押しつけておきたい側の言をうのみにしたのでは、分析能力が問われよう。
西銘恒三郎衆院議員は「ボクは、正直だ」と公約違反に居直り、島尻安伊子参院議員は「待望の子どもが生まれた時にはみんなでお祝い」と、辺野古容認を無邪気に称揚した。侮辱的発言だ。
政府がネック
キャンベル氏もデミング元米国務副次官補も、現行計画と別の選択肢の必要性を示唆している。現行計画をごり押しする言動を繰り返したアーミテージ元米国務副長官ですら、現行案と違う計画「プランB」の必要性を唱えていた。
米国の財政悪化は深刻で、軍事費削減は焦眉の急である。海兵隊3個師団を2個に減らすことも決定事項だ。黙っていても在沖海兵隊は撤退の流れにある。なのにそれが表面化しないのは、日本政府が妨害しているからではないか。
復帰後の1972年10月、米国防総省が在沖米海兵隊基地の米本国統合を検討していたのに、日本政府が引き留めたことが豪州の公文書で明らかになった。2005年の米軍再編協議でも、米側が県外移設を打診したのに日本側が受け付けなかった事実がある。
沖縄の基地負担軽減のネックになっているのは日本政府なのだ。「県外移設などとんでもない」と言い放つ菅義偉官房長官の口ぶりに、政府の体質が表れている。
県連は今後、知事に埋め立て承認を働きかけるというが、沖縄に犠牲を強いる先兵になるというのか。「県外」を堅持し気骨を見せる那覇市議団には、今の姿勢を貫いてもらいたい。沖縄さえ拒否の姿勢を続けていれば、現行案の断念は時間の問題なのだ。そうした情勢を冷静に見極めておきたい。
沖縄タイムス 2013年11月26日 06:00
社説[自民議員辺野古容認]公約破棄 議席返上せよ
選挙時に掲げた公約と正反対の転換をしておきながら恬(てん)として恥じない。選挙公約は有権者と交わした重い契約だ。破棄は政治家の自殺行為である。偽りの公約で当選したことを意味し、国会議員の正当性が失われた。辞職して県民に信を問うべきである。
米軍普天間飛行場問題で、県選出・出身の自民党衆参両院議員5人は25日、党本部で石破茂幹事長と会談。「県外移設」の公約で選挙戦を勝ち抜いてきた5人が全員、辺野古移設を容認した。
自民党が政権を奪還した衆院選からまだ1年もたっていない。衆院で議席ゼロだった沖縄でも、比例復活を含め県外移設を掲げた4人が当選する大躍進を果たした。
普天間の移設先をめぐって党本部とねじれが生じ、いずれ深刻な軋轢(あつれき)が生じるのは目に見えていたはずだ。沖縄の民意に支えられ、県外移設の使命を託された政治家としての気骨と気概はどこへいったのだろうか。
25日の会談で辺野古移設を容認したのは国場幸之助氏(1区)と、移設先の名護市辺野古沿岸部を抱える比嘉奈津美氏(3区)。宮崎政久氏(比例、2区)は24日に記者会見し、辺野古移設を容認する考えを明らかにしていた。
西銘恒三郎氏(4区)と、2010年の参院選で再選した島尻安伊子氏(全県区)は今年4月に、いち早く公約を破棄している。
議員らのホームページ(HP)になお、躍る「ぶれない信念!!」「最も早く確実な方法として県外へ移設すべきだ」との公約がむなしく響く。
■ ■
安倍政権は沖縄の民意を無視し、強権と恫喝(どうかつ)によって基地政策を強行しようとする、近年見たことのない政権である。自民党本部は衆・参院選で5氏を公認している。今年7月の参院選で敗れた候補者を公認した。いずれも「県外移設」を公約としていた。党本部は沖縄で県外移設の公約を掲げることを認めていたのである。公約破棄を迫るのは、衆参両院で自民党1強体制の議席を得た自信とおごりから出ているのは間違いない。
離党勧告の「踏み絵」で衆参議員を転ばせ、次いで自民党県連を転ばす。そして仲井真弘多知事から埋め立て申請の承認を得る考えである。
石破氏との会談で、辺野古の埋め立て承認を知事に求める方針でも一致したという。
公約を破棄して選挙時に受けた有権者の支持を裏切るばかりか、埋め立て承認に向けた「知事包囲網」に積極的な役割を果たすということである。到底納得できない。
■ ■
政治家は、有権者が共鳴した公約を実現するために全力を尽くさなければならないはずだ。吹けば飛ぶような公約であれば、有権者の政治家に対する信は失われ、代表制民主主義が深刻な危機に陥ると言わざるを得ない。
いち早く公約を破棄した西銘氏が「ボクは、正直だ」とブログにつづり、島尻氏は3人の転換を出産にたとえ「待望の子どもが生まれたら、みんなにお祝いをしていただける環境にしたい」と語った。厚顔無恥、有権者を愚弄(ぐろう)しているというほかない。
琉球新報 2013年11月26日
社説:公約撤回 犠牲強要は歴史的背信だ 辞職し有権者に信を問え
公約は有権者との約束だ。それを裏切るなら、そもそも公約をする立場に立つべきではない。自民党国会議員3氏が米軍普天間飛行場の辺野古移設容認を表明した。
たやすく圧力に屈し、主張を撤回するなら政治家の資格はない。屈服でないと言うなら、容認が正しいと判断した根拠を堂々と有権者に訴え、審判を仰ぐのが筋だ。いずれにせよ先に容認した2氏を含め、自民国会議員の5氏全員、職を辞して信を問うべきだ。
首相官邸も自民党本部も「オール沖縄」の民意を知りつつ、力ずくで屈服させた。暴政は植民地扱いに等しく、許しがたい。
暴政の先導役
宮崎政久氏は会見で「状況が変化」したと釈明した。だが「変化」したのは党本部の圧力の度合いと宮崎氏の意思だけだ。いったいいつ、世論調査で辺野古移設容認が県民の過半数になったのか。
比嘉奈津美氏は「(普天間)固定化の可能性が非常に高いというので(容認を)判断した。県民の命の方が大事だ」と述べた。だが、移設すれば北部の東海岸を垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが飛ぶことになる。「県民」の中に東海岸の住民は入らないのか。
国場幸之助氏の弁も奇妙だ。確かに石破茂幹事長に対し、県外移設の公約について「組織人としてふさわしくなく、何らかの措置があるなら甘んじて受ける」と述べた。だが「辺野古移設も含むあらゆる可能性を排除しない」のだから、辺野古容認には変わりない。
「県外移設はあり得ない」と主張する政府・与党の説得に応じ、「辺野古移設実現に全力を尽くす」と発表する会見に同席しておいて、「県外を求める公約は変えない」と言うのは無理がある。
国会議員に政府・与党が次に求めるのは、辺野古埋め立て申請を承認するよう仲井真弘多知事を説得する役であろう。
沖縄の有権者たちから票と信頼を得た議員たちが、政府・与党の先導役として沖縄に基地を押しつける作業にいそしむのか。議員たちが自らの保身のため、沖縄に犠牲を強要する姿を見るのは悲しい。
森本敏前防衛相は普天間基地の移設先について「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的には沖縄が最適の地域だ」と述べ、海兵隊の常駐場所は沖縄でなくてもよいと暴露した。基地に反対する本土の民意は重く見るが、沖縄の民意は無視していいということだ。本土のために沖縄は犠牲になれというに等しい。
分断統治
その犠牲強要のシステムに県民は気付いた。だからこそ普天間の県内移設に全市町村長が反対し、全市町村議会と県議会が反対決議をした。そこへ政府・与党が分断のくさびをうちこんだのだ。
古今、植民地統治の要諦は「分断統治」(divide and rule)とされる。支配層が、支配される側をいくつかのグループに分け、対立をあおり、分裂・抗争させることで統治の安定を図る仕組みのことだ。支配層は善意の裁定者のごとく、涼しい顔をしていられる。
沖縄の世論が割れていればいるほど、政府・与党と防衛・外務官僚はそのような「高み」にいられるわけだ。今回、その分断統治の試みは成功しつつある。
国会議員たちは、沖縄を代弁するのでなく沖縄に犠牲を強要する側についてしまった。民意に背いただけでなく、沖縄戦の犠牲者たちへの歴史的背信でもある。
この局面で、政府と自民党本部の狙いはもう一つあろう。沖縄に抵抗は無駄だと思わせることだ。力ずくで公約を撤回させたのは、沖縄に無力感を植え付け、抵抗の気力を奪おうとしているのだ。
だがそれはまた、彼らが沖縄の抵抗を恐れていることの裏返しでもある。当然だ。日本が民主主義を標榜(ひょうぼう)する以上、主張の正当性は沖縄の側にあるのだから。
沖縄の将来像を決めるのは自民党本部や官邸ではなく、沖縄の民意だ。その正当性を自覚したい。
沖縄タイムス 2013年11月25日 07:03
社説[「普天間」公約破棄]衆院選は何だったのか
米軍普天間飛行場の移設問題で、県関係の自民党国会議員や自民党県連への圧力が、日に日に高まっている。
昨年12月の衆院選で当選し、これまで県外移設の選挙公約を堅持してきたのは国場幸之助(1区)、宮崎政久(比例、2区)、比嘉奈津美(3区)の3氏。このうち宮崎氏は24日夕、記者会見し、「いかなる可能性も、いかなる選択肢も、排除すべきではない」と述べ、県内移設を容認する考えを明らかにした。
25日には石破茂幹事長が国場、比嘉両氏に会い、翻意を促す。
昨年12月の衆院選沖縄選挙区は、普天間問題が最大の争点だった。自民党県連は県外移設の方針を掲げ、宮崎氏も県連と歩調を合わせ、県外移設を主張して選挙戦を戦った。それなのに当選後に、党本部の圧力で公約を破棄してしまった。代表制民主主義の根幹にかかわる事態だ。党本部や宮崎氏本人の責任は重い。
政府・自民党の最近の言動は異様である。
離党勧告をちらつかせて選挙公約の破棄を迫る。辺野古を拒否すれば普天間は固定化されると脅し、態度変更を迫る。揚げ句の果ては政府中枢の菅義偉官房長官まで、「(県外移設は)あり得ない」と、保革を超えた全県的運動を愚弄(ぐろう)するようなことを平然と言ってのける。
なりふり構わずとはこういうことを言うのだろう。
だが、国会における「数の力」を背景にした強権的な手法は、辺野古移設の深刻な問題性を浮き彫りにするだけである。
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「普天間の固定化を避けるためには辺野古移設が現実的」だと政府は強調する。だが、果たして本当にそうなのだろうか。
日米両政府と沖縄県、名護市はいずれもこの問題の直接の当事者である。普天間返還を米側に提起した橋本龍太郎首相(故人)が折に触れて「地元の頭越しには進めない」と強調したのは、そのあたりの事情を物語っている。
一方の当事者である名護市は、県に提出する市長意見の中で辺野古移設「断固反対」の意思を明確に打ち出し、市議会も賛成多数でこの案を可決した。
もし仲井真弘多知事が、市長意見を尊重して埋め立て申請を不許可とし、来年1月の名護市長選で反対派候補が当選すれば、辺野古移設計画はもう無理だ。その場合、米国側は辺野古案を断念し、新たな案を模索する動きを表面化させるだろう。これが予測可能な現実的見通しである。
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「普天間固定化」という脅し文句は、普天間返還を決めた理由を自ら否定し、1996年以来の取り組みを自ら無にするようなものだ。
仲井真知事は慰霊の日の平和祈念式典で県外移設を誓い、41市町村長(代理を含む)は、県内移設断念を求める建白書をそろって安倍晋三首相に提出した。
その姿勢から簡単に後退するようなことがあれば、沖縄は全国から「やはり」という目で見られ、取り返しのつかない政治的対立と混乱を招くことになるだろう。
琉球新報 2013年11月23日
社説:自民選挙公約 「苦渋の決断」は通用しない
自民党本部と政府が米軍普天間飛行場の辺野古移設を容認するよう、同党の県選出・出身国会議員や県連に強要している。圧力に屈するか否か、県民は固唾(かたず)をのんで見守っている。
それにしても、だ。有権者との約束を守る。こんな初歩的なことすら妨害する政党とはいったい何か。公約など反古(ほご)にしても構わないという姿勢を、これほど露骨に示して恥じない自民党本部には、政党を名乗る資格も民主主義を語る資格もない。
民主党政権は公約をあっさり翻した。同党支持の県内での現状を見れば、その影響は明らかだ。「苦渋の決断」などという美辞麗句は通用しない、と知るべきだ。
自民党県連と県関係国会議員には自覚してほしい。あなた方は歴史法廷に立っている。琉球・沖縄の歴史に照らして恥じない姿勢を、毅然(きぜん)として示してほしい。
4月にあっさりと辺野古移設容認に転じた西銘恒三郎衆院議員は、昨年12月の衆院選で「県外移設を求める」と公約にはっきり書いた。島尻安伊子参院議員も「県民の総意である県外移設を求め、日米合意の無効を訴える」とうたった。
公選制は、公約を媒介に議席を委託する行為だ。その公約を反古にすれば、議席の委託も無効になるのが論理的帰結であろう。あらためて言うが、西銘、島尻両議員は辞職するのが筋だ。
国場、比嘉、宮崎3衆院議員も「県外移設と言ったのに一気に崩れた政権(民主党政権)にはもう任せておけない」(比嘉氏)などと述べ、県外移設を公約した。
党本部の石破茂幹事長は「離党すべきだとの声も出ている」と述べたが、脅迫以外の何物でもない。菅義偉官房長官が「県外などとんでもない」と言い放つに至っては、沖縄の民意を侮蔑するに等しい。国場氏ら3氏は、沖縄の誇りにかけて公約を貫いてほしい。
菅氏らに聞きたい。党本部は、県内の候補者が県外移設を掲げているのを十分知りながら公認とした。その時点で県内有権者と契約を交わしたに等しいのではないか。
それを反古にすれば、間接的ながら党本部も公約違反なのだ。それを公然と表明して恥じないのは民主主義を否定する行為であろう。
県連の県議も、無投票と回答保留を除く12人全員が県外(国外)移設を主張した。県民との約束の重みをかみしめてもらいたい。
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