沖縄知事 新基地認めず 「瑕疵がある」/ 国 不服審査請求へ 埋め立て続行方針
<報道記事>
以下引用
アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡って、沖縄県の は、名護市辺野古沖の埋め立て承認について「法律上の瑕疵(かし)がある」などとして取り消しました。
沖縄防衛局は移設に向けた工事を続けるため、 の執行停止と無効を求める申し立てを直ちに行う方針です。
アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡り、沖縄県の は先月、名護市辺野古への移設を阻止するため、仲井真前知事が行った移設先の埋め立て承認を取り消す方針を表明し、工事を行う沖縄防衛局に対し反論を聴く機会を設けるなどの手続きを進めてきました。
そして、一連の手続きが終わったことを受けて、 は13日午前8時半、「埋め立て承認には法律上の瑕疵(かし)がある」などとして承認を取り消すための文書を決裁し、沖縄防衛局に通知しました。
は記者会見し、今回の決断の理由や今後の対応について説明することにしています。
これに対し、政府は移設計画を進める方針で、沖縄防衛局は工事を続けるため、直ちに行政不服審査法に基づき、 の執行停止と無効を求める申し立てを国土交通大臣に行うことにしています。
国土交通省は、沖縄県の主張を確認するなどしたうえで申し立てを認めるかどうか判断することにしており、最終的には政府と沖縄県による法廷での争いに発展することも予想されます。
国交省が判断求められる可能性
沖縄県の が名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消したことで、今後、国土交通省が判断を求められる可能性があります。
これは、埋め立て承認が、国の強い関与を認める「法定受託事務」とされているからで、知事の承認の根拠となる公有水面埋立法は国土交通省が所管しています。
防衛省が今後、 の無効を求めて国土交通省に行政不服審査請求を行った場合、国土交通省は沖縄県の弁明書や防衛省の反論書などを基に審理を進め、防衛省の請求を認めるか棄却するか判断することになります。
また、防衛省が行政不服審査請求とともに、知事の の執行停止を申し立てた場合、国土交通省は緊急性があると判断すれば、知事の意見を聞いたうえで、審査の間、取り消しの効力を一時停止することができます。このほか、地方自治法には国土交通大臣が著しく公益を損なうことが明らかだと判断した場合、知事に対し改善勧告や改善指示を行う手続きが定められています。
知事が従わない場合、国が裁判を起こし、最終的に国土交通大臣が知事の代わりに埋め立てを承認する「代執行」の手続きも定められています。
裁判なら「代理署名拒否」以来の事態に
今後、仮に国と沖縄県が法廷で争うことになれば、20年前、当時の大田知事が軍用地の強制使用を巡る代理署名を拒否し、基地問題を巡って双方が正面から対立して以来の異例の事態となります。
沖縄のアメリカ軍基地を巡っては、沖縄県知事が土地の提供を拒んだ地主に代わり必要な書類に署名して強制使用を継続する代理署名の仕組みがあり、20年前の平成7年、当時の大田知事は署名を拒否し、国が裁判を起こしました。
大田知事が署名を拒否し続けた背景には、この年、少女暴行事件などアメリカ軍が関係する事件や事故が相次ぐなどして基地に反対する住民の声が高まったことがあります。裁判は平成8年、最高裁判所が「公益が損なわれる」などとして、知事に代理署名を命じた高等裁判所の判決を支持し、沖縄県側の上告を退けました。
一方で、15人の裁判官のうち6人が、判決理由を補足する形で、沖縄に基地が集中し住民が重い負担を強いられているという意見を述べるなど、沖縄県側の主張に一定の理解を示しました。
今後、仮に国と県が法廷で争うことになれば、20年前、大田知事が代理署名を拒否し、基地問題を巡って双方が正面から対立して以来の異例の事態となります
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐり、翁長雄志(おながたけし)知事は13日午前、移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。移設計画は法的根拠を失うため、国は作業続行に向けた対抗措置として、ただちに行政不服審査法に基づく不服審査請求を行う方針。移設計画をめぐる国と県の関係は決定的な対立を迎えた。
翁長氏は同日午前10時から県庁で記者会見し、「検討した結果、取り消しが相当であると判断した」と表明。仲井真弘多(ひろかず)・前知事による承認は法的に瑕疵(かし)があるため取り消したと説明した。その上で、「今後も辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」と語った。同日午前、県職員が埋め立ての事業主体である沖縄防衛局を訪れ、承認取り消しを伝える通知書を手渡した。
通知書では取り消し理由として、「普天間飛行場が他の都道府県に移転したとしても、沖縄には依然として米軍基地や自衛隊基地があり、抑止力が許容できない程度まで低下することはない」「県内移設の理由として地理的優位性などが挙げられているが、根拠が示されていない」などを挙げている。
公有水面埋立法は、国が海などを埋め立てる際には知事の承認が必要と定めており、承認が取り消されたことで、辺野古沿岸部埋め立ての法的根拠が失われる。ただ、事業を進める防衛省が同法を所管する国土交通相に対して行政不服審査法に基づく不服審査請求を行い、請求が認められれば、作業は続行できる。中谷元防衛相は13日、「埋め立て承認に瑕疵はなく、取り消し処分は違法であるとの立場に揺るぎはない。承認取り消しは違法で取り消されるべきであるとの審査請求を速やかに行う」と表明。不服審査請求手続きに入る考えを明らかにした。
一方、県側は国の対応への対抗措置も検討しており、最終的には法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。
移設計画は、普天間飛行場に替わる基地施設を造るため辺野古沿岸部約160ヘクタールを埋め立てる予定。沖縄防衛局が2013年3月に埋め立てを申請し、当時の仲井真知事が同年12月に承認した。
翁長氏は14年11月、普天間の県内移設反対を掲げて初当選。埋め立てを承認した審査過程を検証する第三者委員会を設置し、今年7月、「法律的な瑕疵がある」との報告を受けた。8~9月には、移設を進める国と約1カ月間の集中協議を行ったが平行線に終わり、「取り消しに向けた手続きを始める」と9月14日に表明していた。
国は、取り消し手続きの一環として県が設定した任意の意見聴取に応じず、県が改めて実施した行政手続法に基づく聴聞には「承認に瑕疵はない」などとする陳述書を提出。移設計画を予定通り進める姿勢を示していた。(上遠野郷、二階堂勇)
朝日新聞 2015年10月13日11時31分
「翁長よくやった」 辺野古取り消し、反対派から歓声
「埋め立て承認取り消し」の一報が伝えられ、キャンプ・シュワブ前に設けられた移設反対派のテントから歓声があがった=13日午前、沖縄県名護市辺野古、岩波精撮影
沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が13日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設先とされる同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。辺野古にある米軍キャンプ・シュワブのゲート前では同日午前、移設計画に反対する人々から拍手がわきおこり、「よし」「翁長よくやった」と声が上がった。
反対派は午前6時ごろから、この日の座り込みを開始。午前10時に沖縄県庁で の記者会見が始まると、スピーカーから流れる音声に約200人が聴き入った。19年間座り込みを続ける島袋文子さん(86)は「明日から大変だと思うけれど、負けない。私たちは命をかけて座っている」と話した。
1週間前から抗議行動に参加しているという同県宜野座村の安慶田由美さん(26)は「これから国も対抗してきて、全面対決になると思う」。那覇市で生まれ育ったが、「基地があるのが当たり前で、平和活動に参加したこともなかった」。仕事の関係で上京し、6月から安保法に反対する国会前集会に参加するようになって思いが変わったという。「戦争は昔のことと感じていたけれど、安保法の動きを見ていてひとごとと思えなくなった。民主主義は地元に住む人の意見を尊重するはず。いまの政府のやり方はおかしい」
同県うるま市から来たという池原盛助さん(76)は「翁長さんはぶれたりしないと信じていた。孫やひ孫に基地のない社会を残すためにも戦い続ける。これからが勝負よ」。同県浦添市のキャンプ・キンザーで40年間働いた。ベトナム戦争の時には、兵士のためのアイスクリームを現地に送ったという。「基地は戦争につながる。造らせないことが必要だ」と話した。(岩波精)
朝日新聞 2015年10月13日13時57分
菅官房長官「非常に残念」 辺野古承認取り消し
菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が米軍普天間飛行場の移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消したことについて、「承認に際しての法的瑕疵(かし)はない。(取り消しは)普天間飛行場の危険性除去に向けた努力を無視するもので、非常に残念だ。移設に向けた工事を進める考えに変わりはない」と語った。
また、中谷元・防衛相は同日午前の記者会見で、「審査請求と執行停止申し立てを速やかに行う」と語り、行政不服審査法に基づく不服審査請求と、一時的に取り消しの効力を止める執行停止の申し立てを近く行う考えを示した。時期については「内容、理由を十分検討したうえで、準備でき次第、申請をしたい」と述べるにとどめた。
中谷氏は「埋め立て承認には瑕疵(かし)はなく、取り消し処分は違法だとの立場に揺るぎはない。移設作業は(違法状態になるため)中断をするが、一刻も早く再開するための対応をとる」と語った。
島尻安伊子(あいこ)沖縄・北方相も会見で「普天間飛行場の危険性除去に水を差すようなことになれば、非常に残念だ」と語った。
朝日新聞 2015年10月13日12時01分
国交相、不服審査請求「コメント控える」 辺野古問題
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画で、移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを受け、石井啓一国土交通相は13日の閣議後会見で、沖縄防衛局が今後行う予定の行政不服審査法に基づく不服審査請求への対応について、「現時点でコメントすることは控えたい」と述べた。移設計画への自身のスタンスについては、「総理、官房長官が発言している通り。私も内閣の一員としてそういう立場でございます」と述べた。
◇国、不服審査請求へ
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は13日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への県内移設に向けた前知事による埋め立て承認を正式に取り消した。同日に承認取り消しの文書を沖縄防衛局に送付した。埋め立ての法的根拠となる承認が取り消されたことで、政府は近く行政不服審査法に基づく不服審査請求を行うなど対抗措置を取る。承認が取り消されても政府は埋め立てを強行する構えを崩しておらず、移設問題を巡る国と県との攻防は法廷闘争に突入することが決定的となった。
県庁で記者会見した翁長知事は「承認には瑕疵(かし)が認められ、取り消しが相当だと判断した。今後も辺野古に新基地は造らせないという公約実現に向けて全力で取り組む」と説明。そのうえで「これから裁判を意識したことが始まっていくが、場面場面で沖縄県の考えを述べ、多くの国民や県民に理解してもらう努力をしていく」と強調した。
取り消しの理由について文書では「普天間飛行場の代替施設を辺野古に建設せねばならない理由について実質的な根拠が乏しく、埋め立ての必要性を認めることができない」などとしている。
翁長知事は仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事による埋め立ての承認を取り消すことを9月14日に表明し、沖縄防衛局に9月28日に任意で意見を聴くことを通知した。だが、防衛局は「意見聴取でなく、行政手続法が定める『聴聞』を行うべき」と拒否した。このため、県は「聴聞」を10月7日に実施すると再通知したが、防衛局は「承認に何ら瑕疵はなく、取り消しは違法」と陳述書で回答し、聴聞には出席しなかった。
承認が取り消されたものの、政府は行政不服審査法に基づいて公有水面埋立法を所管する国土交通相に不服審査請求し、取り消しの一時停止も求めるため、政府の移設作業が大幅に中断する可能性は低い。地方自治法に基づいて県に「是正」を求める考えもある。その後は、県が移設作業の差し止めを求めて提訴するなどいくつかのケースが想定され、対立の長期化は避けられない見通しだ。
政府と県は8月10日から移設作業を1カ月中断して集中協議を実施。政府は「辺野古移設が唯一の選択肢」と理解を求めたが、翁長知事は反発して決裂。政府は協議期間終了の3日後の9月12日に辺野古沿岸部での移設作業を再開。9月18日には辺野古沿岸部で実施している埋め立てに必要なボーリング調査の期間を来年3月まで延長することも決め、移設に向けた環境を着々と整えている。
一方、翁長知事は9月21日にスイス・ジュネーブでの国連人権理事会で日本の都道府県知事として初めて演説。県民の多くが反対する辺野古移設が日米両政府によって進められている現状について「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている状況を世界から関心をもって見てほしい」と訴えるなど移設阻止に向けて国内外の世論喚起に動いている。【佐藤敬一】
◇ことば 辺野古の埋め立て承認
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に向け、政府が2013年3月、公有水面埋立法に基づいて名護市辺野古沿岸部の160ヘクタールの埋め立てを沖縄県に申請。審査の後、13年12月に当時の仲井真弘多知事が承認し、政府は14年8月に埋め立て海域のボーリング調査に着手した。しかし同年11月の知事選で移設阻止を訴えた翁長雄志氏が仲井真氏らを破って初当選。翁長氏は知事就任後の今年1月に前知事の承認判断を検証する専門家の第三者委員会を設置し、第三者委は7月に「政府の埋め立て申請は埋立法の要件を満たしておらず、県の承認手続きには瑕疵(かし)が認められる」との検証結果を出した。
毎日新聞 2015年10月13日 11時49分
辺野古承認取り消し:「やっとこの日が」県民、期待と不安
「やっとこの日が来た」「これからが本当の闘いだ」。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設阻止に向け、同県の翁長雄志(おながたけし)知事は13日、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを正式決定した。翁長知事が移設反対を掲げて昨年11月の知事選に当選してからほぼ1年。承認取り消しを待ち望んできた移設反対派の県民らからは決断を喜ぶ声が次々と上がった。一方で本当に工事を止めることができるのかと不安視する声もあった。
「政府を相手にすることが簡単でないことはよく分かっている。政府が埋め立てをどう進めてくるか分からないが、新辺野古基地は造れない」。午前10時から県庁で承認取り消しの会見に臨んだ翁長知事は、詰めかけた報道陣に対して決意を語った。
移設先の辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では移設に反対する県民らが抗議の声を上げた。知事の承認取り消しの正式決定が伝えられると、拍手や歓声が沸いた。しかし辺野古の埋め立てを強行する姿勢を崩さない政府との対立が長期化するのは必至で、ゲート前で座り込んできた県民たちは口々に抵抗を貫く決意を語った。
沖縄本島南部の八重瀬町の病院職員、神谷栄子さん(58)は「これからが私たちの踏ん張りどころ。辺野古に基地が造られてしまえば、沖縄はもう日米両政府の要求を拒否することができなくなる。覚悟を決めて知事を支えたい」と力を込めた。沖縄本島中部のうるま市の伊波義安さん(73)も「知事の判断が延びていたのでやきもきさせられたが、やっとこの日を迎えることができた。今まで以上に強く抗議の声を上げたい」と話した。
政府との攻防が正念場を迎え、抗議に参加し始めた人も多い。仕事の合間を縫って今月に入って初めてゲート前に足を運んだ那覇市の会社員、金城修さん(41)は「今声を上げないと後悔する。沖縄の民意を選挙だけでなく、さまざまな行動で示したい」と話した。県外からの参加者も多く、静岡市の稲葉博さん(65)は「沖縄だけでなく基地負担を押しつけてきた日本全土の問題だ」と語った。
一方、国は法的な対抗手段を講じてくるとみられ、取り消し決定によって移設工事を止められるかどうかは不透明だ。沖縄本島中部の金武町の比嘉定正さん(64)は「法廷闘争で裁判所にきちんと沖縄側の主張を聞いてもらえるかどうか分からず、承認取り消しだけでは工事を止めることはできないかもしれない。私たちは座り込みを続けて抵抗を貫くしかない」と厳しい表情を見せた。
普天間飛行場の危険性除去のために辺野古移設を容認する自民党沖縄県連の具志孝助幹事長は「非常に残念。19年間取り組んだ普天間の返還がようやく動くと思ったが、取り消しで白紙に戻された」と、知事の承認取り消しを批判した。【川上珠実】
毎日新聞 2015年10月13日 12時20分
辺野古承認取り消し:菅官房長官「法的瑕疵ない」
菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県が埋め立て承認を取り消したことについて「(前知事時代の)承認に法的な瑕疵(かし)はない。従来の判断に基づいて進めていくのは自然なことだ」と述べた。政府は14日以降に行政不服審査法に基づき国土交通相に不服審査請求を行う。県内移設を進める方針に変わりはないが、県との対話は継続する姿勢だ。
菅氏は「承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ。危険性をどうするか、現職の知事として極めて大事なことだ」と翁長雄志知事を批判した。【高本耕太】
沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は十三日午前、県庁で記者会見し、米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う新基地建設予定地になっている名護市辺野古(へのこ)沖の埋め立て承認を正式に取り消したと発表した。防衛省沖縄防衛局が今秋の本体工事開始に向けて進めているボーリング調査は法律上の根拠を失った。政府は近く行政不服審査法に基づく対抗措置を取り、作業を続行する構え。新基地建設をめぐる安倍政権と県の対立は全面対決の局面に入り、法廷闘争に発展する公算が大きくなった。
◆不服審査、法廷闘争へ
翁長氏の決裁した承認取り消しの通知書を、県の担当職員が沖縄防衛局に提出した。通知書は、政府が普天間飛行場の県内移設を「地理的に優位」としていることについて「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と指摘。県外に移設させても抑止力は大きく低下しないと反論し「埋め立ての必要性を認めることができない」と明記した。環境保全措置が適切、十分に講じられていないことも理由に挙げた。
翁長氏は記者会見で、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認に関し、県が設置した有識者委員会の検証結果を踏まえて検討した経緯を説明し「瑕疵(かし)があると認められた。取り消しが相当だと判断した」と述べた。その上で「今後も辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」と強調した。
一方、菅義偉(すがよしひで)官房長官は十三日午前の記者会見で「法的に瑕疵はない」と反論した。
沖縄防衛局は、埋め立て承認の根拠法を所管する石井啓一国土交通相に不服審査を請求すると同時に、翁長氏による取り消し処分効力の一時停止を申し立てる方針。
中谷元・防衛相は記者会見で「本日でないが、速やかに行う」と述べた。不服審査請求の結論が出るまで一定の期間を要する見通し。取り消し処分効力の一時停止が認められれば、不服審査請求の審査期間中でも工事を再開できる。
どのような裁決が示されても、主張を受け入れられなかった側が裁判に訴えるとみられる。
◆翁長氏会見のポイント
・仲井真弘多前知事による埋め立て承認に瑕疵(かし)が認められたため取り消しが相当と判断し、沖縄防衛局に通知した。
・閣僚との意見交換や約一カ月の集中協議などで県の主張は理解してもらえなかった。
・内閣の姿勢として沖縄県民に寄り添って解決しようという思いが薄い。
・今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に全力で取り組む。
<普天間移設問題> 沖縄県宜野湾市の市街地に囲まれた米軍普天間飛行場の移設をめぐる問題。1995年の米兵による少女暴行事件を機に、日米両政府が96年に返還で合意した。日本政府は99年に名護市辺野古への移設を閣議決定。仲井真弘多前知事は2013年12月、辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認した。だが、14年11月の知事選で初当選した翁長雄志知事は辺野古移設阻止を宣言。「辺野古が唯一の解決策」とする政府との対立が続いた。
沖縄県名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消し、記者会見する翁長雄志知事(右)=13日午前、沖縄県庁
沖縄県の翁長雄志知事は13日午前、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設で、公有水面埋立法に基づく辺野古の埋め立て承認に瑕疵(欠陥)があったとして承認を取り消す手続きを行い、通知文書を防衛省に届けた。防衛省は近日中に同法を所管する国土交通省に取り消し処分の効力停止と処分の取り消しを求める行政不服審査を申し立てる。1週間程度で効力停止は認められる見通しで、防衛省は移設作業を進め、工事にも着手する。
翁長氏は取り消しの効力が停止されると、効力確認や工事差し止めを求める訴訟を提起し、防衛省との法廷闘争に発展する見通しだ。
防衛省による辺野古の埋め立て申請は、一昨年12月に仲井真弘多前知事が承認している。翁長氏は、昨年12月の就任後に設置した県有識者委員会が承認手続きの法律的瑕疵を指摘した報告書の内容に沿い、埋め立て承認を取り消した。
取り消しの理由は、自然環境破壊と騒音被害、基地負担の固定化などの観点から、辺野古沖を埋め立てて普天間飛行場の代替施設を建設することは公有水面埋立法が規定した適正で合理的な国土利用との要件を満たしていないと指摘。辺野古沖周辺の生態系保護など環境保全措置も不十分で、同法の要件を充足していないとも結論づけた。13日午前に記者会見した翁長知事は「瑕疵があると認められた。取り消しが相当と判断した」と述べた。
8月10日から9月9日までの1カ月間の政府と県による集中協議の終了後、防衛省が辺野古沖で移設作業を再開したことを受け、翁長氏は9月14日、埋め立て承認を取り消す方針を表明した。
翁長氏は取り消しに向けた手続きも進め、防衛省の見解を確認する聴聞を10月7日に行うと通知した。防衛省は聴聞出頭の代わりに9月29日、「埋め立て承認に瑕疵はなく、取り消しは違法」と主張する陳述書を提出。県は10月7日に聴聞手続きを終了した。
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<報道記事>
以下引用
NHK 10月13日 10時03分
沖縄県知事 辺野古沖埋め立て
アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡って、沖縄県の は、名護市辺野古沖の埋め立て承認について「法律上の瑕疵(かし)がある」などとして取り消しました。
沖縄防衛局は移設に向けた工事を続けるため、 の執行停止と無効を求める申し立てを直ちに行う方針です。
アメリカ軍普天間基地の移設計画を巡り、沖縄県の は先月、名護市辺野古への移設を阻止するため、仲井真前知事が行った移設先の埋め立て承認を取り消す方針を表明し、工事を行う沖縄防衛局に対し反論を聴く機会を設けるなどの手続きを進めてきました。
そして、一連の手続きが終わったことを受けて、 は13日午前8時半、「埋め立て承認には法律上の瑕疵(かし)がある」などとして承認を取り消すための文書を決裁し、沖縄防衛局に通知しました。
は記者会見し、今回の決断の理由や今後の対応について説明することにしています。
これに対し、政府は移設計画を進める方針で、沖縄防衛局は工事を続けるため、直ちに行政不服審査法に基づき、 の執行停止と無効を求める申し立てを国土交通大臣に行うことにしています。
国土交通省は、沖縄県の主張を確認するなどしたうえで申し立てを認めるかどうか判断することにしており、最終的には政府と沖縄県による法廷での争いに発展することも予想されます。
国交省が判断求められる可能性
沖縄県の が名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消したことで、今後、国土交通省が判断を求められる可能性があります。
これは、埋め立て承認が、国の強い関与を認める「法定受託事務」とされているからで、知事の承認の根拠となる公有水面埋立法は国土交通省が所管しています。
防衛省が今後、 の無効を求めて国土交通省に行政不服審査請求を行った場合、国土交通省は沖縄県の弁明書や防衛省の反論書などを基に審理を進め、防衛省の請求を認めるか棄却するか判断することになります。
また、防衛省が行政不服審査請求とともに、知事の の執行停止を申し立てた場合、国土交通省は緊急性があると判断すれば、知事の意見を聞いたうえで、審査の間、取り消しの効力を一時停止することができます。このほか、地方自治法には国土交通大臣が著しく公益を損なうことが明らかだと判断した場合、知事に対し改善勧告や改善指示を行う手続きが定められています。
知事が従わない場合、国が裁判を起こし、最終的に国土交通大臣が知事の代わりに埋め立てを承認する「代執行」の手続きも定められています。
裁判なら「代理署名拒否」以来の事態に
今後、仮に国と沖縄県が法廷で争うことになれば、20年前、当時の大田知事が軍用地の強制使用を巡る代理署名を拒否し、基地問題を巡って双方が正面から対立して以来の異例の事態となります。
沖縄のアメリカ軍基地を巡っては、沖縄県知事が土地の提供を拒んだ地主に代わり必要な書類に署名して強制使用を継続する代理署名の仕組みがあり、20年前の平成7年、当時の大田知事は署名を拒否し、国が裁判を起こしました。
大田知事が署名を拒否し続けた背景には、この年、少女暴行事件などアメリカ軍が関係する事件や事故が相次ぐなどして基地に反対する住民の声が高まったことがあります。裁判は平成8年、最高裁判所が「公益が損なわれる」などとして、知事に代理署名を命じた高等裁判所の判決を支持し、沖縄県側の上告を退けました。
一方で、15人の裁判官のうち6人が、判決理由を補足する形で、沖縄に基地が集中し住民が重い負担を強いられているという意見を述べるなど、沖縄県側の主張に一定の理解を示しました。
今後、仮に国と県が法廷で争うことになれば、20年前、大田知事が代理署名を拒否し、基地問題を巡って双方が正面から対立して以来の異例の事態となります
朝日新聞 2015年10月13日12時52分
、 国、不服審査請求へ
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐり、翁長雄志(おながたけし)知事は13日午前、移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。移設計画は法的根拠を失うため、国は作業続行に向けた対抗措置として、ただちに行政不服審査法に基づく不服審査請求を行う方針。移設計画をめぐる国と県の関係は決定的な対立を迎えた。
翁長氏は同日午前10時から県庁で記者会見し、「検討した結果、取り消しが相当であると判断した」と表明。仲井真弘多(ひろかず)・前知事による承認は法的に瑕疵(かし)があるため取り消したと説明した。その上で、「今後も辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」と語った。同日午前、県職員が埋め立ての事業主体である沖縄防衛局を訪れ、承認取り消しを伝える通知書を手渡した。
通知書では取り消し理由として、「普天間飛行場が他の都道府県に移転したとしても、沖縄には依然として米軍基地や自衛隊基地があり、抑止力が許容できない程度まで低下することはない」「県内移設の理由として地理的優位性などが挙げられているが、根拠が示されていない」などを挙げている。
公有水面埋立法は、国が海などを埋め立てる際には知事の承認が必要と定めており、承認が取り消されたことで、辺野古沿岸部埋め立ての法的根拠が失われる。ただ、事業を進める防衛省が同法を所管する国土交通相に対して行政不服審査法に基づく不服審査請求を行い、請求が認められれば、作業は続行できる。中谷元防衛相は13日、「埋め立て承認に瑕疵はなく、取り消し処分は違法であるとの立場に揺るぎはない。承認取り消しは違法で取り消されるべきであるとの審査請求を速やかに行う」と表明。不服審査請求手続きに入る考えを明らかにした。
一方、県側は国の対応への対抗措置も検討しており、最終的には法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。
移設計画は、普天間飛行場に替わる基地施設を造るため辺野古沿岸部約160ヘクタールを埋め立てる予定。沖縄防衛局が2013年3月に埋め立てを申請し、当時の仲井真知事が同年12月に承認した。
翁長氏は14年11月、普天間の県内移設反対を掲げて初当選。埋め立てを承認した審査過程を検証する第三者委員会を設置し、今年7月、「法律的な瑕疵がある」との報告を受けた。8~9月には、移設を進める国と約1カ月間の集中協議を行ったが平行線に終わり、「取り消しに向けた手続きを始める」と9月14日に表明していた。
国は、取り消し手続きの一環として県が設定した任意の意見聴取に応じず、県が改めて実施した行政手続法に基づく聴聞には「承認に瑕疵はない」などとする陳述書を提出。移設計画を予定通り進める姿勢を示していた。(上遠野郷、二階堂勇)
朝日新聞 2015年10月13日11時31分
「翁長よくやった」 辺野古取り消し、反対派から歓声
「埋め立て承認取り消し」の一報が伝えられ、キャンプ・シュワブ前に設けられた移設反対派のテントから歓声があがった=13日午前、沖縄県名護市辺野古、岩波精撮影
沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が13日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設先とされる同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。辺野古にある米軍キャンプ・シュワブのゲート前では同日午前、移設計画に反対する人々から拍手がわきおこり、「よし」「翁長よくやった」と声が上がった。
反対派は午前6時ごろから、この日の座り込みを開始。午前10時に沖縄県庁で の記者会見が始まると、スピーカーから流れる音声に約200人が聴き入った。19年間座り込みを続ける島袋文子さん(86)は「明日から大変だと思うけれど、負けない。私たちは命をかけて座っている」と話した。
1週間前から抗議行動に参加しているという同県宜野座村の安慶田由美さん(26)は「これから国も対抗してきて、全面対決になると思う」。那覇市で生まれ育ったが、「基地があるのが当たり前で、平和活動に参加したこともなかった」。仕事の関係で上京し、6月から安保法に反対する国会前集会に参加するようになって思いが変わったという。「戦争は昔のことと感じていたけれど、安保法の動きを見ていてひとごとと思えなくなった。民主主義は地元に住む人の意見を尊重するはず。いまの政府のやり方はおかしい」
同県うるま市から来たという池原盛助さん(76)は「翁長さんはぶれたりしないと信じていた。孫やひ孫に基地のない社会を残すためにも戦い続ける。これからが勝負よ」。同県浦添市のキャンプ・キンザーで40年間働いた。ベトナム戦争の時には、兵士のためのアイスクリームを現地に送ったという。「基地は戦争につながる。造らせないことが必要だ」と話した。(岩波精)
朝日新聞 2015年10月13日13時57分
菅官房長官「非常に残念」 辺野古承認取り消し
菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が米軍普天間飛行場の移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認を取り消したことについて、「承認に際しての法的瑕疵(かし)はない。(取り消しは)普天間飛行場の危険性除去に向けた努力を無視するもので、非常に残念だ。移設に向けた工事を進める考えに変わりはない」と語った。
また、中谷元・防衛相は同日午前の記者会見で、「審査請求と執行停止申し立てを速やかに行う」と語り、行政不服審査法に基づく不服審査請求と、一時的に取り消しの効力を止める執行停止の申し立てを近く行う考えを示した。時期については「内容、理由を十分検討したうえで、準備でき次第、申請をしたい」と述べるにとどめた。
中谷氏は「埋め立て承認には瑕疵(かし)はなく、取り消し処分は違法だとの立場に揺るぎはない。移設作業は(違法状態になるため)中断をするが、一刻も早く再開するための対応をとる」と語った。
島尻安伊子(あいこ)沖縄・北方相も会見で「普天間飛行場の危険性除去に水を差すようなことになれば、非常に残念だ」と語った。
朝日新聞 2015年10月13日12時01分
国交相、不服審査請求「コメント控える」 辺野古問題
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画で、移設予定地の同県名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを受け、石井啓一国土交通相は13日の閣議後会見で、沖縄防衛局が今後行う予定の行政不服審査法に基づく不服審査請求への対応について、「現時点でコメントすることは控えたい」と述べた。移設計画への自身のスタンスについては、「総理、官房長官が発言している通り。私も内閣の一員としてそういう立場でございます」と述べた。
毎日新聞 2015年10月13日 12時52分
辺野古移設:沖縄知事、沿岸部埋め立て承認取り消し
◇国、不服審査請求へ
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は13日、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への県内移設に向けた前知事による埋め立て承認を正式に取り消した。同日に承認取り消しの文書を沖縄防衛局に送付した。埋め立ての法的根拠となる承認が取り消されたことで、政府は近く行政不服審査法に基づく不服審査請求を行うなど対抗措置を取る。承認が取り消されても政府は埋め立てを強行する構えを崩しておらず、移設問題を巡る国と県との攻防は法廷闘争に突入することが決定的となった。
県庁で記者会見した翁長知事は「承認には瑕疵(かし)が認められ、取り消しが相当だと判断した。今後も辺野古に新基地は造らせないという公約実現に向けて全力で取り組む」と説明。そのうえで「これから裁判を意識したことが始まっていくが、場面場面で沖縄県の考えを述べ、多くの国民や県民に理解してもらう努力をしていく」と強調した。
取り消しの理由について文書では「普天間飛行場の代替施設を辺野古に建設せねばならない理由について実質的な根拠が乏しく、埋め立ての必要性を認めることができない」などとしている。
翁長知事は仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事による埋め立ての承認を取り消すことを9月14日に表明し、沖縄防衛局に9月28日に任意で意見を聴くことを通知した。だが、防衛局は「意見聴取でなく、行政手続法が定める『聴聞』を行うべき」と拒否した。このため、県は「聴聞」を10月7日に実施すると再通知したが、防衛局は「承認に何ら瑕疵はなく、取り消しは違法」と陳述書で回答し、聴聞には出席しなかった。
承認が取り消されたものの、政府は行政不服審査法に基づいて公有水面埋立法を所管する国土交通相に不服審査請求し、取り消しの一時停止も求めるため、政府の移設作業が大幅に中断する可能性は低い。地方自治法に基づいて県に「是正」を求める考えもある。その後は、県が移設作業の差し止めを求めて提訴するなどいくつかのケースが想定され、対立の長期化は避けられない見通しだ。
政府と県は8月10日から移設作業を1カ月中断して集中協議を実施。政府は「辺野古移設が唯一の選択肢」と理解を求めたが、翁長知事は反発して決裂。政府は協議期間終了の3日後の9月12日に辺野古沿岸部での移設作業を再開。9月18日には辺野古沿岸部で実施している埋め立てに必要なボーリング調査の期間を来年3月まで延長することも決め、移設に向けた環境を着々と整えている。
一方、翁長知事は9月21日にスイス・ジュネーブでの国連人権理事会で日本の都道府県知事として初めて演説。県民の多くが反対する辺野古移設が日米両政府によって進められている現状について「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている状況を世界から関心をもって見てほしい」と訴えるなど移設阻止に向けて国内外の世論喚起に動いている。【佐藤敬一】
◇ことば 辺野古の埋め立て承認
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に向け、政府が2013年3月、公有水面埋立法に基づいて名護市辺野古沿岸部の160ヘクタールの埋め立てを沖縄県に申請。審査の後、13年12月に当時の仲井真弘多知事が承認し、政府は14年8月に埋め立て海域のボーリング調査に着手した。しかし同年11月の知事選で移設阻止を訴えた翁長雄志氏が仲井真氏らを破って初当選。翁長氏は知事就任後の今年1月に前知事の承認判断を検証する専門家の第三者委員会を設置し、第三者委は7月に「政府の埋め立て申請は埋立法の要件を満たしておらず、県の承認手続きには瑕疵(かし)が認められる」との検証結果を出した。
毎日新聞 2015年10月13日 11時49分
辺野古承認取り消し:「やっとこの日が」県民、期待と不安
「やっとこの日が来た」「これからが本当の闘いだ」。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設阻止に向け、同県の翁長雄志(おながたけし)知事は13日、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを正式決定した。翁長知事が移設反対を掲げて昨年11月の知事選に当選してからほぼ1年。承認取り消しを待ち望んできた移設反対派の県民らからは決断を喜ぶ声が次々と上がった。一方で本当に工事を止めることができるのかと不安視する声もあった。
「政府を相手にすることが簡単でないことはよく分かっている。政府が埋め立てをどう進めてくるか分からないが、新辺野古基地は造れない」。午前10時から県庁で承認取り消しの会見に臨んだ翁長知事は、詰めかけた報道陣に対して決意を語った。
移設先の辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では移設に反対する県民らが抗議の声を上げた。知事の承認取り消しの正式決定が伝えられると、拍手や歓声が沸いた。しかし辺野古の埋め立てを強行する姿勢を崩さない政府との対立が長期化するのは必至で、ゲート前で座り込んできた県民たちは口々に抵抗を貫く決意を語った。
沖縄本島南部の八重瀬町の病院職員、神谷栄子さん(58)は「これからが私たちの踏ん張りどころ。辺野古に基地が造られてしまえば、沖縄はもう日米両政府の要求を拒否することができなくなる。覚悟を決めて知事を支えたい」と力を込めた。沖縄本島中部のうるま市の伊波義安さん(73)も「知事の判断が延びていたのでやきもきさせられたが、やっとこの日を迎えることができた。今まで以上に強く抗議の声を上げたい」と話した。
政府との攻防が正念場を迎え、抗議に参加し始めた人も多い。仕事の合間を縫って今月に入って初めてゲート前に足を運んだ那覇市の会社員、金城修さん(41)は「今声を上げないと後悔する。沖縄の民意を選挙だけでなく、さまざまな行動で示したい」と話した。県外からの参加者も多く、静岡市の稲葉博さん(65)は「沖縄だけでなく基地負担を押しつけてきた日本全土の問題だ」と語った。
一方、国は法的な対抗手段を講じてくるとみられ、取り消し決定によって移設工事を止められるかどうかは不透明だ。沖縄本島中部の金武町の比嘉定正さん(64)は「法廷闘争で裁判所にきちんと沖縄側の主張を聞いてもらえるかどうか分からず、承認取り消しだけでは工事を止めることはできないかもしれない。私たちは座り込みを続けて抵抗を貫くしかない」と厳しい表情を見せた。
普天間飛行場の危険性除去のために辺野古移設を容認する自民党沖縄県連の具志孝助幹事長は「非常に残念。19年間取り組んだ普天間の返還がようやく動くと思ったが、取り消しで白紙に戻された」と、知事の承認取り消しを批判した。【川上珠実】
毎日新聞 2015年10月13日 12時20分
辺野古承認取り消し:菅官房長官「法的瑕疵ない」
菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、沖縄県が埋め立て承認を取り消したことについて「(前知事時代の)承認に法的な瑕疵(かし)はない。従来の判断に基づいて進めていくのは自然なことだ」と述べた。政府は14日以降に行政不服審査法に基づき国土交通相に不服審査請求を行う。県内移設を進める方針に変わりはないが、県との対話は継続する姿勢だ。
菅氏は「承認取り消しは沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ。危険性をどうするか、現職の知事として極めて大事なことだ」と翁長雄志知事を批判した。【高本耕太】
東京新聞 2015年10月13日 夕刊
辺野古承認取り消し 沖縄知事、新基地認めず 政府、埋め立て続行方針
沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は十三日午前、県庁で記者会見し、米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)移設に伴う新基地建設予定地になっている名護市辺野古(へのこ)沖の埋め立て承認を正式に取り消したと発表した。防衛省沖縄防衛局が今秋の本体工事開始に向けて進めているボーリング調査は法律上の根拠を失った。政府は近く行政不服審査法に基づく対抗措置を取り、作業を続行する構え。新基地建設をめぐる安倍政権と県の対立は全面対決の局面に入り、法廷闘争に発展する公算が大きくなった。
◆不服審査、法廷闘争へ
翁長氏の決裁した承認取り消しの通知書を、県の担当職員が沖縄防衛局に提出した。通知書は、政府が普天間飛行場の県内移設を「地理的に優位」としていることについて「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と指摘。県外に移設させても抑止力は大きく低下しないと反論し「埋め立ての必要性を認めることができない」と明記した。環境保全措置が適切、十分に講じられていないことも理由に挙げた。
翁長氏は記者会見で、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認に関し、県が設置した有識者委員会の検証結果を踏まえて検討した経緯を説明し「瑕疵(かし)があると認められた。取り消しが相当だと判断した」と述べた。その上で「今後も辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」と強調した。
一方、菅義偉(すがよしひで)官房長官は十三日午前の記者会見で「法的に瑕疵はない」と反論した。
沖縄防衛局は、埋め立て承認の根拠法を所管する石井啓一国土交通相に不服審査を請求すると同時に、翁長氏による取り消し処分効力の一時停止を申し立てる方針。
中谷元・防衛相は記者会見で「本日でないが、速やかに行う」と述べた。不服審査請求の結論が出るまで一定の期間を要する見通し。取り消し処分効力の一時停止が認められれば、不服審査請求の審査期間中でも工事を再開できる。
どのような裁決が示されても、主張を受け入れられなかった側が裁判に訴えるとみられる。
◆翁長氏会見のポイント
・仲井真弘多前知事による埋め立て承認に瑕疵(かし)が認められたため取り消しが相当と判断し、沖縄防衛局に通知した。
・閣僚との意見交換や約一カ月の集中協議などで県の主張は理解してもらえなかった。
・内閣の姿勢として沖縄県民に寄り添って解決しようという思いが薄い。
・今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に全力で取り組む。
<普天間移設問題> 沖縄県宜野湾市の市街地に囲まれた米軍普天間飛行場の移設をめぐる問題。1995年の米兵による少女暴行事件を機に、日米両政府が96年に返還で合意した。日本政府は99年に名護市辺野古への移設を閣議決定。仲井真弘多前知事は2013年12月、辺野古沿岸部の埋め立て申請を承認した。だが、14年11月の知事選で初当選した翁長雄志知事は辺野古移設阻止を宣言。「辺野古が唯一の解決策」とする政府との対立が続いた。
産経ニュース 2015.10.13 10:28
【普天間移設】沖縄・翁長知事、 承認取り消し 「瑕疵がある」
沖縄県名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消し、記者会見する翁長雄志知事(右)=13日午前、沖縄県庁
沖縄県の翁長雄志知事は13日午前、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設で、公有水面埋立法に基づく辺野古の埋め立て承認に瑕疵(欠陥)があったとして承認を取り消す手続きを行い、通知文書を防衛省に届けた。防衛省は近日中に同法を所管する国土交通省に取り消し処分の効力停止と処分の取り消しを求める行政不服審査を申し立てる。1週間程度で効力停止は認められる見通しで、防衛省は移設作業を進め、工事にも着手する。
翁長氏は取り消しの効力が停止されると、効力確認や工事差し止めを求める訴訟を提起し、防衛省との法廷闘争に発展する見通しだ。
防衛省による辺野古の埋め立て申請は、一昨年12月に仲井真弘多前知事が承認している。翁長氏は、昨年12月の就任後に設置した県有識者委員会が承認手続きの法律的瑕疵を指摘した報告書の内容に沿い、埋め立て承認を取り消した。
取り消しの理由は、自然環境破壊と騒音被害、基地負担の固定化などの観点から、辺野古沖を埋め立てて普天間飛行場の代替施設を建設することは公有水面埋立法が規定した適正で合理的な国土利用との要件を満たしていないと指摘。辺野古沖周辺の生態系保護など環境保全措置も不十分で、同法の要件を充足していないとも結論づけた。13日午前に記者会見した翁長知事は「瑕疵があると認められた。取り消しが相当と判断した」と述べた。
8月10日から9月9日までの1カ月間の政府と県による集中協議の終了後、防衛省が辺野古沖で移設作業を再開したことを受け、翁長氏は9月14日、埋め立て承認を取り消す方針を表明した。
翁長氏は取り消しに向けた手続きも進め、防衛省の見解を確認する聴聞を10月7日に行うと通知した。防衛省は聴聞出頭の代わりに9月29日、「埋め立て承認に瑕疵はなく、取り消しは違法」と主張する陳述書を提出。県は10月7日に聴聞手続きを終了した。
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