「是正」指示 試される と
----安倍内閣の強権国家ぶりが露呈したやり方だ。とても同じ国の同胞に対する行為とは思えない。
米軍普天間飛行場移設に絡む 建設問題で、石井啓一国土交通相が翁長雄志知事に対し、埋め立て承認取り消しの撤回を求め「是正指示」を出した。
「代執行」手続きの一環だが、「指示」の前段に当たる「勧告」を知事が拒否してからわずか3日後だ。週末を挟んだので実質的には翌日である。知事の勧告拒否の意味を吟味しようというそぶりすらない。
勧告拒否の際、知事は公開質問状を政府に提出した。その質問に一切答えぬままの「指示」である。まさに「問答無用」だ。
(琉球新報)
<動画>
<報道記事>
<各紙社説>
以下引用
志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は12日、国会内で記者会見し、 県名護市 への米軍 建設をめぐる安倍政権の一連の強行姿勢について、「県民の総意に反する を押し付けるために、 を圧殺して、 の な につぐ を重ねている。まったく許しがたい」と厳しく批判し、「 建設を拒否する翁長雄志(おながたけし)知事の態度を断固支持し、 県民に連帯するたたかいを発展させる」と表明しました。
志位氏は、防衛省が行政不服審査法にもとづき、埋め立て承認取り消しの執行停止申し立てを国土交通相に請求し、取り消しの効力を停止させたことについて、そもそも行政不服審査法は、行政権力による不当処分から国民の権利を守るためのものだと指摘。「国が“私人”になりすまして、法律を悪用し、防衛省が国交相に申請するという茶番劇を通じて、(知事の埋め立て承認取り消しの)効力を停止させた。これはまさに の な そのものです」と指弾しました。
また、国交省による是正指示や代執行の動きについて、「県民が島ぐるみで反対している を無理やり押し付けるために、是正の指示や代執行を行うのは、 による地方自治の蹂躙(じゅうりん)そのものです」と批判しました。
志位氏はまた、「安倍政権は、国民多数の反対を押し切って立憲主義・ を破壊し、憲法の平和主義を壊す戦争法を強行しました。 の破壊という点では、同じ事態が で起こっています」と指摘。米紙ニューヨーク・タイムズが「日米両政府の が試されている」との社説を掲げたことにふれ、「世界の の基準から見ても、異常事態が起こっています。問われているのは、日本という国の だということを強調したい」と述べました。
志位氏はそのうえで、「 建設をきっぱり拒否している翁長知事を断固支持し、 に連帯するたたかいを大いに発展させていきたい」と決意を語りました。
米軍普天間飛行場の名護市 への移設に伴う新基地建設で、埋め立て承認取り消しの執行停止や代執行手続きに伴う石井啓一国土交通相の法解釈を問う公開質問状を翁長雄志知事が出していたことについて、国交省は12日、県に回答文書を送った。県によると「執行停止は行政不服審査法で、代執行は地方自治法でそれぞれ認められている。法律に沿って行ったものだ」との趣旨で回答している。県側は「われわれは具体的に質問したのに、一切答えていない。自分たちの主張を一方的に言っている」と回答内容に強く反発している。
文書は回答期限としていた13日、県に到着する見通し。到着し次第、県は県公式ウェブサイトなどで回答を公開する。12日、県は国交省がファクシミリで送った文書で内容を確認した。
県は「 沿岸部の埋め立て事業は閣議決定に基づき実施されている『国家の事業』だと考えるが、いかがか」など5項目を石井国交相に質問していた。国交省は5項目に逐一回答しておらず、「執行停止と代執行はそれぞれ法律に沿って行った」と一括した形で回答しているという。
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米軍新基地建設が強行される名護市 で建設に反対する人々の座り込みが続く。派遣された警視庁機動隊らが強制排除を行う中でけが人や逮捕者が出ている。沖縄の はどこにあるのか。
米軍キャンプ・シュワブの工事用ゲート前には早朝から市民が集まってくる。お年寄りが多い。非暴力の行動であることを確認しあうとアスファルトの地面に寝て、隣の人と腕を組む。
午前七時前、シュワブの中に待機していた機動隊が一斉に正門から出てきて市民を取り囲んだ。ある人は数人の機動隊に抱えられ、ある人は両腕をつかまれて引きずられる。滑り止め付きの軍手をはめた隊員につかまれた腕には摩擦のために青あざが残る。五百人の市民が集まった十一日には排除された際に転び、頭を打つなどした二人が救急搬送された。
強制排除には沖縄県警の要請を受けた警視庁機動隊百五十人が加わる。要人警護やサミット開催でもなく、沖縄に出動することに県民の中には反感も募る。ゲート沿いでは装甲車と鉄柵で囲った中にごぼう抜きにされた人が閉じこめられる。檻(おり)のような場所に丸腰の人を一時的でも拘束するのは行き過ぎではないか。
前知事による辺野古埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事と、政府との溝は決定的だ。政府は知事に決定を取り消せと是正指示をし、これを拒否した翁長氏に対し知事の権限を奪う代執行を進めるため福岡高裁に提訴する。
県側も国地方係争処理委員会に審査を申し立て、決裂すれば国を提訴する。政府はこのような法廷闘争に足を踏み入れるのを止め、新基地計画を白紙に戻すべきだ。
国土の1%に満たない沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中する。普天間飛行場の返還は負担軽減策の象徴とされる。閉鎖や日本側への返還が急務なのは当然だが、基地を同じ県内に移しても負担軽減にならない。
沖縄県民は四度の選挙を通して新基地建設に「ノー」を示した。にもかかわらず、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返し、建設を強行する。
人々が体を張って座り込むのは沖縄に対する差別的な扱いに怒り、工事を少しでも遅らせるには声を上げるほかないからである。
沖縄の基地問題は日本全体の問題である。政府だけでなく、本土に住む私たちこそが考えるべき問題ではないか。非暴力の抗議は、あらためてそう訴えている。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐる沖縄県と国との対立は、法廷闘争に発展することが決定的となった。
翁長雄志知事は、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した処分について、石井啓一国土交通相による処分撤回の指示を拒否すると正式に表明した。
これを受けて国は、知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」を行うため、来週にも高裁に提訴する。
県側も、国交相が知事による承認取り消しの効力を停止をしたことを不服として「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ている。認められなかった場合は、高裁に提訴する方針だ。
法廷闘争の先にあるのは、さらなる対立と混乱でしかない。国は強権的な「代執行」で対話の道を閉ざしてはならない。
撤回指示を拒否するとした翁長氏は、代執行手続きを進める政府の一連の対応に、「地方自治の本旨に照らしても極めて不当」と反発している。
しかし、安倍晋三首相は参院予算委員会で「普天間の状況を放っておくのは政治の責任放棄だ」と述べ、あくまで移設を推進する姿勢である。
沖縄の民意との隔たりを丁寧に埋めるのが政治の責任ではないのか。「辺野古移設」一点張りの国に、その努力は見られない。
政府が強調する「法治」も疑問だ。本来国民の権利を守るための不服申し立ての仕組みを使い、工事主体の防衛省沖縄防衛局の言い分を認めたからだ。
条件付きで移設に賛成している辺野古周辺の3区には、反対派の名護市長の頭越しに、直接、補助金を交付する考えを伝えている。
なりふり構わぬやり方に、地元の不信は高まるばかりである。
国が「行政判断は示された」とする仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事の埋め立て承認で、前知事は「普天間飛行場の5年以内の運用停止」を要求し、安倍氏は努力を約束した。
しかし、その後、安倍氏は米国との交渉を盾に約束を後退させている。
今夏の政府と県の集中協議で、翁長氏が辺野古移設と運用停止は別問題だったはずと追及したが、菅義偉官房長官は「移設への県の協力が前提」との姿勢を崩さなかった。
「5年以内」は、承認を得るための「空手形」だったのでは、という疑念が生じる。
沖縄の国への不信感は根深い。政府が強引な姿勢を慎み、誠実に向き合うしか打開の道はない。
名護市辺野古の新基地建設をめぐり、沖縄防衛局は12日午後、海底地盤の強度などを調べるボーリング(掘削)調査を再開した。台風接近を理由に中断した7月以降、4カ月半ぶり。
中断の最中には、県と政府の集中協議が開かれたが形式だけに終わり、埋め立て承認取り消しをめぐる双方の対立は深刻さを増している。そんな中での掘削作業再開は、県や県民に対して「有無を言わせない」という政府のメッセージである。
掘削前日に開かれた参院予算委員会の閉会中審査でも安倍晋三首相は「普天間の状況を放っておくのは政治の責任の放棄」と新基地建設作業を強行する決意を示した。
しかし新基地建設が普天間の危険性除去とバーターなら、少なくとも完成まで数年から十数年間危険を固定することになる。翁長雄志知事が指摘するその矛盾に、安倍首相は答えていない。
建設の事前調査である掘削着手からすでに1年が過ぎた。調査は24地点を計画し昨年11月末に終了予定だったが、5地点を残し中断。建設に反対する市民の強い抗議活動によって、作業は年単位で遅れているのである。
掘削再開に関して菅義偉官房長官は「作業の安全に十分注意する」と述べたが、懸念されるのは作業の安全だけではない。海や陸での「過剰警備」により、抗議に参加する市民のけがが絶えない。
政府は、作業を強行すればするほど市民の安全を脅かしている実態を直視すべきである。
■ ■
辺野古の掘削をめぐっては11年前に大きな転機があった。2004年9月、当時の那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)が旧建設計画のボーリング調査の着手を発表した。
しかし抗議活動に阻まれて調査は進まず約1年後、施設局は掘削のため海上に設置していた「やぐら」を全て撤去した。
調査着手の発表1カ月前に米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落する事故が発生しており、政府は強い意志を持って移設作業を進めた。それなのに中断を余儀なくされた背景に、市民の抗議があったことは言うまでもない。
当時の施設局はやぐら撤去の理由を「台風シーズンのため」と発表したが、実際には作業をめぐり、けが人が続出しかねない状況に対して小泉政権が当然の配慮をしたとみられている。
■ ■
しかし安倍政権の下では、警備も住民を排除するための「暴力」へと変質している。その結果、政府が強硬姿勢を貫くほど新基地建設の最前線で衝突・混乱が激化している。
朝日新聞が10月実施した世論調査では49%が安倍政権の埋め立て工事開始を「評価しない」と回答、「評価する」の33%を上回った。県や、県民の意見に耳を貸そうとしない政府への批判である。
沖縄の大多数の声を無視し、権力をむき出しにして工事を強行するやり方は、法治国家にあるまじき愚行だ。まず工事を中断し、話し合う姿勢をみせるべきだ。
「わが国は法治国家である」とは安倍政権がよく使う言葉だ。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設計画で、石井啓一国土交通相の埋め立て承認取り消し処分の是正指示に対し、翁長雄志知事は是正勧告に続き、指示も拒否する意思を表明した。政府は知事の拒否を受け「法治国家」の名の下、代執行提訴など法的手続きを進める見込みだ。
しかし、考えてみてほしい。日本は「民主主義国家」である。民主的手続きを踏まえず、沖縄からの異議申し立てを却下することが「民主主義」の名にふさわしいのか。政府は再考すべきだ。
民主主義の手続きとは最低限(1)必要な情報を共有する(2)議論し互いの主張を擦り合わせる(3)互いに納得できる合意点を見いだす-といった過程が必要だ。
辺野古埋め立てに当てはめれば、この条件をまるで満たしていない。普天間飛行場の危険性除去という前提は国、県とも一致するが「なぜ辺野古でなければならないのか」という県民の疑問に、国は何一つ答えていない。
埋め立て承認の取り消しをめぐって、知事は第三者委員会の調査に基づき「違法」と判断し、その根拠を説明した。国は県の判断を無視し、代執行手続きを進めながら「承認取り消し」の執行停止も認めている。矛盾する手続きを並行することについて、県から公開質問状が提出されたが、石井国交相は「回答の義務はない」として、議論に応じる姿勢すら見せない。
議論ができない状態では、当然一致点を探ることも不可能だ。「国家事業に口を挟むな」というのであれば、それは独裁であり「民主国家」ではない。
「主権在民」「基本的 の尊重」は民主主義にとって当然のことだ。主権者、とりわけ当事者たる沖縄県民の7割以上が辺野古新基地建設に反対する中、法的手続きを踏めば国は何をしてもいいわけではあるまい。
翁長知事は是正指示拒否を表明する記者会見で「国と地方は対等であり、安全保障で地方は黙っておれというのは一人一人の を無視するものだ。多くの意見を聞きながら進むのが当然で、それが民主主義国である」と述べた。
知事の言葉を首相らは深く心に刻んでもらいたい。新基地建設を強行すれば日本は「民主主義国家」の看板を下ろさねばなるまい。
辺野古新基地建設をめぐり埋め立て承認の取り消しを撤回するよう求めた国土交通相の指示に対し、翁長雄志知事は拒否すると正式表明した。
地方自治法に基づく国の「代執行」手続きで、翁長知事が勧告に続き指示を拒否したことから、国は県を来週にも福岡高裁那覇支部に提訴する。県と国は法廷闘争に入る。
翁長知事が埋め立て承認を取り消して以来、国の対抗措置を振り返ると、法の趣旨をねじ曲げており、とうてい納得できない。
翁長知事の埋め立て承認取り消しに対し、防衛省沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき国交相に審査請求と執行停止を申し立てた。同法は「国民の権利利益の救済を図る」のが目的である。米軍に提供する新基地を造ろうとする防衛局が「私人」のはずがない。行政法学者ら100人近くが審査請求・執行停止申し立ては「不適法」で、「法治国家」にもとると指摘していることからも分かる。
国交相は執行停止を認めた。同じ国の行政機関である身内の国交省が審査するから当然である。国交相は新基地建設の工事が継続できる状態にした上で、さらに代執行の手続きをとった。代執行では本来、判決が出るまで工事をすることができないが、私人と国の二つの立場を都合良く使い分け、工事の既成事実を積み上げる考えである。
翁長知事はこれらの問題で石井啓一国交相に公開質問状を出している。回答期限は13日だ。国の対抗措置に正当性があるのかどうか、根幹に関わる。石井氏が回答しないのなら、正当性がないことを自ら認めることになることを覚悟しなければならない。
■ ■
安倍晋三首相らは基地問題で「県民に寄り添う」「負担軽減に取り組む」などと耳当たりの良い言葉を使う。
だが、実際は問答無用の強権的な姿勢がむき出しだ。民主主義の国で最も尊重されなければならない選挙で、県内では昨年、名護市、県知事、衆院のすべてで新基地建設に反対する候補が勝利したにもかかわらず、民意に一切耳を傾けることをしない。
新基地は普天間飛行場にはない軍港機能や弾薬庫を備える。周辺の米軍基地と一体的に運用され、沖縄本島北部の軍事要塞(ようさい)化である。負担軽減にならないのは明らかだ。
佐賀空港のオスプレイの訓練取り下げに見られるように翁長知事は沖縄と他の都道府県との不平等な扱いを「いじめ」に例えたことがある。
参院予算委員会の閉会中審査でも福島瑞穂氏(社民)が「沖縄いじめ」と強調した上で、「嫌だ、嫌だ、嫌だと言っているのに、なぜ強行するのか」とただした。「沖縄差別」というほかない。
■ ■
米政府は基地問題で県が要請するたびに、日本の国内問題と逃げるが、基地を使用するまさに当事者である。
辺野古では陸で海で市民と警備当局が衝突している。警視庁から100人規模の機動隊が派遣され、力で市民をねじ伏せようとしている。
不測の事態が起きかねない水位に達していることを日米両政府は肝に銘じるべきだ。
安倍内閣の強権国家ぶりが露呈したやり方だ。とても同じ国の同胞に対する行為とは思えない。
米軍普天間飛行場移設に絡む辺野古新基地建設問題で、石井啓一国土交通相が翁長雄志知事に対し、埋め立て承認取り消しの撤回を求め「是正指示」を出した。
「代執行」手続きの一環だが、「指示」の前段に当たる「勧告」を知事が拒否してからわずか3日後だ。週末を挟んだので実質的には翌日である。知事の勧告拒否の意味を吟味しようというそぶりすらない。
勧告拒否の際、知事は公開質問状を政府に提出した。その質問に一切答えぬままの「指示」である。まさに「問答無用」だ。
公開質問で知事は、沖縄防衛局が「私人」の立場で行政不服審査を申し立てたことの是非をただした。多数の行政法学者も違法と指摘している。政府が応答していないこと自体、法からの逸脱を認めたようなものだ。これで菅義偉官房長官が「法治国家」と繰り返すのだから噴飯物である。
行政不服審査は防衛局が出して国交相が認めた。同じ政府内だ。選手と審判を一人で兼ねるようなもので、これが認められるなら政府は万能である。
是正指示に知事が従わない場合、政府は今月中にも代執行を実施するため高裁へ提訴するという。内閣法制局長官の首をすげ替え、解釈改憲をやってのけた安倍内閣のことだ。政府の勝訴間違いなしと踏んでいるのであろう。
人事権を駆使して思うまま法の解釈を変え、都合に合わせて「国」にも「私人」にもなり、選手であり審判ともなる政府である。裁判所の判決も意のままとみる。普通はこれを「人治国家」と呼ぶ。
それにしても最近の政府の振る舞いは常軌を逸している。県も市も飛び越え、区に直接お金を渡すという。植民地の人々を仲間割れさせ、宗主国への反発を弱体化させる「分断統治」は植民地政策の常だが、まさに教科書通りである。さらには中央から機動隊を送り込み、市民運動を露骨に弾圧する。開発独裁の軍事政権と何が違うだろうか。
米紙ニューヨーク・タイムズ社説の表現を借りれば、まさに「平和、 、民主主義を約束する国家を自称する日本と米国の主張が試されている」。この試験に合格できないなら、安倍政権に民主国家を名乗る資格はない。
石井啓一国土交通相は9日、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事に対し、地方自治法第245条に基づき、取り消し撤回を指示する文書を発送した。勧告を拒否した知事に代わって国が埋め立てを承認する「代執行」手続きを、さらに進める措置である。
日米で合意された米軍普天間飛行場の辺野古移設が進まなければ、周辺住民の危険性は除去されず、米国との信頼関係にも悪影響が及ぶとし、「取り消し処分を放置することにより、著しく公益を害することは明らかだ」と主張している。
その言い分は、基地をめぐる歴史的経緯を何一つ考慮しない一方的な決め付けである。そもそも著しく公益を害するようなことをしてきたのはどっちなのか。
この70年間、沖縄は地上戦で甚大な被害を受け、戦後は日本の主権回復と引き換えに米軍支配下に置かれ、「無主権状態」の下で土地接収と基地建設が強行された。復帰後も米軍専用施設の約74%が集中し、日米地位協定により基地は実質的に自由使用されてきた。
つい最近も、普天間所属のオスプレイ訓練の佐賀空港移転が地元の反対で白紙に戻されたのに、沖縄では反対の民意を無視し警視庁の機動隊を投入して、工事が強行されている。
本土が嫌がるからとの理由で、沖縄に米軍基地を押し付ける差別的政策は既に破綻しており、問われるべきは政府の品格だ。
■ ■
2012年、在日米軍再編見直しに伴い、在沖海兵隊の一部を山口県の岩国基地に移したいという米側の打診を拒否したのは日本側だった。政府は山口県と岩国市の強い反発に困難と判断した。
海兵隊の撤退論が浮上するたびに、日本政府がブレーキをかけ、沖縄に引き留めてきたのである。
海兵隊の配備先について「軍事的には日本国内であればよい。政治的にできないから官僚が道をふさいでいるだけ」と説明したのは森本敏元防衛相だ。ジョセフ・ナイ元米国防次官補は「中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆弱(ぜいじゃく)性が高まっている」と、沖縄に基地が集中することのリスクを指摘した。
日本の安全保障政策を支えてきたのは、米国に対する過度の従属的姿勢と、沖縄に基地を押し込める構造的差別である。米軍基地の存在によって沖縄の地方自治・人権は脅かされ、地域の公益は著しく損なわれている。
■ ■
今回の代執行手続きと行政不服審査法に基づく取り消しの執行停止に対し、県が出した公開質問状に国交相はまだ答えていない。説明責任を果たさないのは不誠実である。
政府は口を開けば、普天間の危険性除去を強調するが、危険性除去を本当に急ぎたいのであれば、別の方法が早道だ。政府が主張する「危険性除去」も「負担軽減」もいずれも中途半端で、ヘリ基地を沖縄に半永久的に固定化する道を開くものである。
それを負担軽減とは呼ばない。
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----安倍内閣の強権国家ぶりが露呈したやり方だ。とても同じ国の同胞に対する行為とは思えない。
米軍普天間飛行場移設に絡む 建設問題で、石井啓一国土交通相が翁長雄志知事に対し、埋め立て承認取り消しの撤回を求め「是正指示」を出した。
「代執行」手続きの一環だが、「指示」の前段に当たる「勧告」を知事が拒否してからわずか3日後だ。週末を挟んだので実質的には翌日である。知事の勧告拒否の意味を吟味しようというそぶりすらない。
勧告拒否の際、知事は公開質問状を政府に提出した。その質問に一切答えぬままの「指示」である。まさに「問答無用」だ。
(琉球新報)
<動画>
<報道記事>
<各紙社説>
以下引用
2015.11.10 衆院予算委員会閉会中審査 赤嶺政賢議員の質問
しんぶん赤旗 2015年11月13日(金)
問題 の な 許すな
志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は12日、国会内で記者会見し、 県名護市 への米軍 建設をめぐる安倍政権の一連の強行姿勢について、「県民の総意に反する を押し付けるために、 を圧殺して、 の な につぐ を重ねている。まったく許しがたい」と厳しく批判し、「 建設を拒否する翁長雄志(おながたけし)知事の態度を断固支持し、 県民に連帯するたたかいを発展させる」と表明しました。
志位氏は、防衛省が行政不服審査法にもとづき、埋め立て承認取り消しの執行停止申し立てを国土交通相に請求し、取り消しの効力を停止させたことについて、そもそも行政不服審査法は、行政権力による不当処分から国民の権利を守るためのものだと指摘。「国が“私人”になりすまして、法律を悪用し、防衛省が国交相に申請するという茶番劇を通じて、(知事の埋め立て承認取り消しの)効力を停止させた。これはまさに の な そのものです」と指弾しました。
また、国交省による是正指示や代執行の動きについて、「県民が島ぐるみで反対している を無理やり押し付けるために、是正の指示や代執行を行うのは、 による地方自治の蹂躙(じゅうりん)そのものです」と批判しました。
志位氏はまた、「安倍政権は、国民多数の反対を押し切って立憲主義・ を破壊し、憲法の平和主義を壊す戦争法を強行しました。 の破壊という点では、同じ事態が で起こっています」と指摘。米紙ニューヨーク・タイムズが「日米両政府の が試されている」との社説を掲げたことにふれ、「世界の の基準から見ても、異常事態が起こっています。問われているのは、日本という国の だということを強調したい」と述べました。
志位氏はそのうえで、「 建設をきっぱり拒否している翁長知事を断固支持し、 に連帯するたたかいを大いに発展させていきたい」と決意を語りました。
(琉球新報)2015年11月13日
埋め立て:国交相、具体的な回答なし 県質問に
米軍普天間飛行場の名護市 への移設に伴う新基地建設で、埋め立て承認取り消しの執行停止や代執行手続きに伴う石井啓一国土交通相の法解釈を問う公開質問状を翁長雄志知事が出していたことについて、国交省は12日、県に回答文書を送った。県によると「執行停止は行政不服審査法で、代執行は地方自治法でそれぞれ認められている。法律に沿って行ったものだ」との趣旨で回答している。県側は「われわれは具体的に質問したのに、一切答えていない。自分たちの主張を一方的に言っている」と回答内容に強く反発している。
文書は回答期限としていた13日、県に到着する見通し。到着し次第、県は県公式ウェブサイトなどで回答を公開する。12日、県は国交省がファクシミリで送った文書で内容を確認した。
県は「 沿岸部の埋め立て事業は閣議決定に基づき実施されている『国家の事業』だと考えるが、いかがか」など5項目を石井国交相に質問していた。国交省は5項目に逐一回答しておらず、「執行停止と代執行はそれぞれ法律に沿って行った」と一括した形で回答しているという。
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東京新聞 2015年11月13日
【社説】 座り込み の はどこへ
米軍新基地建設が強行される名護市 で建設に反対する人々の座り込みが続く。派遣された警視庁機動隊らが強制排除を行う中でけが人や逮捕者が出ている。沖縄の はどこにあるのか。
米軍キャンプ・シュワブの工事用ゲート前には早朝から市民が集まってくる。お年寄りが多い。非暴力の行動であることを確認しあうとアスファルトの地面に寝て、隣の人と腕を組む。
午前七時前、シュワブの中に待機していた機動隊が一斉に正門から出てきて市民を取り囲んだ。ある人は数人の機動隊に抱えられ、ある人は両腕をつかまれて引きずられる。滑り止め付きの軍手をはめた隊員につかまれた腕には摩擦のために青あざが残る。五百人の市民が集まった十一日には排除された際に転び、頭を打つなどした二人が救急搬送された。
強制排除には沖縄県警の要請を受けた警視庁機動隊百五十人が加わる。要人警護やサミット開催でもなく、沖縄に出動することに県民の中には反感も募る。ゲート沿いでは装甲車と鉄柵で囲った中にごぼう抜きにされた人が閉じこめられる。檻(おり)のような場所に丸腰の人を一時的でも拘束するのは行き過ぎではないか。
前知事による辺野古埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事と、政府との溝は決定的だ。政府は知事に決定を取り消せと是正指示をし、これを拒否した翁長氏に対し知事の権限を奪う代執行を進めるため福岡高裁に提訴する。
県側も国地方係争処理委員会に審査を申し立て、決裂すれば国を提訴する。政府はこのような法廷闘争に足を踏み入れるのを止め、新基地計画を白紙に戻すべきだ。
国土の1%に満たない沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中する。普天間飛行場の返還は負担軽減策の象徴とされる。閉鎖や日本側への返還が急務なのは当然だが、基地を同じ県内に移しても負担軽減にならない。
沖縄県民は四度の選挙を通して新基地建設に「ノー」を示した。にもかかわらず、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返し、建設を強行する。
人々が体を張って座り込むのは沖縄に対する差別的な扱いに怒り、工事を少しでも遅らせるには声を上げるほかないからである。
沖縄の基地問題は日本全体の問題である。政府だけでなく、本土に住む私たちこそが考えるべき問題ではないか。非暴力の抗議は、あらためてそう訴えている。
南日本新聞 (2015/ 11/13 付 )
社説: [辺野古代執行へ] 国は対話の道閉ざすな
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐる沖縄県と国との対立は、法廷闘争に発展することが決定的となった。
翁長雄志知事は、辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した処分について、石井啓一国土交通相による処分撤回の指示を拒否すると正式に表明した。
これを受けて国は、知事に代わって取り消しを撤回する「代執行」を行うため、来週にも高裁に提訴する。
県側も、国交相が知事による承認取り消しの効力を停止をしたことを不服として「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ている。認められなかった場合は、高裁に提訴する方針だ。
法廷闘争の先にあるのは、さらなる対立と混乱でしかない。国は強権的な「代執行」で対話の道を閉ざしてはならない。
撤回指示を拒否するとした翁長氏は、代執行手続きを進める政府の一連の対応に、「地方自治の本旨に照らしても極めて不当」と反発している。
しかし、安倍晋三首相は参院予算委員会で「普天間の状況を放っておくのは政治の責任放棄だ」と述べ、あくまで移設を推進する姿勢である。
沖縄の民意との隔たりを丁寧に埋めるのが政治の責任ではないのか。「辺野古移設」一点張りの国に、その努力は見られない。
政府が強調する「法治」も疑問だ。本来国民の権利を守るための不服申し立ての仕組みを使い、工事主体の防衛省沖縄防衛局の言い分を認めたからだ。
条件付きで移設に賛成している辺野古周辺の3区には、反対派の名護市長の頭越しに、直接、補助金を交付する考えを伝えている。
なりふり構わぬやり方に、地元の不信は高まるばかりである。
国が「行政判断は示された」とする仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事の埋め立て承認で、前知事は「普天間飛行場の5年以内の運用停止」を要求し、安倍氏は努力を約束した。
しかし、その後、安倍氏は米国との交渉を盾に約束を後退させている。
今夏の政府と県の集中協議で、翁長氏が辺野古移設と運用停止は別問題だったはずと追及したが、菅義偉官房長官は「移設への県の協力が前提」との姿勢を崩さなかった。
「5年以内」は、承認を得るための「空手形」だったのでは、という疑念が生じる。
沖縄の国への不信感は根深い。政府が強引な姿勢を慎み、誠実に向き合うしか打開の道はない。
沖縄タイムス 2015年11月13日 05:30
社説[辺野古掘削再開]市民の安全 脅かす愚行
名護市辺野古の新基地建設をめぐり、沖縄防衛局は12日午後、海底地盤の強度などを調べるボーリング(掘削)調査を再開した。台風接近を理由に中断した7月以降、4カ月半ぶり。
中断の最中には、県と政府の集中協議が開かれたが形式だけに終わり、埋め立て承認取り消しをめぐる双方の対立は深刻さを増している。そんな中での掘削作業再開は、県や県民に対して「有無を言わせない」という政府のメッセージである。
掘削前日に開かれた参院予算委員会の閉会中審査でも安倍晋三首相は「普天間の状況を放っておくのは政治の責任の放棄」と新基地建設作業を強行する決意を示した。
しかし新基地建設が普天間の危険性除去とバーターなら、少なくとも完成まで数年から十数年間危険を固定することになる。翁長雄志知事が指摘するその矛盾に、安倍首相は答えていない。
建設の事前調査である掘削着手からすでに1年が過ぎた。調査は24地点を計画し昨年11月末に終了予定だったが、5地点を残し中断。建設に反対する市民の強い抗議活動によって、作業は年単位で遅れているのである。
掘削再開に関して菅義偉官房長官は「作業の安全に十分注意する」と述べたが、懸念されるのは作業の安全だけではない。海や陸での「過剰警備」により、抗議に参加する市民のけがが絶えない。
政府は、作業を強行すればするほど市民の安全を脅かしている実態を直視すべきである。
■ ■
辺野古の掘削をめぐっては11年前に大きな転機があった。2004年9月、当時の那覇防衛施設局(現沖縄防衛局)が旧建設計画のボーリング調査の着手を発表した。
しかし抗議活動に阻まれて調査は進まず約1年後、施設局は掘削のため海上に設置していた「やぐら」を全て撤去した。
調査着手の発表1カ月前に米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落する事故が発生しており、政府は強い意志を持って移設作業を進めた。それなのに中断を余儀なくされた背景に、市民の抗議があったことは言うまでもない。
当時の施設局はやぐら撤去の理由を「台風シーズンのため」と発表したが、実際には作業をめぐり、けが人が続出しかねない状況に対して小泉政権が当然の配慮をしたとみられている。
■ ■
しかし安倍政権の下では、警備も住民を排除するための「暴力」へと変質している。その結果、政府が強硬姿勢を貫くほど新基地建設の最前線で衝突・混乱が激化している。
朝日新聞が10月実施した世論調査では49%が安倍政権の埋め立て工事開始を「評価しない」と回答、「評価する」の33%を上回った。県や、県民の意見に耳を貸そうとしない政府への批判である。
沖縄の大多数の声を無視し、権力をむき出しにして工事を強行するやり方は、法治国家にあるまじき愚行だ。まず工事を中断し、話し合う姿勢をみせるべきだ。
琉球新報 2015年11月12日 06:02
<社説>「是正指示」拒否 民主国家の看板が問われる
「わが国は法治国家である」とは安倍政権がよく使う言葉だ。米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設計画で、石井啓一国土交通相の埋め立て承認取り消し処分の是正指示に対し、翁長雄志知事は是正勧告に続き、指示も拒否する意思を表明した。政府は知事の拒否を受け「法治国家」の名の下、代執行提訴など法的手続きを進める見込みだ。
しかし、考えてみてほしい。日本は「民主主義国家」である。民主的手続きを踏まえず、沖縄からの異議申し立てを却下することが「民主主義」の名にふさわしいのか。政府は再考すべきだ。
民主主義の手続きとは最低限(1)必要な情報を共有する(2)議論し互いの主張を擦り合わせる(3)互いに納得できる合意点を見いだす-といった過程が必要だ。
辺野古埋め立てに当てはめれば、この条件をまるで満たしていない。普天間飛行場の危険性除去という前提は国、県とも一致するが「なぜ辺野古でなければならないのか」という県民の疑問に、国は何一つ答えていない。
埋め立て承認の取り消しをめぐって、知事は第三者委員会の調査に基づき「違法」と判断し、その根拠を説明した。国は県の判断を無視し、代執行手続きを進めながら「承認取り消し」の執行停止も認めている。矛盾する手続きを並行することについて、県から公開質問状が提出されたが、石井国交相は「回答の義務はない」として、議論に応じる姿勢すら見せない。
議論ができない状態では、当然一致点を探ることも不可能だ。「国家事業に口を挟むな」というのであれば、それは独裁であり「民主国家」ではない。
「主権在民」「基本的 の尊重」は民主主義にとって当然のことだ。主権者、とりわけ当事者たる沖縄県民の7割以上が辺野古新基地建設に反対する中、法的手続きを踏めば国は何をしてもいいわけではあるまい。
翁長知事は是正指示拒否を表明する記者会見で「国と地方は対等であり、安全保障で地方は黙っておれというのは一人一人の を無視するものだ。多くの意見を聞きながら進むのが当然で、それが民主主義国である」と述べた。
知事の言葉を首相らは深く心に刻んでもらいたい。新基地建設を強行すれば日本は「民主主義国家」の看板を下ろさねばなるまい。
沖縄タイムス 2015年11月12日 05:30
社説[知事、撤回指示拒否]県と国 法廷闘争へ突入
辺野古新基地建設をめぐり埋め立て承認の取り消しを撤回するよう求めた国土交通相の指示に対し、翁長雄志知事は拒否すると正式表明した。
地方自治法に基づく国の「代執行」手続きで、翁長知事が勧告に続き指示を拒否したことから、国は県を来週にも福岡高裁那覇支部に提訴する。県と国は法廷闘争に入る。
翁長知事が埋め立て承認を取り消して以来、国の対抗措置を振り返ると、法の趣旨をねじ曲げており、とうてい納得できない。
翁長知事の埋め立て承認取り消しに対し、防衛省沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき国交相に審査請求と執行停止を申し立てた。同法は「国民の権利利益の救済を図る」のが目的である。米軍に提供する新基地を造ろうとする防衛局が「私人」のはずがない。行政法学者ら100人近くが審査請求・執行停止申し立ては「不適法」で、「法治国家」にもとると指摘していることからも分かる。
国交相は執行停止を認めた。同じ国の行政機関である身内の国交省が審査するから当然である。国交相は新基地建設の工事が継続できる状態にした上で、さらに代執行の手続きをとった。代執行では本来、判決が出るまで工事をすることができないが、私人と国の二つの立場を都合良く使い分け、工事の既成事実を積み上げる考えである。
翁長知事はこれらの問題で石井啓一国交相に公開質問状を出している。回答期限は13日だ。国の対抗措置に正当性があるのかどうか、根幹に関わる。石井氏が回答しないのなら、正当性がないことを自ら認めることになることを覚悟しなければならない。
■ ■
安倍晋三首相らは基地問題で「県民に寄り添う」「負担軽減に取り組む」などと耳当たりの良い言葉を使う。
だが、実際は問答無用の強権的な姿勢がむき出しだ。民主主義の国で最も尊重されなければならない選挙で、県内では昨年、名護市、県知事、衆院のすべてで新基地建設に反対する候補が勝利したにもかかわらず、民意に一切耳を傾けることをしない。
新基地は普天間飛行場にはない軍港機能や弾薬庫を備える。周辺の米軍基地と一体的に運用され、沖縄本島北部の軍事要塞(ようさい)化である。負担軽減にならないのは明らかだ。
佐賀空港のオスプレイの訓練取り下げに見られるように翁長知事は沖縄と他の都道府県との不平等な扱いを「いじめ」に例えたことがある。
参院予算委員会の閉会中審査でも福島瑞穂氏(社民)が「沖縄いじめ」と強調した上で、「嫌だ、嫌だ、嫌だと言っているのに、なぜ強行するのか」とただした。「沖縄差別」というほかない。
■ ■
米政府は基地問題で県が要請するたびに、日本の国内問題と逃げるが、基地を使用するまさに当事者である。
辺野古では陸で海で市民と警備当局が衝突している。警視庁から100人規模の機動隊が派遣され、力で市民をねじ伏せようとしている。
不測の事態が起きかねない水位に達していることを日米両政府は肝に銘じるべきだ。
琉球新報 2015年11月10日 06:02
<社説>「是正」指示 試される と民主主義
安倍内閣の強権国家ぶりが露呈したやり方だ。とても同じ国の同胞に対する行為とは思えない。
米軍普天間飛行場移設に絡む辺野古新基地建設問題で、石井啓一国土交通相が翁長雄志知事に対し、埋め立て承認取り消しの撤回を求め「是正指示」を出した。
「代執行」手続きの一環だが、「指示」の前段に当たる「勧告」を知事が拒否してからわずか3日後だ。週末を挟んだので実質的には翌日である。知事の勧告拒否の意味を吟味しようというそぶりすらない。
勧告拒否の際、知事は公開質問状を政府に提出した。その質問に一切答えぬままの「指示」である。まさに「問答無用」だ。
公開質問で知事は、沖縄防衛局が「私人」の立場で行政不服審査を申し立てたことの是非をただした。多数の行政法学者も違法と指摘している。政府が応答していないこと自体、法からの逸脱を認めたようなものだ。これで菅義偉官房長官が「法治国家」と繰り返すのだから噴飯物である。
行政不服審査は防衛局が出して国交相が認めた。同じ政府内だ。選手と審判を一人で兼ねるようなもので、これが認められるなら政府は万能である。
是正指示に知事が従わない場合、政府は今月中にも代執行を実施するため高裁へ提訴するという。内閣法制局長官の首をすげ替え、解釈改憲をやってのけた安倍内閣のことだ。政府の勝訴間違いなしと踏んでいるのであろう。
人事権を駆使して思うまま法の解釈を変え、都合に合わせて「国」にも「私人」にもなり、選手であり審判ともなる政府である。裁判所の判決も意のままとみる。普通はこれを「人治国家」と呼ぶ。
それにしても最近の政府の振る舞いは常軌を逸している。県も市も飛び越え、区に直接お金を渡すという。植民地の人々を仲間割れさせ、宗主国への反発を弱体化させる「分断統治」は植民地政策の常だが、まさに教科書通りである。さらには中央から機動隊を送り込み、市民運動を露骨に弾圧する。開発独裁の軍事政権と何が違うだろうか。
米紙ニューヨーク・タイムズ社説の表現を借りれば、まさに「平和、 、民主主義を約束する国家を自称する日本と米国の主張が試されている」。この試験に合格できないなら、安倍政権に民主国家を名乗る資格はない。
沖縄タイムス 2015年11月10日 05:30
社説:[取り消し撤回指示]問うべきは政府の品格
石井啓一国土交通相は9日、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事に対し、地方自治法第245条に基づき、取り消し撤回を指示する文書を発送した。勧告を拒否した知事に代わって国が埋め立てを承認する「代執行」手続きを、さらに進める措置である。
日米で合意された米軍普天間飛行場の辺野古移設が進まなければ、周辺住民の危険性は除去されず、米国との信頼関係にも悪影響が及ぶとし、「取り消し処分を放置することにより、著しく公益を害することは明らかだ」と主張している。
その言い分は、基地をめぐる歴史的経緯を何一つ考慮しない一方的な決め付けである。そもそも著しく公益を害するようなことをしてきたのはどっちなのか。
この70年間、沖縄は地上戦で甚大な被害を受け、戦後は日本の主権回復と引き換えに米軍支配下に置かれ、「無主権状態」の下で土地接収と基地建設が強行された。復帰後も米軍専用施設の約74%が集中し、日米地位協定により基地は実質的に自由使用されてきた。
つい最近も、普天間所属のオスプレイ訓練の佐賀空港移転が地元の反対で白紙に戻されたのに、沖縄では反対の民意を無視し警視庁の機動隊を投入して、工事が強行されている。
本土が嫌がるからとの理由で、沖縄に米軍基地を押し付ける差別的政策は既に破綻しており、問われるべきは政府の品格だ。
■ ■
2012年、在日米軍再編見直しに伴い、在沖海兵隊の一部を山口県の岩国基地に移したいという米側の打診を拒否したのは日本側だった。政府は山口県と岩国市の強い反発に困難と判断した。
海兵隊の撤退論が浮上するたびに、日本政府がブレーキをかけ、沖縄に引き留めてきたのである。
海兵隊の配備先について「軍事的には日本国内であればよい。政治的にできないから官僚が道をふさいでいるだけ」と説明したのは森本敏元防衛相だ。ジョセフ・ナイ元米国防次官補は「中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆弱(ぜいじゃく)性が高まっている」と、沖縄に基地が集中することのリスクを指摘した。
日本の安全保障政策を支えてきたのは、米国に対する過度の従属的姿勢と、沖縄に基地を押し込める構造的差別である。米軍基地の存在によって沖縄の地方自治・人権は脅かされ、地域の公益は著しく損なわれている。
■ ■
今回の代執行手続きと行政不服審査法に基づく取り消しの執行停止に対し、県が出した公開質問状に国交相はまだ答えていない。説明責任を果たさないのは不誠実である。
政府は口を開けば、普天間の危険性除去を強調するが、危険性除去を本当に急ぎたいのであれば、別の方法が早道だ。政府が主張する「危険性除去」も「負担軽減」もいずれも中途半端で、ヘリ基地を沖縄に半永久的に固定化する道を開くものである。
それを負担軽減とは呼ばない。
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