2016年5月22日日曜日

沖縄米軍属の犯罪(2)基地ある限り事件起きる 沖縄の怒り受け止めよ

基地の集中こそ元凶だ 繰り返される沖縄の悲劇 「綱紀粛正」もはや限界 

<各紙社説・論説>
北海道新聞)沖縄の悲劇再び 基地の集中こそ元凶だ(5/21)
新潟日報)米軍属逮捕 繰り返される沖縄の悲劇(5/21)
信濃毎日新聞)元米兵逮捕 沖縄の怒り受け止めよ(5/21)
福井新聞)沖縄の米軍属逮捕 基地ある限り事件起きる(5/21)
京都新聞)沖縄米軍属逮捕  もう悲劇を繰り返すな(5/21)

神戸新聞)米軍属逮捕/過大な基地負担が背景に(5/21)
山陰中央新報)沖縄の米軍属逮捕/日米で再発防止に取り組め(5/21)
山陽新聞)米軍属の犯罪 沖縄で繰り返される悲劇(5/21)
中国新聞)沖縄元米兵逮捕 「綱紀粛正」もはや限界(5/21)






以下引用



北海道新聞 2016/05/21 08:55
社説:沖縄の悲劇再び 基地の集中こそ元凶だ


 沖縄に米軍基地が集中する現実が、またも悲劇をもたらした。
 沖縄県うるま市の女性会社員(20)が行方不明となった事件で、県警は死体遺棄の疑いで、元米海兵隊員で基地内で働く米国人の男(32)を容疑者として逮捕した。
 岸田文雄外相はケネディ駐日米大使を呼び、「遺憾だ」として抗議した。大使は「心からの悲しみ」を表明したという。
 詳細は捜査中だが、沖縄ではこれまでも米軍基地の存在に起因する事件が繰り返されてきた。
 翁長雄志(おながたけし)知事が「この怒りは持って行き場がない。痛恨の極みだ」と憤りを示したのも当然だ。
 普天間飛行場の辺野古移設をめぐる国と県との対立も続いている。今回の事件を受けて、緊張がさらに高まる可能性もある。
 政府内からは来月の沖縄県議選や夏の参院選への影響を懸念する声も聞かれる。だが求められているのは目先の選挙対策ではなく、基地の集中という元凶の解消だ。
 来週開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて、安倍晋三首相とオバマ米大統領との会談も予定される。両首脳は事態の打開に踏み出してほしい。
 容疑者は現役米兵ではないが、米軍に雇用された「軍属」だ。日米地位協定で米兵に準ずる扱いが規定される。事件は公務外で起き日本側が身柄を拘束している。
 基地と県民生活が隣り合わせの現状がなければ、事件は起きていないだろう。基地ゆえの悲劇だ。
 大規模な基地反対運動につながった1995年の少女暴行事件をはじめとして、沖縄では米兵が関わる事件が後を絶たない。
 今年3月にも準強姦(ごうかん)容疑で米兵が逮捕されたばかりだ。
 米政府はそのたびに再発防止を口にしてきた。日本政府も「強い憤り」を表明してきたが、言葉だけに終わってはいないか。
 米軍はまず、米兵に限らず軍属も含めた管理の徹底と綱紀粛正を図るべきだ。日米両政府は、日米地位協定を含めて、あらゆる対策を検討しなければならない。
 だが米軍専用施設の7割以上が沖縄に集中する現状が続く限り、問題の根絶は望めないだろう。
 安倍首相は日米首脳会談で今回の事件も取り上げるという。
 沖縄では事件を受け、米軍への抗議行動が既に起きている。首相は沖縄の心に寄り添い、実効性のある対策を求めるべきだ。
 オバマ氏には、被害者と県民への謝罪とともに、基地集中の解消につながる判断を期待したい。
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新潟日報 2016/05/21
社説:米軍属逮捕 繰り返される沖縄の悲劇


 沖縄県で、また米軍関係者による凶悪な犯罪が起きた。
 うるま市の会社員、島袋里奈さん(20)が遺体で見つかった事件で、米軍属の男が死体遺棄容疑で県警に逮捕されたのだ。
 米空軍嘉手納基地で働く元海兵隊員、シンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)は「首を絞め、刃物で刺した」と殺害をほのめかす供述をしているという。
 被害者は地元ショッピングセンターで働き、結婚を前提に交際相手と幸せに暮らしていた。
 ところが4月28日に行方不明となり、県警が捜査していた。容疑者の供述に基づき、白骨遺体が恩納村の雑木林で発見された。
 20歳の若さで暴力的に人生を断たれるとは、何とむごいことか。家族や周囲の人々の悲しみは、想像に余りある。
 米軍関係者による日本国内での凶悪犯罪は後を絶たない。
 殺人や強盗などの凶悪犯で、全国の警察が摘発した米兵、軍属らは、2015年までの10年間で62件91人に上った。
 在日米軍の専用施設・区域の約7割が集中する沖縄では、ほぼ毎年発生している。
 1995年の米兵による女子小学生暴行事件では、沖縄で「県民総決起大会」が開かれた。
 県民の激しい抗議は翌年、日米政府が米軍普天間飛行場の返還に合意する原動力となった。
 「基地の島」で、同じような悲劇を繰り返させてはならない。日米両政府は、実効性のある再発防止策に真剣に取り組むべきだ。
 犯罪の温床になっていると指摘されるのが、米側に大きな特権がある日米地位協定だ。
 在日米軍の軍人や軍属が事件、事故を起こしても、「公務中」と判断されれば、原則として米側に第1次裁判権がある。
 「公務外」なら、その権利は日本側が持つ。だが容疑者が基地内に逃げ込めば、起訴までの間、日本側に身柄は渡されない。
 95年の事件でも、先に米側が容疑者の身柄を拘束し、地位協定を盾に引き渡しを拒否した。
 猛反発を受け、運用が改善された。殺人など凶悪犯罪に限り米側の同意があれば、起訴前でも身柄が引き渡されるようになった。
 米軍関係者の凶悪犯罪を抑止するには、協定を抜本的に改定する必要があるのではないか。
 政府は毅然(きぜん)とした態度で米側と交渉すべきだ。
 今回の事件で、沖縄に反基地のうねりが高まるのは間違いない。
 普天間飛行場の辺野古移設問題や、27日に予定される米オバマ大統領の広島訪問への影響は避けられまい。
 沖縄では6月に県議選を控え、夏には参院選がある。
 基地集中への不満が強まり、辺野古移設に対する反発が大きくなれば、選挙結果にも影響しよう。
 安倍政権は、米大統領訪問を参院選への弾みにするシナリオを描いていた。日米の歴史的な和解と同盟関係を演出するものだ。
 だがまずは、足元の苦しみを直視すべきではないのか。国民の安全を守るのが政府の仕事だ。
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信濃毎日新聞(2016年5月21日)
社説:元米兵逮捕 沖縄の怒り受け止めよ


 「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」。翁長雄志知事の言葉は、多くの沖縄県民の思いを代弁するものだろう。
 うるま市の20歳の女性の遺体が見つかり、元米海兵隊員で軍属の男が逮捕された。政府は沖縄の怒りをしっかり受け止めなくてはならない。基地縮小を含め、再発防止の抜本策を米側と話し合うべきだ。
 4月下旬、交際中で同居する男性にスマートフォンで「ウオーキングしてくる」とメッセージを送信したまま、行方不明になっていた。供述に基づき、雑木林で遺体が発見された。むごく、痛ましい結果である。
 男が逮捕された日の夜、岸田文雄外相はケネディ駐日米大使を外務省に呼び、「極めて遺憾だ。強く抗議する」と伝えた。中谷元・防衛相も在日米軍司令官を防衛省に呼んでいる。
 安倍晋三首相は、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせて行う日米首脳会談で事件を取り上げ、厳正な対応をオバマ大統領に求める意向を固めた。米側に捜査への協力や再発防止を求めるのは当然である。
 沖縄では米軍関係者による凶悪犯罪が繰り返されてきた。1995年に米兵3人が女子小学生を連れ去り暴行した事件では、かつてなく反基地感情が高まった。それ以降もほぼ毎年起きている。
 ことし3月には那覇市のビジネスホテルで女性観光客が海軍1等水兵の部屋に連れ込まれ、暴行される事件があった。それから1カ月余りでの凶行である。米軍が綱紀粛正、再発防止を約束しても県民は信用できないだろう。
 「基地がある限り、事件が繰り返される」との声が出るのは当然だ。小さな島に在日米軍専用施設の約74%が集中する状態は改めていかなければならない。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、政府と県の対立が続いている。
 菅義偉官房長官は「沖縄の気持ちに寄り添いながら、できることは全てやるという方針の下に負担軽減に全力で取り組む」と述べている。寄り添うというなら、辺野古を「唯一の解決策」と押し付けるのではなく、県民が広く納得できる方法を探る必要がある。
 米国務省の報道官は、逮捕後の記者会見で「移設を推進する立場は変わらない」と言明した。強行すれば、反基地感情がさらに高まるのは必至だ。日本政府には、県外移設や無条件の返還について米側と協議するよう求める。 
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福井新聞(2016年5月21日午前7時30分)
論説:沖縄の米軍属逮捕 基地ある限り事件起きる


 【論説】沖縄でまたも米軍絡みの許しがたい事件が起きた。行方不明だった20歳の女性が遺体で見つかった。沖縄県警は元米海兵隊員で嘉手納基地で働く軍属の男を死体遺棄の疑いで逮捕した。在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄の悲しい現実である。政府が強調する「基地負担の軽減」は、完全撤去へ向かわなければ、こうした凶悪事件が繰り返されるだろう。
 米国から帰国したばかりの翁長雄志(おながたけし)知事は「沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているかと話してきた。その矢先に、基地があるがゆえの事件が起きてしまった」と絶句、「痛恨の極み」と憤った。
 安倍晋三首相は「非常に強い憤りを覚える。徹底的な再発防止など厳正な対応を求めたい」とし、菅義偉官房長官も「言語道断。二度と起こらないよう、あらゆる機会を通じて米側に対応を求め続けたい」と強調した。言葉の調子は強いが、政府は「二度と起こらないよう」と何度繰り返してきただろうか。
 沖縄に厳然として治外法権が存在する限り、再発防止は当てにならない。日米同盟の強化は日本の安全保障政策の基本だが、県民の安全は過去も、現在も保障されてはいない。
 1995年、米兵による女子小学生暴行事件が発生した。反基地の怒りは翌年の日米両政府による普天間飛行場の返還合意につながった。だが、その飛行場は20年たっても返還されず、名護市辺野古で新基地建設工事が進められている。
 国土の0・6%の土地に米軍専用施設の約74%が集中するというが、割合は14年の73・8%から、今年1月現在では74・46%に増えているという。基地負担軽減に実効性がない。
 72年の沖縄返還からこれまで、米軍関係者による犯罪検挙数は6千件近い。米兵の殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生。3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。
 県警の調べによると、亡くなった女性は「ウオーキングしてくる」と出た後、行方不明になった。逮捕された軍属の男は「首を絞め、刃物で刺した」と供述している。全く面識もなかったとすれば、県民は安心して外も歩けない。
 日米安保条約に基づく地位協定は、米兵・米軍属が事件を起こした場合、米側に特権を認めている。今回米側は捜査に全面的に協力するとしているが、この「特権」こそ、いまだ戦後を引きずる「沖縄の痛み」そのものである。
 オバマ米大統領が26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日する。安倍首相が日米首脳会談で厳しく申し入れ、オバマ氏も「遺憾の意」を表明するだけでは、何ら現状は変わらない。治外法権を改め、基地縮小・撤退への道筋を付けることでしか県民は納得しないだろう。
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[京都新聞 2016年05月21日掲載]
社説:沖縄米軍属逮捕  もう悲劇を繰り返すな


 在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄でまた、女性が被害に遭い、米軍関係者が逮捕される事件が起きた。
 沖縄県うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかり、死体遺棄容疑で県警に逮捕された米軍属の男(32)は殺害をほのめかす供述をしているという。米軍関係者が関わったとみられる凶悪事件が繰り返されたことを、日本政府は重く受け止めなければならない。
 翁長雄志知事は「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と強調した。県民から激しい怒りの声が上がるのも当然だ。
 1995年の米兵による少女暴行事件では、県民の怒りが大きなうねりとなった。「県民総決起大会」に約8万5千人(主催者発表)が集まって抗議の声を上げ、翌年の日米による米軍普天間飛行場の返還合意につながった。
 しかし、米軍関係者による犯罪は後を絶たない。
 警察庁によると、殺人や強盗などの凶悪犯で全国の警察が摘発した米兵、軍属らは昨年までの10年間で62件91人に上った。沖縄県では少女暴行事件が起きた95年以降、2013年を除いて毎年1~7件発生している。今年3月にも、那覇市で女性観光客が海軍1等水兵に暴行された。
 在日米軍の軍人や軍属が事件、事故を起こした場合、日米地位協定で米側に大きな特権がある。「公務中」と判断されれば、原則として米側に第1次裁判権があり、日本の検察は起訴できない。「公務外」なら日本側に第1次裁判権があるが、容疑者が基地に逃げ込むなどすれば起訴されるまで日本側に身柄は引き渡されない。
 過去の事件を通じて協定は見直されてきたが、米兵による事件に関する抜本改正は見送られた。協定による特権が、犯罪が絶えない要因となってはいないか。
 事件が起きるたびに、米側に綱紀粛正を求めるだけでは不十分だ。日本政府は地位協定の改定や米軍基地の県外移設を含めた根本的な対策を検討する必要がある。
 今回の事件を受け、普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる県と政府の対立が激しくなる可能性がある。6月の県議選や夏の参院選で米軍基地問題が焦点となるのは間違いない。
 今月下旬には主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)やオバマ米大統領の広島訪問がある。安倍晋三首相はオバマ氏に厳正な対処を求め、具体的な再発防止策を日米で早急に協議すべきだ。
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神戸新聞 2016/05/21
社説:米軍属逮捕/過大な基地負担が背景に


 沖縄県うるま市の女性会社員が遺体で見つかった事件で、元米海兵隊員で軍属の男が死体遺棄容疑で逮捕された。沖縄県警の調べに殺害をほのめかす供述をしている。
 容疑が事実なら、許すことのできない卑劣な犯罪だ。命を奪われた女性の恐怖や家族の悲しみ、憤りは察するに余りある。
 米軍関係者による痛ましい事件が繰り返されたことに県民も衝撃を受けている。容疑者は米空軍嘉手納基地に勤めており、米軍は捜査に全面協力すべきである。
 安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と述べた。綱紀粛正を強く求めねばならない。来日するオバマ米大統領にも沖縄の基地問題の現状をきちんと伝えることが重要だ。
 国土の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設・区域の74%が集中する。そうした異常な状況の下で、1972年の本土復帰後も米軍関係者による犯罪が続発してきた。
 2014年末までの犯罪摘発件数は約6千件に上り、殺人や性的暴行などの凶悪事件が約1割を占める。被害届が出されない例も含めれば実数はもっと多いだろう。
 海兵隊員らによる少女暴行事件で県民の怒りが爆発したのは1995年のことだ。それを機に日米政府は普天間飛行場の返還で合意した。
 だがその後も事件は続いている。今年3月には那覇市のホテルで海軍兵士が女性観光客を自室に連れ込んで暴行し、逮捕された。その都度米軍は夜間外出禁止などを実施するが、効果はほとんど見られない。
 背景には、米軍関係者に有利な日米地位協定の問題があるとされる。公務中の事件、事故は米側の裁判権が優先され、公務外でも基地に逃げ込めば警察は逮捕できない。
 今回のような凶悪事件の場合は米側が身柄を引き渡すなど運用の改善で対応しているが、米側の「好意的考慮」にとどまる。日本側の捜査や訴追に支障のないよう協定改正を迫るのが政府の責務ではないか。
 県民は米軍機の事故などの危険にも直面しており、我慢の限界だろう。過大な基地負担の軽減を急がねばならないが、地元が反対する普天間飛行場の辺野古移設にこだわっていては進展は望めない。政府は米軍基地の移転、縮小について米側と幅広く協議する必要がある。
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山陰中央新報 ('16/05/21)
論説:沖縄の米軍属逮捕/日米で再発防止に取り組め


 沖縄でまたしても米軍絡みの許し難い、痛ましい事件が起きた。4月末から行方不明になっていた20歳の女性が遺体で見つかり、沖縄県警は元米海兵隊員で空軍基地に勤務する米軍属の男を死体遺棄の疑いで逮捕した。
 安倍晋三首相は「徹底的な再発防止など、厳正な対応を求めたい」と述べたが、これまでも再発防止を申し入れながら、事件は繰り返し起きている。
 オバマ米大統領が26日からの主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のため来日し、日米首脳会談が行われる。安倍首相はこの機会に、大統領に厳しく申し入れるとともに、日米両政府が再発防止に向けて、固い決意で取り組むよう協議すべきだ。
 在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄県では米軍関係者による凶悪事件が後を絶たない。日米同盟は日本の安全保障政策の基本ではあるが、事件は同盟の基礎となる信頼関係を損なうものだ。
 沖縄県の翁(お)長(なが)雄(たけ)志(し)知事は「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と指摘する。こうした事件のたびに思い出さざるを得ないのが、女子小学生が米兵に暴行された1995年の事件だ。沖縄では反基地の怒りが噴き出し、日米両政府による96年の普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。
 だが普天間飛行場は20年たっても返還されず、名護市辺野古で新たな移設基地の建設工事が進められている。今回、菅義偉官房長官は「沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいく」と述べたが、軽減は進んでいないのではないか。
 その一方で事件は無くならない。沖縄県によると米兵による殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は95年以降も毎年数件発生、今年3月にも女性観光客が那覇市内で暴行される事件が起きている。
 沖縄県警の調べによると、亡くなった女性は同居男性に「ウオーキングしてくる」と連絡した後、行方不明になった。逮捕された米国人の32歳の男は遺体を遺棄した容疑を認め、殺害に関与した供述をしているという。女性との接点はなく、見知らぬ女性を襲った可能性がある。
 日米安全保障条約に基づく地位協定は、在日米軍人や軍に直接雇用されている民間人の「軍属」が事件を起こした場合の対応で米側に特権を認めている。男は米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)内で働く軍属だが、米側は捜査に全面的に協力するとしている。
 政府は沖縄関係閣僚会議を開き、米軍の綱紀粛正などを求めることを確認。19日夜に岸田文雄外相がケネディ駐日米大使を、中谷元・防衛相がドーラン在日米軍司令官を呼んで抗議した。
 政府内にはオバマ大統領の被爆地・広島訪問への影響を懸念する声もあるようだ。だが今回の事件で毅然(きぜん)とした対応を示さなければ、沖縄の反基地運動の対象は普天間飛行場にとどまらず米軍基地全体へ広がるだろう。
 普天間飛行場の移設問題にも影響しよう。移設を巡る政府と沖縄県の訴訟は和解が成立、工事を中断し、打開策が話し合われている。しかしまずは今回の事件への対処を政府と沖縄県で協議すべきだ。米国との交渉は政府の責任だ。基地負担軽減を進める政府の本気度が問われる。
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山陽新聞(2016年05月21日 08時41分 更新)
社説:米軍属の犯罪 沖縄で繰り返される悲劇


今年成人式を迎えたばかりの若い命が奪われ、米軍関係者が逮捕された。沖縄県民の間に、大きな衝撃が広がっている。
 沖縄県うるま市の20歳の女性が4月末から行方不明になっていた事件で、沖縄県警が逮捕したのは元米海兵隊員で、現在は米軍嘉手納基地(嘉手納町など)で働く「軍属」だった。女性を車で連れ去り、殺害した疑いがある。
 在日米軍専用施設の約74%が集中する沖縄県では、米軍人や軍属による犯罪が繰り返されてきた。「基地があるから事件が起きる」として、県民の間で基地への反発が強まっている。
 今回の事件で、沖縄県民が受けている衝撃を理解するためには、本土に住む私たちも沖縄で戦後に起きた悲劇を知っておく必要がある。米軍人らによる犯罪の中で、特に県民の記憶に焼き付いているのは「由美子ちゃん事件」だ。
 1955年9月、石川市(現在のうるま市)に住む6歳の少女が行方不明になり、翌朝、米軍基地の近くで遺体が見つかり、米軍人が逮捕された。当時、沖縄は米国の施政権下にあり、容疑者の身柄は米国に移され、沖縄側には裁判の状況すら、ほとんど知らされなかったという。
 その後も沖縄県内では米軍人らによる事件が続いた。殺人、強盗、強姦(ごうかん)などの凶悪犯罪は本土復帰から間もない77年が69件とピークで、その後、数は減ったが、ほぼ毎年起きている。95年には複数の米軍人による小学生の少女への暴行事件が起きた。県民の反発はかつてなく高まり、これが日米両政府による米軍普天間飛行場(宜野湾市)の返還合意につながった。
 今回の事件を受け、日本政府は米側に徹底的な再発防止を求めるとしている。しかし、これまでも米側は事件のたびに再発防止を約束してきたが、事態は変わっていない。沖縄県内からは、日米地位協定の抜本的な見直しを求める声が上がっている。
 日米地位協定は、在日米軍の軍人や軍属が犯罪に問われた場合、「公務中」なら原則的に米側に優先的な裁判権があると定めている。「公務外」なら日本側に裁判権があり、今回の事件はそのケースに当たる。ただ、過去の事件では公務外でも容疑者が基地内に逃げ込むなどすれば、起訴されるまで、日本側に身柄は引き渡されなかった。
 95年の少女暴行事件などを機に米側は運用改善に応じてきたものの、米側の裁量で日本の捜査が左右される状況は変わっていない。依然として不公平との批判は根強く、米軍人や軍属による犯罪が絶えない温床になっている、と指摘されている。
 沖縄県内の反基地感情が高まれば、日米関係に大きな影響を与えることになる。日米両政府は沖縄の声を真摯(しんし)に受け止め、地位協定の改定を含めた本格的な議論を始めるべきだ。
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中国新聞 2016/5/21
社説:沖縄元米兵逮捕 「綱紀粛正」もはや限界


 またしても許しがたい事件が沖縄で起きた。行方不明になっていた20歳の女性の死体を遺棄した疑いで、元米海兵隊員で軍属の男が逮捕された。殺害をほのめかす供述もしているという。基地絡みの凶悪犯罪は後を絶たない。言葉だけの綱紀粛正や再発防止ではもはや限界だ。
 「徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」。きのう、安倍晋三首相の言葉は沖縄県民にどう聞こえたか。歴代政権から何度も聞き、そのたびに裏切られてきた。県民は怒りを抑えきれないでいよう。
 現にことし3月にも那覇市で女性観光客が暴行され、米兵が逮捕された。この時も県が米軍に綱紀粛正を求めたが、痛ましい事件が繰り返された。
 今回の容疑者は除隊後、嘉手納基地で電気関係の仕事をする民間人の軍属だった。教育責任がある米軍は何をしていたのだろう。場当たり的な対応では何も変わらないということだ。
 昨年、米軍人や軍属、その家族による刑法犯摘発は全国で76件に上り、半数近くの34件は沖縄だった。今回も「基地があるがゆえに事件が起きてしまった」と翁長雄志(おなが・たけし)知事は断じる。
 容疑者逮捕のおととい、知事は米国から帰ってきたばかりだった。普天間飛行場の辺野古移設を含め、理不尽な状況を伝えに行っていた。基地の危険は、今回のような凶悪犯罪も含む。知事の怒りもなおさらだろう。
 思い出されるのは、沖縄の女子小学生が米兵に暴行された1995年の事件である。反基地感情が噴き出し、日米両政府による普天間返還合意につながった。だが20年たっても返還されず、負担軽減は進んでいない。
 凶悪犯罪がこうも繰り返される以上、米軍基地の整理・縮小を加速させるしかあるまい。完全撤去を求める声も一層増えてこよう。むろん実現には、米軍の最高司令官を動かさねばならない。そのオバマ大統領が間もなく日本にやって来る。
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に合わせ日米首脳会議を開く。安倍首相は沖縄の現状や怒りを率直に伝え、基地問題の踏み込んだ議論をすべきだ。
 すぐにでも手を付けられるのは日米地位協定である。今回は公務外の軍属が犯した事件で米側は捜査に全面協力する方針という。しかし米軍人らの公務中の犯罪は米側に第1次裁判権があり、かねて不平等が指摘されてきた。犯罪抑止の観点からも日本側から見直しを求めたい。
 政府与党は安全保障関連法の施行などを受け、かつてない良好な日米関係をアピールする。今こそ対等な同盟関係を示す時だが、政府は事件の早期収拾を図る考えだ。参院選対策かと思いきや大統領の広島訪問への影響も考えてのことらしい。
 沖縄が気兼ねする必要はなく、大統領に明確な謝罪を求めるべきだ。そもそも日本政府はどっちを向いているのか。過重な基地負担を押し付けてきた責任を忘れてはならない。
 辺野古移設についても言える。訴訟の和解を受け、政府と県は打開策を探る作業部会を月末に予定していた。政府側が延期を申し入れたのは当然だ。そのような状況にない。
 戦後71年、復帰44年になるのに、もう限界だ―。沖縄の声を両政府は受け止め、一刻も早く痛みを取り除くべきだろう。
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