2016年5月22日日曜日

沖縄米軍属の犯罪(1)日米両政府に責任 防止策は基地撤去しかない

唯一の根絶策は基地撤去だ 基地を減らすしかない 植民地扱いは限界だ 沖縄を安心安全の島に

<各紙社説・主張>
朝日新聞)元米兵逮捕 基地を減らすしかない(5/21)
読売新聞)沖縄米軍属逮捕 再発防止へ厳正対応が必要だ(5/21)
毎日新聞)沖縄米軍属逮捕 県民の怒りに向き合え(5/21)
日本経済新聞)米軍絡みの犯罪防止に全力を (5/21)
産経新聞)元米兵の凶行 怒りを悲劇根絶につなげ(5/21)

東京新聞)元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に(5/21)
しんぶん赤旗)沖縄米軍属の犯罪 唯一の根絶策は基地の撤去だ(5/21)
琉球新報)「殺害」示唆 植民地扱いは限界だ 許されない問題の矮小化(5/21)
沖縄タイムス)[女性遺棄事件]声上げ立ち上がる時だ(5/21)
琉球新報)米軍属女性死体遺棄 日米両政府に責任 防止策は基地撤去しかない(5/20)
沖縄タイムス)[不明女性遺体で発見]米軍がらみ 最悪の結末(5/20)




以下引用



朝日新聞 2016年5月21日(土)付
社説:元米兵逮捕 基地を減らすしかない


 沖縄県民は幾度、おぞましい事件に直面しなければならないのか。
 うるま市の女性(20)が遺体で見つかり、米国籍で元米兵の男(32)が死体遺棄容疑で県警に逮捕された。男は女性殺害をほのめかしているという。
 元米兵は米軍嘉手納基地で働く軍属である。現役の兵士ではないが、米軍基地が存在しなければ起きなかった事件だと言わざるを得ない。
 太平洋戦争末期に米軍が沖縄に上陸して以降、米軍統治下の27年間も、72年の日本復帰後も、沖縄では米軍人・軍属による事件が繰り返されてきた。
 県警によると、復帰から昨年までの在沖米軍人・軍属とその家族らによる殺人や強姦(ごうかん)などの凶悪事件は574件にのぼる。
 事件のたびに県は綱紀粛正や再発防止、教育の徹底を米軍に申し入れてきた。だが、いっこうに事件はなくならない。
 全国の米軍専用施設の75%近くが集中する沖縄で、米軍関係者による相次ぐ事件は深刻な基地被害であり、人権問題にほかならない。これ以上、悲惨な事件を繰り返してはならない。そのためには、沖縄基地の整理・縮小を急ぐしかない。
 95年に起きた米海兵隊員らによる少女暴行事件を受けて、全県で基地への怒りが大きなうねりとなった。その翌年、日米両政府は米軍普天間飛行場の返還で合意したはずだった。
 だが20年たっても返還は実現せず、日本政府は名護市辺野古沿岸に移設する県内たらい回しの方針を変えようとしない。
 日本の安全に米軍による抑止力は必要だ。だがそのために、平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない。
 たび重なる米軍関係者による事件は、そうした問いを日本国民全体に、そして日米両政府に突きつけている。
 日本政府が米政府に再発防止を強く求めているのは当然だ。来週、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日するオバマ大統領にも、安倍首相から厳しく申し入れてほしい。
 だがそれを、一連の外交行事が終わるまでの一時しのぎに終わらせてはならない。
 長く県民が求めてきた辺野古移設の見直しや、在日米軍にさまざまな特権を与えている日米地位協定の改定も、放置されてきたに等しい。
 地元の理解のない安全保障は成り立たない。こうした県民の不信と不安を日本全体の問題として受け止め、幅広く、粘り強く米側に伝え、改善の努力を始めなければならない。
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読売新聞 2016年05月21日 06時01分
社説:沖縄米軍属逮捕 再発防止へ厳正対応が必要だ


 残虐で、許し難い犯行である。在日米軍には、実効性ある再発防止策の徹底を求めたい。
 沖縄県うるま市の20歳の女性が4月下旬から行方不明になっていた事件で、沖縄県警が米軍属の32歳の男を逮捕した。恩納村の雑木林に女性の遺体を遺棄した容疑だ。
 男は容疑を認め、女性の首を絞め、刺したとの趣旨の供述もしているという。男は元海兵隊員で、今は米軍嘉手納基地でインターネット関連の業務に就いている。
 県警は、犯行に至る経緯や動機など、事件の全容解明に向けて捜査に全力を挙げてもらいたい。
 安倍首相が「非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と語ったのは当然である。
 今回の事件で看過できないのは27日のオバマ米大統領の広島訪問に対する影響だ。日米同盟を新たな段階へ導く歴史的な訪問に、深刻な影を落としかねない。
 男の逮捕当日、岸田外相はケネディ駐日米大使に対し、「卑劣で残忍な凶悪事件で、極めて遺憾だ」と申し入れた。中谷防衛相もドーラン在日米軍司令官に抗議した。矢継ぎ早の対応は、日本政府の強い危機感の表れだろう。
 ケネディ氏は、「沖縄県警や日本政府に全面的に協力する」と岸田氏に約束した。米側も、オバマ氏の来日をより意義深いものにするとの問題意識を共有し、真剣に対応していると言える。
 沖縄では、米軍関係者による凶悪犯罪が繰り返されてきた。
 2012年10月に海軍の兵士2人が集団強姦致傷容疑で逮捕され、その後、実刑判決を受けた。今年3月にも、海軍兵1人が準強姦容疑で逮捕されている。
 不祥事の度に、米軍は再発防止を約束した。12年の強姦事件後には、日本に滞在する全軍人に夜間外出禁止令を発し、軍人・軍属への再教育も表明した。
 それでも事件が続くのは、過去の対策が不十分だったからだ。米軍の教育が有効に機能したのか、本格的に検証する必要がある。それを踏まえ、効果的な綱紀粛正策を実施しなければならない。
 沖縄県の翁長雄志知事は「基地があるがゆえの事件が起きてしまった」と述べた。今回の犯行は男の勤務時間外であり、日米地位協定上の問題は生じていない。事件を普天間飛行場の辺野古移設と絡めて政治利用してはなるまい。
 日米両政府は、米軍基地の整理縮小など、沖縄の負担軽減策を着実に実行していくべきだ。
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毎日新聞2016年5月21日 東京朝刊
社説:沖縄米軍属逮捕 県民の怒りに向き合え


 なぜ沖縄で米軍絡みの凶悪な犯罪が繰り返されるのか。米軍属の男が女性会社員の遺体を遺棄した事件に、沖縄の人は怒りを募らせている。
 被害者の20歳の女性は結婚を前提にした交際相手がいたという。将来ある若者に対する卑劣な行為だ。逮捕された男は女性の殺害もほのめかしているという。
 日本政府は米政府に強く抗議し、綱紀粛正を求めた。安倍晋三首相も「非常に強い憤りを覚える」と語った。まずは事件の全容を把握し、動機や背景を解明する必要がある。
 沖縄の面積は、全国のわずか0・6%だ。そこに在日米軍専用施設の74%が集中する。沖縄県の面積に占める割合は10%。沖縄米軍基地の整理・縮小計画を決定した20年前に比べても減少率は1ポイントに届かない。
 1995年の米兵3人による沖縄少女暴行事件は、反基地運動に火を付け、日米同盟を揺るがした。だが、再発防止や綱紀粛正を唱えるものの、凶悪事件はなくならず、昨年も沖縄では3件の強盗事件が起きた。
 過重な米軍基地負担と、後を絶たない米軍関係者の犯罪は、沖縄の人たちに重くのしかかり、不公平感をかきたてさせずにはおかない。
 日本政府は、沖縄の不安や怒りがいかに深いかを米国に訴えるべきだ。そのうえで、安倍政権は沖縄の基地負担軽減に一層、取り組む必要がある。
 政府や自民党は、6月の沖縄県議選や今夏の参院選を前に米軍普天間飛行場移設問題への影響を懸念している。だが、基地問題という本質に向き合わなければ沖縄の怒りが収まることはない。
 綱紀粛正も効果がないままでは、反基地感情は増幅するばかりだ。沖縄県民や議会は、再発防止の仕組み作りや、米軍人・軍属らの事件・事故の扱いを定めた日米地位協定の改定を求めている。
 今回は公務外の犯罪で日本側が逮捕しており、地位協定の制約に伴う支障は出ていない。しかし、米軍が拘束していた場合でも要請できる起訴前の身柄引き渡しには、強制力はなく、米側が拒否した例もある。
 こうした裁判権の改定は抑止効果があるとして労働組合や弁護士団体が求めてきた経緯がある。犯罪抑止の観点から議論を促したい。
 来週の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、日米首脳会談も予定されている。基地の整理・縮小や犯罪の防止など米軍基地問題で真剣な意見交換をする好機だ。
 2000年の九州・沖縄サミットの際、クリントン米大統領は「よき隣人としての責任を果たす」と約束した。残念ながら、そのことばはいま、空虚に響く。
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日本経済新聞 2016/5/21付
社説:米軍絡みの犯罪防止に全力を


 沖縄で若い命がまた失われた。なぜ米軍絡みの凶悪犯罪はなくならないのか。事件があるたびに米政府は綱紀粛正を誓うが、長続きしない。地域の一員であるという意識が不足しているからではないか。日米両政府は沖縄県民の心情に寄り添い、本気で犯罪をなくす努力をすべきだ。
 安倍晋三首相は「非常に強い憤りを覚える。徹底的な再発防止など厳正な対応を米国側に求めたい」と語った。ことばだけに終わらせないでほしい。
 米軍は米本土から新しい兵隊が送り込まれてくるたびに「基地外で泥酔するな」などと厳命する。沖縄が先の大戦の激戦地で、米軍への悪感情を持つ人が多いことも教える。「これ以上は打つ手がない」。そう漏らす米軍幹部に会ったことがある。
 本当にそうか。米軍内に沖縄は自分たちが戦争で勝ち取った場所という意識はない、といえるだろうか。同じ島で生活する仲間という気持ちがあれば、このような蛮行ができるはずはない。
 事件の容疑者は基地で働く軍属だが、もともとは海兵隊員だ。在日米軍絡みの犯罪では、海兵隊が最も多いのは事実だ。日米は2006年、沖縄の海兵隊のうち約8000人を14年中にグアムに移すことで合意したが、施設整備の遅れなどで予定通り進んでいない。
 この移転は海兵隊が使う普天間基地の県内移設とは本来連動しておらず、遅れは移設反対運動のせいとはいえない。沖縄県民からすれば、米兵犯罪の温床を取り除く努力を日米両政府が怠っているようにしか見えない。
 「間が悪い」。安倍政権内にこんな声があるそうだ。オバマ米大統領の来日が近い時期、という意味だろうが、帰ったあとならば起きてよかったのか。県民感情を逆なでするような見方だ。
 「しっかり対応してもらった」と県民が思う振る舞いを日米両政府はできるか。普天間移設のハードルがさらに高くなるかどうかの正念場である。
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産経新聞 2016.5.21 05:03
【主張】元米兵の凶行 怒りを悲劇根絶につなげ


 沖縄県うるま市の女性会社員が、無残な遺体で発見された。死体遺棄の疑いで元海兵隊員の米軍属が逮捕された。
 被害者はまだ、20歳の若さだった。どれだけ無念だったろう。遺族の悲しみはどれだけ深いだろう。住民らが怒るのは、当然である。
 安倍晋三首相は「非常に強い憤りを覚える」と述べ、菅義偉官房長官は「残忍で凶悪な事件の発生は許し難く言語道断だ」と強く批判した。
 政府は米側に強く抗議し、全容解明への全面協力と、具体的な再発防止策を求めてほしい。
 容疑者は海兵隊を退役後、空軍嘉手納基地でコンピューター関連の仕事に従事していたとされる。在日米軍の軍属とは、基地で事務員や技師として働き、軍務を支援する民間の米国人を指す。
 日米地位協定は、在日米軍の軍人、軍属が公務中に事件、事故を起こした場合、米側に第1次裁判権があると規定している。このうち軍属については、平成23年、米側が刑事訴追しなければ日本側で裁判ができるよう、協定の運用が見直された。
 今回の事件は公務中のものではなく、日本の刑事手続きにより、沖縄県警が捜査している。米軍側も捜査に協力している。
 沖縄ではこれまでも、米軍関係者による許し難い事件が繰り返されてきた。平成7年には米兵3人が小学生女児を暴行する事件があった。米側は地位協定をかざして起訴前の身柄引き渡しに応じず、県民の猛反発を招き、協定の「運用改善」や米軍普天間飛行場の返還合意につながった。
 13年には米兵が駐車場で女性を暴行した疑いで逮捕され、24年には米兵2人が集団強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕された。その度、米軍は綱紀粛正を約束するが、事件は後を絶たない。今年3月にも、那覇市のホテルで米兵が女性観光客を乱暴し、準強姦容疑で逮捕されたばかりだった。
 沖縄は地政学的にも国の守りの要諦であり、米軍の駐留は抑止力として欠かせない。日米同盟にはいささかの揺るぎもあってはならない。だがそのことと、事件に対する感情は別の問題である。
 日本の国民が、残虐な事件の犠牲者となったのだ。当然の怒りを自制する必要はない。その感情は、悲劇の根絶に向けた取り組みにぶつけたい。
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東京新聞 2016年5月21日
【社説】元海兵隊員逮捕 沖縄を安心安全の島に


 米軍基地があるために犯罪が繰り返される。沖縄県で女性が行方不明になっていた事件で、元米兵が死体遺棄容疑で逮捕された。県民を守るために、日本政府は米国との交渉に全力を尽くすべきだ。
 「またか!」と県民には痛恨の極みだろう。四月から行方不明になっていたうるま市の会社員女性(20)の遺体が恩納村の山林で発見された。沖縄県警は米軍嘉手納基地で働く元海兵隊員のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)を逮捕。「女性を捨てた」と容疑を認め、殺害をほのめかす供述をしているという。
 被害者の女性はシンザト容疑者と面識がない。犯罪に巻き込まれたのは、普段の暮らしのすぐ隣に基地があったがためである。
 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄は「基地の中に沖縄がある」と例えられる。米軍関係者による犯罪は、第二次大戦末期の沖縄戦当時から繰り返されてきた。
 全国の警察が二〇〇六年から十年間に摘発した殺人や強盗などの凶悪犯は六十二件九十一人。沖縄では毎年のように発生している。
 事件のたびに日米政府は遺憾の意を示すが、現実には再発防止になっていない。沖縄の人々が求めるのは、米軍基地の廃止である。それがすぐにかなわないなら米軍に特権を与え、県民を憲法のらち外に置く日米地位協定を対等なものに改めることである。
 シンザト容疑者は、今は軍人ではないが、日米地位協定で定められる「軍属」に当たる。今回は「公務外」であるため、日本の刑事手続きに従って罪が問われることになるが、米兵、米軍属による犯罪がやまない背景には、改善運用はされるものの、不平等を解消する抜本的見直しがされてこなかった協定があることは論をまたない。
 辺野古新基地に反対する沖縄県民の声を直接伝えようと、翁長雄志知事が訪米している最中に急展開した事件である。無残な犯行で若い命が奪われたことに、沖縄の怒りはまた燃え上がる。大規模な基地反対運動のきっかけとなった、一九九五年の少女暴行事件を思い起こさせる。
 事件が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う、名護市辺野古の新基地建設に影響を与えるのは必至だ。来日するオバマ米大統領は沖縄の米軍基地がいかに理不尽な形で置かれているのか、県民の痛みの声を正面から受け止めてほしい。広島の思いだけでなく、沖縄の思いを毅然(きぜん)として伝えることも、政府の責務である。
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しんぶん赤旗 2016年5月21日(土)
主張:沖縄米軍属の犯罪 唯一の根絶策は基地の撤去


 沖縄県でまた「米軍基地あるがゆえの悲劇」が起こりました。うるま市の20歳の女性が行方不明になっていた事件で、米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)の軍属の元米海兵隊員が死体遺棄容疑で逮捕されました。遺体が見つかったのは米海兵隊キャンプ・ハンセン近くの恩納村の雑木林で、容疑者は女性の首を絞めナイフで刺したと供述しているとされます。これからの人生に夢と希望を抱いていただろう若い女性の命を無残にも奪った残虐な事件に激しい憤りを禁じ得ません。事件の元凶である過大な米軍基地を押し付けてきた日米両政府の責任は免れません。
守られない「再発防止」
 「今、こうやってパソコンに向かっている間も、打つ手の震えを抑えることができない」―。沖縄の地元紙社説(沖縄タイムス20日付)の書き出しです。今回の事件が沖縄県民に与えた衝撃、怒りと悲しみの深さを象徴しています。女性の無念さ、無事な帰りを願っていた家族らの心情を思うと胸が締め付けられます。
 沖縄では、戦後71年、日本復帰からでも44年もの間、「米軍基地あるがゆえの事件・事故」が絶えず繰り返されてきました。県民は、米軍人・軍属などによる凶行の犠牲者になる危険と常に隣り合わせの生活を余儀なくされてきました。
 沖縄県の資料によれば、1972年の復帰から2015年末までの米軍関係者(軍人、軍属、家族)による犯罪の検挙状況は5896件に上ります。このうち殺人、性的暴行、強盗、放火といった「凶悪犯」は574件と1割近くを占めています。国土面積のわずか0・6%の沖縄に、在日米軍専用基地面積の約75%が集中している異常な事態が背景にあることは間違いありません。
 安倍晋三首相は「沖縄の基地負担軽減」を繰り返していますが、沖縄の基地の過重負担の実態は何も変わっていません。県民の命と暮らしを危険にさらし、深い悲しみと苦しみを強いる事態をこれ以上放置することは絶対あってはなりません。
 安倍首相は今回の事件について「非常に強い憤りを覚える」と述べ、「徹底的な再発防止」などを米側に求めるとしています。しかし、沖縄の米軍関係者の事件・事故をめぐる歴史が示しているのは、いくら米政府や軍が謝罪し、「再発防止」や「綱紀粛正」を約束しても守られたためしはないということです。
 今年3月に米海兵隊キャンプ・シュワブ(名護市)の米軍人が那覇市で、寝込んでいて抵抗できない女性に性的暴行を加えたとして逮捕された事件でも、日本政府は米側に対し「再発防止」などを申し入れていました。今回の事件は、その直後に起きました。
新基地建設は許されぬ
 「米軍基地がある限り、今後も犠牲者が出る恐れは避けられない」―。今回の事件を受けて、沖縄からほうはいとして沸き上がっている声です。沖縄の地元紙は、米軍の「再発防止」策に限界があるなら、「選択肢は一つしかない。沖縄から去ることだ」と強調しています(琉球新報20日付)。
 基地撤去こそ米軍犯罪根絶の「唯一の解決策」です。日米両政府が「唯一の解決策」などといって沖縄に新基地建設を進めることは絶対に許せません。
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琉球新報 2016年5月21日 06:01
<社説>「殺害」示唆 植民地扱いは限界だ 許されない問題の矮小化


 えたいの知れない重苦しい塊が胸の中に居座り続けている。なぜ繰り返し繰り返し、沖縄は悲しみを強いられるのか。この悔しさはまさしく、持って行き場がない。
 行方不明だった会社員女性(20)が遺体となり見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された元米海兵隊員で軍属のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者が「首を絞め、刃物で刺した」と供述した。事実なら、事故などでなく意図的に殺害したことになる。
 しかも遺体は雑木林に放置された。被害者の恐怖と無念はいかばかりか。想像すると胸が張り裂けそうになる。もう限界だ。今のままの沖縄であってはならない。
 現在進行形の「戦場」
 女性と容疑者に接点は見当たらない。事件当日の日没は午後7時で、女性は8時ごろウオーキングに出た。大通りがいつものコースだった。日暮れから1時間たつかたたずに、商業施設に程近い通りを歩くだけで、見も知らぬ男に突然襲われ、最後は殺されたのだ。しかも相手はかつて海兵隊員として専門の戦闘訓練、時には人を殺す訓練をも受けたはずである。なすすべがなかったに違いない。沖縄はまさに現在進行形で「戦場」だと言える。
 沖縄に米軍基地がなければ女性が命を落とさずに済んだのは間違いない。在日米軍専用基地が所在するのは14都道県で、残りの33府県に専用基地は存在しない。だからこれらの県では米軍人・軍属による凶悪事件は例年、ほぼゼロが並ぶはずである。他方、統計を取ればこの種の事件の半数は沖縄1県に集中するはずだ。これが差別でなくて何なのか。
 沖縄は辛苦を十分に味わわされた。戦後70年を経てもう、残り33府県並みになりたいというのが、そんなに高望みであろうか。
 政府は火消しに躍起とされる。沖縄は単なる「火」の扱いだ。このまま米軍基地を押し付けておくために当面、県民の反発をかわそうというだけなのだろう。沖縄の人も国民だと思うのなら、本来、その意を体して沖縄から基地をなくすよう交渉するのが筋ではないか。
 だが辺野古新基地建設を強行しようという政府の方針には何の変化もないという。この国の政府は明らかに沖縄の側でなく、何か別の側に立っている。
 19日に記者団から問い掛けられても無言だった安倍晋三首相は、20日になって「非常に強い憤りを覚える。今後、徹底的な再発防止などを米側に求めたい」と述べた。その安倍首相に問い掛けたい。これでも辺野古新基地の建設を強行するのですか。
 責任はどこへ
 綱紀粛正で済むなら事件は起きていない。地元の意に反し、他国の兵士と基地を1県に集中させ、それを今後も続けようとする姿勢が問われているのである。
 問題のすり替え、矮小(わいしょう)化は米側にも見られる。ケネディ米大使は「深い悲しみを表明する」と述べたが、謝罪はなかった。ドーラン在日米軍司令官も「痛ましく、大変寂しく思う」と述べたにすぎない。70年以上も沖縄を「占領」し、事実上の軍事植民地とした自国の責任はどこかに消えている。
 ドーラン氏はまた、容疑者が「現役の米軍人ではない」「国防総省の所属ではない」「米軍に雇用された人物ではない」と強調した。だが軍人か軍属か、どちらであるかが問題の本質ではない。軍属ならば米軍の責任はないかのような言説は無責任極まる。
 確かに、容疑者は海兵隊をやめ、今は嘉手納基地で働く軍属だ。だからこそ辺野古新基地をやめれば済む問題でもない。
 日ごろ戦闘の訓練を受けている他国の軍隊がこれほど大量かつ長期に、小さな島に駐留し続けることが問題の淵源(えんげん)だ。沖縄を軍事植民地として扱い続ける日米両政府の姿勢が間違いなのである。ここで現状を抜本的に変えなければ、われわれは同輩を、子や孫を、次の世代を守れない。
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沖縄タイムス 2016年5月21日 05:00 
社説[女性遺棄事件]声上げ立ち上がる時だ


 「もうガマンができない」 うるま市の女性会社員(20)が遺体で見つかった事件から一夜明けた20日、県内では政党や市民団体の抗議が相次ぎ、怒りや悔しさが渦巻いた。
» 米軍属、わいせつ目的と供述「暴行し刺した」
 これまでに何度、「また」という言葉を繰り返してきただろうか。県議会による米軍基地がらみの抗議決議は復帰後206件。凶悪犯の検挙件数は574件。いくら再発防止を求めても、米軍の対策は長く続かず、基地あるが故に、悲劇が繰り返される。
 日米両政府の責任は免れない。
 20日、県庁で記者会見した16の女性団体の代表は、時に声を詰まらせながら、口々に無念の思いを語った。
 「被害者がもしかしたら私だったかもしれない、家族だったかもしれない、大切な人だったり友人だったかもしれない」「基地がなかったら、こういうことは起こっていなかったんじゃないか」-涙ながらにそう語ったのは、女性と同世代の玉城愛さん(名桜大4年)。
 死体遺棄容疑で逮捕された元米海兵隊員で軍属の男性が勤務する嘉手納基地のゲート前では、市民らが「全基地撤去」のプラカードを掲げて事件発生に激しく抗議した。
 政府によって「命の重さの平等」が保障されないとすれば、私たちは、私たち自身の命と暮らし、人権、地方自治と民主主義を守るため、立ち上がるしかない。
 名護市辺野古の新基地建設に反対するだけでなく、基地撤去を含めた新たな取り組みに全県規模で踏み出すときがきた、ことを痛感する。
■    ■
 日米両政府の「迅速な対応」がどこか芝居じみて見えるのは、「最悪のタイミング」という言葉に象徴されるように、サミット開催やオバマ米大統領の広島訪問、県議選や参院選への影響を気にするだけで、沖縄の人々に寄り添う姿勢が感じられないからだ。
 基地維持と基地の円滑な運用が優先され、のど元過ぎれば熱さ忘れるのたとえ通り、またかまたか、と事件が繰り返されるからだ。
 沖縄の戦後史は米軍関係者の事件事故の繰り返しの歴史である。事態の沈静化を図るという従来の流儀はもはや通用しない。
 オバマ大統領はサミットの合間に日米首脳会談に臨み、27日には、原爆を投下した国の大統領として初めて、被爆地広島を訪ねる。
 その機会に沖縄まで足を伸ばし、沖縄の歴史と現状に触れてほしい。新しいアプローチがなければ基地問題は解決しない。そのことを肌で感じてほしいのである。
■    ■
 県庁OBの天願盛夫さんは退職後、独力で「沖縄占領米軍犯罪事件帳」を執筆し、出版した。講和前補償問題に関する資料を整理・編集したもので、強姦事件、射殺事件、強姦殺害事件などの凶悪事件や軍用機墜落事故などが列記されている。あまりの数の多さに息が詰まるほどである。
 なぜ今もなお、米軍関係者の事件事故が絶えないのか。根本的な問題は「小さなかごに、あまりにも多くの卵を詰めすぎる」ことだ。この事実から目を背けてはならない。
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琉球新報 2016年5月20日 06:01
<社説>米軍属女性死体遺棄 日米両政府に責任 防止策は基地撤去しかない


 県民の尊い命がまたも奪われた。米軍属の男が関与をほのめかしている。元をたどれば、過重な米軍基地を県民に押し付ける日米両政府に行き着く。在沖米軍基地の整理縮小に消極的な両政府の責任は極めて重大だ。強く抗議する。
 米軍は米兵らが凶悪事件を起こすたびに再発防止に努めるとする。だが、守られたためしがないことは今回の事件が証明する。
 基地ある限り、犠牲者が今後も出る恐れは否定できない。基地撤去こそが最も有効な再発防止策である。日米両政府はそのことを深く認識し、行動に移すべきだ。
危険と隣り合わせ
 4月28日から行方不明になっていた、うるま市大田の会社員島袋里奈さん(20)が19日、恩納村の雑木林で変わり果てた姿で見つかった。県警は元海兵隊員で軍属のシンザト・ケネス・フランクリン容疑者(32)=与那原町=を死体遺棄の疑いで逮捕した。
 島袋さんは交際中の男性に「ウオーキングしてくる」と、スマートフォンの無料通信アプリでメッセージを送信して出掛けた。商業施設が並ぶ大通りが、いつものウオーキングコースだったという。
 米軍基地から離れた場所であっても、県民は米軍人・軍属の凶行の被害者になる危険性と常に隣り合わせで生活していることを今回の事件は物語る。
 基地がなければ、容疑者は沖縄にいない可能性が高く、今回の事件も起きなかっただろう。米軍基地あるが故の痛ましい事件であることは明らかだ。
 在沖米軍は何のために存在するのか。日米両政府は日米安保に基づき、日本の安全を守るためだとする。県民の命を奪っておいて、日本の安全などあったものではない。日米安保の矛盾が沖縄からはよく見える。
 在日米軍専用施設面積のうち、沖縄が占める割合は2014年時点の73・8%から、ことし1月現在では74・46%に上昇した。安倍晋三首相の「沖縄の負担軽減」は米軍施設面積の面でも一切進んでいない。今回の事件はその延長線上にある。
 県内での米軍人・軍属による殺人や女性暴行などの凶悪犯罪は1997年の69件をピークに減少し、95年以降は2013年を除き、毎年1~7件の発生である。発生件数が減っているからといって、評価することは一切できない。
 そもそも米軍人・軍属は県民が積極的に招いたわけではない。犯罪ゼロが「良き隣人」の最低限の条件である。それができなければ、沖縄にいる資格はない。
我慢も限界だ
 島袋さんはショッピングセンターに勤め、勤務態度は真面目で、明るく気配りのできる女性だったという。笑顔で写った写真からは幸せな様子が見て取れる。
 20歳。これからさまざまな人生経験を積み、大きく成長を遂げたものと思う。夢もあっただろう。それがかなわなくなった島袋さんの無念に胸が痛む。無事を祈って帰りを待った家族や友人らの心痛に、胸が張り裂ける思いの県民も多いだろう。
 県民を危険にさらし、悲しみに暮れる人たちをこれ以上生み出すことは許されない。
 日米両政府は今回の事件を「極めて遺憾」などの言葉で済ませてはならない。県民の我慢も限界に達している。「綱紀粛正と再発防止に努める」だけでは不十分だ。
 ことし3月には那覇市内のホテルで、キャンプ・シュワブ所属の1等水兵が観光客への女性暴行事件を起こし、逮捕されている。県はその際、米軍に対し綱紀粛正と人権教育の徹底を含めた再発防止を強く求めた。
 容疑者は軍人ではないが、嘉手納基地で働く元海兵隊員の軍属である。米軍には軍属も教育する責任が当然ある。だが事件がなくならないことからして、米軍の教育には限界があることが分かる。ならば、選択肢は一つしかない。沖縄から去ることだ。
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沖縄タイムス 2016年5月20日 05:00 
社説:[不明女性遺体で発見]米軍がらみ 最悪の結末


 今、こうやってパソコンに向かっている間も、打つ手の震えを抑えることができない。どうか無事でいてほしいという家族や友人、多くの県民の思いは粉々に砕かれてしまった。
 うるま市の会社員、島袋里奈さん(20)が行方不明になっていた事件で、県警は元米海兵隊員で嘉手納基地で軍属として働く32歳の男を死体遺棄の疑いで逮捕した。供述に基づき、恩納村の雑木林から島袋さんの遺体が見つかった。
 今年成人式を迎えたばかりの若い命である。直面した恐怖や絶望を思うと気持ちの持って行き場がない。
 島袋さんは行方不明になる直前の4月28日午後8時頃、「ウオーキングしてくる」と、交際相手の男性へLINEで連絡している。趣味のウオーキングに出掛ける、いつもと変わらない日常だった。
 勤めるショッピングセンターでの働きぶりは真面目で、明るくて気配りのできる女性だったという。
 県警によると容疑者の男は、殺害をほのめかす供述をしている。またも繰り返された米軍関係者による凶悪犯罪。
 若い女性の命が奪われたというニュースに、県民は悲しみと怒りと悔しさが入り交じった衝撃を受けている。
 米軍基地が集中するために脅かされる命と女性の人権。米兵や米軍属の犯罪におびえて暮らさなければならない日常が戦後71年たっても続くというのは、あまりにも異常である。
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 1972年の復帰から2015年までの43年間の米軍関係者による犯罪検挙件数は5896件。うち殺人、強盗、強姦、放火などの凶悪犯は574件と10%近くを占めている。米兵に民間人が殺害される事件も12件発生した。
 「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」が掘り起こしてきた戦後の米兵による性犯罪の記録には、「検挙」にいたっていない被害も数多く並ぶ。
 こんな地域がほかにあるだろうか。米軍占領下も復帰後も米兵による性暴力や米軍関係者の事件事故におびやかされる地域がほかにあるだろうか。怒りがこみあげてくるのを禁じ得ない。 
 つい2カ月前にも那覇市内のホテルで米兵による女性暴行事件が起きている。
 県と市町村、外務、防衛両省、米軍が事件事故防止に向け対策を話し合うワーキングチームの会合を4月19日に開いたばかりである。
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 事件の詳細が明らかになっていないため、現時点で予断をもって語ることは戒めなければならないが、容疑者の供述した場所から島袋さんが遺体で見つかったのは、はっきりしている。動機や殺害にいたったいきさつなど事件の全容解明を急いでもらいたい。
 米国から帰国し会見した翁長雄志知事は「言葉が出てこない」と絶句した。
 事件事故のたびに日米両政府に抗議し、大会を開き、綱紀粛正と再発防止を求めてきたが、これまでのようなやり方ではもうだめだ。もはや再発防止要請ですますレベルではない。
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