2016年5月28日土曜日

日米首脳会談 米軍属女性遺棄事件 防ぐ意思感じられない

切実な声をなぜ伝えぬ  沖縄には届いていない  沖縄の怒りがまだ分からぬか
首相「辺野古唯一」 被害者の命をも軽んじた 会見の裏で「辺野古」確認するとは


<各紙社説・主張>
朝日新聞)日米と沖縄 切実な声をなぜ伝えぬ(5/27)
毎日新聞)日米首脳会談 沖縄には届いていない(5/27)
東京新聞)日米首脳会談 「綱紀粛正」に頼る限界(5/27)
しんぶん赤旗)安倍・オバマ会談 沖縄の怒りがまだ分からぬか(5/27)

琉球新報)首相「辺野古唯一」 被害者の命をも軽んじた(5/28)
沖縄タイムス)[日米共同会見の裏で]「辺野古」確認するとは(5/27)
琉球新報)日米首脳会談 事件防ぐ意思感じられない(5/27)
沖縄タイムス)[日米首脳会談]具体性欠け心に響かず(5/26)




以下引用



朝日新聞 2016年5月27日05時00分
(社説)日米と沖縄 切実な声をなぜ伝えぬ


 「厳正な対処」を強く求める安倍首相。「日本の捜査に全面的に協力する」と約束するオバマ米大統領――。
 沖縄県で起きた米軍属による死体遺棄容疑事件から6日。県民の不信が渦巻くなかでの日米首脳会談は、抗議と遺憾の言葉のやりとりとなった。
 だがそれで、米軍が絡む凶悪犯罪がなくなるだろうか。県民が背負わされてきた過重な基地負担が解消されるだろうか。残念ながら、そうは思えない。
 まず問題なのは、沖縄県の翁長雄志知事が求めた日米地位協定の改定を、安倍首相が提起しなかったことだ。会談後の共同記者会見でも首相は「地位協定のあるべき姿を不断に追求していく」と述べるにとどめた。
 確かに今回は公務外の容疑で県警が逮捕したため、地位協定上の問題は発生していない。
 だが、米軍関係者による事件が絶えない背景には、いざとなれば基地に逃げ込めば地位協定が守ってくれる、という特権意識があると指摘されてきた。
 例えば公務外の容疑で、米側が身柄を押さえた場合でも、日本側に引き渡す。いまは米側の「好意的配慮」に委ねられている運用を明文化する改定につなげれば、犯罪を防ぐ効果も期待できよう。
 地位協定は米軍にさまざまな特権を与え、米側は改定には否定的だ。だからといって改定を口にしようとしない首相の姿勢は、及び腰に過ぎないか。
 もう一つの問題は、首相が首脳会談で、米軍普天間飛行場の移設について「辺野古移設が唯一の解決策であるとの立場は変わらない」と伝えたことだ。
 耳を疑うのは、その首相が共同記者会見で「米軍再編にあたっても、沖縄の皆さんの気持ちに真に寄り添うことができなければ、前に進めていくことはできない」と語ったことだ。
 辺野古移設に反対する沖縄の民意は、度重なる選挙結果に表れている。基地の県内たらい回しが米軍絡みの犯罪の防止につながらないことも明らかだ。
 首相が県民の気持ちに「寄り添う」思いは多としたい。ならば、首相が大統領に伝えるべきは、普天間の県外・国外移設を求める県民の切実な声と、辺野古移設の断念ではないか。
 現状を放置すれば、日米関係の不安定な状態は続くだろう。
 米軍関係者による犯罪は、重大な基地被害であり、人権侵害である。日本復帰から44年がたっても、その重荷は沖縄県民に押しつけられている。その理不尽と不平等をどうすればいいのか。日本全体が問われている。
ページのトップへ戻る



毎日新聞2016年5月27日 東京朝刊
社説:日米首脳会談 沖縄には届いていない


 これでは沖縄と日米両政府の溝は、埋まらないだろう。
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に先だち、安倍晋三首相とオバマ米大統領が慌ただしく会談した。
 沖縄県で起きた米軍属による死体遺棄容疑事件に区切りをつける狙いがあったと見られるが、県民の怒りを鎮めるには不十分な内容だった。
 首相は共同記者会見で「断固抗議した」「実効的な再発防止策など厳正な対応を求めた」と、強い表現で憤りや米国への抗議を語った。
 米軍普天間飛行場の移設計画を含めた米軍再編については、「沖縄の皆さんの気持ちに寄り添うことができなければ、前に進めていくことはできない」と話した。
 どれも首相の言う通りなのだが、問題は沖縄の人々に響いているかどうかだ。
 これまでも首相は「沖縄の気持ちに寄り添いながら、できることはすべて行う」とたびたび語ってきた。
 けれども実際には、安倍政権は辺野古移設で一貫して沖縄に強圧的な態度を取り続けてきた。会談で、首相は基地の整理・縮小について「辺野古移設が唯一の解決策との立場は変わらない」と説明したという。
 それで「寄り添う」と言われても、県民はにわかに信用できまい。
 一方、オバマ大統領からは、謝罪ではなく「深い遺憾の意」が表明され、捜査への全面協力や再発防止徹底の方針が示されたにとどまった。
 沖縄県が求める日米地位協定の改定が会談で取り上げられることはなく、これまで通り必要に応じて運用改善していくことが確認された。
 地位協定の改定とて、決して抜本的な解決策ではない。それでも、米軍人・軍属が公務外で罪を犯した場合、米側の裁量に左右されずに、日本側が起訴前に身柄拘束できるよう協定を改定すれば、今よりも犯罪を減らす効果はあるだろう。強制力のない運用改善では不十分だ。
 深夜に及んだ記者会見、両首脳が語る強い非難の言葉などは、両政府の危機感をかもし出してはいる。
 しかし、内容の乏しさを考え合わせれば、これらはサミットやオバマ大統領の広島訪問、沖縄県議選、参院選への影響を回避するための政治的な演出のようにも見えてくる。
 会談では、世界経済、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、北朝鮮の核開発、海洋の安全保障、難民対策なども話し合われた。
 日米が世界に負う責任は重く幅広い。だがその同盟関係は、今回のように一つの事件で揺らぎかねないもろい構造を抱えている。同盟を強化するためには、対症療法でなく、沖縄の過重な基地負担の問題に根本的に取り組むしかない。
ページのトップへ戻る



東京新聞 2016年5月27日
【社説】日米首脳会談 「綱紀粛正」に頼る限界


 沖縄県で起きた元米海兵隊員の軍属による女性遺棄事件。日本側は米側に「綱紀粛正」を求めているが、日米地位協定を改定し、沖縄の米軍基地を削減しなければ、真の再発防止策とはなり得ない。
 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開幕に先立ち、二十五日夜に行われた日米首脳会談。約五十分間の会談前半に行われた少人数会談は、すべての時間が沖縄県での事件に費やされた、という。
 安倍晋三首相はオバマ米大統領に「身勝手で卑劣極まりない犯行に憤りを覚える」と伝えた上で「実効的な再発防止策の徹底など厳正な対応」を求めたが、具体的に何を指すのかは不明だ。
 日本政府はこれまでも、米兵や米軍基地に勤める軍属による事件や事故が起きるたびに、米軍側に綱紀粛正や再発防止を求めてきたが、今回の事件は、その抑止効果に限界があることを示す。
 事件や事故を起こしても米軍基地内に逃げ込めば、地位協定に守られる。こんな特権意識が凶悪犯罪を誘発していると、沖縄県民の事件を見る目は厳しい。
 一九九五年に県内で起きた少女暴行事件を受けて、殺人、強姦(ごうかん)の凶悪事件に限って起訴前の身柄引き渡しに米側が「好意的配慮を払う」よう運用が改善されたが、身柄引き渡しはあくまでも米側の判断であり、拒否した例もある。
 米兵らの特権意識が犯罪や事故を誘発すると指摘される状況を解消するには、運用改善では限界がある。翁長雄志知事をはじめ沖縄県側が切実に求めているにもかかわらず、首相はなぜ、地位協定の改定に踏み込まなかったのか。
 沖縄県には在日米軍専用施設の約74%が集中する。日本国民たる沖縄県民の命と平穏な暮らしを守るには米軍施設の大幅削減が急務だが、日米両政府は、県民の抜本的な基地負担軽減にはつながらない米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」が、「唯一の解決策」であるとの立場を変えようとしない。
 首相は会談後の記者会見で「日本国民の命と財産を守る責任を果たすために、あらゆる手を尽くす決意だ」と強調した。首相たる者の心構えとしては当然だが行動が伴わなければ意味がない。
 首相は今回の会談で、地位協定の改定と普天間飛行場の国外・県外移設を提起すべきだった。沖縄の状況が劇的に改善すれば、大統領にとってもレガシー(政治的遺産)になったはずだ。機を逸したことは残念でならない。
ページのトップへ戻る



しんぶん赤旗 2016年5月27日(金)
主張:安倍・オバマ会談 沖縄の怒りがまだ分からぬか


 伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)開幕前に安倍晋三首相とオバマ米大統領による日米首脳会談が開かれました。最大の焦点は、沖縄で起きた米軍属で元海兵隊員による「女性遺体遺棄事件」でした。首相は大統領に「実効的な再発防止策など厳正な対応」を求めました。しかし、首脳会談前に翁長雄志沖縄県知事が求めていた日米地位協定の改定や、米軍基地の大幅縮小などについて、首相は全く言及しませんでした。さらに名護市辺野古の米軍新基地建設を表明し、「県民の気持ちに寄り添う」(首相)どころか逆なでする姿勢まで示したことは許されません。
事件の背景に地位協定も
 「大変残念だ。県民は納得しない」。翁長知事は怒りの表情で首脳会談の感想を述べました。
 翁長知事は、首脳会談前に首相と会談(23日)し、「『綱紀粛正』『徹底した再発防止』などというのはこの数十年、何百回も聞かされたが、現状は全く何も変わらない」と批判していました。しかし、首相は首脳会談でも「再発防止」を求めるだけで、知事の要求に応えませんでした。
 今回の事件を含め、なぜこういう事態が繰り返されるのか。
 最大の要因は、国土面積の約0・6%しかない沖縄県に在日米軍専用基地面積の約74%という広大な米軍基地が集中し、県民が基地と隣り合わせの生活を余儀なくされていることです。沖縄の米軍基地の抜本的縮小、撤去に踏み出さない限り、「基地あるがゆえの犯罪」は決してなくなりません。
 基地の重圧とともに県民に犠牲をもたらしているのが日米地位協定です。
 日米安保条約に基づく日米地位協定は、在日米軍や軍人・軍属らの法的地位を定めています。米軍人・軍属が起こした犯罪に対する第1次裁判権は「公務中」は米側にあり、「公務外」では日本側にあるものの、犯人が基地内に逃げ込めば原則起訴まで身柄を引き渡さなくてもいいなど、米側に数多くの特権を認めています。
 翁長知事は、米軍人・軍属の犯罪が繰り返される要因について「基地あるがゆえ」の問題に加え、「日米地位協定という特権的な状況があり、軍人・軍属が占領意識を持って県民を見ていることが大きい」と強調しています。「地位協定の下では日本の独立は神話」という知事の言葉に込められた沖縄の現実を直視すべきです。
 在日米軍に治外法権的な特権を保障している屈辱的な日米地位協定の抜本的な見直しは、軍人・軍属らの犯罪を防止する上でも不可欠です。協定の改定に背を向けた日米両首脳の責任は重大です。
基地のない平和な沖縄を
 首相は、「再発防止」のため「あらゆる手を尽くす」と述べました。しかし今回の会談は、翁長知事が首相にぶつけた「安倍内閣はできることはすべてやると言っているが、できないことは全てやらないという意味にしか聞こえない」(23日)との批判を証明しました。
 首相は首脳会談で、辺野古の新基地を「唯一の選択肢」と改めて指摘し、「沖縄の皆さんの気持ちに寄り添わなければできない」と述べました。しかし、新基地建設こそ県民の気持ちを乱暴に踏みにじるものです。沖縄の怒りも痛みも分からない安倍政権を退陣に追い込むたたかいが重要です。
ページのトップへ戻る



琉球新報 2016年5月28日 06:01
<社説>首相「辺野古唯一」 被害者の命をも軽んじた


 安倍晋三首相が日米首脳会談で、米軍普天間飛行場の移設問題は名護市辺野古への移設が「唯一の解決策との立場は変わらない」との考えを、オバマ大統領にあらためて伝えていた。
 米軍属の男が20歳の女性の遺体を遺棄する痛ましい事件が起きたばかりである。事件は米軍基地あるが故に起きたことに、安倍首相はまだ気付かないのだろうか。
 安倍首相の発言は、女性の死を悼む多くの県民に冷や水を浴びせただけではない。無念の死を遂げた女性の命をも軽んずるものであり、断じて許されるものではない。
 国民の命を守れなかった自らの責任を、安倍首相が重く受け止めているならば、辺野古新基地建設の推進を首脳会談で持ち出すはずはなかろう。事件直後のこの時期に「辺野古が唯一の解決策」と発言したことで、安倍首相の沖縄に対する冷淡な姿勢がさらに鮮明になった。
 安倍首相は「身勝手で卑劣極まりない犯行に、非常に強い憤りを覚える」とオバマ氏に抗議した。憤りがあるのなら、オバマ氏に明確に謝罪するよう求めるべきではなかったか。
 オバマ氏に対し「日本国民の感情をしっかりと受け止めてもらいたい」とも要請したが、安倍首相自身も県民感情を受け止める必要があることを自覚すべきだ。
 安倍首相は米軍再編を前に進めていくためには「沖縄の皆さんの気持ちに真に寄り添う」ことが必要だと述べた。県民の気持ちに「真に寄り添う」のであれば、新基地建設が「唯一の解決策」になるはずがない。県民の気持ちと相反する新基地建設を推し進める。この矛盾を県民に押し付けことはやめるべきだ。
 看過できない発言はまだある。安倍首相は共同記者会見で「日米が深い絆の下に、これからも『希望の同盟』として力を合わせ、地域そして世界の平和と繁栄に貢献をしていく」と述べている。
 20歳の女性の犠牲の上に成り立つ同盟を「希望」と呼ぶ神経が理解できない。女性の「希望」が奪われたことへの配慮さえない。
 翁長雄志知事は政府が繰り返す「法治国家」について「今のありようでは県民を放っておくという意味での『放置国家』と言わざるを得ない」と指摘した。その通りである。安倍首相は反論できまい。
ページのトップへ戻る



沖縄タイムス 2016年5月27日 05:00 
社説[日米共同会見の裏で]「辺野古」確認するとは


 25日夜行われた日米首脳会談で、安倍晋三首相が米軍普天間飛行場問題について、「辺野古移設が唯一の解決策」と述べ、オバマ大統領と認識を共有していたことが分かった。
» 社説[無言の意思表示]沖縄の怒り、見誤るな
 会談後の共同記者会見の模様はテレビ放映されたが、辺野古の話はまったく出ていなかった。元海兵隊員で米軍属の男による女性遺体遺棄事件に対する抗議の場で、多くの県民が反対する辺野古への新基地建設を改めて確認する-。県民を愚弄(ぐろう)しているというほかない。
 安倍首相は、翁長雄志知事が求めたオバマ氏との面談の要望を取り合わなかったばかりか、沖縄が求める日米地位協定の改定を提起することさえしなかった。その裏で「辺野古移設が唯一の解決策」と確認していたとは、一国の政治の最高責任者としてあるまじき行為である。
 翁長知事が「20歳の夢あふれる娘さんがああいう状況になった中で、辺野古が唯一などと日本のトップがアメリカのトップに話すこと自体が、県民に寄り添うことに何ら関心がないことが透けて見える」と厳しく批判したのは当然だ。
 県議会は26日、事件への抗議決議と意見書を可決した。在沖米海兵隊の撤退と米軍基地の大幅な整理・縮小を求める内容だ。与党・中立会派が提出し、野党が退席する中で全会一致で可決した。県議会決議では初めて海兵隊撤退まで踏み込んだ。その意味を重く受け止めてもらいたい。
■    ■
 在沖米海兵隊については、沖縄に派遣された新任兵士を対象に開く研修に、沖縄を蔑視するような内容が盛り込まれていることが分かった。「沖縄の世論は論理的というより感情的」「沖縄の政治は基地問題を『てこ』として使う」という偏見に満ちたものだ。兵士に対し、異性にもてるようになる「外人パワー」を突然得るとして我を忘れることのないよう注意するくだりもある。
 こうした教育が、沖縄を見下す若い兵士の態度を形成し、事件を起こす素地になっているのではないか。事件が起きるたびに米軍側は綱紀粛正や再発防止を強調するが、真逆の研修内容であり、実効性は期待できるはずもない。
 1995年の米兵暴行事件を受けて、米軍は「良き隣人」政策を進めてきたが、その後も事件は絶えない。研修内容を見る限り、政策が破綻していることを今回の事件は示している。
■    ■
 任期満了に伴う県議会議員選挙がきょう告示される。
 今回の県議選は、これまでにない極めて重要な政治的意味を持つ。
 辺野古への新基地建設に反対する翁長知事を支持し安定多数を得る県政与党が過半数を維持できるかが最大の焦点だ。選挙結果は、新基地建設を巡る国と県との対立の行方や、翁長知事の今後の県政運営を大きく左右する。
 基地あるが故の事件をどう防ぐかは重要な争点であり、候補者は基地問題に対するスタンスを明確にすべきだ。有権者はそれらを見極め、意思表示する機会でもある。
ページのトップへ戻る



琉球新報 2016年5月27日 06:02
<社説>日米首脳会談 事件防ぐ意思感じられない


 元海兵隊員の米軍属による女性遺棄事件の責任の一端は、米軍の最高司令官であるオバマ大統領、基地を提供する安倍晋三首相にもある。その認識が両首脳には決定的に欠けている。
 一体何のために今回の事件を日米首脳会談で話し合ったのか。県民を失望させる結果になったことを両首脳は重く受け止めるべきだ。
 オバマ氏は「お悔やみと遺憾の意を表明する」と述べたが、謝罪はしなかった。謝罪する立場にないと考えているならば、問題である。
 ケリー米国務長官は「犠牲者の遺族や友人に深い謝罪の意を表明する」と岸田文雄外相に伝えている。国務長官が電話で謝罪すれば済む問題なのか。大統領が謝罪するほどの事件ではないと考えているのではとの疑念さえ湧く。
 事件の再発防止策でも、何ら成果はなかった。オバマ氏は再発防止のために「できることは全てやる」と述べた。「できること」は米側の恣意(しい)的な判断で決まる。これまでの経緯からして、米側が「できること」に期待はできない。
 米軍の綱紀粛正や米軍人・軍属教育の徹底、基地外飲酒制限、外出規制はこれまでも示されてきた。その結果が今回の痛ましい事件である。これまで以上の「できること」を提示しないとあっては、再発防止に真剣に取り組む意思がないと受け取らざるを得ない。
 県民が求めているのは、日米両政府が過去に示した実効性のない再発防止策ではない。もうこれ以上、一人の犠牲者も出さないことを、県民に保証する凶悪事件の根絶策である。オバマ氏に再発防止を求めただけの安倍晋三首相には、その視点が欠けている。
 県民の命や安全に関わることは結果が全てである。再び凶悪事件が起きた場合には在沖米軍の撤退、在沖米軍基地の撤去を約束する覚悟で取り組まなければ、凶悪事件はまた起きるだろう。
 事件が後を絶たない背景には日米地位協定の存在がある。「事件を起こしても守られる」との米軍人・軍属の特権意識を取り除くことが必要だ。だが、両首脳とも「運用の改善」にとどめ、県民要求を一蹴した。
 協定を抜本改正しないとあっては、凶悪事件の発生を根絶する意思を感じることはできない。全在沖米軍基地の撤去でしか、県民を守る手だてはない。そのことを首脳会談は証明した。
ページのトップへ戻る



沖縄タイムス 2016年5月26日 05:00 
社説[日米首脳会談]具体性欠け心に響かず


 安倍晋三首相は25日夜、三重県伊勢市のホテルで開いた日米首脳会談で、冒頭、元米海兵隊員で軍属の男が逮捕された女性遺体遺棄事件について「断固抗議」し、米国に実効性ある再発防止策と厳正な対応を求めた。
 オバマ大統領はこれに対し、深い哀悼の意を表明するとともに、日本の司法の下での捜査に全面的に協力するとの考えを明らかにした。
 会談後の共同記者会見では、翁長雄志知事が求めた日米地位協定の抜本的な見直しについては両首脳とも、具体的回答を避け、否定的な姿勢を示した。
 安倍首相とオバマ氏は今回の凶悪事件の発生について「強い憤り」(安倍首相)と「非常にショック」(オバマ氏)を受けていることを明らかにしたが、共同記者会見では最も重要な点が触れられていなかった。
 両首脳は今回の事件のことは語っているが、このような凶悪犯罪が沖縄戦の最中から現在まで繰り返し繰り返し起きている事実に対して、どれだけ深刻に感じているのか、会見からはまったく伝わってこなかった。
 米軍関係者による凶悪な性犯罪が発生するたびに、沖縄県民は日米両政府から同じような言葉を何度も聞かされてきた。具体的な政策が示されない限り、沖縄の人々の怒りや悲しみ、両政府に対する不信感が解消されることはないだろう。沖縄との溝は深まるばかりである。
 翁長知事は23日の安倍首相との会談で、オバマ氏との面談の橋渡しを要請したが、実現しなかった。
■    ■
 翁長知事が直接面談を求めたのは、綱紀粛正と再発防止を何度求めても、米軍関係者による性犯罪が後を絶たず、女性の人権が侵害され続けているからだ。
 菅義偉官房長官は「一般論として安全保障や外交に関わる問題は、中央政府間で協議されるものだ」と翁長知事の要請を一蹴した。
 面談を実現させようと動いた形跡がみられない。
 女性の遺体遺棄事件は、安保や外交問題ではない。県民の生命を守る立場にある知事が米軍の最高司令官である大統領に訴えるのは当然の行動ではないか。
 その機会をつくろうとさえしない政府とはいったいどこの政府なのだろうか。日米両政府は基地撤去にも地位協定の見直しにも否定的だ。その場しのぎの再発防止策で幕引きとなるような事態だけは絶対に避けなければならない。
■    ■
 6月19日の大規模な県民大会に向け、日を追うごとに抗議の動きが広がっている。25日には軍属の男が勤務していた嘉手納基地前で、4千人(主催者発表)の緊急県民集会が開かれた。
 地元のうるま市議会をはじめ市町村議会でも抗議決議が相次いでいる。県議会は26日の臨時会で抗議決議を予定しており、与党・中立案が賛成多数で可決される見通しだ。
 沖縄が一つに結束し沖縄の声をもっともっと広げることが重要だ。すべての市町村議会に対し、意思表示することを求めたい。
ページのトップへ戻る

/////////////////////////////////////////////////////


0 件のコメント: